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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~
38.一つの結末
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ライアードが皆を引き連れ王宮へと帰ると、心配そうなステファンが出迎えに飛んできた。
「ミシェル様!シリィ!お二人ともご無事でよかった!」
二人の無事な姿を確認しステファンが心底安堵したように泣き笑いの表情を浮かべ、そのままミシェルの前で跪く。
「ミシェル様。主人である貴方をお護り仕切れず申し訳ございません。この不始末は如何様にも」
「いや。ステファンこそ無事で良かった。私のせいで命を落とすようなことだけはして欲しくない。どうかそれだけは忘れないでくれ」
ミシェルから言われたそんな言葉に、ステファンはグッと拳を握りしめ深々と頭を下げた。
その時、思いがけずその背後────遠目にではあったがミシェルの妃の姿が見えた。
その姿に自分の中でまるでパズルのピースが合わさるかのように合点がいくのを感じてしまう。
証拠がないから何とも言いようがないが、恐らくこの事件において屋敷の主を唆したのは彼女だろう。
その事から双子の黒魔道士の主人は別だと言うこともまた同時に確信した。
彼らの主人はミシェルを犯した後殺せと言っていたらしいが、ミシェルの妻がそれを望むとは到底思えないからだ。
恐らく彼女が望んだのは精々男に犯させるという所までだろう。
屋敷の主は何やら他にも企んでいそうだったが、斬り捨てたのは早計だっただろうか?
とは言えやはりあの双子の魔道士だけでも殺さずにいて正解だった。
後で問い質し、これはしっかりと調べる必要がありそうだ。
(それにしても……)
これから王宮内には更なる混乱が広がることだろう。
とは言え後のことはミシェル次第。
皇太子妃としては単純に嫉妬からミシェルとアルバートの仲が壊れるよう仕向けたつもりなのだろうが、それは今回空振りに終わったと言ってもいい。
それほどアルバートの対応は自分の目から見ても完璧だった。
正直シリィを庇ってもらったことには感謝しているが、いくら兄でも他の男に犯されたとあっては心に深い傷が残ってしまうだろうと心配していたのだ。
ロイドに頼んで記憶操作をしようにもミシェルはロイドを嫌っているため恐らく近寄らせても貰えないだろうと気を揉んでいた。
ここで最悪病んで心が壊れでもしたら、それこそ自分を王にと推す声が抑えられなくなってしまうところだった。
けれどアルバートはまさに溺愛と言った様子でミシェルを包み込み、最終的に自分しか目に入らないようにあっという間にミシェルを虜にしてしまった。
あれならもうミシェルはアルバートに任せておけば大丈夫だろう。
(まあ内容が内容だけにシリィには聞かせたくなかったが……)
あの一連の話を耳にして、アルバートを気に入っているロイドは『やっぱり面白い奴だ』とこっそり肩を震わせていたのだが、シリィやシュバルツはどうしてミシェルが元気になったのか全く分からなかったとしきりに首を傾げていた。
普通に考えて理解できないのは間違いない。
あれは自分には考えつかない手法だったと言える。
「では兄上。私はシリィを部屋に送っていきますので」
何はともあれ今はミシェルよりもシリィの方の心のケアを優先させるべきだろう。
シリィは自分のせいでミシェルが男達に犯されたと気に病んでいるのだから……。
「シリィ。行こうか」
そうしてそっと腰を抱いて歩き出したのだが、シリィはミシェルが気になるようでしきりにそちらを見遣っていた。
***
「んぅ…アル……」
部屋に戻ってソファで口づけを交わしていると、突如扉が勢いよく開かれ、そこから妃が姿を現した。
「ミシェル様!」
「え…?リルフェ?」
そこにはいつものおっとりした面影がない妻、リルフェがいた。
ミシェルのうっとりしていた表情が、急に現実に戻されたかのように引き締まる。
「ノックもなしにいきなりなんだ?」
リルフェを責めるようにそうして言葉を紡ぐが、リルフェは真っ直ぐにこちらへとやってきて二人を引き離した。
「ティアから聞きました!この男のせいでミシェル様が酷い目にあったと!」
「……?」
「私がお慰めいたしますので、今すぐこんな酷い男とはお別れください!」
そうしてグイグイとアルバートを押しのけリルフェがミシェルの腕の中へと身を委ねてくる。
「ちょっと待て!いきなり意味の分からないことを言ってくるな!」
そんなリルフェにミシェルが声を上げるがリルフェは何故か涙目だった。
「ですが!ミシェル様はこの男のせいで攫われて男達に輪姦されたと伺いました!それをライアード様が助けに行かれたと…!妻を蔑ろにして男と付き合うから、よからぬ輩がよからぬことを考えるのです!もうこのような男のことは捨て置いて、妻である私をお側にお置き下さい!」
うるうると目を潤ませながらビシッとアルバートを指さすリルフェにミシェルも頭を抱えてしまう。
「……リルフェ。その話はティアに聞いたと言ったが、それは本当か?」
「そうですわ!」
「悪いがその話はどうにも信じ難い。ティアを呼び出すから少し待て」
「そんなもの、しらばっくれるに違いありませんわ!」
「何故だ?」
「ティアはミシェル様を傷つけるような言葉はもう二度と言わないと言っておりましたもの。たとえ知っていたとしても口は割らないと思います」
その言葉にアルバートは違和感を感じた。
なんだか話が変だ。
それはきっとミシェルも同じ考えなのだろう。
大きく息を吐いてリンリンとベルを鳴らし侍女を呼んだ。
「ミシェル様。お呼びでしょうか?」
「ああ。悪いがティアを至急で呼んできてもらえるか?」
「かしこまりました」
そして暫くしたところでティアが毅然とした態度でやってきた。
「ミシェル様。珍しくお呼びと伺いましたが……」
そしてリルフェの姿を見たところで一瞬不思議そうな表情を浮かべた。
「リルフェまで呼び出した……と言うことではないようですが?」
恐らくリルフェの態度からそう感じ取ったのだろう。
なかなか聡明な妃だ。
「ああ。ティア。すまないがライアードが先程までどこにいたのかお前は知っているか?」
「……?さあ。ライアード様ならご自身の執務室なのでは?」
そこにはどうして自分がそのようなことを聞かれるのかわからないと言わんばかりの怪訝な表情しか見受けられない。
それ即ちリルフェの話に矛盾が生じるのだ。
「では……私が先程までどこにいたのかは知っているか?」
「え?いいえ。けれど先ほどリルフェがお茶会中にミシェル様は今日はお楽しみの真っ最中だと口にしておりましたし、こちらでそこの新しい恋人と戯れておられたのかと少し不快に思っておりました」
どうやら事実だったようですねとミシェルのバスローブ姿を見て冷たい眼差しを送られたが、それ故に彼女の言葉に嘘はないなと言うのを見て取ることができた。
「そうか。わかった。リルフェ……ティアはどうやら完全に無実の様だぞ?今回の拉致事件はお前が裏で糸を引いたのではないのか?」
そうして鋭く切り込むとたちまちリルフェは狼狽え始めた。
「な、何の事だかわかりませんわ!私は確かにティアから聞いたのです!」
その言葉にティアが盛大に眉を顰める。
「一体何のことですの?」
ここでティアの方も何やら様子がおかしいと気付いたようだ。
そうでなければ自分の名が飛び出してくるはずがない。
「リルフェ。もう一度問う。先程お前は私がアルバートのせいで攫われて、男達に輪姦されたとティアから聞いたと言ったな?それをライアードが助けに行ったのだとも。その話は本当か?」
静かに問われたその質問にティアが驚愕に目を見開くが、リルフェの口は止まらなかった。
「本当でございます!私は確かにティアの口からそう聞きました!」
「なっ…!何を突然そのようなことを…!」
ティアが声を上げるがリルフェはまるで自分の方が正しいのだと言わんばかりにポロポロと涙をこぼし訴えてくる。
「私…その言葉を聞いて居ても立ってもいられなくなって、ミシェル様をお癒ししたいと思いここに飛んでまいったのです!これまで放っていた償いを私にさせてくださいませ!これからは私の全身全霊でミシェル様にご奉仕させていただきますので!」
その言葉にティアは呆然としながらリルフェを見つめている。
それはそうだろう。
まさかこれまで仲良くやっていたはずの相手が自分を陥れてまでミシェルに縋っているのだから。
しかも話の内容的にどうやら全てを仕組み夫に他の男を消しかけたのもリルフェの可能性が高い。
つまりこれは復讐を兼ねつつ自分を売り込むあくどい手口そのものと言えた。
これにはさすがに空いた口が塞がらない。
「愚かなことを……」
ガックリと項垂れたティアにミシェルは一瞥を送るとリルフェへと向き直り冷たい一言を送る。
「リルフェ。今の話でお前が今回の件の黒幕だと白状したも同じだと……わかってはいないのか?」
「え?」
「私の見る限りティアは今回の件には関与していないように見えるのだが?」
「……え?」
恐らくここで事件の件で追及されてもティアから聞いたの一点張りでティアに罪をなすりつけて逃げられると思っていたのだろうが、そんなことができるはずもない。
そのためにミシェルは先にティアの無実を確認したのだから……。
「リルフェ。この罪は重いぞ?」
最早逃げられないとやっと悟ったのか、リルフェがカタカタと震えだす。
「わ…私は何も知りません。何もやっておりません。私は……っ!」
必死に言い繕うが絶対に目線を合わせようとしないのが良い証拠だった。
「実行犯の口を塞げばバレないと思ったか?今回の件では私だけではなくシリィまで巻き込まれている。お前はあわよくばシリィと私の不倫騒動もでっち上げようとでも思ったのではないか?それ即ち王宮内のバランスを崩すと……知っていての重罪とも取れるが?」
その言葉に白を切る気でいたはずのリルフェが慌てて声を上げる。
「そ、そのようなことにまで考えが及ぶはずがございません!私はそのようなつもりは一切ございませんでした!私はただそこの男に復讐して、妻としてミシェル様を奪い返したかっただけでございます!シリィ様はたまたま巻き込まれただけで私の本意では…っ!」
そこまで口にしたところであっと蒼白になって黙り込む。
「…………馬鹿な事を。アル。悪いが衛兵を呼んでこの重罪人を連行させてくれるか?」
「かしこまりました」
そしてアルバートが速やかにリルフェを縛り上げ衛兵を呼びに行く。
「ミシェル様!ご慈悲を!」
リルフェが泣き叫ぶがミシェルとしては正直許しがたい気持ちでいっぱいだった。
「お前は私と同じ目に合ってもその言葉が言えるのか?」
幸いアルバートのお蔭で然程気にせずに済んではいるが、ミシェルとしてはリルフェのせいで他の男に抱かれる羽目になったと言うのが腹立たしくて仕方がなかった。
「お、お許しください!お許しください!」
そうしてみっともなく叫ぶリルフェに目を遣った後で、そっとティアの方へと目を向ける。
「ティア。お前の目から見て相当の罰とはなんだと思う?」
「そうですね。これはさすがに私にも庇うことは出来かねますので、皇太子拉致及び凌辱及び第二王子の婚約者の拉致、不審者の手引きを含めた謀略その他諸々の重罪により一族全ての貴族位剥奪及び国外追放、並びに本人の死罪が適当かと」
「……その通りだな」
ティアは沈鬱な表情ながらも皇太子妃に相応しい正当な言葉を口にしてくる。
意図してではなくとも、今回の一件は王宮内のバランスを崩し、下手をすれば国を傾けかねない程の重罪なのだ。
そんな大事件を皇太子妃が企てたと言うのはとても許されるものではない。
けれどそれをリルフェは理解しようともせず、ティアに対して憎悪と共に罵倒の言葉を叩きつけた。
「この偽善者!貴女だってあの騎士に腹を立てていたくせに!」
「お黙りなさい。同じ皇太子妃として私は貴女を恥ずかしく思います。たとえミシェル様に見限られようと私達は皇太子妃なのですよ?国家を揺るがすような策略をすべきではないのです」
実に正論だがリルフェはそうは思えなかったのだろう。
「私は貴方の為も思って動いたのよ?!二人で皇太子妃として…未来の王妃として目障りな邪魔者を消したいわねって話していたじゃない!」
「愚痴を溢すのと策略を巡らせ実行に移すのとでは大違いですわ。私はそこまで短絡的で浅はかな行動を起こすほど落ちぶれたつもりはございません」
きっぱりとそうしてティアが言い放った所で衛兵がやってきて騒ぐリルフェを連行していく。
「ティア!このっ、裏切り者────!!」
そうして最後の最後まで叫びながらリルフェは牢へと連れて行かれてしまった。
「……ミシェル様。この度の件は誠に申し訳ございません。図らずも私が彼女を唆してしまった形となった事、心よりお詫び申し上げます」
「…………」
「私にできることがあれば何なりとお申し付けください。如何様な処罰も謹んでお受けいたします」
そうして頭を下げるティアだが、気丈に振る舞いつつもその手は微かに震えている。
一歩間違えば自分も同じ道を辿るのだとわかっているのだろう。
そんなティアにミシェルは静かに口を開いた。
「ティア。お前は以前私を人形のようだと口にした。そんなお前から見て今の私はどう映る?」
その言葉にティアがそっと顔を上げゆっくりと返事を返す。
「…恐れながら以前とは全く違うように見受けられます」
「と言うと?」
「暫くお顔を見ない間に、より輝くように美しく魅力的になられたと……。それがそこの騎士によるものであると目に見えてわかるだけに、私も彼女も…悔しく思った次第でございます」
「そうか…」
そうしてミシェルは申し訳なさそうに笑った後、アルバートへと向き直った。
「アル。お前との仲はずっと続けたいと思っているが、ティアとの関係も…これから改善していくことは許してもらえるだろうか?」
その言葉にアルバートもまた静かに答えを返す。
「もちろんです。ティア様はミシェル様の奥方なのですから」
***
「それで……こうなったわけですか」
「そうだ」
それから数日後、そこには昼の休憩で一緒に昼食を摂るミシェルとティアの姿があった。
傍から見ると以前と比べ仲良くなったような皇太子夫妻の姿だが、内実は少し違っている。
「まさかミシェル様に息抜きの話し相手にとご指名されるとは……思いもしませんでしたわ」
そう。夜はアルバートとの時間だからと言われ、ティアは夫婦仲の改善と言う周囲への建前の元、昼食や茶に付き合うことになったのだ。
それは妃である自分からのアルバートへの風当たりを弱めるとともに牽制も含められており、実にミシェルらしい行動だと思った。
それだけミシェルはアルバートの事を大切に想っているのだろう事がよくわかる。
「確かにその一面も大きくはあるが……リルフェの件もあるし、私としてはこれでもティアの事も気に掛けているつもりだ」
さすがにリルフェのやったことは事が事だけに王宮内は大騒ぎになった。
そしてリルフェと仲の良かったティアも加担したのではないかと口さがない者は噂を流したりもしている。
当然それを真に受ける者もいて、ティアへの風当たりがきつくなりそうな気配はあった。
それ故に先手を打ったのだとミシェルは言う。
こうして二人で仲良く昼食を摂っている姿がある限り、迂闊にティアに手を出してくる者もそうそうは現れないだろう。
「それは…ありがとうございます」
正直ミシェルが自分の事も考えてくれたのは嬉しいと思った。
リルフェのせいでその場で彼女共々切り捨てられてもおかしくはない状況だったのだからそう考えるのは至極当然だ。
そして随分と人間らしく表情豊かになった夫へと視線を向ける。
こうして見ると本当に以前とは大違いの表情の豊かさだ。
穏やかに微笑む姿は人形と言うよりも天使と言ってもいいだろう。
そこにあるのは以前にも増して思わず目を奪われるほどの美しさ。
しかも、男達に穢されたなど到底信じられないほどミシェルは穏やかな空気に包まれている。
それもこれもアルバートのお蔭なのだろう。
「それにしても、女性よりもお綺麗なのは狡いと思いますわ」
「綺麗と言われても私は何も嬉しくはないが?」
「それはミシェル様が男性だからです。女性は常に美を追求するものなのです」
「そうか。確かにティアは結婚当初よりもより美しくなった気がするな。女性は年を重ねるほどに美しくなるものだと聞いたことがあるがどうやら本当のようだ」
そうやってこれまで見せてくれたことがない笑みを浮かべてくれるミシェルに思わず頬を染めてしまう自分がいた。
どうして自分はこれまでこの人を人形のようだと蔑むことしかできなかったのだろう?
アルバートではなく自分がこの表情を引き出してあげられていれば、また違った結婚生活が待っていたかもしれないのにと思えて仕方がない。
「やっぱり悔しいですわ」
「?」
これではアルバートに負けたとしか思えないではないか。
正直完敗だ。
「ミシェル様。これは私からの一意見ですが、アルバート殿の立場は早めに明確になさった方が宜しいですわ。具体的には王宮内に早めに部屋を用意し、ミシェル様の特別な方なのだとアピールなさるのがよろしいかと」
けれどその意見にミシェルは驚いたように目を丸くした。
「まさかお前からそんな意見が聞けるとは思いもしなかったな」
「私も…お相手がアルバート殿でなければわざわざこんな認めるような発言は致しません。認めるに足る相手と思えばこその提案でございます」
そうしてツンと澄ましながら素っ気なく口にしたものの、自分がアルバートを認めているのがちゃんと伝わったのか、ミシェルが嬉しそうに破顔した。
「そうか…」
「~~~~~っ!」
本当に今更だが、夫に恋をしてしまった自分は一体この先どうすればいいのか────。
ただ見ていることしかできない自分が悲しすぎる。
こうしてある意味最大の報復だと悔しく思いながら、ティアは日々を過ごすことになったのだった。
「ミシェル様!シリィ!お二人ともご無事でよかった!」
二人の無事な姿を確認しステファンが心底安堵したように泣き笑いの表情を浮かべ、そのままミシェルの前で跪く。
「ミシェル様。主人である貴方をお護り仕切れず申し訳ございません。この不始末は如何様にも」
「いや。ステファンこそ無事で良かった。私のせいで命を落とすようなことだけはして欲しくない。どうかそれだけは忘れないでくれ」
ミシェルから言われたそんな言葉に、ステファンはグッと拳を握りしめ深々と頭を下げた。
その時、思いがけずその背後────遠目にではあったがミシェルの妃の姿が見えた。
その姿に自分の中でまるでパズルのピースが合わさるかのように合点がいくのを感じてしまう。
証拠がないから何とも言いようがないが、恐らくこの事件において屋敷の主を唆したのは彼女だろう。
その事から双子の黒魔道士の主人は別だと言うこともまた同時に確信した。
彼らの主人はミシェルを犯した後殺せと言っていたらしいが、ミシェルの妻がそれを望むとは到底思えないからだ。
恐らく彼女が望んだのは精々男に犯させるという所までだろう。
屋敷の主は何やら他にも企んでいそうだったが、斬り捨てたのは早計だっただろうか?
とは言えやはりあの双子の魔道士だけでも殺さずにいて正解だった。
後で問い質し、これはしっかりと調べる必要がありそうだ。
(それにしても……)
これから王宮内には更なる混乱が広がることだろう。
とは言え後のことはミシェル次第。
皇太子妃としては単純に嫉妬からミシェルとアルバートの仲が壊れるよう仕向けたつもりなのだろうが、それは今回空振りに終わったと言ってもいい。
それほどアルバートの対応は自分の目から見ても完璧だった。
正直シリィを庇ってもらったことには感謝しているが、いくら兄でも他の男に犯されたとあっては心に深い傷が残ってしまうだろうと心配していたのだ。
ロイドに頼んで記憶操作をしようにもミシェルはロイドを嫌っているため恐らく近寄らせても貰えないだろうと気を揉んでいた。
ここで最悪病んで心が壊れでもしたら、それこそ自分を王にと推す声が抑えられなくなってしまうところだった。
けれどアルバートはまさに溺愛と言った様子でミシェルを包み込み、最終的に自分しか目に入らないようにあっという間にミシェルを虜にしてしまった。
あれならもうミシェルはアルバートに任せておけば大丈夫だろう。
(まあ内容が内容だけにシリィには聞かせたくなかったが……)
あの一連の話を耳にして、アルバートを気に入っているロイドは『やっぱり面白い奴だ』とこっそり肩を震わせていたのだが、シリィやシュバルツはどうしてミシェルが元気になったのか全く分からなかったとしきりに首を傾げていた。
普通に考えて理解できないのは間違いない。
あれは自分には考えつかない手法だったと言える。
「では兄上。私はシリィを部屋に送っていきますので」
何はともあれ今はミシェルよりもシリィの方の心のケアを優先させるべきだろう。
シリィは自分のせいでミシェルが男達に犯されたと気に病んでいるのだから……。
「シリィ。行こうか」
そうしてそっと腰を抱いて歩き出したのだが、シリィはミシェルが気になるようでしきりにそちらを見遣っていた。
***
「んぅ…アル……」
部屋に戻ってソファで口づけを交わしていると、突如扉が勢いよく開かれ、そこから妃が姿を現した。
「ミシェル様!」
「え…?リルフェ?」
そこにはいつものおっとりした面影がない妻、リルフェがいた。
ミシェルのうっとりしていた表情が、急に現実に戻されたかのように引き締まる。
「ノックもなしにいきなりなんだ?」
リルフェを責めるようにそうして言葉を紡ぐが、リルフェは真っ直ぐにこちらへとやってきて二人を引き離した。
「ティアから聞きました!この男のせいでミシェル様が酷い目にあったと!」
「……?」
「私がお慰めいたしますので、今すぐこんな酷い男とはお別れください!」
そうしてグイグイとアルバートを押しのけリルフェがミシェルの腕の中へと身を委ねてくる。
「ちょっと待て!いきなり意味の分からないことを言ってくるな!」
そんなリルフェにミシェルが声を上げるがリルフェは何故か涙目だった。
「ですが!ミシェル様はこの男のせいで攫われて男達に輪姦されたと伺いました!それをライアード様が助けに行かれたと…!妻を蔑ろにして男と付き合うから、よからぬ輩がよからぬことを考えるのです!もうこのような男のことは捨て置いて、妻である私をお側にお置き下さい!」
うるうると目を潤ませながらビシッとアルバートを指さすリルフェにミシェルも頭を抱えてしまう。
「……リルフェ。その話はティアに聞いたと言ったが、それは本当か?」
「そうですわ!」
「悪いがその話はどうにも信じ難い。ティアを呼び出すから少し待て」
「そんなもの、しらばっくれるに違いありませんわ!」
「何故だ?」
「ティアはミシェル様を傷つけるような言葉はもう二度と言わないと言っておりましたもの。たとえ知っていたとしても口は割らないと思います」
その言葉にアルバートは違和感を感じた。
なんだか話が変だ。
それはきっとミシェルも同じ考えなのだろう。
大きく息を吐いてリンリンとベルを鳴らし侍女を呼んだ。
「ミシェル様。お呼びでしょうか?」
「ああ。悪いがティアを至急で呼んできてもらえるか?」
「かしこまりました」
そして暫くしたところでティアが毅然とした態度でやってきた。
「ミシェル様。珍しくお呼びと伺いましたが……」
そしてリルフェの姿を見たところで一瞬不思議そうな表情を浮かべた。
「リルフェまで呼び出した……と言うことではないようですが?」
恐らくリルフェの態度からそう感じ取ったのだろう。
なかなか聡明な妃だ。
「ああ。ティア。すまないがライアードが先程までどこにいたのかお前は知っているか?」
「……?さあ。ライアード様ならご自身の執務室なのでは?」
そこにはどうして自分がそのようなことを聞かれるのかわからないと言わんばかりの怪訝な表情しか見受けられない。
それ即ちリルフェの話に矛盾が生じるのだ。
「では……私が先程までどこにいたのかは知っているか?」
「え?いいえ。けれど先ほどリルフェがお茶会中にミシェル様は今日はお楽しみの真っ最中だと口にしておりましたし、こちらでそこの新しい恋人と戯れておられたのかと少し不快に思っておりました」
どうやら事実だったようですねとミシェルのバスローブ姿を見て冷たい眼差しを送られたが、それ故に彼女の言葉に嘘はないなと言うのを見て取ることができた。
「そうか。わかった。リルフェ……ティアはどうやら完全に無実の様だぞ?今回の拉致事件はお前が裏で糸を引いたのではないのか?」
そうして鋭く切り込むとたちまちリルフェは狼狽え始めた。
「な、何の事だかわかりませんわ!私は確かにティアから聞いたのです!」
その言葉にティアが盛大に眉を顰める。
「一体何のことですの?」
ここでティアの方も何やら様子がおかしいと気付いたようだ。
そうでなければ自分の名が飛び出してくるはずがない。
「リルフェ。もう一度問う。先程お前は私がアルバートのせいで攫われて、男達に輪姦されたとティアから聞いたと言ったな?それをライアードが助けに行ったのだとも。その話は本当か?」
静かに問われたその質問にティアが驚愕に目を見開くが、リルフェの口は止まらなかった。
「本当でございます!私は確かにティアの口からそう聞きました!」
「なっ…!何を突然そのようなことを…!」
ティアが声を上げるがリルフェはまるで自分の方が正しいのだと言わんばかりにポロポロと涙をこぼし訴えてくる。
「私…その言葉を聞いて居ても立ってもいられなくなって、ミシェル様をお癒ししたいと思いここに飛んでまいったのです!これまで放っていた償いを私にさせてくださいませ!これからは私の全身全霊でミシェル様にご奉仕させていただきますので!」
その言葉にティアは呆然としながらリルフェを見つめている。
それはそうだろう。
まさかこれまで仲良くやっていたはずの相手が自分を陥れてまでミシェルに縋っているのだから。
しかも話の内容的にどうやら全てを仕組み夫に他の男を消しかけたのもリルフェの可能性が高い。
つまりこれは復讐を兼ねつつ自分を売り込むあくどい手口そのものと言えた。
これにはさすがに空いた口が塞がらない。
「愚かなことを……」
ガックリと項垂れたティアにミシェルは一瞥を送るとリルフェへと向き直り冷たい一言を送る。
「リルフェ。今の話でお前が今回の件の黒幕だと白状したも同じだと……わかってはいないのか?」
「え?」
「私の見る限りティアは今回の件には関与していないように見えるのだが?」
「……え?」
恐らくここで事件の件で追及されてもティアから聞いたの一点張りでティアに罪をなすりつけて逃げられると思っていたのだろうが、そんなことができるはずもない。
そのためにミシェルは先にティアの無実を確認したのだから……。
「リルフェ。この罪は重いぞ?」
最早逃げられないとやっと悟ったのか、リルフェがカタカタと震えだす。
「わ…私は何も知りません。何もやっておりません。私は……っ!」
必死に言い繕うが絶対に目線を合わせようとしないのが良い証拠だった。
「実行犯の口を塞げばバレないと思ったか?今回の件では私だけではなくシリィまで巻き込まれている。お前はあわよくばシリィと私の不倫騒動もでっち上げようとでも思ったのではないか?それ即ち王宮内のバランスを崩すと……知っていての重罪とも取れるが?」
その言葉に白を切る気でいたはずのリルフェが慌てて声を上げる。
「そ、そのようなことにまで考えが及ぶはずがございません!私はそのようなつもりは一切ございませんでした!私はただそこの男に復讐して、妻としてミシェル様を奪い返したかっただけでございます!シリィ様はたまたま巻き込まれただけで私の本意では…っ!」
そこまで口にしたところであっと蒼白になって黙り込む。
「…………馬鹿な事を。アル。悪いが衛兵を呼んでこの重罪人を連行させてくれるか?」
「かしこまりました」
そしてアルバートが速やかにリルフェを縛り上げ衛兵を呼びに行く。
「ミシェル様!ご慈悲を!」
リルフェが泣き叫ぶがミシェルとしては正直許しがたい気持ちでいっぱいだった。
「お前は私と同じ目に合ってもその言葉が言えるのか?」
幸いアルバートのお蔭で然程気にせずに済んではいるが、ミシェルとしてはリルフェのせいで他の男に抱かれる羽目になったと言うのが腹立たしくて仕方がなかった。
「お、お許しください!お許しください!」
そうしてみっともなく叫ぶリルフェに目を遣った後で、そっとティアの方へと目を向ける。
「ティア。お前の目から見て相当の罰とはなんだと思う?」
「そうですね。これはさすがに私にも庇うことは出来かねますので、皇太子拉致及び凌辱及び第二王子の婚約者の拉致、不審者の手引きを含めた謀略その他諸々の重罪により一族全ての貴族位剥奪及び国外追放、並びに本人の死罪が適当かと」
「……その通りだな」
ティアは沈鬱な表情ながらも皇太子妃に相応しい正当な言葉を口にしてくる。
意図してではなくとも、今回の一件は王宮内のバランスを崩し、下手をすれば国を傾けかねない程の重罪なのだ。
そんな大事件を皇太子妃が企てたと言うのはとても許されるものではない。
けれどそれをリルフェは理解しようともせず、ティアに対して憎悪と共に罵倒の言葉を叩きつけた。
「この偽善者!貴女だってあの騎士に腹を立てていたくせに!」
「お黙りなさい。同じ皇太子妃として私は貴女を恥ずかしく思います。たとえミシェル様に見限られようと私達は皇太子妃なのですよ?国家を揺るがすような策略をすべきではないのです」
実に正論だがリルフェはそうは思えなかったのだろう。
「私は貴方の為も思って動いたのよ?!二人で皇太子妃として…未来の王妃として目障りな邪魔者を消したいわねって話していたじゃない!」
「愚痴を溢すのと策略を巡らせ実行に移すのとでは大違いですわ。私はそこまで短絡的で浅はかな行動を起こすほど落ちぶれたつもりはございません」
きっぱりとそうしてティアが言い放った所で衛兵がやってきて騒ぐリルフェを連行していく。
「ティア!このっ、裏切り者────!!」
そうして最後の最後まで叫びながらリルフェは牢へと連れて行かれてしまった。
「……ミシェル様。この度の件は誠に申し訳ございません。図らずも私が彼女を唆してしまった形となった事、心よりお詫び申し上げます」
「…………」
「私にできることがあれば何なりとお申し付けください。如何様な処罰も謹んでお受けいたします」
そうして頭を下げるティアだが、気丈に振る舞いつつもその手は微かに震えている。
一歩間違えば自分も同じ道を辿るのだとわかっているのだろう。
そんなティアにミシェルは静かに口を開いた。
「ティア。お前は以前私を人形のようだと口にした。そんなお前から見て今の私はどう映る?」
その言葉にティアがそっと顔を上げゆっくりと返事を返す。
「…恐れながら以前とは全く違うように見受けられます」
「と言うと?」
「暫くお顔を見ない間に、より輝くように美しく魅力的になられたと……。それがそこの騎士によるものであると目に見えてわかるだけに、私も彼女も…悔しく思った次第でございます」
「そうか…」
そうしてミシェルは申し訳なさそうに笑った後、アルバートへと向き直った。
「アル。お前との仲はずっと続けたいと思っているが、ティアとの関係も…これから改善していくことは許してもらえるだろうか?」
その言葉にアルバートもまた静かに答えを返す。
「もちろんです。ティア様はミシェル様の奥方なのですから」
***
「それで……こうなったわけですか」
「そうだ」
それから数日後、そこには昼の休憩で一緒に昼食を摂るミシェルとティアの姿があった。
傍から見ると以前と比べ仲良くなったような皇太子夫妻の姿だが、内実は少し違っている。
「まさかミシェル様に息抜きの話し相手にとご指名されるとは……思いもしませんでしたわ」
そう。夜はアルバートとの時間だからと言われ、ティアは夫婦仲の改善と言う周囲への建前の元、昼食や茶に付き合うことになったのだ。
それは妃である自分からのアルバートへの風当たりを弱めるとともに牽制も含められており、実にミシェルらしい行動だと思った。
それだけミシェルはアルバートの事を大切に想っているのだろう事がよくわかる。
「確かにその一面も大きくはあるが……リルフェの件もあるし、私としてはこれでもティアの事も気に掛けているつもりだ」
さすがにリルフェのやったことは事が事だけに王宮内は大騒ぎになった。
そしてリルフェと仲の良かったティアも加担したのではないかと口さがない者は噂を流したりもしている。
当然それを真に受ける者もいて、ティアへの風当たりがきつくなりそうな気配はあった。
それ故に先手を打ったのだとミシェルは言う。
こうして二人で仲良く昼食を摂っている姿がある限り、迂闊にティアに手を出してくる者もそうそうは現れないだろう。
「それは…ありがとうございます」
正直ミシェルが自分の事も考えてくれたのは嬉しいと思った。
リルフェのせいでその場で彼女共々切り捨てられてもおかしくはない状況だったのだからそう考えるのは至極当然だ。
そして随分と人間らしく表情豊かになった夫へと視線を向ける。
こうして見ると本当に以前とは大違いの表情の豊かさだ。
穏やかに微笑む姿は人形と言うよりも天使と言ってもいいだろう。
そこにあるのは以前にも増して思わず目を奪われるほどの美しさ。
しかも、男達に穢されたなど到底信じられないほどミシェルは穏やかな空気に包まれている。
それもこれもアルバートのお蔭なのだろう。
「それにしても、女性よりもお綺麗なのは狡いと思いますわ」
「綺麗と言われても私は何も嬉しくはないが?」
「それはミシェル様が男性だからです。女性は常に美を追求するものなのです」
「そうか。確かにティアは結婚当初よりもより美しくなった気がするな。女性は年を重ねるほどに美しくなるものだと聞いたことがあるがどうやら本当のようだ」
そうやってこれまで見せてくれたことがない笑みを浮かべてくれるミシェルに思わず頬を染めてしまう自分がいた。
どうして自分はこれまでこの人を人形のようだと蔑むことしかできなかったのだろう?
アルバートではなく自分がこの表情を引き出してあげられていれば、また違った結婚生活が待っていたかもしれないのにと思えて仕方がない。
「やっぱり悔しいですわ」
「?」
これではアルバートに負けたとしか思えないではないか。
正直完敗だ。
「ミシェル様。これは私からの一意見ですが、アルバート殿の立場は早めに明確になさった方が宜しいですわ。具体的には王宮内に早めに部屋を用意し、ミシェル様の特別な方なのだとアピールなさるのがよろしいかと」
けれどその意見にミシェルは驚いたように目を丸くした。
「まさかお前からそんな意見が聞けるとは思いもしなかったな」
「私も…お相手がアルバート殿でなければわざわざこんな認めるような発言は致しません。認めるに足る相手と思えばこその提案でございます」
そうしてツンと澄ましながら素っ気なく口にしたものの、自分がアルバートを認めているのがちゃんと伝わったのか、ミシェルが嬉しそうに破顔した。
「そうか…」
「~~~~~っ!」
本当に今更だが、夫に恋をしてしまった自分は一体この先どうすればいいのか────。
ただ見ていることしかできない自分が悲しすぎる。
こうしてある意味最大の報復だと悔しく思いながら、ティアは日々を過ごすことになったのだった。
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