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オフィス編
12.週末 Side.セイ
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俺がセイと正反対とか言って笑わせて来るから……カナデが可愛すぎてつい姫野誠の方で揶揄ってしまった。
サンドイッチを食べ終えたカナデの口の端をそっと親指で拭ってそのままぺろりと舐めとり、セイの眼差しで誘うように見てやるとカナデは顔を赤くして照れてしまう。
やっぱりカナデは俺を意識せずにはいられないんだと嬉しくなった。
俺を見ろ────。
ここにいるのは誰だ?お前の恋人だぞ?
会いたいと…あんなに切なげに言うなら気づけばいい。
そしたら社長室で今すぐ抱いてやるのに……。
けれどやっぱりカナデは気づかない。
(まあ今日のところはこれでいいか)
すぐに気づかれても面白くはないしと気持ちを切り替え、送ると言って帰りを促した。
けれどカナデはそれで揶揄われたと気を悪くしたみたいで、ロッカーへと向かい何かを引っ掴んで一人帰ってしまう。
多分あれに着替えでも入れていて、そのまま夜の街に出る気なんだろう。
正直失敗したと思った。
あんな状態で一人にして変な輩に目をつけられたら大変だ。
「一応連絡を入れておくか」
自分もこの後着替えて後を追うつもりだが、先に知り合いに声を掛けておいた方がいいだろうとサッと数か所に連絡を入れておく。
「もしもし?ああ、俺。俺の恋人が来たら引き留めておいてくれないか?そう。前に写メ見せただろ?え?遊び相手じゃないから。本気だから。うん。手を出す奴がいたらぶっ殺すって伝えといて?うん。うん。宜しく」
(これでよしっと)
「さて、俺も行こうかな」
────逃げた兎を捕まえに。
***
俺が連絡のあったバーに足を向けるとそこにはカナデの姿があって、既に一杯目を飲み終わるところだった。
「カナデ」
偶然を装って声を掛けると、カナデはあからさまにびっくりしたような顔でこっちを見て俺の名を呼んでくれる。
「セイ!」
「どうした?珍しいな。金曜の夜に」
「……うん」
ちょっと落ち込んだようなカナデの隣に座って俺もマスターに一杯目を頼む。
「仕事で嫌なことでもあった?」
「…いや」
「じゃあ…誰かに何かされた…とか?」
ちょっと鎌をかけるようにそう言ってやるとカナデの頬がカッと赤くなった。
「ふ~ん?セクハラ?」
「違う」
「じゃあ…何?」
片肘つきながらちょっと首を傾げて優しく聞いてやるとカナデはあっさり白状してくれる。
「同僚に…」
「うん?」
「その…揶揄われて……」
「へぇ?どんな風に?」
「……別にそれはいいんだ。でも……」
「でも?」
「あんな目で見てくるから……」
(あんな目?流し目で見たことか?)
カランとグラスの氷を崩しながらそっと酒を傾け、先に続く言葉を待つ。
「俺が…勝手にセイに会いたくなっただけ……」
その言葉に不覚にも嬉しい気持ちが込み上げる。
姫野の俺にドキッとさせられて、セイの俺を求めるなんて……本当に可愛い奴。
「何?そいつにドキッとさせられて俺に抱かれたくなったってこと?」
クスッと笑いながら誘うように言ってやるとあながち間違ってなかったのか、ちょっと気まずそうに視線をそらされた。
「しょうがないな。それならいつでも連絡くれたらよかったのに」
そしてそのまま顎を掬ってチュッと軽く口づける。
んんっ!ってマスターが咳払いでやめろって言ってくるけど、当然無視だ。
「セイ…」
「うん。ホテル行こっか。今週も疲れただろ?カナデは俺が優しく癒してやるからな」
そうやって甘く声を掛けてたらマスターが肩を震わせて笑ってるのが見えた。
(柄じゃないって思ってんだろ?わかってるよ!)
そう心の中でツッコミを入れながら俺は二人分の支払いをして店を出る。
カナデは払うって言ってくれたけど、今日は揶揄ったお詫びだから気にしないで欲しい。
そもそもこうなったのは全部俺のせいだしな。嬉々として責任はとるよ。
それからホテルでいつも通り寝たんだけど、姫野に煽られてたせいかカナデはいつもよりも興奮していた気がする。
俺からするといつも以上に感度が上がってて最高だった。
こんなに感じてるのは同僚に煽られたせい?って最中に囁くように訊いてやったら、泣きそうな顔で違う違うと言いながらよがっていたのがツボだった。
メチャクチャ可愛い。
ま、他の男にちょっかい掛けられてだったら許せなかっただろうけど、どっちも俺だから全然OK。
いっぱい意識して、姫野の俺とセイの俺の間で翻弄されてくれたら嬉しい。
今度からはそっちで色々仕掛けてみようか。
嫌われない程度に、避けられない程度に、試してみるのもいいかもしれない。
そんなことを思いながら俺は上機嫌でカナデを堪能した。
隣で疲れ切ってスヤスヤ眠るカナデの髪をサラリと撫でる。
いつものようでいつもとは違うのは今日が土曜の夜じゃなく金曜の夜だってこと。
明日も明後日もカナデを独り占めできると思うといつも以上に嬉しかった。
(はぁ~…本当、まさかこんなに嵌るなんてな)
最初から好みのタイプではあったけど、カナデはもう俺のものっていう独占欲が湧き起こる。
捕まえて、はいおしまいって相手じゃないのが自分でも意外だった。
だから────木曜に言った『愛してる』って言葉はカナデの答えなんて求めていない、俺の押し付けの愛情。
「カナデ。俺はお前を捨てたりなんかしないよ」
そう言ってやったら少しは安心してくれるだろうか?
寧ろ逃がしてやれなくてゴメンと言いたい。
気づかないカナデをガッツリ捕まえている自覚はあるから────。
「愛してるから…安心して俺の隣に居てくれ」
そう言いながら俺は笑顔でそっとカナデを抱きしめ眠りについた。
サンドイッチを食べ終えたカナデの口の端をそっと親指で拭ってそのままぺろりと舐めとり、セイの眼差しで誘うように見てやるとカナデは顔を赤くして照れてしまう。
やっぱりカナデは俺を意識せずにはいられないんだと嬉しくなった。
俺を見ろ────。
ここにいるのは誰だ?お前の恋人だぞ?
会いたいと…あんなに切なげに言うなら気づけばいい。
そしたら社長室で今すぐ抱いてやるのに……。
けれどやっぱりカナデは気づかない。
(まあ今日のところはこれでいいか)
すぐに気づかれても面白くはないしと気持ちを切り替え、送ると言って帰りを促した。
けれどカナデはそれで揶揄われたと気を悪くしたみたいで、ロッカーへと向かい何かを引っ掴んで一人帰ってしまう。
多分あれに着替えでも入れていて、そのまま夜の街に出る気なんだろう。
正直失敗したと思った。
あんな状態で一人にして変な輩に目をつけられたら大変だ。
「一応連絡を入れておくか」
自分もこの後着替えて後を追うつもりだが、先に知り合いに声を掛けておいた方がいいだろうとサッと数か所に連絡を入れておく。
「もしもし?ああ、俺。俺の恋人が来たら引き留めておいてくれないか?そう。前に写メ見せただろ?え?遊び相手じゃないから。本気だから。うん。手を出す奴がいたらぶっ殺すって伝えといて?うん。うん。宜しく」
(これでよしっと)
「さて、俺も行こうかな」
────逃げた兎を捕まえに。
***
俺が連絡のあったバーに足を向けるとそこにはカナデの姿があって、既に一杯目を飲み終わるところだった。
「カナデ」
偶然を装って声を掛けると、カナデはあからさまにびっくりしたような顔でこっちを見て俺の名を呼んでくれる。
「セイ!」
「どうした?珍しいな。金曜の夜に」
「……うん」
ちょっと落ち込んだようなカナデの隣に座って俺もマスターに一杯目を頼む。
「仕事で嫌なことでもあった?」
「…いや」
「じゃあ…誰かに何かされた…とか?」
ちょっと鎌をかけるようにそう言ってやるとカナデの頬がカッと赤くなった。
「ふ~ん?セクハラ?」
「違う」
「じゃあ…何?」
片肘つきながらちょっと首を傾げて優しく聞いてやるとカナデはあっさり白状してくれる。
「同僚に…」
「うん?」
「その…揶揄われて……」
「へぇ?どんな風に?」
「……別にそれはいいんだ。でも……」
「でも?」
「あんな目で見てくるから……」
(あんな目?流し目で見たことか?)
カランとグラスの氷を崩しながらそっと酒を傾け、先に続く言葉を待つ。
「俺が…勝手にセイに会いたくなっただけ……」
その言葉に不覚にも嬉しい気持ちが込み上げる。
姫野の俺にドキッとさせられて、セイの俺を求めるなんて……本当に可愛い奴。
「何?そいつにドキッとさせられて俺に抱かれたくなったってこと?」
クスッと笑いながら誘うように言ってやるとあながち間違ってなかったのか、ちょっと気まずそうに視線をそらされた。
「しょうがないな。それならいつでも連絡くれたらよかったのに」
そしてそのまま顎を掬ってチュッと軽く口づける。
んんっ!ってマスターが咳払いでやめろって言ってくるけど、当然無視だ。
「セイ…」
「うん。ホテル行こっか。今週も疲れただろ?カナデは俺が優しく癒してやるからな」
そうやって甘く声を掛けてたらマスターが肩を震わせて笑ってるのが見えた。
(柄じゃないって思ってんだろ?わかってるよ!)
そう心の中でツッコミを入れながら俺は二人分の支払いをして店を出る。
カナデは払うって言ってくれたけど、今日は揶揄ったお詫びだから気にしないで欲しい。
そもそもこうなったのは全部俺のせいだしな。嬉々として責任はとるよ。
それからホテルでいつも通り寝たんだけど、姫野に煽られてたせいかカナデはいつもよりも興奮していた気がする。
俺からするといつも以上に感度が上がってて最高だった。
こんなに感じてるのは同僚に煽られたせい?って最中に囁くように訊いてやったら、泣きそうな顔で違う違うと言いながらよがっていたのがツボだった。
メチャクチャ可愛い。
ま、他の男にちょっかい掛けられてだったら許せなかっただろうけど、どっちも俺だから全然OK。
いっぱい意識して、姫野の俺とセイの俺の間で翻弄されてくれたら嬉しい。
今度からはそっちで色々仕掛けてみようか。
嫌われない程度に、避けられない程度に、試してみるのもいいかもしれない。
そんなことを思いながら俺は上機嫌でカナデを堪能した。
隣で疲れ切ってスヤスヤ眠るカナデの髪をサラリと撫でる。
いつものようでいつもとは違うのは今日が土曜の夜じゃなく金曜の夜だってこと。
明日も明後日もカナデを独り占めできると思うといつも以上に嬉しかった。
(はぁ~…本当、まさかこんなに嵌るなんてな)
最初から好みのタイプではあったけど、カナデはもう俺のものっていう独占欲が湧き起こる。
捕まえて、はいおしまいって相手じゃないのが自分でも意外だった。
だから────木曜に言った『愛してる』って言葉はカナデの答えなんて求めていない、俺の押し付けの愛情。
「カナデ。俺はお前を捨てたりなんかしないよ」
そう言ってやったら少しは安心してくれるだろうか?
寧ろ逃がしてやれなくてゴメンと言いたい。
気づかないカナデをガッツリ捕まえている自覚はあるから────。
「愛してるから…安心して俺の隣に居てくれ」
そう言いながら俺は笑顔でそっとカナデを抱きしめ眠りについた。
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