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41.王からの呼び出し Side.ジルフィール家
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ジオラルドが国外追放になり、エディアスがそれについて行った。
息子二人が居なくなって、最初でこそ何かお咎めがあったらと戦々恐々としていたものの、特に城からの呼び出しもなく平穏な変わらぬ日々を送っていたある日のこと。
突然その呼び出しは訪れた。
「ジルフィール公爵に陛下直々にお尋ねしたいことがある為、すぐさま城へ来るように」
そんな言葉と共に同じ内容が書かれた手紙を受け取った。
一体今更何を言われるのかと蒼白になりながら城へと向かう。
そして問われたのは、アリスト殿下が独立宣言をした際にアリスト殿下の治めるエディール領とジルフィール公爵領が合併してしまったが、これはどういうことだとのことだった。
正直こちらとしては寝耳に水の話でしかない。
「な、何かの間違いでございます!私どもは何も聞いてはおりません!」
「聞いていないはずがなかろう?!お前の領の話だぞ?!」
「本当でございます!そもそも公爵である私が把握していないのにそのようなこと、できるはずがないではありませんか!」
必死にそう言うが、王は怒りの眼差しでこちらへと書類を投げてきた。
「宰相が私のところに持ってきた書類だ!そこにはしっかりと二つの領が合併したとなっている!」
「なっ?!そんなはずはっ…!」
慌てて書類を確認するが、そこには確かにアリスト殿下が独立を宣言した場合二つの領は合併され、公国としてジルフィール領はマーヴァインから離脱するとなっており、議会の承認も得られ手続きもすべて終えられてしまっているようだった。
「あ…あり得ません!」
こんなこと、あっていいはずがない。
そう思いながら呆然となっていたら、そこへ宰相がやってきて笑顔で辞職の旨を口にしてきた。
「陛下。元ジルフィール公爵代理とお話し中失礼いたします。一通りの引継ぎを終えましたので、私は本日をもって宰相の職を辞したいと思います。これまでお世話になりました」
「…………は?」
「どうぞお元気で」
そう言って笑顔で去っていこうとする宰相。
あり得ないだろう?!
「待て、宰相!お前がいなくなったら誰が私の側で仕事を回すのだ?!」
これには王も焦ったようで、慌てて声を掛け引き留めにかかる。
けれど言われた方はどこ吹く風だ。
「新しい宰相の選定は陛下にお任せいたします。現在の仕事につきましては細かく部下達に指示を出しておきましたので、今の状況なら問題なく仕事は回ると思います。本当にジオラルド殿には感謝しかありませんな」
「何?!ジオラルドだと?!」
「ええ。あれだけ混乱に陥っていた城内の仕事をたった一週間で上手く回るようにしてくれたのはジオラルド殿ですから」
一体何が起こっている?
ジオラルドは国外追放になったのではなかったのか?
そのジオラルドが城に来て一週間で仕事を片付けた?
そんな非現実的な話、信じられるはずがなかった。
「さ、宰相っ。ジオラルドが…ここに来たのか?」
「はい。私の一存でお呼びしました。そう言えばその際に貴方のこともお話になっておりましたね」
「ジオラルドはなんと?」
「廃嫡届を出していなかったなんて、馬鹿にもほどがあると。まあそのお陰でジオラルド殿は無事にジルフィール公爵として認められ、すぐさま有利に動けたのですがね」
「なんだと?!ジオラルドが公爵?!ジルフィール公爵は私だぞ?!勝手にそんなこと、できるはずがない!」
「どうやら何か勘違いなさっているようですね。貴方は元々公爵ではなかったのですよ?」
「……は?」
「貴方の御父上である前公爵が貴方の結婚と同時に爵位をお譲りになったのは本当ですが、その後散財が問題であるということで再度手続きを行い、公爵位をご自分へと戻した上で貴方を公爵代理にしたのです。そして、孫であるジオラルド殿が成人した暁にはその公爵位がジオラルド殿のものになるよう手筈も整えられていた。つまり、貴方が公爵代理の任にあたっている間に廃嫡届を出していなかったために貴方はチャンスを失ったということなんですよ」
それを聞いて愕然となってしまった。
(ジオラルドが…公爵?)
確かに父はジオラルドを可愛がっていた。
領の仕事を教え、金銭管理もしっかりと教え込んでいたと思う。
お陰でこちらが自由に使える金銭はなくなり、予算内で使わざるを得なくなった。
ジオラルドの後ろには常に父の目が光っていて、迂闊なことをすれば予算が削られるのは必至だった。
だからご機嫌伺いをして予算が減らされないようにしていたし、足りない分はエディアスに当てられた予算を使い込んでいた。
衣服なんて、あっという間に大きくなってサイズが変わるエディアスにつぎ込む必要なんてない。
最低限で十分だ。
教育?本でも読んで自力で勉強すればいいのだ。
わからないところはジオラルドに聞けばいい。
ジオラルドは父から高等教育を受けているから何でも知っているし、元々天才と言われるほど頭が良いから聞けばなんでも教えてもらえるだろう。
教師をわざわざ高い金を払って雇う必要なんてないのだ。
そんな風にエディアスの予算を適切に撤収し、こちらで有意義に使ってやった。
ジオラルドの件で王からお咎めもなさそうだし、これからはジオラルドが居なくなったのをこれ幸いとジルフィール家の財産を好きなように使おうと思っていたのに、まさかそれができなくなるかもしれないなんて思いもよらなかった。
でも諦めるのはまだ早い。
公爵代理ということは公爵本人であるジオラルドが自国にいない今、権限は自分にあるはずだ。
つまり、適切な書類手続きを取りさえすれば全てを自分の物にできるはず。
「い、今からでも手続きを取れば、国外追放を理由にジオラルドの公爵位は私のものにできるはずだ!」
だからそう言ったのに、返ってきた答えは無情だった。
「甘いですね。ジオラルド殿を舐め過ぎです。既に公爵代理はエディアス殿の名に変更されていますので、貴方には何の権限もないのですよ」
「そ…そんな……」
「そんなことより、早く帰らなくても良いのでしょうか?ジルフィール公爵家はもうこの国から独立するのですよ?恐らくジオラルド殿のことです。屋敷の方の使用人にも指示は出してあるでしょう」
「……っ!」
それを聞き私は慌てて陛下に辞去の意を伝え急いで屋敷へと戻ったのだが、全ては宰相の言うように遅かった。
「そんな馬鹿な……」
屋敷の中は自分と妻の私物が残されているのみ。
使用人達の姿はどこにもなかった。
「りょ、領地に…領地に行かなければ…」
ふらふらとそう言った私にどこかに隠れていたであろう妻が飛んできて、縋りついてくる。
「貴方!使用人達の反乱ですわ!皆貴方が城に呼び出された後、凄い勢いで屋敷中の物を纏めてどこかへと運び去ったんです!必死に止めようとしたのですが、私を自室に閉じ込めて全部運び出してしまったんです!」
幸い自分達の私物はあるため当面の生活に困ることはないが、料理人もメイドも誰一人いなくなってしまった屋敷に住み続けられるとは思えない。
「取り敢えず金目の物は持って、領地に行こう。そこにきっとエディアスがいるはずだ」
公爵代理になったのなら、ジオラルドがいない今、エディアスに全ての権限がある。
いくらなんでも親である自分達を追い返したりはしないだろうし、当然養ってもくれるはず。
なんだったら丸め込むのもジオラルドを説得するより簡単だろうし、慌てることもない…はずだ。
そう思いながら領地に向かったものの、そこにエディアスの姿はなく、なんとアリスト殿下と結婚して幸せに暮らしていると聞かされた。
「馬鹿な!マーヴァインは同性婚の制度などないのだぞ?!」
「現在ここは合併、独立したことでエディール公国となっております。エディール公国内では同性婚は認められているので何も問題はございません」
淡々と語ってくる領地の屋敷にいる家令に腹を立て、黙れとばかりにわからせてやろうとしたのだが、それはあっさりと避けられてしまった。
「誰ぞ!この暴漢を取り押さえろ!」
そしてあっという間に拘束されて、私と妻は衛兵に連行されて牢へと入れられてしまう。
「離せ!私を誰だと思っている!ジルフィール公爵家の当主だぞ!」
「残念ですがジルフィール家の当主はジオラルド様でございます。またエディアス様はエディール家の養子に入られておりますので、貴方方とは既に赤の他人でございます。ジオラルド様からは貴方方が罪を犯した場合は罰してくれて構わないとも許可を頂いておりますので、領地の法に照らし合わせて罰則を科させていただきます」
冷ややかにそんな言葉を告げられ、当主の名を語った詐欺罪と、屋敷の者に暴力をふるおうとした暴行未遂罪で300万の罰金刑を食らってしまった。
いくらなんでも高すぎると食って掛かったら、これでも安いくらいだと言われてしまった。
払えないなら強制労働をしてでも働いて払ってもらうと脅され、渋々持っていた宝石で支払いを済ませることに。
「くそぉっ…!」
ジオラルドができた息子だとわかっていたが、ここまで優秀過ぎると逆に悔しくて仕方がなかった。
どれだけ親を馬鹿にすれば気が済むのだ。
「ジオラルドが王太子殿下程扱いやすい馬鹿であればよかったものを…!」
だからそう言っただけだったのに、どこで誰が聞いていたのかは知らないが『他国(この場合マーヴァイン王国のこと)の王太子を悪しざまに言う輩は百害あって一利なしだから公国には置いておけない』として、領地から追い出されてしまった。
今後一切エディール公国に私達夫婦は入国できないらしい。
「ふざけるな!」
そう言っていくら騒いでも、国境だと言って配置された兵は動じなかった。
実力行使も辞さない考えだと言われ、渋々引き下がらざるを得なくなってしまい途方に暮れる。
「貴方のせいよ!」
「お前だって同意していただろう?!」
仲の良かった妻との仲も険悪になるし散々だ。
こうなったらアリスト殿下とエディアスに直談判をしに行くしかない。
旧ジルフィール公爵領側からではなく、旧エディール公爵領の方から入国しよう。
そうすれば話くらいはできるだろうし、若い二人を祝福しているふりでもすれば歓迎はしてもらえるはず。
同性婚なんて子供もできないのだし、逆に資産は自分達で使い放題だ。
上手く二人に取り入ることさえできれば豪遊することだって夢ではない。
これまで育てた親にしっかり孝行するよう、エディアスに言うとしよう。
「よし。善は急げだ!」
こうしてその考えを妻へと話し和解したところで、二人でエディアス達がいるはずの場所へと向かったのだった。
息子二人が居なくなって、最初でこそ何かお咎めがあったらと戦々恐々としていたものの、特に城からの呼び出しもなく平穏な変わらぬ日々を送っていたある日のこと。
突然その呼び出しは訪れた。
「ジルフィール公爵に陛下直々にお尋ねしたいことがある為、すぐさま城へ来るように」
そんな言葉と共に同じ内容が書かれた手紙を受け取った。
一体今更何を言われるのかと蒼白になりながら城へと向かう。
そして問われたのは、アリスト殿下が独立宣言をした際にアリスト殿下の治めるエディール領とジルフィール公爵領が合併してしまったが、これはどういうことだとのことだった。
正直こちらとしては寝耳に水の話でしかない。
「な、何かの間違いでございます!私どもは何も聞いてはおりません!」
「聞いていないはずがなかろう?!お前の領の話だぞ?!」
「本当でございます!そもそも公爵である私が把握していないのにそのようなこと、できるはずがないではありませんか!」
必死にそう言うが、王は怒りの眼差しでこちらへと書類を投げてきた。
「宰相が私のところに持ってきた書類だ!そこにはしっかりと二つの領が合併したとなっている!」
「なっ?!そんなはずはっ…!」
慌てて書類を確認するが、そこには確かにアリスト殿下が独立を宣言した場合二つの領は合併され、公国としてジルフィール領はマーヴァインから離脱するとなっており、議会の承認も得られ手続きもすべて終えられてしまっているようだった。
「あ…あり得ません!」
こんなこと、あっていいはずがない。
そう思いながら呆然となっていたら、そこへ宰相がやってきて笑顔で辞職の旨を口にしてきた。
「陛下。元ジルフィール公爵代理とお話し中失礼いたします。一通りの引継ぎを終えましたので、私は本日をもって宰相の職を辞したいと思います。これまでお世話になりました」
「…………は?」
「どうぞお元気で」
そう言って笑顔で去っていこうとする宰相。
あり得ないだろう?!
「待て、宰相!お前がいなくなったら誰が私の側で仕事を回すのだ?!」
これには王も焦ったようで、慌てて声を掛け引き留めにかかる。
けれど言われた方はどこ吹く風だ。
「新しい宰相の選定は陛下にお任せいたします。現在の仕事につきましては細かく部下達に指示を出しておきましたので、今の状況なら問題なく仕事は回ると思います。本当にジオラルド殿には感謝しかありませんな」
「何?!ジオラルドだと?!」
「ええ。あれだけ混乱に陥っていた城内の仕事をたった一週間で上手く回るようにしてくれたのはジオラルド殿ですから」
一体何が起こっている?
ジオラルドは国外追放になったのではなかったのか?
そのジオラルドが城に来て一週間で仕事を片付けた?
そんな非現実的な話、信じられるはずがなかった。
「さ、宰相っ。ジオラルドが…ここに来たのか?」
「はい。私の一存でお呼びしました。そう言えばその際に貴方のこともお話になっておりましたね」
「ジオラルドはなんと?」
「廃嫡届を出していなかったなんて、馬鹿にもほどがあると。まあそのお陰でジオラルド殿は無事にジルフィール公爵として認められ、すぐさま有利に動けたのですがね」
「なんだと?!ジオラルドが公爵?!ジルフィール公爵は私だぞ?!勝手にそんなこと、できるはずがない!」
「どうやら何か勘違いなさっているようですね。貴方は元々公爵ではなかったのですよ?」
「……は?」
「貴方の御父上である前公爵が貴方の結婚と同時に爵位をお譲りになったのは本当ですが、その後散財が問題であるということで再度手続きを行い、公爵位をご自分へと戻した上で貴方を公爵代理にしたのです。そして、孫であるジオラルド殿が成人した暁にはその公爵位がジオラルド殿のものになるよう手筈も整えられていた。つまり、貴方が公爵代理の任にあたっている間に廃嫡届を出していなかったために貴方はチャンスを失ったということなんですよ」
それを聞いて愕然となってしまった。
(ジオラルドが…公爵?)
確かに父はジオラルドを可愛がっていた。
領の仕事を教え、金銭管理もしっかりと教え込んでいたと思う。
お陰でこちらが自由に使える金銭はなくなり、予算内で使わざるを得なくなった。
ジオラルドの後ろには常に父の目が光っていて、迂闊なことをすれば予算が削られるのは必至だった。
だからご機嫌伺いをして予算が減らされないようにしていたし、足りない分はエディアスに当てられた予算を使い込んでいた。
衣服なんて、あっという間に大きくなってサイズが変わるエディアスにつぎ込む必要なんてない。
最低限で十分だ。
教育?本でも読んで自力で勉強すればいいのだ。
わからないところはジオラルドに聞けばいい。
ジオラルドは父から高等教育を受けているから何でも知っているし、元々天才と言われるほど頭が良いから聞けばなんでも教えてもらえるだろう。
教師をわざわざ高い金を払って雇う必要なんてないのだ。
そんな風にエディアスの予算を適切に撤収し、こちらで有意義に使ってやった。
ジオラルドの件で王からお咎めもなさそうだし、これからはジオラルドが居なくなったのをこれ幸いとジルフィール家の財産を好きなように使おうと思っていたのに、まさかそれができなくなるかもしれないなんて思いもよらなかった。
でも諦めるのはまだ早い。
公爵代理ということは公爵本人であるジオラルドが自国にいない今、権限は自分にあるはずだ。
つまり、適切な書類手続きを取りさえすれば全てを自分の物にできるはず。
「い、今からでも手続きを取れば、国外追放を理由にジオラルドの公爵位は私のものにできるはずだ!」
だからそう言ったのに、返ってきた答えは無情だった。
「甘いですね。ジオラルド殿を舐め過ぎです。既に公爵代理はエディアス殿の名に変更されていますので、貴方には何の権限もないのですよ」
「そ…そんな……」
「そんなことより、早く帰らなくても良いのでしょうか?ジルフィール公爵家はもうこの国から独立するのですよ?恐らくジオラルド殿のことです。屋敷の方の使用人にも指示は出してあるでしょう」
「……っ!」
それを聞き私は慌てて陛下に辞去の意を伝え急いで屋敷へと戻ったのだが、全ては宰相の言うように遅かった。
「そんな馬鹿な……」
屋敷の中は自分と妻の私物が残されているのみ。
使用人達の姿はどこにもなかった。
「りょ、領地に…領地に行かなければ…」
ふらふらとそう言った私にどこかに隠れていたであろう妻が飛んできて、縋りついてくる。
「貴方!使用人達の反乱ですわ!皆貴方が城に呼び出された後、凄い勢いで屋敷中の物を纏めてどこかへと運び去ったんです!必死に止めようとしたのですが、私を自室に閉じ込めて全部運び出してしまったんです!」
幸い自分達の私物はあるため当面の生活に困ることはないが、料理人もメイドも誰一人いなくなってしまった屋敷に住み続けられるとは思えない。
「取り敢えず金目の物は持って、領地に行こう。そこにきっとエディアスがいるはずだ」
公爵代理になったのなら、ジオラルドがいない今、エディアスに全ての権限がある。
いくらなんでも親である自分達を追い返したりはしないだろうし、当然養ってもくれるはず。
なんだったら丸め込むのもジオラルドを説得するより簡単だろうし、慌てることもない…はずだ。
そう思いながら領地に向かったものの、そこにエディアスの姿はなく、なんとアリスト殿下と結婚して幸せに暮らしていると聞かされた。
「馬鹿な!マーヴァインは同性婚の制度などないのだぞ?!」
「現在ここは合併、独立したことでエディール公国となっております。エディール公国内では同性婚は認められているので何も問題はございません」
淡々と語ってくる領地の屋敷にいる家令に腹を立て、黙れとばかりにわからせてやろうとしたのだが、それはあっさりと避けられてしまった。
「誰ぞ!この暴漢を取り押さえろ!」
そしてあっという間に拘束されて、私と妻は衛兵に連行されて牢へと入れられてしまう。
「離せ!私を誰だと思っている!ジルフィール公爵家の当主だぞ!」
「残念ですがジルフィール家の当主はジオラルド様でございます。またエディアス様はエディール家の養子に入られておりますので、貴方方とは既に赤の他人でございます。ジオラルド様からは貴方方が罪を犯した場合は罰してくれて構わないとも許可を頂いておりますので、領地の法に照らし合わせて罰則を科させていただきます」
冷ややかにそんな言葉を告げられ、当主の名を語った詐欺罪と、屋敷の者に暴力をふるおうとした暴行未遂罪で300万の罰金刑を食らってしまった。
いくらなんでも高すぎると食って掛かったら、これでも安いくらいだと言われてしまった。
払えないなら強制労働をしてでも働いて払ってもらうと脅され、渋々持っていた宝石で支払いを済ませることに。
「くそぉっ…!」
ジオラルドができた息子だとわかっていたが、ここまで優秀過ぎると逆に悔しくて仕方がなかった。
どれだけ親を馬鹿にすれば気が済むのだ。
「ジオラルドが王太子殿下程扱いやすい馬鹿であればよかったものを…!」
だからそう言っただけだったのに、どこで誰が聞いていたのかは知らないが『他国(この場合マーヴァイン王国のこと)の王太子を悪しざまに言う輩は百害あって一利なしだから公国には置いておけない』として、領地から追い出されてしまった。
今後一切エディール公国に私達夫婦は入国できないらしい。
「ふざけるな!」
そう言っていくら騒いでも、国境だと言って配置された兵は動じなかった。
実力行使も辞さない考えだと言われ、渋々引き下がらざるを得なくなってしまい途方に暮れる。
「貴方のせいよ!」
「お前だって同意していただろう?!」
仲の良かった妻との仲も険悪になるし散々だ。
こうなったらアリスト殿下とエディアスに直談判をしに行くしかない。
旧ジルフィール公爵領側からではなく、旧エディール公爵領の方から入国しよう。
そうすれば話くらいはできるだろうし、若い二人を祝福しているふりでもすれば歓迎はしてもらえるはず。
同性婚なんて子供もできないのだし、逆に資産は自分達で使い放題だ。
上手く二人に取り入ることさえできれば豪遊することだって夢ではない。
これまで育てた親にしっかり孝行するよう、エディアスに言うとしよう。
「よし。善は急げだ!」
こうしてその考えを妻へと話し和解したところで、二人でエディアス達がいるはずの場所へと向かったのだった。
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