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夫婦は只今別居中!
7.初めてのキス
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思えばこのひと月。シーファスはいつだって俺に親切にしてくれていた。
そのお陰で少しずつ冒険者として一人前になれた気がする。
「ラインハルト!そっちに行ったぞ!」
「よし!」
シーファスが火トカゲを俺の方へと追い込んでくれたから、俺はしっかり剣を構えた上でデバフの魔法を火トカゲへと掛け、そのままとどめを刺しに行く。
ザシュッ!
剣の腕前も最初の頃からすると段違いに上達した。
魔法の使い方もそうだ。
どっちも効率よく使って魔物を仕留めるんだとシーファスがコツを教えてくれたから早く上達できたんだと思う。
本当に有難い限りだ。
「ではラインハルトさん。この討伐を持って本日から貴方をEランクへランクアップさせていただきます」
ギルドの受付でそんな風に言ってもらえた時の感動と言ったらなかった。
まだまだ新米なのは変わらない。
でも冒険者になったんだって実感が込み上げてきたと言うか何と言うか…兎に角胸がいっぱいになったんだ。
そんな俺に『これでまた受けられる討伐依頼も増えるな』って笑顔で言ってくれるシーファスの姿が眩しい。
「こんなにすんなり昇格できたのもシーファスのお陰だ。何か御礼がしたいんだけど、欲しいものはないか?」
俺が危なげなく昇格できたのは全部シーファスのお陰なのは間違いない。
俺だけだったらもっと時間がかかっただろうし、怪我だってしてたと思う。
だからシーファスにどうしても御礼がしたかったんだ。
俺にできる御礼なんて微々たるものだけど、気持ちだけでもできたらなって。
食事を御馳走するのでもいいけど、シーファスは元々伯爵家の嫡男だし、Aランク冒険者だから稼ぎもいい。
俺が奢れる範囲の食事なんてたかが知れてるから、それよりは出せる範囲のもので御礼の品を贈れたらなとも思った。
そんな俺にシーファスがどこかソワソワしたように伺いをかけてくる。
「コホン。その…なんでもいいのか?」
「ああ。何でも言ってくれ」
「じゃあ……その、お前の手料理が食べたい」
「え?」
「前に言ってただろう?冒険者になったら野営もするかと思って料理も勉強したのに、全然作る機会がないって」
確かにそう言えば言ったような気がする。
「だから、お前の作った料理を食べる、記念すべき第一号になりたいなって…」
ちょっと照れたようにそんなことを口にするシーファス。
その言葉に俺は嬉しい気持ちが込み上げてきて、気づけば二つ返事で頷いていた。
「わかった。じゃあ腕によりをかけて作る!」
そう言った俺にシーファスは一瞬目を丸くした後破顔した。
「そうか。楽しみにしてる」
それから二人一緒に買い物に行って食材を買い込み、シーファスの家で料理を作って振舞った。
と言っても野営で作るために習得した物ばかりだからサラダにシチュー、ソテーとかだけど。
でもソースやドレッシングとかは結構俺のこだわりが詰まってるから、口に合ったらいいなとは思ってた。
「美味い!」
そして一口食べて目を輝かせたシーファスは、次々と皿の上の料理を食べていき、綺麗に完食してくれる。
「ラインハルトは料理上手だな。メチャクチャ美味しかった。ご馳走様」
そんなイケメン顔でお礼を言われたらなんだか照れる。
こんなに喜んでもらえたなら作った甲斐もあるってもんだ。
とは言え食材費はシーファスが出してくれているから、実質あまり御礼にはなっていないんだよな。
しかもシーファスは『作ってもらったから』と言って率先して皿洗いまでしてくれようとする。
優しすぎだろう。
まさに理想的な旦那だと思う。
そんなことを考えながらボケっとしてたらシーファスがカチャカチャと皿を片付け始めてしまい、慌てて声を掛けた。
「あ!片付けはいいよ!俺がするからっ!」
「いいからいいから。作ってもらったし、これくらいはさせてくれ」
「でも…!」
そうしてキッチンの狭いスペースで自分が自分がとお互いにやり合っているうちに、気づけば顔が近づいていて、ハタと我に返ったところで見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねていた。
チュッ…。
最初はただ重なっただけのキス。
それが徐々に深さを増していく。
そして様子見のようにシーファスの舌が俺の口内へと差し入れられて、ゆっくりと舌が絡み合った。
「ん……」
初めてのシーファスとのキスは濃厚で、でも不思議と嫌ではなかった。
決して無理強いするような強引さを感じなかったからかもしれないし、ここ一か月で好感度が跳ね上がっていたと言うのも大きかったのかもしれない。
そして気づけば互いに背に腕を回しながら口づけを交わしていて────。
そのお陰で少しずつ冒険者として一人前になれた気がする。
「ラインハルト!そっちに行ったぞ!」
「よし!」
シーファスが火トカゲを俺の方へと追い込んでくれたから、俺はしっかり剣を構えた上でデバフの魔法を火トカゲへと掛け、そのままとどめを刺しに行く。
ザシュッ!
剣の腕前も最初の頃からすると段違いに上達した。
魔法の使い方もそうだ。
どっちも効率よく使って魔物を仕留めるんだとシーファスがコツを教えてくれたから早く上達できたんだと思う。
本当に有難い限りだ。
「ではラインハルトさん。この討伐を持って本日から貴方をEランクへランクアップさせていただきます」
ギルドの受付でそんな風に言ってもらえた時の感動と言ったらなかった。
まだまだ新米なのは変わらない。
でも冒険者になったんだって実感が込み上げてきたと言うか何と言うか…兎に角胸がいっぱいになったんだ。
そんな俺に『これでまた受けられる討伐依頼も増えるな』って笑顔で言ってくれるシーファスの姿が眩しい。
「こんなにすんなり昇格できたのもシーファスのお陰だ。何か御礼がしたいんだけど、欲しいものはないか?」
俺が危なげなく昇格できたのは全部シーファスのお陰なのは間違いない。
俺だけだったらもっと時間がかかっただろうし、怪我だってしてたと思う。
だからシーファスにどうしても御礼がしたかったんだ。
俺にできる御礼なんて微々たるものだけど、気持ちだけでもできたらなって。
食事を御馳走するのでもいいけど、シーファスは元々伯爵家の嫡男だし、Aランク冒険者だから稼ぎもいい。
俺が奢れる範囲の食事なんてたかが知れてるから、それよりは出せる範囲のもので御礼の品を贈れたらなとも思った。
そんな俺にシーファスがどこかソワソワしたように伺いをかけてくる。
「コホン。その…なんでもいいのか?」
「ああ。何でも言ってくれ」
「じゃあ……その、お前の手料理が食べたい」
「え?」
「前に言ってただろう?冒険者になったら野営もするかと思って料理も勉強したのに、全然作る機会がないって」
確かにそう言えば言ったような気がする。
「だから、お前の作った料理を食べる、記念すべき第一号になりたいなって…」
ちょっと照れたようにそんなことを口にするシーファス。
その言葉に俺は嬉しい気持ちが込み上げてきて、気づけば二つ返事で頷いていた。
「わかった。じゃあ腕によりをかけて作る!」
そう言った俺にシーファスは一瞬目を丸くした後破顔した。
「そうか。楽しみにしてる」
それから二人一緒に買い物に行って食材を買い込み、シーファスの家で料理を作って振舞った。
と言っても野営で作るために習得した物ばかりだからサラダにシチュー、ソテーとかだけど。
でもソースやドレッシングとかは結構俺のこだわりが詰まってるから、口に合ったらいいなとは思ってた。
「美味い!」
そして一口食べて目を輝かせたシーファスは、次々と皿の上の料理を食べていき、綺麗に完食してくれる。
「ラインハルトは料理上手だな。メチャクチャ美味しかった。ご馳走様」
そんなイケメン顔でお礼を言われたらなんだか照れる。
こんなに喜んでもらえたなら作った甲斐もあるってもんだ。
とは言え食材費はシーファスが出してくれているから、実質あまり御礼にはなっていないんだよな。
しかもシーファスは『作ってもらったから』と言って率先して皿洗いまでしてくれようとする。
優しすぎだろう。
まさに理想的な旦那だと思う。
そんなことを考えながらボケっとしてたらシーファスがカチャカチャと皿を片付け始めてしまい、慌てて声を掛けた。
「あ!片付けはいいよ!俺がするからっ!」
「いいからいいから。作ってもらったし、これくらいはさせてくれ」
「でも…!」
そうしてキッチンの狭いスペースで自分が自分がとお互いにやり合っているうちに、気づけば顔が近づいていて、ハタと我に返ったところで見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねていた。
チュッ…。
最初はただ重なっただけのキス。
それが徐々に深さを増していく。
そして様子見のようにシーファスの舌が俺の口内へと差し入れられて、ゆっくりと舌が絡み合った。
「ん……」
初めてのシーファスとのキスは濃厚で、でも不思議と嫌ではなかった。
決して無理強いするような強引さを感じなかったからかもしれないし、ここ一か月で好感度が跳ね上がっていたと言うのも大きかったのかもしれない。
そして気づけば互いに背に腕を回しながら口づけを交わしていて────。
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