代理婚!

オレンジペコ

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夫婦はやっと同居中!

24.屋敷に戻ってきたシーファス

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離婚がなくなったため、シーファスが屋敷へと戻ってきた。

とは言え借りてた部屋はそのまま残してあったりする。
それも偏に俺が『あの家、ギルドにも近くて便利なのにな…』ってポロッと溢してしまったせいだ。
慰謝料の支払いがなくなって、借金も持参金で払ってあるから現状借金はない状態だし、そういうことならとシーファスは笑顔でそのままそこを継続して借りることに。
それは有り難いんだけど、『たまにはあそこに泊まるのも気分も変わっていいかもな』って囁かれて真っ赤になってしまった。

まあそんな感じで何も問題はなくなったかのように思えるかもしれないけど、実はまだ問題はあるんだ。
と言うのも、元々嫁いでくるのは姉さんの予定だったから、シーファスの嫁=女性ってことになってて、それはシーファスの両親だけじゃなく屋敷の使用人全員の共通認識になっている。
いくら法律で同性婚が認められるようになり、俺とシーファスが法的にちゃんとした夫婦だとしても、周知されている嫁は男ではなく女。
つまりどういうことかと言うと────平穏に過ごすためにも、屋敷ではやっぱり女装の方がいいってことだ。

シーファスは『婚姻証明書だってあるし、隠さずオープンにしたらいいじゃないか』って言うけど、シーファスの両親の耳に入って『離婚だ!騙した分の慰謝料払え!』と激怒される可能性はできるだけ避けたい。
婚姻届にだって強引な手でシーファスにサインさせた相手だ。
離婚だって強引な手に出ないとも限らない。
シーファスはそんな事を言われても絶対離婚なんてしないから気にしなくていいって言ってくれるけど、よく知らない相手(義両親)だからこそ警戒は必要だと思う。

「ゴメンな。シーファス。暫くはこれでいかせてほしい」
「わかった。ハルの思うようにやってくれ。俺はハルさえこうして側に居てくれればそれでいいんだから」

そう言いながら庭を望めるテラスに設えられたソファに座り俺を膝の上に乗せ、腰に腕を回しながら幸せそうに抱きしめてくるシーファス。
雰囲気が甘過ぎて、俺の侍女ズがティーポットを手にしながら砂を吐いてる。
しかも家令始め他の使用人達はホッとしたようにそんな俺達を見守っているから、凄く恥ずかしかった。
距離が離れてるから会話は聞こえてないとは思うけど、物凄く居た堪れない。
そんな俺に気づいたシーファスがサフランとフリージア以外の皆をそっと下げてくれたから、助かったとばかりに肩の力を抜いた。

「ありがとう。シーファス」
「いや。それよりハル。明日は一緒にギルドに行かないか?」
「行く行く!なんだったら今からでも!」
「フッ。随分乗り気だな。でも今日は買い物に行かないか?」
「買い物?」
「そう。ハルの装備とか消耗品とか、色々買いたいなと思って」
「そっか。じゃあ先に行っててくれるか?俺、後から行くから」
「どうして?」

シーファスが俺の言葉に不思議そうに首を傾げてくる。
でも俺、今女装中だから部屋に戻って化粧を落としたり着替えたりしないと出れないんだ。
だから先に行ってくれって言ったんだけど。

「待ってる」
「いや、待たなくていいから」
「待つ」
「待たれても一緒には出れないし」

そもそも屋敷の真正面から男の格好で出れるはずがない。

「いつもはどうやって出てきてたんだ?」
「それはもちろん裏口から」

下働きの者は普通そこから出入りしているし、男の俺が出入りしても早々目立つことはない。

「危なくないか?」
「別に平気だけど?」
「いや、ハルは可愛いし、誰かに襲われないか心配だ」
「…シーファス」
「俺が毎日レベリングに付き合うから、明日からもっとレベルを上げよう!その方が安心安全だ!」

なんだか物凄く気合いが入ってる気がするな。
そんなに心配しなくても大丈夫なのに。

(でもまあレベルは上げたいし、目指せCランク!で頑張ろうかな)

「じゃあハル。俺も着替えてから出るけど、先に行って裏口で待ってる。何かあったら大声で叫ぶんだぞ?」

そう言ってシーファスは俺にチュッとキスを落とした後部屋に戻っていったんだけど、そんなシーファスに対し侍女ズはお怒りだ。

「全く…これまでずっと放置していたくせにベタベタと…」
「本当に。これまでのことを棚上げして我が物顔で愛でまくるなんて、やっぱりふざけた男ですわ!」

侍女ズのシーファスへの悪感情はどうやら健在のようだ。

「ライ…いえ、ミシェイラ様?あまり調子に乗らせないよう、手綱をしっかり握っていてくださいね?」
「善処する」

絶対無理だと思うけど、一応頷いておかないと二人に角が生えそうだから素直にそう答えた。


***


「お待たせ」

準備万端整えて裏口へと向かうとシーファスが待ち構えていて、『ハル!』と言いながら抱き着いてきた。

「こういうのも待ち合わせてデートするみたいでいいな」

必要に迫られてこうなっただけなのに、にこやかにそう言われるとなんだか本当にそんな気分になって、妙に気恥ずかしい気持ちになる。

「じゃあ行くか」

いつもと違いそう言って手を差し出してこられたから首を傾げていたら、サッと手を取られて恋人繋ぎをされてしまった。

「妻とのデートなんだから、いいだろう?」

なんだかイケメン笑顔がいつも以上に眩しすぎる!
でも嫌じゃないから軽くキュッと手を握り、俺は振り払うことなくシーファスと歩き出した。
多分頬は緩んで顔も赤くなっていることだろう。

きっと侍女ズが今の俺を見てたら物凄く怒ったと思う。

『そんな態度だから調子に乗らせるんですよ!!』とかなんとか。



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