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4.どうして同じ所属になるんだよ!
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クレール=オルフィン────彼はここオレナット国の軍事総長の息子だ。
飛空士育成校の同期で、入学当初からなにかとぶつかってきた相手だったりする。
戦い方は派手ではないがきっちり堅実に戦ってくるので俺とは相性が悪い。
勝ったり負けたり、この三年模擬戦ではずいぶんやり合ったものだ。
言ってみれば一番のライバルとも言えるだろう。
それでも仲が良ければよかったんだが、言うまでもなく仲が悪い方のライバルだ。
少なくとも俺は大嫌いだ。
大体最初の出会いからして最悪だった。
クラス分けの結果を見てAクラスにやってきた俺を一目見て、「ここは子供の来るところじゃないぞ?兄弟に会いにきたのか?誰だ?一緒に探してやろうか?」なんて言いやがったんだ。
本気で腹が立ったから俺は新入生だと言ってやったんだが、全然信じてくれなかった。
本当に最悪な奴だ。
それからはできる限り無視してたんだが、何故かやけにこっちに構ってくるから物凄くイライラしていた。
「ほら移動教室だ。迷子になったら大変だから連れてってやる」
「俺は猫じゃねぇ!襟首を掴むな!」
「…………(何こいつ。滅茶苦茶可愛い!)本当、猫みたいな奴だな」
そうやって笑顔で揶揄われていい気がするはずもない。
猫じゃないって言ったのに、猫みたいな奴って返すってどういう了見だ?!
無視してもこうして無理矢理構ってくるならこっちにだって考えがある。
だから腹が立つたびに思い切り睨んでやるようにしたのに、これがちっとも利かないのもまた腹が立った。
(なんでそんなに生暖かく微笑んでんだよ!)
罵倒されたり睨まれるのが好きなのかと最初はチラッと思ったものだが、こんな関係も長くなってくるとどうにもこうにも全く別なことを考えているようにしか見えなかった。
で、だ。筆記も実技もこいつは凄く優秀な奴で、皆から「さすがは軍事総長のご子息!」だなんてチヤホヤされてて、本人は笑顔でそれを受け流すという感じだった。
本当に優等生ご馳走様って感じだ。
俺はそんな奴らと同じように奴に言いたくもない言葉を掛けたり笑顔を向けたりするなんてしたいとも思わなかったし、こんな茶番に構ってられるかといつも休み時間は図書室に行っていた。
だからそういう光景を見たのは数えるほどだったけど、友人情報によると奴が囲まれるのは日常茶飯事とのことだった。
有名人は辛いね。
そこまでならまあよくある話(?)だし、俺にこれ以上迷惑が掛からないならいいと思ってたんだ。
それなのに、何がどうなったのか実技の訓練ではいつの間にかペアを組まされることが増え、休み時間は気づけば本を読んでたら目の前で奴が読書し始めることが多くなった。
勿論気づいたらさり気なく本を棚に戻しに行くついでに席を変えたけどな!
当たり前だろう?鬱陶しい!
何が悲しくてあんな嫌な奴と同席しないといけないんだ!
そうやってたら今度は昼時に食堂で隣に座られるようになった。
解せない。
俺の安らぎのランチタイムを返せ!
そうやって睨むのに、こいつはちっとも察しようとはしない。
いっつもにこやかにさり気なく横に来るんだ。
ストーカーか!
だから仕方なく自炊してみようと思って、寮の管理人に相談をして食堂の食材を分けてもらうことにした。
そうして作った俺お手製のお弁当。
前世で料理していたから弁当一つ作るくらい楽勝楽勝と中庭でホクホクしながらおひとり様ランチを堪能していた。
これでもう俺の貴重な昼休みをあんな奴と過ごさなくて済む、そう思った。
それなのに……ある日クレールの親衛隊だかファンクラブだか知らないが、奴らが突然俺の前にやってきて、あいつの前まで引きずっていかれたんだ。
そこに仁王立ちで立ってたクレールはどうも何か怒ってるようだったけど、そんなもの知ったこっちゃない。
俺のランチの邪魔をするなんてどういう了見だと俺は言いたかった。
「クレール!何のつもりだ?!」
だから開口一番俺はそう言ってやったんだ。
目障りだからリンチでもする気かとちょっとだけ睨んで挑発もしてしまった気がする。
でも、クレールは俺から弁当箱を取り上げるとパカッと蓋を開けて、徐に俺の卵焼きを食いやがったんだ!
(俺の一番好きな卵焼きが────!)
甘辛い俺が大好きな卵焼き…。
一番最後に食べようと思っていた卵焼きが……!
(許せん!)
『こいつ、どうしてくれようか!』と食い物の恨みを込めて思い切り睨みつけたのに、この男、なんて言ったと思う?
明日から自分のも作ってこいだとよ!ふざけんな!
あんまりにも腹が立ったから思いっきり靴を踏んづけてやって、そのまま弁当箱をひったくってその場から脱出した。
まあそんなこんなで色々あって卒業までの三年間奴とは犬猿の仲だったって話なんだけど─────。
まさか卒業後配属先が同じになるなんて思ってもみなかった。
この訓練場にいるってことはまず間違いなくこの部隊に配属されたに違いないのだ。
でも信じたくない!どんな嫌がらせだよ?!
あいつは軍事総長の息子だ。
第一部隊に所属する可能性が高いんじゃなかったのか?
今年の欠員は第一部隊が1席。第二部隊が6席。第三部隊が56席。第四部隊が32席。第五部隊が2席だ。
これは去年第三と第四部隊が合同作戦をしくじったため大きな犠牲を払ったからだ。他は引退による空席。
で、俺が所属しているのは実は第五部隊だったりする。
成績順に優先的にどの部隊を希望するかを第三希望まで書いてよかったので、俺は全項目に第五部隊がいいと書き込んだ。
何故ならそこの隊長がすっごく優秀な人で、密かに俺が憧れている人だったから。
育成校での演習の時に何度か会ったことがあって、凄く指示出しがわかりやすくて的確で、こんな上司がいたら気持ちよく働けるだろうなと思ったのが切っ掛けだった。
まあそれはいい。
念願叶って第五部隊に入れて本当にラッキーだったと思う。
思うが……。
(どうしてこいつまで一緒なんだよ?!)
まさかクレールまで第五部隊に来るなんて思ってもみなかったんだ。
(第一部隊に一席空いてただろう?!そっちに行けよ!)
飛空士育成校の同期で、入学当初からなにかとぶつかってきた相手だったりする。
戦い方は派手ではないがきっちり堅実に戦ってくるので俺とは相性が悪い。
勝ったり負けたり、この三年模擬戦ではずいぶんやり合ったものだ。
言ってみれば一番のライバルとも言えるだろう。
それでも仲が良ければよかったんだが、言うまでもなく仲が悪い方のライバルだ。
少なくとも俺は大嫌いだ。
大体最初の出会いからして最悪だった。
クラス分けの結果を見てAクラスにやってきた俺を一目見て、「ここは子供の来るところじゃないぞ?兄弟に会いにきたのか?誰だ?一緒に探してやろうか?」なんて言いやがったんだ。
本気で腹が立ったから俺は新入生だと言ってやったんだが、全然信じてくれなかった。
本当に最悪な奴だ。
それからはできる限り無視してたんだが、何故かやけにこっちに構ってくるから物凄くイライラしていた。
「ほら移動教室だ。迷子になったら大変だから連れてってやる」
「俺は猫じゃねぇ!襟首を掴むな!」
「…………(何こいつ。滅茶苦茶可愛い!)本当、猫みたいな奴だな」
そうやって笑顔で揶揄われていい気がするはずもない。
猫じゃないって言ったのに、猫みたいな奴って返すってどういう了見だ?!
無視してもこうして無理矢理構ってくるならこっちにだって考えがある。
だから腹が立つたびに思い切り睨んでやるようにしたのに、これがちっとも利かないのもまた腹が立った。
(なんでそんなに生暖かく微笑んでんだよ!)
罵倒されたり睨まれるのが好きなのかと最初はチラッと思ったものだが、こんな関係も長くなってくるとどうにもこうにも全く別なことを考えているようにしか見えなかった。
で、だ。筆記も実技もこいつは凄く優秀な奴で、皆から「さすがは軍事総長のご子息!」だなんてチヤホヤされてて、本人は笑顔でそれを受け流すという感じだった。
本当に優等生ご馳走様って感じだ。
俺はそんな奴らと同じように奴に言いたくもない言葉を掛けたり笑顔を向けたりするなんてしたいとも思わなかったし、こんな茶番に構ってられるかといつも休み時間は図書室に行っていた。
だからそういう光景を見たのは数えるほどだったけど、友人情報によると奴が囲まれるのは日常茶飯事とのことだった。
有名人は辛いね。
そこまでならまあよくある話(?)だし、俺にこれ以上迷惑が掛からないならいいと思ってたんだ。
それなのに、何がどうなったのか実技の訓練ではいつの間にかペアを組まされることが増え、休み時間は気づけば本を読んでたら目の前で奴が読書し始めることが多くなった。
勿論気づいたらさり気なく本を棚に戻しに行くついでに席を変えたけどな!
当たり前だろう?鬱陶しい!
何が悲しくてあんな嫌な奴と同席しないといけないんだ!
そうやってたら今度は昼時に食堂で隣に座られるようになった。
解せない。
俺の安らぎのランチタイムを返せ!
そうやって睨むのに、こいつはちっとも察しようとはしない。
いっつもにこやかにさり気なく横に来るんだ。
ストーカーか!
だから仕方なく自炊してみようと思って、寮の管理人に相談をして食堂の食材を分けてもらうことにした。
そうして作った俺お手製のお弁当。
前世で料理していたから弁当一つ作るくらい楽勝楽勝と中庭でホクホクしながらおひとり様ランチを堪能していた。
これでもう俺の貴重な昼休みをあんな奴と過ごさなくて済む、そう思った。
それなのに……ある日クレールの親衛隊だかファンクラブだか知らないが、奴らが突然俺の前にやってきて、あいつの前まで引きずっていかれたんだ。
そこに仁王立ちで立ってたクレールはどうも何か怒ってるようだったけど、そんなもの知ったこっちゃない。
俺のランチの邪魔をするなんてどういう了見だと俺は言いたかった。
「クレール!何のつもりだ?!」
だから開口一番俺はそう言ってやったんだ。
目障りだからリンチでもする気かとちょっとだけ睨んで挑発もしてしまった気がする。
でも、クレールは俺から弁当箱を取り上げるとパカッと蓋を開けて、徐に俺の卵焼きを食いやがったんだ!
(俺の一番好きな卵焼きが────!)
甘辛い俺が大好きな卵焼き…。
一番最後に食べようと思っていた卵焼きが……!
(許せん!)
『こいつ、どうしてくれようか!』と食い物の恨みを込めて思い切り睨みつけたのに、この男、なんて言ったと思う?
明日から自分のも作ってこいだとよ!ふざけんな!
あんまりにも腹が立ったから思いっきり靴を踏んづけてやって、そのまま弁当箱をひったくってその場から脱出した。
まあそんなこんなで色々あって卒業までの三年間奴とは犬猿の仲だったって話なんだけど─────。
まさか卒業後配属先が同じになるなんて思ってもみなかった。
この訓練場にいるってことはまず間違いなくこの部隊に配属されたに違いないのだ。
でも信じたくない!どんな嫌がらせだよ?!
あいつは軍事総長の息子だ。
第一部隊に所属する可能性が高いんじゃなかったのか?
今年の欠員は第一部隊が1席。第二部隊が6席。第三部隊が56席。第四部隊が32席。第五部隊が2席だ。
これは去年第三と第四部隊が合同作戦をしくじったため大きな犠牲を払ったからだ。他は引退による空席。
で、俺が所属しているのは実は第五部隊だったりする。
成績順に優先的にどの部隊を希望するかを第三希望まで書いてよかったので、俺は全項目に第五部隊がいいと書き込んだ。
何故ならそこの隊長がすっごく優秀な人で、密かに俺が憧れている人だったから。
育成校での演習の時に何度か会ったことがあって、凄く指示出しがわかりやすくて的確で、こんな上司がいたら気持ちよく働けるだろうなと思ったのが切っ掛けだった。
まあそれはいい。
念願叶って第五部隊に入れて本当にラッキーだったと思う。
思うが……。
(どうしてこいつまで一緒なんだよ?!)
まさかクレールまで第五部隊に来るなんて思ってもみなかったんだ。
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