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40.突然の展開
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サザナードから戻ってから急遽俺達は今後どうすべきかを話し合うことにした。
この際あちらの方の問題はクリストファー王子と兄に任せたら大丈夫だろう。
問題はこちらの国のことだ。
「父がエディアスが城に来るのだと思い込んでいるのなら兄の補佐を新たに置かない可能性が出てきたな」
「そうなると王太子の仕事が完全に回らなくなるよな?」
「ああ。でもそこは宰相が多分手を打ってくれるはずだし、会った時にでも話してみよう」
「そうだな。後は今のところ可能性は低いけど、兄がこっちの城に万が一送ってこられた時の問題か」
「それは大丈夫だろう。そもそもクリストファー王子がそれを許すとは思えない。来るとしたら何らかの作戦でわざと来るとかだ。特に現時点で気にする必要はないだろう」
「それもそうか。じゃあ…」
そうやって考えられる問題を予めしっかり話し合ってから俺達は兄から預かった手紙を手に城へと向かうことに。
「宰相」
「……!アリスト殿下。エディアス殿。無事に手紙が届いたようで何よりです」
「一先ずこれを。兄から預かってきました」
「ジオラルド殿から?」
そして宰相は迷うことなくその手紙の封を切った。
「これは……」
何が書かれてあったのかはわからないけど、宰相はそれを何度も読み返してから一つ頷き、アリストへと目を向ける。
「アリスト殿下。サザナード側はクリストファー王子にお任せしても大丈夫そうなので、我が国のことを片付けましょう。つきましてはまずはエディアス殿とご一緒に王への謁見をお願いできますでしょうか?」
兄からの指示で宰相はまずは王の思い込みを正すところから始めようと考えたらしい。
その際に宰相の部下も立ち会わせるとのこと。
それからアリストにも手紙を見せて何やら打ち合わせをしていた。
その後俺達は取り敢えず謁見申請待ちの間アリストの部屋で待つことにして、お茶を飲んで落ち着くことに。
「兄上の方は大丈夫かな」
「ジオラルドなら大丈夫だろう。クリストファー王子は絶対に手放す気はないだろうし、問題はない」
最悪王位を奪ってでも阻止するはずだとアリストが言うから、流石にそこまではしないんじゃないかと苦笑してしまった。
サザナードの国王はまだまだ現役の43才。
在位はざっくり18年ほどだっただろうか?
クリストファー王子が王位を継ぐならあと数年は先のはずだ。
今は地盤を整えるべき時期だし、無茶なことはしないはず。
ちなみにマーヴァイン王は現在52才。
そろそろ引退間近と言っても過言ではない。
だからこそ王太子にはしっかり仕事をしてもらいたいところではあるのだけど、あの分だと難しいだろう。
それこそ兄が傍で支え、アリストと俺がサポートに回っていたらなんとか王位に就いてもやっていけたとは思うけど、今となっては……。
そしてそれから暫くして謁見の間へと呼び出しを受けた。
顔を合わせた第一声は『エディアス。先日は見事な働き大儀であった』だった。
(それ、俺じゃないし!)
思い切り勘違いしている王に俺はどう言えばいいんだろう?
そう思ったところでアリストが厳かに言葉を紡いだ。
「陛下。我が妻をお褒め頂きありがとうございます」
その言葉に驚いたのは王だけじゃなかった。
俺もだ。
まさかこんな場でアリストがそんなことを口にするなんて思ってもみなかったから。
「……アリスト?今、我が妻と聞こえた気がするが?」
「はい。エディアスは既に私の籍にしっかりと入っておりますので。現在公爵領にて仲睦まじく暮らしております」
にこやかに話される事実。
けれど王はそれを聞いて首を傾げた。
「何を言っている。エディアスはクリストファー王子に見初められて隣国サザナードに住んでおるのだろう?国王夫妻から親書が届けられたのだぞ?」
「いいえ。エディアスは私の妻として暮らしておりますので、そちらは別人と存じます」
さっさと気づけよと言わんばかりの圧がアリストから放たれる。
臣籍降下しているためあくまでも下手に出てはいるが、アリストも兄やクリストファー王子に負けず劣らず怒っているのかもしれない。
「で、ではサザナードにいるジルフィール公子とは一体誰なのだ?まさかとは思うが…」
「そのまさかです。私がクリストファー王子にジオラルドを紹介いたしましたので」
「なっ?!」
「ジオラルドもその能力をサザナードで思う存分振るえると喜んでおりました」
その言葉に王がブルブルと身を震わせる。
どうやら怒り心頭のようだ。
「ジオラルドは国外追放になった身。こちらに戻すことなどできないでしょう。ここは静観が妥当と考えます」
「む…。ではアリスト!やはりお前がオーフェンの補佐につけ!」
「お断りいたします。今の私は新米公爵です。学生生活を送りながら領の端々に目をやり勉強をする日々。忙しくてとても責任ある兄の補佐などできそうにありません」
「…………」
「学園生活はあと二年ありますし、その間に領地の方も何とかできればと思います」
うん。百点満点の回答だな。
流石アリスト。
そしてそんなアリストを満足げに見遣るのは宰相と、宰相の部下という人。
なんだか値踏みするようにアリストを見ている気がするけど気のせいかな?
そんなどこかピリピリした空気が流れる中、問題のあの人が空気も読まずに突撃してきた。
「父上!アリストが来ているというのは本当ですか?!」
「オーフェン!」
「ああ、本当に居た。お前向けの仕事がちょうど山程溜まっているんだ!城に来たついでに片付けていけ!この後すぐに執務室までくるんだぞ?いいな!」
そう言うだけ言って去っていこうとするオーフェン王太子。
そうやってこっちが引き受けるのが当たり前みたいに思わないで欲しい。
そう思ったから呼び止めた。
「お言葉ですが王太子殿下。アリストは臣籍降下した身。申し訳ありませんが王太子殿下のお仕事を代わりにというのは難しいかと」
「そんなことは関係ない。賢しい口を叩くな!アリストは俺の弟であることに変わりはない。弟とは兄のフォローをすべき存在だ。黙って頼まれたことをやればいいんだ!」
「いいえ。責務とは立場によって与えられるもの。アリストは現在自領の公爵としての仕事と学生の本分である学業で忙しくしておりますので、どうぞご容赦を」
「ハッ!そんなもの、王太子の仕事と比べるべくもなく軽いものだろう?こちらを優先してしかるべきだ!」
その言葉にアリストが苦い物を噛んだような顔になる。
これまで散々この人に振り回されてきたからこそ、何を言っても無駄と思ってしまうんだろう。
でも俺はあの兄に散々鍛えられてきたから、言うべき時はちゃんと言うんだぞ?
「では王太子殿下。貴方の責務はどこにあるのでしょう?貴方は今確かに『王太子の仕事』と仰られました。それをアリストに任せようとなさったのではないのですか?王太子は貴方でしょう?」
「そうだ」
「貴方は己の仕事を把握し、アリスト以上に仕事をこなしていると胸を張って言えるのですか?」
「もちろんだ!」
「ではその内容を今ここで語ってください」
さあどうぞと笑顔で促す。
「それは……あれだ!ええと…なんだったか。難しい内容だからお前に言っても恐らく無駄だろう」
察しろと言わんばかりに取り繕うが、そんなことをしても無駄だ。
「……言えるはずがありませんよね?貴方は全く何一つとして仕事の内容を把握していないのですから」
その言葉に場の空気がぴしりと固まるのを感じたが、俺の口は止まらない。
「兄は貴方と同じでいつも偉そうですが、己の仕事内容はすべて把握しています。その上で常人には理解できない破天荒な策を考えて動くから面倒なのです。でも最後までやればそれがベストだったと誰もが納得する、誰にも文句を言わせない結果を残すそんな人です。貴方はどうですか?質問に全部的確な答えを返せますか?反論された際に論破できるだけの知識を持ち合わせていますか?悔しいほどに正論で突破していく兄のように、仕事をこなせるんでしょうか?もしそうだと言うのなら、一つでもいいのでそれをこの場で示してください。その説明に説得力があるなら誰もが貴方を次期王だと認め、ついていこうと思うでしょう」
サラリと告げたその言葉に王太子は屈辱にまみれた表情で真っ赤になって怒り狂う。
「このっ…口ばかり賢しい奴め!!お前もあのジオラルドと同じだ!あいつ同様国外追放にしてやる!今すぐ、この国から出ていけ!!」
そして俺へと魔力をぶつけてこようとしたところでアリストの結界がそれを阻んだ。
「兄上。俺の大切なエディアスに手を出すなんて許しませんよ?」
「アリスト!貴様、兄である俺に逆らうのか?!」
「俺は兄である貴方より、伴侶であるエディアスを大事に思っていますので」
「~~~~っ!!なんてふざけた弟だ!大体男を伴侶になどできるはずがないだろう?どこまでお前は馬鹿なんだ!もういい!お前など金輪際弟など認めん!二度と俺の前に姿を現すな!」
その言葉にアリストがニコリと笑みを浮かべる。
「お言葉のままに」
そしてアリストはそのまま王へと向き合い、何故か明後日の方向の言葉を紡いだ。
「これより我がエディール公爵領とジルフィール公爵領は手を取り合い、独立を宣言いたします」
「…………は?」
王が何を言われたのかわからないといった表情を見せるが、何故かその場にいた宰相はじめ大臣達は異議を唱えることなく恭順の意を示した。
「こうなっては仕方がありませんな。アリスト殿下。では急ぎ議会を招集し手はずの方を整えさせていただきます」
「宰相?!」
「では私は一足先に補佐へと回らせていただきます」
宰相の部下の人も恭しくそんなことを言ってくる。
これは一体何が起こっているんだろうか?
そして何がなんだかよくわからぬままに、アリストの公爵領と俺の実家であるジルフィール公爵領は合併して、公国として独立が決まった────らしい。
この際あちらの方の問題はクリストファー王子と兄に任せたら大丈夫だろう。
問題はこちらの国のことだ。
「父がエディアスが城に来るのだと思い込んでいるのなら兄の補佐を新たに置かない可能性が出てきたな」
「そうなると王太子の仕事が完全に回らなくなるよな?」
「ああ。でもそこは宰相が多分手を打ってくれるはずだし、会った時にでも話してみよう」
「そうだな。後は今のところ可能性は低いけど、兄がこっちの城に万が一送ってこられた時の問題か」
「それは大丈夫だろう。そもそもクリストファー王子がそれを許すとは思えない。来るとしたら何らかの作戦でわざと来るとかだ。特に現時点で気にする必要はないだろう」
「それもそうか。じゃあ…」
そうやって考えられる問題を予めしっかり話し合ってから俺達は兄から預かった手紙を手に城へと向かうことに。
「宰相」
「……!アリスト殿下。エディアス殿。無事に手紙が届いたようで何よりです」
「一先ずこれを。兄から預かってきました」
「ジオラルド殿から?」
そして宰相は迷うことなくその手紙の封を切った。
「これは……」
何が書かれてあったのかはわからないけど、宰相はそれを何度も読み返してから一つ頷き、アリストへと目を向ける。
「アリスト殿下。サザナード側はクリストファー王子にお任せしても大丈夫そうなので、我が国のことを片付けましょう。つきましてはまずはエディアス殿とご一緒に王への謁見をお願いできますでしょうか?」
兄からの指示で宰相はまずは王の思い込みを正すところから始めようと考えたらしい。
その際に宰相の部下も立ち会わせるとのこと。
それからアリストにも手紙を見せて何やら打ち合わせをしていた。
その後俺達は取り敢えず謁見申請待ちの間アリストの部屋で待つことにして、お茶を飲んで落ち着くことに。
「兄上の方は大丈夫かな」
「ジオラルドなら大丈夫だろう。クリストファー王子は絶対に手放す気はないだろうし、問題はない」
最悪王位を奪ってでも阻止するはずだとアリストが言うから、流石にそこまではしないんじゃないかと苦笑してしまった。
サザナードの国王はまだまだ現役の43才。
在位はざっくり18年ほどだっただろうか?
クリストファー王子が王位を継ぐならあと数年は先のはずだ。
今は地盤を整えるべき時期だし、無茶なことはしないはず。
ちなみにマーヴァイン王は現在52才。
そろそろ引退間近と言っても過言ではない。
だからこそ王太子にはしっかり仕事をしてもらいたいところではあるのだけど、あの分だと難しいだろう。
それこそ兄が傍で支え、アリストと俺がサポートに回っていたらなんとか王位に就いてもやっていけたとは思うけど、今となっては……。
そしてそれから暫くして謁見の間へと呼び出しを受けた。
顔を合わせた第一声は『エディアス。先日は見事な働き大儀であった』だった。
(それ、俺じゃないし!)
思い切り勘違いしている王に俺はどう言えばいいんだろう?
そう思ったところでアリストが厳かに言葉を紡いだ。
「陛下。我が妻をお褒め頂きありがとうございます」
その言葉に驚いたのは王だけじゃなかった。
俺もだ。
まさかこんな場でアリストがそんなことを口にするなんて思ってもみなかったから。
「……アリスト?今、我が妻と聞こえた気がするが?」
「はい。エディアスは既に私の籍にしっかりと入っておりますので。現在公爵領にて仲睦まじく暮らしております」
にこやかに話される事実。
けれど王はそれを聞いて首を傾げた。
「何を言っている。エディアスはクリストファー王子に見初められて隣国サザナードに住んでおるのだろう?国王夫妻から親書が届けられたのだぞ?」
「いいえ。エディアスは私の妻として暮らしておりますので、そちらは別人と存じます」
さっさと気づけよと言わんばかりの圧がアリストから放たれる。
臣籍降下しているためあくまでも下手に出てはいるが、アリストも兄やクリストファー王子に負けず劣らず怒っているのかもしれない。
「で、ではサザナードにいるジルフィール公子とは一体誰なのだ?まさかとは思うが…」
「そのまさかです。私がクリストファー王子にジオラルドを紹介いたしましたので」
「なっ?!」
「ジオラルドもその能力をサザナードで思う存分振るえると喜んでおりました」
その言葉に王がブルブルと身を震わせる。
どうやら怒り心頭のようだ。
「ジオラルドは国外追放になった身。こちらに戻すことなどできないでしょう。ここは静観が妥当と考えます」
「む…。ではアリスト!やはりお前がオーフェンの補佐につけ!」
「お断りいたします。今の私は新米公爵です。学生生活を送りながら領の端々に目をやり勉強をする日々。忙しくてとても責任ある兄の補佐などできそうにありません」
「…………」
「学園生活はあと二年ありますし、その間に領地の方も何とかできればと思います」
うん。百点満点の回答だな。
流石アリスト。
そしてそんなアリストを満足げに見遣るのは宰相と、宰相の部下という人。
なんだか値踏みするようにアリストを見ている気がするけど気のせいかな?
そんなどこかピリピリした空気が流れる中、問題のあの人が空気も読まずに突撃してきた。
「父上!アリストが来ているというのは本当ですか?!」
「オーフェン!」
「ああ、本当に居た。お前向けの仕事がちょうど山程溜まっているんだ!城に来たついでに片付けていけ!この後すぐに執務室までくるんだぞ?いいな!」
そう言うだけ言って去っていこうとするオーフェン王太子。
そうやってこっちが引き受けるのが当たり前みたいに思わないで欲しい。
そう思ったから呼び止めた。
「お言葉ですが王太子殿下。アリストは臣籍降下した身。申し訳ありませんが王太子殿下のお仕事を代わりにというのは難しいかと」
「そんなことは関係ない。賢しい口を叩くな!アリストは俺の弟であることに変わりはない。弟とは兄のフォローをすべき存在だ。黙って頼まれたことをやればいいんだ!」
「いいえ。責務とは立場によって与えられるもの。アリストは現在自領の公爵としての仕事と学生の本分である学業で忙しくしておりますので、どうぞご容赦を」
「ハッ!そんなもの、王太子の仕事と比べるべくもなく軽いものだろう?こちらを優先してしかるべきだ!」
その言葉にアリストが苦い物を噛んだような顔になる。
これまで散々この人に振り回されてきたからこそ、何を言っても無駄と思ってしまうんだろう。
でも俺はあの兄に散々鍛えられてきたから、言うべき時はちゃんと言うんだぞ?
「では王太子殿下。貴方の責務はどこにあるのでしょう?貴方は今確かに『王太子の仕事』と仰られました。それをアリストに任せようとなさったのではないのですか?王太子は貴方でしょう?」
「そうだ」
「貴方は己の仕事を把握し、アリスト以上に仕事をこなしていると胸を張って言えるのですか?」
「もちろんだ!」
「ではその内容を今ここで語ってください」
さあどうぞと笑顔で促す。
「それは……あれだ!ええと…なんだったか。難しい内容だからお前に言っても恐らく無駄だろう」
察しろと言わんばかりに取り繕うが、そんなことをしても無駄だ。
「……言えるはずがありませんよね?貴方は全く何一つとして仕事の内容を把握していないのですから」
その言葉に場の空気がぴしりと固まるのを感じたが、俺の口は止まらない。
「兄は貴方と同じでいつも偉そうですが、己の仕事内容はすべて把握しています。その上で常人には理解できない破天荒な策を考えて動くから面倒なのです。でも最後までやればそれがベストだったと誰もが納得する、誰にも文句を言わせない結果を残すそんな人です。貴方はどうですか?質問に全部的確な答えを返せますか?反論された際に論破できるだけの知識を持ち合わせていますか?悔しいほどに正論で突破していく兄のように、仕事をこなせるんでしょうか?もしそうだと言うのなら、一つでもいいのでそれをこの場で示してください。その説明に説得力があるなら誰もが貴方を次期王だと認め、ついていこうと思うでしょう」
サラリと告げたその言葉に王太子は屈辱にまみれた表情で真っ赤になって怒り狂う。
「このっ…口ばかり賢しい奴め!!お前もあのジオラルドと同じだ!あいつ同様国外追放にしてやる!今すぐ、この国から出ていけ!!」
そして俺へと魔力をぶつけてこようとしたところでアリストの結界がそれを阻んだ。
「兄上。俺の大切なエディアスに手を出すなんて許しませんよ?」
「アリスト!貴様、兄である俺に逆らうのか?!」
「俺は兄である貴方より、伴侶であるエディアスを大事に思っていますので」
「~~~~っ!!なんてふざけた弟だ!大体男を伴侶になどできるはずがないだろう?どこまでお前は馬鹿なんだ!もういい!お前など金輪際弟など認めん!二度と俺の前に姿を現すな!」
その言葉にアリストがニコリと笑みを浮かべる。
「お言葉のままに」
そしてアリストはそのまま王へと向き合い、何故か明後日の方向の言葉を紡いだ。
「これより我がエディール公爵領とジルフィール公爵領は手を取り合い、独立を宣言いたします」
「…………は?」
王が何を言われたのかわからないといった表情を見せるが、何故かその場にいた宰相はじめ大臣達は異議を唱えることなく恭順の意を示した。
「こうなっては仕方がありませんな。アリスト殿下。では急ぎ議会を招集し手はずの方を整えさせていただきます」
「宰相?!」
「では私は一足先に補佐へと回らせていただきます」
宰相の部下の人も恭しくそんなことを言ってくる。
これは一体何が起こっているんだろうか?
そして何がなんだかよくわからぬままに、アリストの公爵領と俺の実家であるジルフィール公爵領は合併して、公国として独立が決まった────らしい。
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