黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第二部番外編 シュバルツ×ロイドの恋模様

4.※夢現(Side.シュバルツ)

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ロイドと夜を過ごすようになり、だいぶ慣れてきた頃それを見つけた。

「ロイド。これローションみたいだけど使ってもいい奴?」

それは確かにローションではあるのだが、わざわざ別室に置かれていたので仕事に使う物かもしれないと思い念のため尋ねたのだが、返ってきた答えは予想外のものだった。

「ああ、それは媚薬入りローションだ。以前ロックウェルと一緒にクレイを可愛がった時に使った奴だな」

実にサラリと言われたが、一体いつの事なのか……。
もしかしてまだ付き合う前のあのカードゲームの日の出来事なのだろうか?
あの時は驚きすぎて叫んでしまったが、確か三人でベッドに寝ていたような気がする。

けれど今ここであれを掘り返すと呆れられるに違いない。
ロイドの事はだいぶわかってきたし、ここでその話を持ち出すのは得策ではないだろう。
そう考えて別な方向へ話を振る。

「ここに置いてあるってことは使ってみてもいいってこと?」

媚薬をロイドに使ったらどんな反応を返してくれるのか…少し興味が湧いた。
けれどそれに対してロイドは不機嫌そうに眉を顰めてしまう。

「仕事に使えるかもしれないと思って置いていただけだ。お前がそんなことを言うなら処分する」

そう言ってさっさとそれを取り上げ使い魔に渡し、すぐさま処分してしまった。
どうやら理性が飛びそうなアイテムはお断りと言うことらしい。
実にロイドらしいが残念でならない。

(可愛いロイドが見られると思ったのにな……)

とは言え言っても仕方がないので、今日も自力でロイドを喜ばせる術を模索しようとそのままベッドへと誘った。
そしていつものようにロイドにリードされつつ楽しんでいたのだが、ふと思い立ったかのようにロイドがその言葉を口にした。

「そう言えば試したい体位があったんだった」

詳しく話を聞くと、クレイ達とした時にロックウェルがその体位がクレイが一番感じる体位なんだと口走ったらしい。

「あのクレイがあっという間に気絶するくらい良かったみたいだから少し気になってたんだ」

どんな感じなのか興味があってとロイドはどこか楽しそうに提案してきた。
ロイドは自分もその体位で気絶するとは考えないのだろうか?
それとも快楽の追及をしたい気持ちの方が強いのか?

(多分後者だろうな)

ロイドの事だからきっとそうに違いない。
こういうところに隙があるんだとわかっているのかいないのか…。
流石に侮り過ぎだろう。
とは言えまだまだテクニックでは敵わないから、自分を小犬と思い込んでくれているところを少しだけ利用させてもらいつつ今日も色々試させてもらおうとその話に飛びついた。



それは寝台の縁に腰掛けながら片足を上げ、奥まで突き上げるという体位で、確かにこれまで試したことのないものだった。

(どんな感じなのかな…)

そう思いながらゆっくりと挿れてみたのだが────。

「ふっ…ふあぁぁああッ!」

挿れた途端ロイドが背筋を震わせながら可愛い声で啼いた。
思わずと言った感じではあったがその声は耳に心地よく響いて、同時にキュッと締め付けられる感じがたまらなく気持ち良かった。

(まずい…。この体位…好きかも)

ロイドが可愛いと言うのも勿論あるが、ピッタリと奥まで収まってロイドを余すところなく味わっている感が凄い。
まるで離さないと言わんばかりに吸い付かれているようで、最高に気持ちいいのだ。
先程までの交わりとはまた全然違う、癖になりそうな良さがある。
取りあえず馴染むまで動かずにうっとりしながら感嘆の息を吐いていると、腕の中でロイドが荒い息を吐いているのを感じた。
見るとやはり涙目でふるふると震えている。
目で『動くな。絶対動くなよ』と訴えてきているのをヒシヒシと感じて、思わず苦笑しそうになった。
恐らくこちらが凄く気持ちよさそうに浸っていたから声を掛け損ねたのだろう。
つくづく気遣いができる男だと思う。
けれど────。

(こういう姿も可愛いんだってわかってないのかな……)

本人は自分の方が経験豊富だからといつだってリードする気満々で、この気遣いだって『余裕をなくした姿を知られたくない』『自分の方が余裕があって当然だ』と言うプライド故の我慢が背景にあってのことだとわかるのだが、自分に余裕がない時にまで無理する必要などないのにと思えて仕方がない。
ここまでくると、いっそいじらしくて可愛いとしか思えないのだが……。

そこでふと思いついて少し意地悪を言ってみることにした。

「ロイド…この体位すっごく気持ちいい…。動いていい?」

ロイドが言いたいことは勿論わかっているが、こちらに余裕がないというのを前面に押し出したらどうするだろうと思ったのだ。
実際あまり余裕はないから説得力はあるはずだ。

「もうロイドが欲しくてしょうがない…。お願い……」

懇願するように切なさを滲ませて許可を求めてみると、少し気持ちに余裕が出たのだろう。
ロイドは少し目を瞠った後で艶っぽく笑った。

「はぁッ…仕方がないな。お前と一緒に溺れるのも悪くはない。特別に許してやる」

余裕がない癖に余裕ぶってみせてくるところが凄くロイドらしくて、益々愛しさが込み上げてしまう。

「ありがとう」

この流れはロイドを乗せるのに効果的のようだと内心ほくそ笑みながら、許可をもらったのをいいことにゆっくりと腰を振り始めた。
きっとこれなら途中でやめろと言ってくることはないだろうし、ロイドのプライドを傷つけることもない。
自分は別にロイドを屈服させたいわけではないし、気持ち良くなってほしいだけなのだ。
できればプライドを叩き折るような屈辱的なことはしたくないと考えている。


自分の事を好きになってほしい。
できれば甘えてほしい。
お前が一番だと…そう言ってほしい。
望むのはただそれだけだから────こっちを見て…。


緩々と腰を振っていた時はまだほんの少しは余裕がありそうなロイドだったが、動きを激しくすると途端に一際大きな嬌声を上げてあっという間に意識を飛ばしてしまった。

「あ…はぁあッ!」

ビクビクと身を震わせていることから、一気にかなりの高みに上ってしまったのだろう。
正直自分も気持ち良すぎて腰が止まらなくて、促されるように奥まで勢いよく注いでしまった。

「うっ…気持ち良すぎる……」

それこそもっともっとしたくなるほどに気持ちがいい。

(どうしよう……)

今日は既に三度イかせた後だし本当はすぐにでも抜いて身を清め、このままゆっくり寝かせてあげるべきなのだろう。
でも名残惜しい気持ちが頭をもたげてくる。
それくらい離れがたかった。

いつもはゆっくり味わえないしっとりとしたロイドの肌をもっと感じていたい。
結局その誘惑には勝てなくて……。

「ロイドのいいところを…しっかり覚えておきたいからもうちょっとだけさせてくれ」

気を失っているから聞こえるわけがないのだが、小さくそう言い訳をしながら再度奥まで深く犯す。
するとコツコツと当たる最奥が気持ちよさそうに自分をキュッと挟み込むかのように収縮してくる。
本当に気持ち良すぎて夢中になってしまいそうだ。

(最高だ…。他にもこれに近い体位はないかな……)

ロイドと二人で気持ち良くなれる体位をもっともっと追究したい。
元々一つの事を突き詰めるのが大好きな研究家気質な面がある為、思考がそちらに向くと同時に色々試してみたくなってしまった。
いつもなら怒られるからできないのだが、初めてロイドの意識を完全に飛ばすことに成功したのだ。
これを機にできれば少し探求してみたい。

「ん~…」

頭の中でいくつかのシュミレーションを纏め、思い切って体位を変え、それを試してみる。
そしてそのままグッと最奥まで差し込んでから、これもなかなかいいかもと満足げに笑んだところでロイドに浅く回復魔法を掛けて軽く揺すってみた。

「んっんっ…ふぁッ?な、に…?」
「ロイド…最高……」
「え?あっ…!」

意識が戻ると同時に戸惑いの声が聞こえたが、それと同時に声に艶が混じり嬌声を上げ始める。

「んぁッ!あ、シュバルツ!やめっ…これダメ…!」

それはそうだろう。さっきと同じようなところを抉られているのだから。

「やっ…嫌だ…!」
「ロイド…好き…大好き…」
「ひぁああぁッ!」

そしてまたビクビクと身を震わせて絶頂へと飛ばしてやる。
それから何度も試したい体位に移行しては軽く回復魔法を掛けると言うことを繰り返していると、思惑通りロイドが夢現と勘違いし始めてくれたので、優しく言い含めた。

「あっあっ…おかしくなる……!」
「大丈夫だから。ほら、掴まって」
「やめろ…ッ!」
「ロイド…夢でくらい甘えていいよ……」
「う……シュバルツ…?」

ロイドが感じすぎて潤んだ目でどこか不思議そうに自分を見つめてくる。

ここが腕の見せ所だ。
伊達にトルテッティで白魔法の研究に携わっていたわけではない。
あまり知られていないが、一口に回復魔法と言っても実は色々と奥が深い。
強く回復せずに最低限の回復魔法をかけ続けると、かけられた相手は次第に身体に軽い疲労が蓄積されて重怠い感覚に見舞われる。
それと共に脳が眠いのだと錯覚を起こし、夢と現実の区別がつきにくくなっていくのだ。
今回はそれを利用させてもらった。

白魔法の極意はある程度心得ているし、上手くできればこれからのロイドとの関係を良い方向に変えていけるはずだ。
三度目をイかせた後だから、タイミング的にも勘違いさせるにはベストなはず……。

「気持ちいいことだけしよう?ほら。ここ、好きだよね?してほしいことは全部してあげるから何でも言って?」
「は…はぁ…。んぅ…魔力交流…もして欲し……」
「いいよ。好きなだけあげる…」

そして甘えるように腕を回し口づけを強請るロイドをそっと抱き寄せ魔力を注いでやる。

「ふぁっ…気持ちいい…!」
「うん。もっともっと酔っていいよ…」

そう言いながらまた突き上げ溺れ合う。

「あっあっ…シュバルツ…!」

この蕩けた表情は今だけは自分だけのもの……。
反則かもしれないけれど、これは間違う事無く自分が引き出した表情なのだ。

「ロイド。気持ちいい?」
「あッ…!ん…ッ!思い切り…突かれるとたまらない…ッ!いいッ!」

正直素直に溢される可愛い声や感じるままに溺れる表情を好きなだけ堪能しながらロイドの好きな体位を追及するのは至福の時だった。

「私をお前でもっと満たして…くれ……」

そんな風に切ない口調で強請られて心弾まないわけがない。
けれどそんなロイドを思うさま堪能し尽くしたところで、ふと我に返った。

(しまった……)

ドロドロになった敷き布に途方に暮れる。
これはさすがに言い逃れができそうにない。

「遣り過ぎた……」

これでは起きた時に夢だと思わせるのは無理があるだろう。
ロイドのプライドの高さから言って、これは流石にバレたら許してもらえないような気がする。
最悪怒りに任せて別れるとでも言われたら大変だ。
こういう時、黒魔道士の記憶操作の術が厄介なのだ。
万が一にでも忘れさせられたらたまったものではない。

(仕方がないな……)

そう思って、そっと気を失うように眠ったロイドを抱き上げ浴室へと向かった。
綺麗に体を洗ってやり、中に出した欲も掻き出し自らもサッとシャワーを浴びる。
そして一通りそれらをやり終えると今度は少し強めに回復魔法を掛けた。

「ロイド……」
「ん…」

先程までの名残なのかスリッと身を寄せてくるロイドが可愛すぎる。
けれど今度はそのままハッと我に返って、次の瞬間思い切り睨み付けられ身を離されてしまった。

「なっ!」
「ロイド。目が覚めた?あの後気を失ったから勝手に洗わせてもらったんだけど……身体は辛くないか?」

困ったように小犬を装うと、ロイドがどこかホッとしたように息を吐く。
どうやらちゃんと夢と思ってくれたらしい。

「大丈夫だ。だが、あの体位はもう絶対にしない!」

ロイドは思い出したかのようにそう断言した。
これは当然最初の体位のことを言っているのだろう。
まさに予想の範囲内だ。
プライドの高いロイドが、意識を飛ばすくらい感じた体位を自ら何度も試したいと言うはずがないのだから。
だからこそ他の似た体位をあれこれ模索したかったというのもある。

「そうか…残念だな。凄く気持ち良かったのに……」
 
そんな内心をおくびにも出さずただ言われたことだけに関してそうして残念そうに肩を落とすと、バツが悪く感じたのだろう。ロイドは気まずそうにフイッと横を向いてしまった。
恐らく自分がやってみたいと言ってやったことだけに、文句を言うのはプライドが邪魔をして言えないのだろう。
さすがにこれ以上からかうのは可哀想だし、怒らせてしまうだけ損なのでそのまま本題へと入る。
なんとか敷き布の件をバレないように上手く処理しなくては…。

「できれば起こさずにゆっくり寝かせてあげたかったんだけど、随分ベッドを汚してしまったから後始末に困って…。無理に起こして悪かった」

真実は語らないが困っているのは事実なので先程までの事には一切触れずただそれだけを口にする。
すると案の定『何だそんなことか』とため息を吐きながらロイドは使い魔へと指示を出した。
これでロイドにバレることもなくドロドロのシーツは綺麗になることだろう。
本当に使い魔様々だ。
けれど次いで言われた言葉が軽く胸へと突き刺さる。

「別に起こしてくれる分には全然構わない。勝手に寝顔を長々見られる方が腹立たしいからな」

確かにそうなのかもしれないが、弱みを見せたくないと思われていると言うことは自分には絶対に甘えたくないと言われているのと同義だ。
そう言われてしまうとそれはそれで寂しい。

「ロイド……」
「なんだ?」
「好き……」

だから……気付けば不安から揺れる瞳で縋るようにそんな言葉を紡いでしまっていた。
しかしその後に返された辛辣なセリフに、思わず頬が緩むのを止めることができない。

「ふん。相変わらず犬みたいな奴だな。そんなに私が好きなら私を夢中にさせられるくらい成長してみることだ」

だってこれは傍に居ていいと言う許可の言葉なのだ……。

(嬉しい…。嬉しい嬉しい嬉しい!)

やっぱりこんなロイドも大好きだ。

「勿論!全力で挑むから」

さっきの閨を見る限りそれも不可能なことではないだろう。
夢現の中とは言え、今日は甘えてもらえたのが何よりの快挙だった。
ロイドをまた夢現の中溺れさせ、どこまでも知り尽くして、いつか自分じゃないとだめだと思わせたいとさえ思った。
素直じゃないロイドをこの腕の中に閉じ込めて、甘く酔わせられるくらい成長したい。
ロイドは小犬より爪を隠している鷹の方が好みと言っていたし、これくらいを目標にして丁度いいはずだ。
そう思いながらそっとほくそ笑んでいると、ほら行くぞと手を引かれた。

「何を考えているのか知らないが、精々お子様なりに頑張ってみろ」

全部受け止めてやるからと言う、そこに隠された言葉を感じ取ってまた笑みを浮かべてしまう。

(本当にロイドは面倒見がよくて優しくて…いい男だな)

口が悪かろうとなんだろうとそれがロイドの本質なのだ。
それをわかっていない者が多すぎる。
けれどそれを隠したい気持ちがあるのも本当で……。

どうかこんなロイドの良さに、自分以外が気づきませんように。
そして誰にも魅入られませんように────。

そんな願いを込めて、シュバルツは慈しむように微笑んだ。



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