【完結】魔法飛空士は自由を満喫する

オレンジペコ

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3.魔法飛空士になりました。

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俺が家を飛び出してから三年────。
今の俺はふらふらした家出少年ではなく、魔法飛空士というものになっていた。

魔法飛空士というのは飛行機に乗って他国と戦う言わば空軍だ。
そのエンジンを魔力で動かし、攻撃ミサイルに予め魔力を仕込み攻撃を行う。
それだけではなく墜落した時のために飛行機に搭載されている安全装置にも魔力を込めておくのだ。

出立直前にそれらを行うため、それなりに魔力を持っていないとその任務に就くことが出来ないある意味エリートの集団だった。

俺は家を飛び出してからそんな職業があるのだと情報を仕入れ、すぐにその職業について調べた。
前世から飛行機乗りには憧れる気持ちがあったみたいで、なれるものならなってみたいという気持ちもあったからだ。
そして調べてみると魔法飛空士の育成学校を卒業すれば誰でもその職にはつけるということが分かったので、すぐにその学校へと向かった。

ちなみに『誰でも』というのは貴族だろうと平民だろうと能力がある者なら誰でもOKという意味だ。
15才以上の場合親の承諾も必要なく、本人のやる気と実力次第で入校ができるという特別な場所。
そんな魔法飛空士育成学校に入るにはいくつかの条件を満たす必要があって─────。

条件その1【魔力量100オーバー】
これはそのあたりに普通に生活している人の魔力量が70~80であることを考えると高い方だと思うが、決して届かない条件ではないと思う。
普通の人がやる気を出して特訓すれば100オーバー出来ると言えばわかりやすいだろうか?
まあ筋トレみたいなイメージで、やったらやっただけある程度は増える。
どうせ入学したら更に増えるよう特訓するので、これが最低基準という訳。
要するにそれくらいは自力で努力できないと入学できませんよということだな。

条件その2【基礎体力試験80%クリア】
これも重要な条件で、体力のない奴は入学してもすぐに脱落していくだけだと言うのがわかっているのでここである程度ふるい落としているらしい。

条件その3【視力検査クリア】
まあ言わなくてもわかるが、視力が悪いと飛行機に乗れないのだ。ついでに動体視力なんかも試験されて、これが規定を満たさないとあっさり落とされる。

条件その4【反射神経能力試験クリア】
これは上3つに比べるとそれほど重要ではなく、言ってみればクラス分けに使われる条件とも言える。これの成績がいい方が上位クラスに上がれると言われていた。
まあ余程悪ければ入学許可は出ないようだったが……。

条件その5【記憶力、状況判断能力、決断力試験80%クリア】
これは……正直俺は特に何も感じなかったんだが、入学後皆は一番これが堪えたと言っていた。
まあ結構酷い内容も多かったからかな?

『これから書かれた報告書(3枚)に10秒で目を通し、以下の質問に応えよ』

『任務に失敗した上司から個別に呼び出された。一緒に責任を取ってもらいたいと言われた場合、貴方ならどうする?持論を述べよ』

『敵機に囲まれつつある中、自機のミサイルがあと僅かとなった。救援信号はすでに出したが、それ以外に出来ることを端的に述べよ』

まあこんな感じの質問がツラツラと書かれてるんだ。
個人的には面白かったかな?
笑ってしまう内容も多かったんだから仕方がない。

『報告せねばならない緊急のことがあるので上司を探していると上司と同僚の情事を見てしまった。報告後禍根を残さぬよう考えうる範囲の対処法を述べよ』

なんだそれ!誰だよそれ!こんなのテストに入れるなよ!と笑い死にしそうになった日が懐かしい。
どうもあれらはその年かその前の年に実際にあった事例をもとにして作られた試験だったらしく、入学後『まあそういうこともあるから卒業後無事に魔法飛空士になれたとしても行動は慎重にね』と教師から有難い言葉を聞かされた。

何はともあれそんな感じで試験をクリアしていって、俺は晴れて育成学校に入学し無事に卒業することが出来た。
ちなみに学費は国持ちだから、お金がなくても生活は可能だった。
食事も食堂で食べられたし、寮があるから暮らすのもそこでできたので、家無し金なしの俺からすると凄く助かる場所でもあったんだ。

そんなこんなで実家から逃げて無事に居場所を確保し、学び、就職できた今、俺は最高の気分だった。

「ひゃっほぅ────!」

自分に与えられた戦闘飛行機【ライラ】。
これは前世にあった戦闘機とは形は大きく違う。
けれど大鷲のようなカッコいいデザインの飛行機で、ミサイルも搭載できるしスピードも速い。
意外にも小回りも利いてとても操縦がしやすかった。
学校で乗っていた訓練機なんかよりもずっと動きもスムーズだ。
このあたりはこの機体自体が最新型の魔道具であることが関係しているのだろう。

そうして一人、綺麗な薄紫色の空を満喫していたのだが、そこに割り込んでくる機体があった。

「ちっ…!」

ここでも奴は絡んでくるのかと正直うんざりして舌打ちをしてしまったのも仕方がない。

何故なら現れたのは俺の学生時代からのライバル、クレール=オルフィンだったのだから─────。

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