【完結】魔法飛空士は自由を満喫する

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
23 / 35

22.※仕事に行けない!

しおりを挟む
「んんッ…あ…あぁ……っ」

じっくり時間をかけて慣らされた俺の後孔が、ゆっくりとクレールの雄を飲み込んでいく。
初めての繋がりは、正直思っていた以上に衝撃的だった。
いつもは出すところでしかないのに、今はそこにクレールを受け入れているんだから当然だ。
でも……それがクレールのものだからなのか、拒絶するような感覚は全く覚えなかった。
優しく俺の様子を伺いながら挿れてくれているから余計に安心できているのかもしれない。

「は…ぁ…っ」

火照った体に少しひんやりとしたクレールの肌が気持ち良く感じられ、つい甘えるように身を寄せてしまう。

「バン、大丈夫か?」

全部納めた後も宥めるように優しく声を掛け、負担が少ないようにと動かず待ってくれるクレールに俺は小さく頷く。
優しいクレールの腕の中はどこまでも居心地がいい。
そこには恐怖も、焦燥も、憂いも何一つとしてなかった。

「クレール……」

だから俺はそっと笑みを浮かべてチュッと軽くクレールの頬へと口づけを贈る。

「俺…初めてがお前でよかった」

それは本当に思う。
初めてが父親や夜這い男だったりしたら俺は心が病んで壊れていただろう。
下手をすれば人間不信に陥って大変なことになっていたに違いない。
だからこそ、クレールには感謝の気持ちしかなかった。

「メルシィ、クレール。俺…お前の恋人になれて幸せだ」

そう言うとクレールは顔を真っ赤にしながら『そんな顔を絶対に他の奴に見せるなよ?』と言い放った。

(そんな顔ってどんな顔だ?)

思わず首を傾げたら、あんまり煽るなって言われて、そこから突き上げられて喘がされる羽目になった。

「やっ!あっあっ…!クレールっ!」

基本は優しいけれど、弱いところを探り、集中的に責め立てるのは反則だと涙目で睨んだら、そんな顔も可愛いから逆効果だと言われてしまう。

(クソっ!ヤリチンめ!)

絶対こいつ童貞じゃないだろ?!
でも……。

「バン。好き、好きだ!」

クレールが俺への気持ちを言葉にして伝えてくる。
それがなんだかすごく胸にきた。

クレールから本当に愛おしそうに見つめられて、合間合間に俺を求めるように激しく口づけられると怒りも持続しなくて、気づけば溺れるようにクレールに抱きつきながら爪を立てていた。

「あぁっ、ひぁ…んッ!」

苦しいのに気持ちよくて気持ちよくてたまらないのはどうしてだろう?
ゆさゆさと揺さぶられているのに、屈辱的な気持ちではなくジワジワと愛しさが込み上げてくるのは?

「クレール…クレール…ッ!」

誰かの名前がこんなに大切に思える日が来るなんて思ってもみなかった。

「バン…ッ」

好きな相手に名を呼ばれるのがこんなに嬉しいなんて知らなかった。
自分だけを見て、ただ自分だけを求めてくれる存在に心が囚われて逃げるに逃げられない。

「クレール……ッ、あ…好き……!」

好き────そう。俺はクレールが好きなんだ。




それから先は正直あまり覚えていない。
クレールに滅茶苦茶キスを落とされまくったのだけは覚えているけど、後はスコンと記憶が飛んでいる。

起きたら身綺麗になってクレールの腕の中で眠っていたというのが現状だ。
何はともあれこれで俺達は晴れてどこからどう見ても立派な恋人同士となった訳で……。
そこまで考えたところで思いっきり飛び起きた。

ガツンとクレールの顎に頭が当たってグフッとか聞こえた気がするけど、今はそんなことより仕事のことで頭がいっぱいだった。

昨日はやめる気でいたから気にしてなかったが、そう言えば今は何時なんだろうか?
寝坊していたらシャレにならない。
慌てて身を起こしてベッドから降りようとしたけれど、下半身が腰が抜けたようになっていて動いてくれず、焦った上半身だけがベッドから落っこちそうになった。

「うわっ…!」

けれどそこでさっと腰に腕が回って思い切り後ろに引き寄せられた。

「バン、危ないだろ?!」

びっくりさせるなと耳元で囁かれて思わず赤面してしまう。
どうして朝からこんな甘ったるい声が出せるのだろうか?
妙に意識してしまうから本気でやめて欲しい。

「動けないんだろう?無理はしなくていい」

優しく労わってクレールは俺をベッドに丁寧に戻すと、これは自分のせいだから仕事は気にせず寝ていろと言われてしまった。
でもそんなこと言われても無理に決まってる。

「行く!」
「無理だって」
「大丈夫!」
「いや、無理だ」

そしてクレールが呆れたように手を貸してくれて、試しに立ってみろと言われたから挑戦してみたけど……。

「立てない……」
「ほら見ろ」

腰が砕けてどう頑張っても俺は立つことができなかった。
これじゃあ仕事なんてできっこない。

「体調不良ってことにしておくから、今日は気にせず寝ててくれ」
「……わかった」

本当は行きたいけど、この状態では無理だってわかったから渋々諦める。

「うぅ…」
「そんなに気にするな。な?」

どこまでも優しいクレールについ甘えてしまいたくなるのは俺の心が弱っている証拠だろうか?
でも取り敢えず動けないものは動けないので今日はおとなしく寝ておくことにした。

「じゃあバン。いい子に待ってろよ」
「……わかった」

子供扱いはやめて欲しいけど、愛おしいと言わんばかりの目でそんなことを言われたらこっちとしても何も言えない。
俺は気恥ずかしい気持ちを隠すように、いってらっしゃいと言って布団に潜り込んだ。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

処理中です...