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28.ガストン=ポルテの狂気 Side.バンの父
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家出を知った直後から伯爵家の力を使いオーバンの足取りを追った。
無一文で家を飛び出したオーバン。
当初はどこか住み込みの職を得たのかもと探し回ったが見つからなかった。
ならばその容姿に目をつけた輩に囲われたのかと、裏に手を回して探らせたがそこでも見つからなかった。
だから商人にでも頼んで馬車で移動したのかもしれないと少しずつ捜索の範囲を広げた。
それでもオーバンは見つからなかった。
だがここに来て手掛かりを掴んだ。
軍関係で、オーバンが無一文で三年過ごせたとしたらそれは学校に違いない。
加えてクレール=オルフィンと繋がりがあるとするならまず間違いないはず。
そう考えて魔法飛空士学校を探らせたが、オーバンという者はいなかった。
軍へ問い合わせたが答えは同じ。
オーバン=ポルテなる者はいないとのこと。
(どういうことだ?)
そう思い何度も確認を頼んだが答えは同じ。
第一部隊以外の部隊にも確認をしてほしいとも伝え、似た容姿の者はいないかと事細かにオーバンの容姿を伝えるが、全く取り合ってはもらえず門前払い。
絶対にここに居るはずなのに隠そうとするなんて、なんて奴らだ!
「早く迎えに行って、毒を盛るような怖い女はもういないから安心して帰ってこいと伝えてやらねばならんのに…!」
もしかしてオーバンは軍に囲われて酷い目にあわされているんじゃないだろうか?
名前も…そうだ、偽名を使っている可能性がある。
そう思い、まだガードが緩い魔法飛空士学校の方から当たってみることに。
すると『バン=ルーテ』という者の名が挙がってきた。
人を複数人介し、伯爵家が裏にいると思われないようにさり気なく探りを入れさせたのが功を奏した形だ。
本名に限りなく近い響き。間違いない。オーバンだ!
けれどここで軍に問い合わせてもきっと会わせてもらうことはできないのだろう。
それくらいこれまでの対応からして丸わかりだ。
だとしたらどうすればいいか。
『オーバン=ポルテという者はいない』そう言ったのは軍の方だ。
それを逆手に取る。
「バン=ルーテという者を軍の中から攫ってきてほしい。彼は私の息子なんだ。年は18。とても可愛くて小柄な子だからすぐにわかると思う」
そういう事に長けた者へと依頼を行う。
手段は選ばなくていい。
ただ顔や身体に絶対に傷をつけるなということと、絶対に殺すなという指示は出しておいた。
そして彼らは笑顔で依頼を請け負い、すぐさま話を進めた。
物資納入業者の買収。
魔法航空士学校の生徒の懐柔。
借金持ちの魔法飛空士との交渉代金。
軍の中に入れる者など限られている。
だから彼らに言われるがまま必要なだけ金は出した。
この三つから仕掛ければ、どこかから必ず活路は開けるはずとの事。
受け渡しは請負人が行い、屋敷へと連れてきてもらえる算段となっている。
これでオーバンがこの手に戻ったならこちらのものだ。
取り返した瞬間バン=ルーテは消え、伯爵家のオーバンへと戻る。
軍関係者がいくら言ってこようとこちらは『バン=ルーテなど知らない』で通せば済む話。
オーバンの籍は伯爵家にあるのだ。
そこまで持ち込めたら奴らに打つ手などない。
そして私はオーバンが帰ってくる日を待ちに待った。
逃げたり逆らう気がなくなるよう、頭がぼんやりする香やクスリを用意し、ベッドに繋ぐ鎖も拘束する縄も用意した。
成長した身を彩りつつ、その白い肌が映えるようにデザインさせた夜の装いも準備したし、私のものを飲み込む際に傷がつかないよう後ろに使う最高級の香油も購入しておいた。
準備は万全。
後は愛しいオーバンを新居へと迎えるだけだ。
「アラン。伯爵位は今日を限りにお前に譲る。私はオーバンと例の屋敷で暮らすから、そちらには来ないようにな」
「…………わかりました」
アランは全く可愛くもなんともない息子だが、残しておいてよかった。
そのお陰でスムーズに伯爵位を譲ることができたし、オーバンとの時間を仕事に煩わされずに済むようになったのだ。
「ああ、オーバン。早く帰っておいで。私の小鳥」
夢見心地で用意しておいた書類にサインを入れ、後は全てアランに任せて部屋を出た。
コトン…。
そして────その日、やっと息子が帰宅する。
「おかえり。オーバン」
意識のない状態ではあるが昔よりも更に磨きがかかった可愛い顔を見つめ、私は笑顔でオーバンを新居のベッドへと運ばせたのだった。
無一文で家を飛び出したオーバン。
当初はどこか住み込みの職を得たのかもと探し回ったが見つからなかった。
ならばその容姿に目をつけた輩に囲われたのかと、裏に手を回して探らせたがそこでも見つからなかった。
だから商人にでも頼んで馬車で移動したのかもしれないと少しずつ捜索の範囲を広げた。
それでもオーバンは見つからなかった。
だがここに来て手掛かりを掴んだ。
軍関係で、オーバンが無一文で三年過ごせたとしたらそれは学校に違いない。
加えてクレール=オルフィンと繋がりがあるとするならまず間違いないはず。
そう考えて魔法飛空士学校を探らせたが、オーバンという者はいなかった。
軍へ問い合わせたが答えは同じ。
オーバン=ポルテなる者はいないとのこと。
(どういうことだ?)
そう思い何度も確認を頼んだが答えは同じ。
第一部隊以外の部隊にも確認をしてほしいとも伝え、似た容姿の者はいないかと事細かにオーバンの容姿を伝えるが、全く取り合ってはもらえず門前払い。
絶対にここに居るはずなのに隠そうとするなんて、なんて奴らだ!
「早く迎えに行って、毒を盛るような怖い女はもういないから安心して帰ってこいと伝えてやらねばならんのに…!」
もしかしてオーバンは軍に囲われて酷い目にあわされているんじゃないだろうか?
名前も…そうだ、偽名を使っている可能性がある。
そう思い、まだガードが緩い魔法飛空士学校の方から当たってみることに。
すると『バン=ルーテ』という者の名が挙がってきた。
人を複数人介し、伯爵家が裏にいると思われないようにさり気なく探りを入れさせたのが功を奏した形だ。
本名に限りなく近い響き。間違いない。オーバンだ!
けれどここで軍に問い合わせてもきっと会わせてもらうことはできないのだろう。
それくらいこれまでの対応からして丸わかりだ。
だとしたらどうすればいいか。
『オーバン=ポルテという者はいない』そう言ったのは軍の方だ。
それを逆手に取る。
「バン=ルーテという者を軍の中から攫ってきてほしい。彼は私の息子なんだ。年は18。とても可愛くて小柄な子だからすぐにわかると思う」
そういう事に長けた者へと依頼を行う。
手段は選ばなくていい。
ただ顔や身体に絶対に傷をつけるなということと、絶対に殺すなという指示は出しておいた。
そして彼らは笑顔で依頼を請け負い、すぐさま話を進めた。
物資納入業者の買収。
魔法航空士学校の生徒の懐柔。
借金持ちの魔法飛空士との交渉代金。
軍の中に入れる者など限られている。
だから彼らに言われるがまま必要なだけ金は出した。
この三つから仕掛ければ、どこかから必ず活路は開けるはずとの事。
受け渡しは請負人が行い、屋敷へと連れてきてもらえる算段となっている。
これでオーバンがこの手に戻ったならこちらのものだ。
取り返した瞬間バン=ルーテは消え、伯爵家のオーバンへと戻る。
軍関係者がいくら言ってこようとこちらは『バン=ルーテなど知らない』で通せば済む話。
オーバンの籍は伯爵家にあるのだ。
そこまで持ち込めたら奴らに打つ手などない。
そして私はオーバンが帰ってくる日を待ちに待った。
逃げたり逆らう気がなくなるよう、頭がぼんやりする香やクスリを用意し、ベッドに繋ぐ鎖も拘束する縄も用意した。
成長した身を彩りつつ、その白い肌が映えるようにデザインさせた夜の装いも準備したし、私のものを飲み込む際に傷がつかないよう後ろに使う最高級の香油も購入しておいた。
準備は万全。
後は愛しいオーバンを新居へと迎えるだけだ。
「アラン。伯爵位は今日を限りにお前に譲る。私はオーバンと例の屋敷で暮らすから、そちらには来ないようにな」
「…………わかりました」
アランは全く可愛くもなんともない息子だが、残しておいてよかった。
そのお陰でスムーズに伯爵位を譲ることができたし、オーバンとの時間を仕事に煩わされずに済むようになったのだ。
「ああ、オーバン。早く帰っておいで。私の小鳥」
夢見心地で用意しておいた書類にサインを入れ、後は全てアランに任せて部屋を出た。
コトン…。
そして────その日、やっと息子が帰宅する。
「おかえり。オーバン」
意識のない状態ではあるが昔よりも更に磨きがかかった可愛い顔を見つめ、私は笑顔でオーバンを新居のベッドへと運ばせたのだった。
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