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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~
12.※歪な関係
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ミシェルは一体何故こんなことになったのかわからぬままに、その後もアルバートに自慰を手伝ってもらう日々が続いた。
帰る時に騎士として付き従い、部屋に着くと同時に部屋へと引きずり込まれて口づけられる。
後はもうなし崩しだった。
「ア…ル……」
拒めばよかったのだろう。
けれど好きな相手にこんなことをされて拒否できる程自分は強くはなかった。
別に身体を重ねるわけではない。
口づけと…自慰の手伝い。ただそれだけのこと…。
そこに意味を問うてはいけない。
彼は妻に構ってもらえない寂しい自分のためを思って、仕事の一貫で好意としてしてくれているに過ぎない。
たとえそこに真実などなく、相手がアルバートだからこそ可愛がられたいと願っているなど…口にさえしなければわからないものだ。
明確な位置など定めず、曖昧にさえしておけばこうしてアルバートは自分に触れてくれる。
それ自体が虚しい行為だと…わかっていてもどうしてもやめられない弱い自分がいた。
「あ…アル…アル…っ」
その大きな手でイカせて欲しい。
「あ…先…気持ちいい…」
もっともっと可愛がって欲しい。
「あっあっ…アルッアルッ!」
ビュクビュクッと欲を吐き出すといつも終わってしまうこの行為が切なくて、幾度目かの時点でもっととねだるように口づけた。
正直に言うと、アルバートにならもう抱かれてもよかった。
こうしてただ自慰を手伝ってもらうだけでは足りないと、次第にそう思ってしまった欲張りな自分がいたのだ。
だからできれば愛してると口にしてその胸に飛び込みたかった。
けれど────今の立場がそれに歯止めをかける。
普通に考えたら妻が二人もいるのに他に恋人を作るのは許されない行為だろう。
もうどうすればいいのか全く分からなくて身動きが取れない。
今はもう何でも相談できるジャスティンはいない。
こんな事……誰にも相談できない。
何が正解で何が間違っているのか────。
そんな風に答えを出せぬままにダラダラと欲に負けてこんな歪な関係を続けてしまう。
だからもう悩みの元であるアルバートに縋るしかなかった。
ゆっくりと自ら唇を重ね、訴えかけるように熱い眼差しを向ける。
すると優しい声が自分へと問うてくれた。
「ミシェル様。どうなさいましたか?」
「…アル…お願いだ。今日だけでいい。もう少しだけ……」
傍にいて欲しい────。
それから…何でもいい。大好きなアルバートからの言葉が欲しかった────。
***
イッた後の熱を灯したミシェルの目が自分へと向けられ、まるで何かを訴えるかのように切なく口づけられる。
良い方に取れば誘われていると見るのが妥当だろうが、この場合は……?
「ミシェル様。どうなさいましたか?」
「…アル…お願いだ。今日だけでいい。もう少しだけ……」
そんな言葉に少し考え、口を開く。
「今のでは足りなかったのでしょうか?」
「違ッ…!……ッわない…」
最初は勢いよく否定しようとしたミシェルだったが、腕の中で尻すぼみになりながらも頰を染めて小さく違わないと言ったのを聞き逃さなかった。
少なくとももっとして欲しいと言ってくれるくらいには自分を求めてくれていると知り、舞い上がるほど嬉しい気持ちになる。
だからこちらも少しだけ自分の欲をぶつけてみようと思った。
嫌だと言われたら引き下がればいいのだ。
「では……私に口でお慰めする許可をお与えください」
流石に引かれてしまうだろうか?
そう思いながらそっとミシェルを窺うと、驚いたような顔をしつつもやがて気恥ずかしげに俯きながらそっと許可を与えてくれた。
***
自分を寝台の縁へと座らせ、その前にアルバートが静かに跪き、そっと自分のものを口へと含む。
最初は言われた意味が分からなかった。
けれどそれが口淫をしても良いかと尋ねられたのだと認識し、一気に体が熱くなるのを感じた。
もらいたかった言葉とは違ったが、それでも十分嬉しかった。
まさかそんなことをしてもらえるなんて思ってもみなかったのだから……。
「あっ…!」
これは夢ではない。
アルの口が自分のものを慰めてくれている。
「う…うぅ…」
しかもその舌は、最初はまるで慈しむように優しく…そして次いで味わうようにゆっくりと蠢き自身を嬲っていった。
「ア…アル……」
気持ち良くて気持ち良くてたまらない。
妃達に口淫をされた時は全く気持ちいいと感じたことはなかったのに、どうして相手がアルバートだとこれほど感じてしまうのだろう?
「んんん…っ」
そうして促されるままに追い上げられ、あっという間に白濁を吐き出してしまったのだが…。
「ミシェル様。足りない時はいつでも仰ってください。私が心を込めてお慰めいたしますので」
あくまでも皇太子である自分と騎士である自分の立場を崩さないアルバートにまた泣きたくなる。
「アル…私は……」
もっとお前に近づきたいのだと、そう言おうとした。
それなのにその言葉はまたしても最後まで言わせてもらえない。
「ミシェル様。私は貴方の忠実な騎士。何なりとお申し付けください」
「~~~~っ!もういい!下がれ!」
たった一言…たった一言愛していると……そう言ってくれたなら、ずっと好きだったと口にできるのに、アルバートの口から出る言葉はいつだって義務的で、そんな言葉に胸が抉られる。
(苦しい……)
一方通行の恋心が悲鳴を上げる。
ミシェルはアルバートが大人しく下がっていった扉を見つめ、ただ泣き続けた。
***
ある日ライアードはふと兄の様子がおかしなことに気がついた。
表面上はいつも通り振舞っているのだが、何というか覇気が無い。
これまでロイドの姿を視界に入れただけで睨みつけていたのに、それさえ見えていないかのようにため息ばかりが増えている。
これは絶対に何かあると思った。
ここ暫くずっと仕事帰りにアルバートを置いているのと何か関係があるのだろうか?
「ロイド」
「はっ…」
「兄上が腑抜けているようだ。要因を探ってこい」
「かしこまりました」
そしてすぐに報告が上がってきたのだが、どうやら兄はアルバートとただならぬ仲になりかけているとの事だった。
「いかがいたしましょう?」
「……アルバートの裏を取ってから判断する。何か企んでいたり、兄上を脅そうなどとしたら即座に始末しろ」
「かしこまりました」
(全く……兄上も何を考えているのか…)
最近妃達から距離を置かれているとは感じていたがそれゆえの事なのか?
これは慎重に動く必要があるなと思いながら、ロイドの追加報告を待ちながら仕事へと戻った。
帰る時に騎士として付き従い、部屋に着くと同時に部屋へと引きずり込まれて口づけられる。
後はもうなし崩しだった。
「ア…ル……」
拒めばよかったのだろう。
けれど好きな相手にこんなことをされて拒否できる程自分は強くはなかった。
別に身体を重ねるわけではない。
口づけと…自慰の手伝い。ただそれだけのこと…。
そこに意味を問うてはいけない。
彼は妻に構ってもらえない寂しい自分のためを思って、仕事の一貫で好意としてしてくれているに過ぎない。
たとえそこに真実などなく、相手がアルバートだからこそ可愛がられたいと願っているなど…口にさえしなければわからないものだ。
明確な位置など定めず、曖昧にさえしておけばこうしてアルバートは自分に触れてくれる。
それ自体が虚しい行為だと…わかっていてもどうしてもやめられない弱い自分がいた。
「あ…アル…アル…っ」
その大きな手でイカせて欲しい。
「あ…先…気持ちいい…」
もっともっと可愛がって欲しい。
「あっあっ…アルッアルッ!」
ビュクビュクッと欲を吐き出すといつも終わってしまうこの行為が切なくて、幾度目かの時点でもっととねだるように口づけた。
正直に言うと、アルバートにならもう抱かれてもよかった。
こうしてただ自慰を手伝ってもらうだけでは足りないと、次第にそう思ってしまった欲張りな自分がいたのだ。
だからできれば愛してると口にしてその胸に飛び込みたかった。
けれど────今の立場がそれに歯止めをかける。
普通に考えたら妻が二人もいるのに他に恋人を作るのは許されない行為だろう。
もうどうすればいいのか全く分からなくて身動きが取れない。
今はもう何でも相談できるジャスティンはいない。
こんな事……誰にも相談できない。
何が正解で何が間違っているのか────。
そんな風に答えを出せぬままにダラダラと欲に負けてこんな歪な関係を続けてしまう。
だからもう悩みの元であるアルバートに縋るしかなかった。
ゆっくりと自ら唇を重ね、訴えかけるように熱い眼差しを向ける。
すると優しい声が自分へと問うてくれた。
「ミシェル様。どうなさいましたか?」
「…アル…お願いだ。今日だけでいい。もう少しだけ……」
傍にいて欲しい────。
それから…何でもいい。大好きなアルバートからの言葉が欲しかった────。
***
イッた後の熱を灯したミシェルの目が自分へと向けられ、まるで何かを訴えるかのように切なく口づけられる。
良い方に取れば誘われていると見るのが妥当だろうが、この場合は……?
「ミシェル様。どうなさいましたか?」
「…アル…お願いだ。今日だけでいい。もう少しだけ……」
そんな言葉に少し考え、口を開く。
「今のでは足りなかったのでしょうか?」
「違ッ…!……ッわない…」
最初は勢いよく否定しようとしたミシェルだったが、腕の中で尻すぼみになりながらも頰を染めて小さく違わないと言ったのを聞き逃さなかった。
少なくとももっとして欲しいと言ってくれるくらいには自分を求めてくれていると知り、舞い上がるほど嬉しい気持ちになる。
だからこちらも少しだけ自分の欲をぶつけてみようと思った。
嫌だと言われたら引き下がればいいのだ。
「では……私に口でお慰めする許可をお与えください」
流石に引かれてしまうだろうか?
そう思いながらそっとミシェルを窺うと、驚いたような顔をしつつもやがて気恥ずかしげに俯きながらそっと許可を与えてくれた。
***
自分を寝台の縁へと座らせ、その前にアルバートが静かに跪き、そっと自分のものを口へと含む。
最初は言われた意味が分からなかった。
けれどそれが口淫をしても良いかと尋ねられたのだと認識し、一気に体が熱くなるのを感じた。
もらいたかった言葉とは違ったが、それでも十分嬉しかった。
まさかそんなことをしてもらえるなんて思ってもみなかったのだから……。
「あっ…!」
これは夢ではない。
アルの口が自分のものを慰めてくれている。
「う…うぅ…」
しかもその舌は、最初はまるで慈しむように優しく…そして次いで味わうようにゆっくりと蠢き自身を嬲っていった。
「ア…アル……」
気持ち良くて気持ち良くてたまらない。
妃達に口淫をされた時は全く気持ちいいと感じたことはなかったのに、どうして相手がアルバートだとこれほど感じてしまうのだろう?
「んんん…っ」
そうして促されるままに追い上げられ、あっという間に白濁を吐き出してしまったのだが…。
「ミシェル様。足りない時はいつでも仰ってください。私が心を込めてお慰めいたしますので」
あくまでも皇太子である自分と騎士である自分の立場を崩さないアルバートにまた泣きたくなる。
「アル…私は……」
もっとお前に近づきたいのだと、そう言おうとした。
それなのにその言葉はまたしても最後まで言わせてもらえない。
「ミシェル様。私は貴方の忠実な騎士。何なりとお申し付けください」
「~~~~っ!もういい!下がれ!」
たった一言…たった一言愛していると……そう言ってくれたなら、ずっと好きだったと口にできるのに、アルバートの口から出る言葉はいつだって義務的で、そんな言葉に胸が抉られる。
(苦しい……)
一方通行の恋心が悲鳴を上げる。
ミシェルはアルバートが大人しく下がっていった扉を見つめ、ただ泣き続けた。
***
ある日ライアードはふと兄の様子がおかしなことに気がついた。
表面上はいつも通り振舞っているのだが、何というか覇気が無い。
これまでロイドの姿を視界に入れただけで睨みつけていたのに、それさえ見えていないかのようにため息ばかりが増えている。
これは絶対に何かあると思った。
ここ暫くずっと仕事帰りにアルバートを置いているのと何か関係があるのだろうか?
「ロイド」
「はっ…」
「兄上が腑抜けているようだ。要因を探ってこい」
「かしこまりました」
そしてすぐに報告が上がってきたのだが、どうやら兄はアルバートとただならぬ仲になりかけているとの事だった。
「いかがいたしましょう?」
「……アルバートの裏を取ってから判断する。何か企んでいたり、兄上を脅そうなどとしたら即座に始末しろ」
「かしこまりました」
(全く……兄上も何を考えているのか…)
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