黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~

25.※決意

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久方ぶりのミシェルからの誘い────。

その頃には既に自分の中は嫉妬心で満たされ、暴走寸前だった。

そんなことにも気づかぬままにミシェルが自分に笑みを浮かべてくれる。

「突然呼び出してすまないな。少し嫌なことがあったから息抜きがしたくて……」
「いいえ。またお声掛けいただき嬉しく思っております」

お茶を飲みながらもこの後どうしようかと思考を巡らすどうしようもない自分がいた。

ミシェルからすれば自分はただのストレス解消。性欲処理係に過ぎない。
そんなことはわかっている。
けれどミシェルを想う気持ちをもうどうしても止めることができない自分がいた。

(ミシェル様は私のものだ……!)

誰にも渡したくないなら無理やりにでもこちらを向かせるしかないではないか。
あんな痴態を見てもいいのは他の誰でもない────自分だけ。
その立場を誰かに奪われるつもりはない。




「アル…早く…」

何も知らないミシェルは今日も下穿きだけを寛げ、ベッドで腰を高く上げて可愛くねだってくる。

「久しぶりですししっかり慣らさせてください」

そして嫉妬心を押し殺し、これまで同様そこを丁寧に舐め上げながら指で慣らしてやった。

「ああ…アルに舐められるの好きぃ……」

そうして素直に言ってくるミシェルは本当に淫乱だと思う。
けれどそんなミシェルが大好きでたまらなかった。

「ね…お願い。も、ちょうだい……」

早くいつものように玩具で可愛がってとうっとりとした目で訴えてくるミシェルが可愛すぎて、胸が弾んでしまう。
久しぶりの痴態に興奮してしまう自分を止められなかった。
早くミシェルを自分のものにしてしまいたい。
できれば今すぐ繋がってしまいたい。
けれど────嫌われたくはない。
だから……試しにちょっと趣向を変えてみようと思った。

「ミシェル様?今日は目隠しをして、どの玩具を入れられたのか当てるゲームでもしてみましょうか?」
「え?」
「久しぶりですし、折角なので楽しみながら沢山気持ち良くなって下さい」

そうして返事を待たず黒い布でミシェルの目を塞ぐ。

「まずは一つ目……」

そうして念のためジェルで中を潤した後、いきなりミシェルが大好きな前立腺を突き上げるのに適した玩具を入れてやる。

「あっあぁん!これッ、好きなやつッ!」
「そうですよ。これでここをこうされるのが大好きなんですよね?」
「ひぁあああああッ!イくうぅッ!」
「まだダメですよ。ドライで飛ぶのは構いませんが、折角のゲームなんですから前は10回正解してからイカせてあげましょうね」

そうして前を戒めるとミシェルは悲鳴を上げた。

「やっ…!どうして?!」

驚くのも無理はないだろう。
これまではそんな意地悪をしたことなどないのだから。
けれどロイドへの嫉妬も手伝って、ここは譲る気は無かった。

「では次ですよ?」

そうして今度は別の玩具を手に取り奥まで犯す。

「ヒッ…ひぃいいいいッ!」

ガクガクとミシェルの腰が震えるが、押さえつけて奥までかき混ぜた。
それと共に手前のボタンを押して奥でジェルを弾けさせる。

「あんんッ!」
「さあこれなら答えはわかるでしょう?」
「あ…あぁ…これぇ…。奥に注ぐやつぅ……」

ビクビクと意識を飛ばしそうになりながらもそうやって答えたミシェルに満足げに笑ってやる。

「正解です。これもお好きですものね」

グチュグチュと抜き差ししながらその名の通り奥まで可愛がってやると、理性を崩壊させて身悶え始めた。
どうやら前を戒められると覿面にダメらしい。

「ひぃいいいい!ひぃいいいい!」

敷き布を握り締めながら滅茶苦茶に腰を振りイかせてくれと言わんばかりに乱れまくる。

「やぁだぁ!離して!前でイかせてぇ!」
「まだダメですよ。ほら。お好きなこちらは可愛がって差し上げますから」

そうして体位を変えてやり、根元を戒めながらも鈴口をスリスリと指の腹で可愛がり、後ろの玩具も激しく動かしてやる。

「あひぃいいいい!」

それと同時にミシェルの前を解放してやると、感極まったのかトロトロと白濁を吐き出しながら気を失ってしまった。

「ミシェル様……今日はこのままお目覚めになるまで抱かせていただきますね」

そうしてそっと口づけを落とし、玩具を全て片付け目隠しも外してゆっくりと大きく滾った自身をミシェルへと挿入する。

ミシェルの中に入るのは久方ぶりだった。
柔らかく綻んだそこが心地よく締め付けながら迎え入れてくれるのを感じるのはまさに至福の時……。

「はぁ…ミシェル様…貴方はなんて罪作りなんでしょう?」

普段は清廉で不器用で取っつきにくい印象のある皇太子だと言うのに、閨ではどこまでも淫靡でそのギャップが本当にたまらない。
綺麗なものを汚しているような背徳感に思わず酔ってしまいそうな気がして…ふるりと首を振ってしまう。
自分は何を考えているのか────。

「ミシェル様…今日はたっぷり可愛がって差し上げます」

そうして意識のないミシェルを揺さぶりながら、ゆっくりと奥まで蹂躙した。


***


ミシェルはゆさゆさと身体が揺すられるような感覚にゆっくりと意識を浮上させ、途端に激しい快楽に襲われた。

「ヒッ?!いやぁああぁッ!」

誰かが後ろから自分の後孔を犯している。
いつもの硬質な玩具の感覚とは違う確かな熱を体内に感じると共に、パンパンと激しく打ちつける卑猥な音が耳まで犯していく。

これは一体何なのか?
何がどうして自分はこんなことになっているのだろう?

今日はシュバルツとの交渉が決裂したからイライラとした気持ちをどうしても抑えることができなかった。
そうなってくるとアルバートに癒されたいと思うのも必然で、最近出来ていなかった性欲処理もできるし一石二鳥だと思い、部屋へと招き入れたはずだった。
いつもの様にお茶を飲み、いつもの様に誘った。
その後玩具で責められたところまでは覚えているのだが────。

「あんんっ!」

そもそも今自分を犯しているのは誰なのだろう?
本当にアルバートなのだろうか?
望んでも挿れてくれなかったアルバートがこんなことをしてくるとは正直信じ難い。
アルバートが相手なら全然犯されても構わないが…もしそうでなかったら?
そう考えると怖くて怖くて仕方がなくて、半ば恐慌状態に陥ってしまった。

「やっ…アルッ、アルッ!助けてッ!」

必死にアルバートの名を呼び敷き布を握りしめる。
そんな自分の中で熱塊が大きく膨れ上がり、奥を抉るように突き込んで来た。

「いやぁあああッ!そこ、ダメぇ…ッ!!」

頭が真っ白になるほどの快感に襲われてビクビクと身体を大きく震わせるが、自分を犯している相手は動きを止めてはくれない。

「アッ…イッてる!イッてるからぁ!やめてぇ!ひやぁあああッ!そこダメェ!あひっ!ひぃいいいッ!イくッイくぅうぅうッ!」

最早呂律が回らなくなりそうなほど乱されて、悶え狂うかのような喘ぎを漏らしてしまう。
そこにはプライドの欠片すら無い。
アルバートの手で自分はどこまでも淫乱な体へといつのまにか変えられてしまっていた。
それでも自分の気持ちは全く変わらなかった。
いつの間にかこれほどまでにアルバートに依存してしまっている自分が情けないと思ったが、それでもアルバートが好きで好きで仕方がない。

(アル…お前にだけ抱かれたい……)

そうして翻弄されるままに叫びをあげていると、突然男の動きが止まり奥に熱い迸りを感じた。
初めて中へと出されてしまった感覚に思わず泣きたくなる。

「あふ…ん…。あ…つぃい…。うぅ…アルッ、アルぅ……」

玩具のジェルとは違い注がれたそれは熱を持ちジワリと奥で主張してくる。
それはまるで『もうお前は自分のものだ』と言わんばかりだ。
けれど誰とも知れぬ男に貫かれようと、自分が求めているのはたった一人だった。

「アル…アル……」

誰かのものになるならそれは他の誰でもない、アルバートが良かった。
そうして泣きながら虚ろな目でまた揺すられていると、そっと男が動きを止めてゆっくりと指の腹で涙を拭ってくる。

「ミシェル様…泣かないでください。お叱りは後でいくらでもお受けいたします」

その声は自分がよく知るアルバートのもので、それを聞くと同時に安堵と喜びが身を駆け抜けた。

「ア……ル?」
「はい」
「う…アルッ…アル……」

本当はずっとこうして抱いて欲しかった。
玩具なんて入れて欲しく無い。
アルバートのもので可愛がって欲しかった。
けれど自分達の関係はどこまでも歪で…結局アルバートは王子である自分の命令に背けないから、仕方なく付き合ってくれているのだと悲しく思っていた。
けれどこんな形とは言えアルバートは自分の意思で自分を抱いてくれた。
それがただただ嬉しかった。

「アル…もっとして…」

あまりの嬉しさに思わずそう強請ってしまう。

「貴方がそれを望んでくださるのなら……」

けれど返されたのはどこまでも義務と言わんばかりの言葉でしかなかった。
正直自分にはアルバートの気持ちがさっぱりわからない。

彼は一体どういう気持ちで自分を抱いたのだろうか?
単に玩具で弄んでいる内に挿れたくなったと言うただそれだけの事だったのだろうか?
それとも理性が飛んだ自分が挿れてくれとでも強請ってしまったのか?

いずれにせよ自分が望むような答えはもらえないのだろうなと思った。

「……私は義務で抱かれたくはない」

だから思わず本音がポロリと口からこぼれ落ちてしまった。
自分は好きだから抱かれたいのだ。
それが少しでも伝わって欲しい。
伝わっても尚義務で返されるのなら、それは拒絶でしかない。

(アルの気持ちが知りたい……)

それは切実な想いだった。
けれど……それに対してアルバートは曖昧に微笑むだけだ。

「ミシェル様?私は貴方に忠義を尽くす騎士です。それはこれまでもこれからも変わることはありません。私のことは好きにお使いください」

そんな言葉と同時に硬さを取り戻し大きくなった男根が一気にスライドしながら奥まで入り込んでくる。

「あんッ!」
「主君の望みを聞き叶えることは私の役目です」
「ひっ…!」

その言葉の数々に結局彼は義務感から抱いてるに過ぎないのだと打ちのめされながらも、彼から与えられる刺激に嬌声を上げてしまう。

「今日は私の全てで満足させて差し上げますので」

そうして笑ったアルバートに思わず目を奪われた瞬間、突如彼の動きが早くなった。
どこまでも本当の自分の気持ちをわかってもらえないのが酷く悲しかった。
こんな風に主従だからと割り切られたくはなかった。
これなら抱かれない方がいっそ良かったかもしれない。
もう身も心もズタズタにされた気分だった。

もういい。
胸が張り裂けそうになりながら涙がポロポロとこぼれ落ちていく。

アルバートがそのつもりならもう二度と抱かれたりしない。
そろそろこんな虚しい関係には終止符を打たねばならないのだ。
それがよくわかった。
だから…これで最後だと思いながら、縋るようにアルバートへと手を伸ばし、好きなだけ口づけを交わした。

これでこの恋を最後にするために────…。


***


ミシェルが自分の腕の中で乱れ啼く。

「あぁっ!きゃひぃいいいッ!ひぃいいいッ!あんっ!きゃんんッ!」

開発され尽くした奥はこれ以上ないほど気持ちがいいのか、何度も欲を吐き出し、出し尽くした後も何度もドライでイキまくっていた。
何度も何度も登りつめたせいで理性はとうに手放され、最早ミシェルの口からは悲鳴しか出てこない。
そのくせ離したくないと言わんばかりに中を締め付け、ヒクヒクと卑猥に入り口を蠢かせるのだ。
身体はこれほどまでに自分を求めてくれていると言うのに、どうして先程ミシェルはあんなことを言ったのだろうか?


『私は義務で抱かれたくはない』


義務?義務で主君にこんなことをするはずがないではないか。
誰よりも愛おしいと思っているから抱いていると言うのに……。
これまで何度も『お慕いしております』と気持ちを伝えてきたつもりなのに、どうしてそんなセリフを口にされるのだろう?
『ずっと傍でお仕えさせてください』そんな言葉では足りないのだろうか?

だから自分はミシェルの騎士だと口にした。
貴方のために忠義を尽くし、決して裏切らない。
主を想い、主のために主の望むことをするのだと。
けれど言葉を重ねれば重ねるほどにミシェルの顔に悲痛な色が滲み、最後には涙を流して泣かれてしまった。
どうしても伝わらない気持ちがやがて諦めへと変わっていく。

────もういい。

「今日は私の全てで満足させて差し上げますので」

そうだそうしよう────そんな気持ちになった。

「ミシェル様…こんなにヒクつかせて…。もっと奥まで欲しいんですか?仕方のない方ですね」
「ひぅ…ぅ…。あひぃ……」
「今日は私自身でお好きなところを好きなだけ突いて差し上げますからね」
「あ…あぁ…ひゃぁあああぁあッ!」

そうして更に責め立て、気絶しても尚も許さず、ミシェルは自分のものだと刻みつけるかのように明け方まで犯し尽くした。

「ミシェル様…奥に注ぐご無礼をお許しください」

そうして何度目かの精を奥へと吐き出そうとした時、まるでそれを搾り取ろうとするかのようにミシェルの中も締まり、堪らず呻きを上げる。

「クッ…。ミシェル様ッ!」

ドプッと中へと注いだところで掻き抱くようにミシェルを抱き締め、暫く余韻に浸ってからそっと身を離す。

(もう絶対に離しません…)

これからはこの身でミシェルの慰めになろう。
こうして抱いているうちにもしかしたら気持ちがちゃんと伝わるかもしれない。
玩具のように冷たいものではなく、温かいこの身で愛を伝えていけば何かが変わるかもしれない。

(愛しています…ミシェル様)

そして想いを込めてゆっくりと口づけを落とした。




翌朝、目覚めた時には声を出すことすらできず、動くことができなくなったミシェルがベッドで呻きを上げていた。
流石にやり過ぎてしまったと反省するが、やっとミシェルを自分のものにできたという満足感でいっぱいで、自分の中はどこか嬉しい気持ちで満ち溢れていた。
恨みがましげに向けられた視線さえどこか愛おしく感じられる。

「ミシェル様。お身体を綺麗にさせていただきますので」

そうしてシャワーで綺麗に汚れを落とし、一時的にソファで休んでもらいながら手早くシーツを替えてまたベッドへと運び直した。
その間ミシェルは文句も紡げず、不機嫌そうにするばかり。
文句を言いたくても言えない上に体が辛く動けないのも要因の一つなのだろう。

(仕事に支障をきたしたのもまずかったか……)

そう思ったところでそうだと名案が浮かんだ。
トルテッティから来たシュバルツは白魔道士で回復魔法を使えるのだという事を思い出したのだ。
ミシェルとしてはロイドの恋人に頼りたくないかも知れないが、他の白魔道士に頼むよりは彼に頼む方がずっとマシだろうと思い至った。
それに彼はどう見ても襲われる側の人間だ。
ミシェルと二人にしたとしても絶対に大丈夫だという確信があった。
だから声を掛けてここへと連れて来たのだが…思った通りミシェルからは怒りの眼差しを向けられてしまう。

「私も仕事がありますので、お叱りはまた夕刻にでも」

そうしてシュバルツへと後を託し、部屋を辞したのだった。



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