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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~
11.※口づけ
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北の庭園近くの回廊を歩いている時に、珍しく前方にミシェルの姿を確認した。
いつもはこの辺りに足を運ぶことがないミシェルがここに居ると言うのを不思議に思い、何かあるのかと視線を辿ったところでその先の四阿にライアードと黒衣の魔道士が二人いることに気が付いた。
一人は茶色い髪にヘーゼルの瞳の優しげな容貌の黒魔道士。
もう一人は黒髪碧眼の少し冷たい印象を受ける端麗な黒魔道士。
恐らくヘーゼルの瞳の方がロイドと言う魔道士なのだろうと言うのがすぐに見て取れた。
ミシェルはその黒魔道士達を暫し眺めたところでホッと息を吐いたのだが、その後ロイドの方を熱く見つめている姿を見て、ヘンリーの言葉がふと頭に浮かんだ。
ミシェルがロイドに振り向いてもらいたくて……というやつだ。
あの眼差しはどう見ても好意的には見えないが、いつまでも自分を見てくれないロイドに対する苛立ちのようにも感じられて────気づけば嫉妬のような感情に駆られてミシェルの腕を掴んでいる自分がいた。
「ミシェル様……」
そんな黒魔道士なんて見つめないで、自分の方を見てほしい────。
そう思って熱い眼差しを送ってみるが、ミシェルから窺えるのはただただ驚いたような不思議そうな眼差しだけ…。
「アルバート?」
だから────どうしてもこちらを向いてほしくて…思わずここがどこかと言うことも忘れて口づけてしまっている自分がいた。
自分だけをその瞳に映してほしい。
自分だけを想ってほしい。
そう願うことがどれほど身の程知らずなのかわかってはいたけれど、それでも焦がれてしまう想いを抑えきれなくて熱く口づけを交わしてしまう。
けれどそれだけの想いを込めたにもかかわらず、そっと離した後ミシェルから告げられたのはどこまでもつれない言葉だった。
「アルバート…こういった事を職務中にするのは感心しない」
それはどこまでも眼中にないと言われたようで、心にグサリと棘が突き刺さるが、ここで引いたらおしまいだ。
「では……職務中でなければ構わないでしょうか?」
一縷の望みをかけてそう尋ねると、ミシェルは暫し黙った後小さく頷きを落とした。
それは十分了承ととってよいもので、思わず喜びに満たされていくのを感じる。
嫌だったらそもそも受け入れてはくれないだろうから、これはまだ望みはあると……そう考えて差し支えはないはずだ。
「では…そのように」
ミシェルが受け入れてくれるのなら、いけるところまでいってみたい。
どこかで線引きをされたらそこで一旦引いてチャンスを待てばいい。
そう────ライバルが誰もいないなら黙って傍に控えるだけで安心できたが、ロイドと言う憂いの種があるのなら動こうと思った。
黙ってミシェルが他の男の物になるのを指を咥えて見ているなんてありえない。
一介の魔道士にチャンスが与えられると言うのなら一介の騎士にだってチャンスがあってもいいはずではないか。
(ミシェル様……貴方が欲しい────)
妃達がミシェルをいらないと言うのなら自分が独り占めしてもいいはずだ。
(貴方を必ず幸せにして差し上げますから……どうか私に振り向いてください)
そうしてそっとミシェルを想いながら仕事をこなし、夕刻を待った。
***
「ミシェル様。本日もお送りさせていただきます」
そうして礼を執ったアルバートにミシェルは一瞥だけを送りそのまま歩き出した。
どこまでも騎士然としたその姿に、アルバートの本心が全く見えてこない。
今日のあの口づけは一体なんだったのか……。
冷静になってから考えてはみたが、いくら考えても結論は出なかった。
どうしてアルバートはあんな場所で自分に口づけをしたのだろう?
どうしてあんな真剣な眼差しで自分を見つめていたのだろう?
好き…?それこそまさかだ。
行動は兎も角として、アルバートの口から飛び出す言葉は全て騎士ゆえの言葉ばかり。
そこには騎士としての役目を全うしたいと言う気持ちしかないことだろう。
期待するだけ無駄だ。
それでも────期待しては落ち込むというのを繰り返すのは酷く滑稽かもしれないが、ほんの僅かな希望に縋りたいと思うのは愚かなことだろうか?
それだけ自分の中のアルバートへの気持ちは貪欲なまでに膨らんでいたのだ。
(キスを……してほしい)
口づけだけならきっと浮気にはならないはずだ。
それくらいなら……きっと許される。
誰に?何に?
そんなことはわからないけれど、どこか背徳感に苛まれながらいつもよりも少しだけ足早に部屋へと帰った。
「アル…」
いつもの様に部屋の前で足を止め、アルバートの方へと向き直る。
「はっ…」
そうして騎士としての礼を執るアルバートにやはり今日の口づけは戯れだったのかと聞きたくなったが、そうだと言われるのが怖くて────結局いつものセリフを口にした。
「今日もご苦労だった。戻っていい」
本当は口づけてほしい。
帰らないでほしい。
そう思っていても怖くて怖くて口にはできない。
だから逃げるように部屋の扉を開けて、そのまま室内へと歩を進めたのだが────。
気付けばパタンと扉は閉められて、アルバートの腕の中へと囚われ唇を塞がれていた。
「ん…んぅ…」
夢にまで見たアルバートとのキス……。
その甘美な口づけにあっという間に夢中になる。
今ここには邪魔をするような者は誰もいない。
この部屋には二人きり────。
そんな安堵感からアルバートへと自ら身を寄せてもっとと強請るかのように口づけを交わす。
こうして抱きつくとその鍛え上げられた身体を感じて、変わったなと思った。
背もずっと伸びて、逞しくなった。
あの頃と変わらないのはその優しげな瞳と柔らかな髪だけ。
「アル……」
戯れでもいい。
ほんの少しだけでもいい。
このひと時だけでいいからこうして身を寄せて温もりを感じていたかった。
***
ミシェルの口から『戻っていい』と言われた時、正直ショックが大きかった。
今日……職務中でなければ口づけていいと確かに頷いてくれたはずなのに、ミシェルはあっさりと自室の扉を開けてそのまま帰ろうとしてしまう。
そうして希望をあっさりと失くしてしまうつもりなのかと…そう思った時にはもう室内へと踏み込み、ミシェルを抱き込み口づけている自分がいた。
逃がさない。離したくない。だからもしミシェルが暴れても力を弱める気はなかった。
けれどミシェルは今日の昼時同様、抵抗することなく自分の口づけを受け入れてくれる。
そっと閉じられたその瞳に揺れるのは、髪と同様のアイスブロンドの長い睫。
(本当に綺麗だ……)
初めて会った時からこの綺麗な人に夢中になった。
兄にせがんで何度も何度も話を聞いた、自分にとって近くて遠い存在。
まるで人形の様に綺麗なのに、何故か皆からは冷たそうに見えると不評だった。
「どうしてあんなに綺麗なのに皆がそんな風に言うのか私には理解できません!」
まだ十代の自分はそれが納得できなくてよく兄に愚痴を溢していたのだが、その度に兄は優しい笑みを浮かべていた。
「ミシェル様は不器用な方だから誤解されやすいんだ。本当は努力家で勤勉な国民思いの良い方だよ」
見た目だけで誤解されるのが可哀想だと言うのなら、そこをフォローしてあげられる人間になれとよく言われたものだ。
自分はもうあの頃の兄よりも五年も長く生きているけれど、あの時の兄のようにはなかなかなれない。
今思えば本当によくできた兄だったと思う。
ミシェルが頼りにしていたのも当然と言えば当然だったのだ。
「ミシェル様……」
そっと大切なその想い人の身体を抱きしめていると、力が抜けたのかミシェルが自ら身体を寄せてそっと抱きついてきた。
そしてまるでもっとと強請るかのように熱のこもった眼差しを向けられて、そのまま引き寄せられるように口づけを交わしてしまう。
その姿はまるで自分の事が好きなのだと錯覚してしまいそうなほどだ。
そして────密着して初めて分かったことがあった。
(……感じている)
そう。気づけばミシェルの下腹が熱くなっていて、それが自分へと押し当てられていたのだ。
最初は自分の口づけで感じてくれたのだろうかと嬉しくなったのだが、ここでヘンリーの言葉が脳裏によぎった。
『最近ミシェル様は奥方達からさえ距離を置かれているらしいぞ?』
それはつまり長らく誰とも寝ていないと言うことなのではないだろうか?
だから単に溜まっていてこうなったのだという……ただそれだけのことなのではないか?
けれどこれはある意味チャンスだとも思えた。
自分がミシェルを手に入れるためには、少しずつ隙を見つけて攻めていくしかないのだから……。
「アル……」
どこか甘い声で自分の名を呼ぶミシェルに優しい笑みを浮かべながらゆっくりと固くなったそこを撫でてやると、ミシェルの身がビクッと震え戸惑うように自分を見つめてくる。
「あ……」
「ミシェル様…もしやお妃様達と上手くいかれていないのでは?」
「う……」
「もし…ご相談に乗れるのでしたら、どうぞ気にせずお話し下さい」
そうやって優しく声を掛けると、ミシェルはギュッと抱きつきながら小さく最近は誰とも寝ていないと口にしてきた。
「妃達は子供の事や自分達の事で忙しそうで…私には無関心だ。それは別に構わないが……」
そこまで聞いてからそっと耳元で溜まっているのかと尋ねると恥ずかしそうに小さくこくりと頷いてくる。
「わかりました。では私がお手伝いさせていただきます」
「え?」
驚いたようなミシェルをそのまま抱き上げ、有無を言わさずゆっくりと寝室へと歩を進める。
本音を言えばこのまま抱いてしまいたかったが、さすがにそれは性急に過ぎるだろう。
まずはミシェルがどこまで許してくれるのかを知っていかなければ────。
そうしてそっと寝台へと腰かけ、ミシェルの身体を自分の膝へと座らせる。
「失礼いたします」
そして下穿きを緩め、ミシェル自身をそっと取り出した。
「あっ…!」
すっかり大きく育ったミシェルのものがフルリと姿を現し、それを手にして思わず感嘆の吐息を吐き出してしまう。
(これがミシェル様の……)
自分の手の中にミシェルのものがあるというだけで嬉しくて仕方がなかった。
「ミシェル様…こんなにお溜めになって…」
「やっ…違う…」
「すぐに楽にして差し上げますので」
恥じらうミシェルを逃がさないようにしっかりと腕に抱き、そのままゆっくりと男根をしごき上げるとミシェルが甘い声で啼いた。
「あっ…あんんっ…」
思いがけず可愛い声に自分自身も滾ってしまう。
「あ…アル…」
不安そうに声を上げるミシェルの声に『気づかれてしまった』と内心焦るが、ここで警戒されてはたまらない。
「申し訳ございません。襲う気はありませんのでどうぞお気になさらず、こちらにご集中ください」
「あぁっ…!」
グチュグチュと先走りを絡めながらゆっくりと可愛がると、ミシェルの腰が揺れ自分のものを刺激される。
「は…あぁ…んんッ…」
(ああ…本当に今すぐ抱いてしまいたい。ミシェル様をこの腕の中で啼かせられたらどれだけ幸せなんだろう?)
この可愛い声をずっと聴き続けていたい。
自分の手で乱れるミシェルを見てみたい。
できることなら自分の手で育ててみたいとさえ思った。
「ミシェル様……」
そうしてミシェルの身を抱きしめもう一度熱く口づけを交わしながら一気に追い上げ、ミシェルを高みへと連れて行った。
いつもはこの辺りに足を運ぶことがないミシェルがここに居ると言うのを不思議に思い、何かあるのかと視線を辿ったところでその先の四阿にライアードと黒衣の魔道士が二人いることに気が付いた。
一人は茶色い髪にヘーゼルの瞳の優しげな容貌の黒魔道士。
もう一人は黒髪碧眼の少し冷たい印象を受ける端麗な黒魔道士。
恐らくヘーゼルの瞳の方がロイドと言う魔道士なのだろうと言うのがすぐに見て取れた。
ミシェルはその黒魔道士達を暫し眺めたところでホッと息を吐いたのだが、その後ロイドの方を熱く見つめている姿を見て、ヘンリーの言葉がふと頭に浮かんだ。
ミシェルがロイドに振り向いてもらいたくて……というやつだ。
あの眼差しはどう見ても好意的には見えないが、いつまでも自分を見てくれないロイドに対する苛立ちのようにも感じられて────気づけば嫉妬のような感情に駆られてミシェルの腕を掴んでいる自分がいた。
「ミシェル様……」
そんな黒魔道士なんて見つめないで、自分の方を見てほしい────。
そう思って熱い眼差しを送ってみるが、ミシェルから窺えるのはただただ驚いたような不思議そうな眼差しだけ…。
「アルバート?」
だから────どうしてもこちらを向いてほしくて…思わずここがどこかと言うことも忘れて口づけてしまっている自分がいた。
自分だけをその瞳に映してほしい。
自分だけを想ってほしい。
そう願うことがどれほど身の程知らずなのかわかってはいたけれど、それでも焦がれてしまう想いを抑えきれなくて熱く口づけを交わしてしまう。
けれどそれだけの想いを込めたにもかかわらず、そっと離した後ミシェルから告げられたのはどこまでもつれない言葉だった。
「アルバート…こういった事を職務中にするのは感心しない」
それはどこまでも眼中にないと言われたようで、心にグサリと棘が突き刺さるが、ここで引いたらおしまいだ。
「では……職務中でなければ構わないでしょうか?」
一縷の望みをかけてそう尋ねると、ミシェルは暫し黙った後小さく頷きを落とした。
それは十分了承ととってよいもので、思わず喜びに満たされていくのを感じる。
嫌だったらそもそも受け入れてはくれないだろうから、これはまだ望みはあると……そう考えて差し支えはないはずだ。
「では…そのように」
ミシェルが受け入れてくれるのなら、いけるところまでいってみたい。
どこかで線引きをされたらそこで一旦引いてチャンスを待てばいい。
そう────ライバルが誰もいないなら黙って傍に控えるだけで安心できたが、ロイドと言う憂いの種があるのなら動こうと思った。
黙ってミシェルが他の男の物になるのを指を咥えて見ているなんてありえない。
一介の魔道士にチャンスが与えられると言うのなら一介の騎士にだってチャンスがあってもいいはずではないか。
(ミシェル様……貴方が欲しい────)
妃達がミシェルをいらないと言うのなら自分が独り占めしてもいいはずだ。
(貴方を必ず幸せにして差し上げますから……どうか私に振り向いてください)
そうしてそっとミシェルを想いながら仕事をこなし、夕刻を待った。
***
「ミシェル様。本日もお送りさせていただきます」
そうして礼を執ったアルバートにミシェルは一瞥だけを送りそのまま歩き出した。
どこまでも騎士然としたその姿に、アルバートの本心が全く見えてこない。
今日のあの口づけは一体なんだったのか……。
冷静になってから考えてはみたが、いくら考えても結論は出なかった。
どうしてアルバートはあんな場所で自分に口づけをしたのだろう?
どうしてあんな真剣な眼差しで自分を見つめていたのだろう?
好き…?それこそまさかだ。
行動は兎も角として、アルバートの口から飛び出す言葉は全て騎士ゆえの言葉ばかり。
そこには騎士としての役目を全うしたいと言う気持ちしかないことだろう。
期待するだけ無駄だ。
それでも────期待しては落ち込むというのを繰り返すのは酷く滑稽かもしれないが、ほんの僅かな希望に縋りたいと思うのは愚かなことだろうか?
それだけ自分の中のアルバートへの気持ちは貪欲なまでに膨らんでいたのだ。
(キスを……してほしい)
口づけだけならきっと浮気にはならないはずだ。
それくらいなら……きっと許される。
誰に?何に?
そんなことはわからないけれど、どこか背徳感に苛まれながらいつもよりも少しだけ足早に部屋へと帰った。
「アル…」
いつもの様に部屋の前で足を止め、アルバートの方へと向き直る。
「はっ…」
そうして騎士としての礼を執るアルバートにやはり今日の口づけは戯れだったのかと聞きたくなったが、そうだと言われるのが怖くて────結局いつものセリフを口にした。
「今日もご苦労だった。戻っていい」
本当は口づけてほしい。
帰らないでほしい。
そう思っていても怖くて怖くて口にはできない。
だから逃げるように部屋の扉を開けて、そのまま室内へと歩を進めたのだが────。
気付けばパタンと扉は閉められて、アルバートの腕の中へと囚われ唇を塞がれていた。
「ん…んぅ…」
夢にまで見たアルバートとのキス……。
その甘美な口づけにあっという間に夢中になる。
今ここには邪魔をするような者は誰もいない。
この部屋には二人きり────。
そんな安堵感からアルバートへと自ら身を寄せてもっとと強請るかのように口づけを交わす。
こうして抱きつくとその鍛え上げられた身体を感じて、変わったなと思った。
背もずっと伸びて、逞しくなった。
あの頃と変わらないのはその優しげな瞳と柔らかな髪だけ。
「アル……」
戯れでもいい。
ほんの少しだけでもいい。
このひと時だけでいいからこうして身を寄せて温もりを感じていたかった。
***
ミシェルの口から『戻っていい』と言われた時、正直ショックが大きかった。
今日……職務中でなければ口づけていいと確かに頷いてくれたはずなのに、ミシェルはあっさりと自室の扉を開けてそのまま帰ろうとしてしまう。
そうして希望をあっさりと失くしてしまうつもりなのかと…そう思った時にはもう室内へと踏み込み、ミシェルを抱き込み口づけている自分がいた。
逃がさない。離したくない。だからもしミシェルが暴れても力を弱める気はなかった。
けれどミシェルは今日の昼時同様、抵抗することなく自分の口づけを受け入れてくれる。
そっと閉じられたその瞳に揺れるのは、髪と同様のアイスブロンドの長い睫。
(本当に綺麗だ……)
初めて会った時からこの綺麗な人に夢中になった。
兄にせがんで何度も何度も話を聞いた、自分にとって近くて遠い存在。
まるで人形の様に綺麗なのに、何故か皆からは冷たそうに見えると不評だった。
「どうしてあんなに綺麗なのに皆がそんな風に言うのか私には理解できません!」
まだ十代の自分はそれが納得できなくてよく兄に愚痴を溢していたのだが、その度に兄は優しい笑みを浮かべていた。
「ミシェル様は不器用な方だから誤解されやすいんだ。本当は努力家で勤勉な国民思いの良い方だよ」
見た目だけで誤解されるのが可哀想だと言うのなら、そこをフォローしてあげられる人間になれとよく言われたものだ。
自分はもうあの頃の兄よりも五年も長く生きているけれど、あの時の兄のようにはなかなかなれない。
今思えば本当によくできた兄だったと思う。
ミシェルが頼りにしていたのも当然と言えば当然だったのだ。
「ミシェル様……」
そっと大切なその想い人の身体を抱きしめていると、力が抜けたのかミシェルが自ら身体を寄せてそっと抱きついてきた。
そしてまるでもっとと強請るかのように熱のこもった眼差しを向けられて、そのまま引き寄せられるように口づけを交わしてしまう。
その姿はまるで自分の事が好きなのだと錯覚してしまいそうなほどだ。
そして────密着して初めて分かったことがあった。
(……感じている)
そう。気づけばミシェルの下腹が熱くなっていて、それが自分へと押し当てられていたのだ。
最初は自分の口づけで感じてくれたのだろうかと嬉しくなったのだが、ここでヘンリーの言葉が脳裏によぎった。
『最近ミシェル様は奥方達からさえ距離を置かれているらしいぞ?』
それはつまり長らく誰とも寝ていないと言うことなのではないだろうか?
だから単に溜まっていてこうなったのだという……ただそれだけのことなのではないか?
けれどこれはある意味チャンスだとも思えた。
自分がミシェルを手に入れるためには、少しずつ隙を見つけて攻めていくしかないのだから……。
「アル……」
どこか甘い声で自分の名を呼ぶミシェルに優しい笑みを浮かべながらゆっくりと固くなったそこを撫でてやると、ミシェルの身がビクッと震え戸惑うように自分を見つめてくる。
「あ……」
「ミシェル様…もしやお妃様達と上手くいかれていないのでは?」
「う……」
「もし…ご相談に乗れるのでしたら、どうぞ気にせずお話し下さい」
そうやって優しく声を掛けると、ミシェルはギュッと抱きつきながら小さく最近は誰とも寝ていないと口にしてきた。
「妃達は子供の事や自分達の事で忙しそうで…私には無関心だ。それは別に構わないが……」
そこまで聞いてからそっと耳元で溜まっているのかと尋ねると恥ずかしそうに小さくこくりと頷いてくる。
「わかりました。では私がお手伝いさせていただきます」
「え?」
驚いたようなミシェルをそのまま抱き上げ、有無を言わさずゆっくりと寝室へと歩を進める。
本音を言えばこのまま抱いてしまいたかったが、さすがにそれは性急に過ぎるだろう。
まずはミシェルがどこまで許してくれるのかを知っていかなければ────。
そうしてそっと寝台へと腰かけ、ミシェルの身体を自分の膝へと座らせる。
「失礼いたします」
そして下穿きを緩め、ミシェル自身をそっと取り出した。
「あっ…!」
すっかり大きく育ったミシェルのものがフルリと姿を現し、それを手にして思わず感嘆の吐息を吐き出してしまう。
(これがミシェル様の……)
自分の手の中にミシェルのものがあるというだけで嬉しくて仕方がなかった。
「ミシェル様…こんなにお溜めになって…」
「やっ…違う…」
「すぐに楽にして差し上げますので」
恥じらうミシェルを逃がさないようにしっかりと腕に抱き、そのままゆっくりと男根をしごき上げるとミシェルが甘い声で啼いた。
「あっ…あんんっ…」
思いがけず可愛い声に自分自身も滾ってしまう。
「あ…アル…」
不安そうに声を上げるミシェルの声に『気づかれてしまった』と内心焦るが、ここで警戒されてはたまらない。
「申し訳ございません。襲う気はありませんのでどうぞお気になさらず、こちらにご集中ください」
「あぁっ…!」
グチュグチュと先走りを絡めながらゆっくりと可愛がると、ミシェルの腰が揺れ自分のものを刺激される。
「は…あぁ…んんッ…」
(ああ…本当に今すぐ抱いてしまいたい。ミシェル様をこの腕の中で啼かせられたらどれだけ幸せなんだろう?)
この可愛い声をずっと聴き続けていたい。
自分の手で乱れるミシェルを見てみたい。
できることなら自分の手で育ててみたいとさえ思った。
「ミシェル様……」
そうしてミシェルの身を抱きしめもう一度熱く口づけを交わしながら一気に追い上げ、ミシェルを高みへと連れて行った。
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