黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~

18.※カウントダウン

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アルバートから嬉しい言葉をもらったその日はまさに悲喜交々と言える日だった。

愛されているような錯覚を起こす優しい愛撫と、こちらを思いやるような優しい言葉が嬉しい。
けれどそれと同時に、立場は弁えていると言わんばかりの言葉の数々が心に刺さる。
その言葉はまるで勘違いするなと言われているようで悲しくて仕方がなかった。

わかっている。
わかっているから……お願いだからそれを敢えて突きつけないで────。
そうして複雑な心境の中、その日を終えた。



その次の日から始まるのはまたこれまでと変わらない日々。
昼間は仕事を精力的にこなし、空いた時間ができれば勉学に励む。
夜はアルとの嬉しいけれど悲しい逢瀬。

空しいと言ってしまえばそれまでだが、アルとの触れ合いがないのは最早考えられなかった。
もういっそ何も考えずにこの快楽の海に溺れてしまおうか────?

諦めに近しい感情に侵されるのにそう時間は掛からなかった。


***


「あっあんんっ!あんっはぁんッ!」

毎日の逢瀬の中、すっかりその張り型に慣れたミシェルが可愛い声で啼き続ける。
前に刺さっている飾りは先端を可愛がる短い管だ。
後ろが怖いと泣いていたから用意したものだったが、こちらは殊の外気に入ったようだった。
それをツプツプと出し入れしてやるとミシェルはより一層腰を揺らして気持ちよさそうに喘いでくれる。

「あっアルぅ…もっとぉ……」

こうして娼婦のように淫らにねだってくるミシェルがたまらない。
最初は恥じらいを見せていたミシェルだったが、何度も嬌声を上げ続け、ある所まで達したところで吹っ切れてしまったようだ。
気づけばこれまで以上に素直にねだり、素直に溺れるようになっていた。

「アル…早く……!」

色香を振り撒きながら足を開いて誘ってくるそんな姿にゴクリと喉が鳴る。

「あ、きやぁぁあああッ!」

後ろの張り型を一度ギリギリまで引き抜き、前立腺を擦り上げるように押し付けて奥まで一気に入れ込みそこをグリグリと小刻みに擦ってやると、ミシェルは身悶えながらドライで飛んだ。

「ひ……う……」

ビクンビクンと放心状態で身を震わせるミシェルを視姦しながら、前の管をゆっくりと抜いてやる。
そこから流れ落ちるのはトロリとした美味しそうな蜜。
ここ最近はこうして激しく奥を嬲って満足させた後ここを口で可愛がるのが常だった。

「ふ…ふぁああぁ…ッ」

ジュルジュルと一滴残らず啜ってやるとミシェルが感嘆の声を上げながら腰を振る。
自分はトロンと蕩けきったその表情を見るのが本当に大好きだった。




それから月日と共に手を変え品を変えミシェルを可愛がり続ける日は続いた。

「ああっ!アルッ!もっと奥まで突いてぇ!」

バックで玩具を入れられてミシェルが叫ぶ。
普段生真面目なミシェルがこうして嬌声を上げながら自分にねだる姿に、思わず愉悦が滲んでしまう。

「ミシェル様は本当に玩具が大好きですね」
「ああっ!言わないでッ!」
「今日はまた新しい玩具で可愛がって差し上げましょうね」

そしてそれまで入れていた玩具をズルッと抜いてまた別の玩具を入れてやる。

「ああっ!アルッ!好きッ、好きッ!」
「そんなに気に入りましたか?もっと奥まで入れてかき混ぜて差し上げますね」
「ひぎぃいい!そこはダメぇ!」
「ミシェル様…我慢なさらず、どうぞお好きなだけイッてください」

どうやら当たったところが相当良かったらしい。
前と一緒に可愛がると、悲鳴を上げて達してしまった。

「そこっ…!ゴリゴリだめっ!イくゥぅぅぅ!」

気づけば自分の手で沢山の玩具で開発されたミシェルは快楽の虜になってしまっていた。
翌日の仕事に支障が出ないようにと気を遣い過ぎたのも悪かったのかもしれない。

要するに『短時間で満足して終わる』ために行為をエスカレートし過ぎてしまった結果だった。
今の自分に最早ミシェルの知らない顔などないだろう。

「んやぁああああッ!奥がたまらないぃいいッ!ひっ…同時に責めないでぇえッ!あひゃぁああああッ!」

最早開発し尽くしたミシェルを気絶させるのも手馴れたものだ。
一時主人をドMに育ててしまったと苦悩したこともあるのだが、申し訳なさそうに『少し控えましょうか?』と口にしたところでミシェルから泣かれそうになったので自分もそこである意味吹っ切れた。
涙目で『淫乱な私に嫌気がさしたか?』などと問われたら、そんな事はないと答えるしかないだろう。
自分がそうやって育てたのだ。
嫌気なんてさすはずがない。
寧ろ可愛すぎてもっと色んな顔を見せて欲しいくらいだ。

正直ミシェルの気持ちはよくわからない。自分の事を少なからず想ってくれているような素振りを見せてくれる事があるから、その度に想いを自分なりに伝えてみるのだが、その都度それは勘違いだと思い知らされる羽目になる。
大抵は憂うように泣きそうな顔をされるか、傷ついたように辛そうにされるか、冷たく突き放すように背を向けられるかなのだ。
その態度は初めの頃から全く変わらない。

嫌われているわけではない。
最初の頃に言われた贖罪とも違うように思う。
だから単純に自分との行為に溺れてしまっているだけなのだろうという結論に至った。
でもそれでもいいのだ。
彼は本来自分の手の届かない皇太子という立場なのだ。
こうして触れさせてもらえるだけで幸せと考えるべきだろう。

相変わらず妃達はミシェルを放置しているし、他にライバルらしいライバルもいない。
一時期気にしていたロイドは相変わらず例のアストラスの黒魔道士にゾッコンだと聞く。
こうしている限りミシェルは自分を見てくれるし、他に行くこともない。
何も問題はない。
自分達はこのまま何も変わらず溺れ続けるのだと、そう信じていた……。
ソレーユに彼らがやってくるまでは。


***


事の始まりはミシェルの弟ライアードが結婚したい相手がいると申し出たことに始まった。
それは一時婚約していたアストラスの王宮魔道士という事で、最初は王も難色を示したらしい。
けれど一度離れて初めて自分の気持ちに気付いたのだと誠意を尽くして熱く頼み込んだライアードに、最終的に心打たれて認めたらしい。

それはいい。
彼が幸せになるのは良い事だし自分も他の王宮の者達とめでたいと言って祝いの言葉を口にしていた。
そんなある日、いよいよその魔道士が王宮へとやってきた。
何故かトルテッティの王族と共に……。

ライアードの相手であるシリィと言う白魔道士はライアードが執着するだけあってとても美しい綺麗な少女だった。
そしてトルテッティの王族である白魔道士の方はミシェルとはタイプが違うが、色白で綺麗な金の髪を持つ可愛らしい青年だった。
最初はもしや両方迎えるのかと皆に驚かれたのだが、聞くところによると彼はロイドの恋人でこれからこちらに滞在するという事だった。
シリィの友人と言うのもあり、相談相手にもなるから一緒に連れてきたらしい。
まさかロイドがあのタイプを恋人に持つとは意外だったが、彼をからかう楽しげな姿を遠目に見て、ああ失恋を乗り越えたのだなと思った。

けれどその話をミシェルにしたところ、彼の表情が一変した。
いつも自分の前では可愛いミシェルが、怒りの表情をくっきりと露わにしたのだ。
その後、あんなにも仲睦まじそうな二人を見て憎々しげに睨みつけている姿を見掛けてショックを受けた。

(やはりミシェル様はロイドの事がお好きなのだろうか?)

思わず忘れそうになっていたそんな思いに駆られてしまう。
けれどそれを直接ぶつけても、あり得ないという答えしか返ってこなかった。
それはつまり自分では気づかぬまま、心囚われているということなのかと遣る瀬無い思いばかりが募っていく。
ミシェルからそんな強い想いを向けてもらえるロイドが正直羨ましかった。

自分達の関係は言わばセフレ以下の関係に過ぎないのだとヒシヒシと実感してしまう。
ミシェルがこれほど強い感情を自分に向けてくれることなどないのだから────。



そんな中、ミシェルから夜に会う時間を減らして欲しいと言われてしまった。
正直あまりに急な事で気になったが、皇太子然として決定事項とばかりに言われてしまっては一騎士として意見することなどできるはずもない。
仕方なく大人しく従い、少し距離を置いて騎士として礼を執った。

けれど毎日可愛がっていたミシェルにあまり会えなくなったのは寂しくて、恋しくて、昼間でもミシェルのことで頭がいっぱいになってしまう自分がいた。

(ミシェル様……)

もしかしてミシェルはあの二人を引き離そうとしているのかもしれない。
力ずくで別れさせて、好きだと告白するのかもしれない。
自分の頭の中で繰り広げられるのはいつだって三角関係の最中にいるミシェルの姿────。
このままロイドの方へと行かれてしまったら……?
日増しに膨れ上がる不安は最早どうしようもなくて、そんな不安を払拭するため王宮に行くたびにミシェルの姿を探す毎日。

そんな中、シュバルツに接触しているミシェルの姿を見掛けて心臓が凍るかと思った。
ロイドと別れろと────そう釘を刺しに行ったのかと思ったのだ。
妄想が一気に現実味を増して、嫌な予感ばかりが込み上げる。

(嫌だ……)

ミシェルを誰にも渡したくなんてなかった。
ロイドとミシェルが上手くいったらもう二度と自分に声が掛かることもなくなってしまうだろう。
そんなこと────耐えられるはずがなかった。
それならいっそ想いを伝えてミシェルを抱いてしまいたいとさえ思った。
責任はとると言って押し倒してしまいたかった。

(ミシェル様────)

そんな風に心が悲鳴を上げた頃、ミシェルから久方ぶりに声が掛けられた。
それはこの関係を壊すに十分なタイミングとしか言いようがなかった────。



────────────────

※この続きは25~になります。
暫くライアードサイドの話になりますのでご了承ください。

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