黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第一部 アストラス編~王の落胤~

138.※それは恋と紙一重(ロイド×リーネ)

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※がっつり『ロイド×リーネ』です。
読まなくても然程影響はありませんので、NLシーンが苦手な方は回避してください。よろしくお願いします。


────────────────


自分に向けられたどこまでも甘い甘い言葉────。

それがただの睦言に近しいものだったとしても、その言葉にあっという間に陥落させられ、一瞬で心を掴まれたような気がした。
普段とは違う目線。
普段とは違う触れ方。
普段とは違う声音。
彼の全てが自分を絡めとっていく。

それはまさに『誘惑』そのものだった────。




「あんなのを隠してたなんて!」

グサァッ!

リーネはロイドと飲みながら、いつかのロイドと同じように肉にフォークを突き刺していた。
今日はロイドをアストラスに呼び出して愚痴を溢している。
けれどそんなリーネにロイドはなんということもない様にサラリと告げた。

「そんなの見ていればわかるだろうに」
「何がよ!」
「だから、クレイはこれまで私にも色仕掛けなんて全くして来てなかっただろう?本気で落としたい時にだけ使うスキルがあるなんて当然のことだ」

それがちょっとリーネの予想を上回っていただけの話で、特段驚くべきことでもないとロイドは言う。

「普段の思わせぶりの延長線上だと思ってたのに!」
「あれは殆ど黒魔道士同士の戯れだし、それ以外はただの天然だ。まあそういう諸々がたまらなく好きなんだが…」
「はいはい。ロイドは本当にクレイが大好きよね!」
「ふっ…落とされたからと言ってそう怒ることでもないだろう?寧ろ羨ましいな」

クレイに口説かれたかったと酒を傾けるロイドが心底腹立たしい。

「その服もクレイに見立ててもらったんだろう?よく似合っている」
「うっ…それはありがとう」
「化粧も変えて…随分色っぽくなった」

そう言いながらロイドがどこか誘うようにそっと手を伸ばしてくる。
その甘やかな視線がなんだかとても気恥ずかしい。

「クレイは本当に優秀だな。たった一日でリーネの魅力をここまで引き出すんだから」

これならシュバルツの方も楽しみだとロイドは楽しげに笑うが、そこはリーネとしてはどうなのかしらと言いたくて仕方がなかった。

「あまり言いたくはないけど、そっちはあまり期待しない方がいいわよ?クレイが色気がなさ過ぎてどうにもならないって嘆いていたから…」

だからこそそう口にしたのだが、それを聞いたロイドが物凄く楽しそうに声を上げて笑い始めた。

「ふっ…ははっ…!それは実に面白いな。あのクレイが困惑するほど色気が出ないなんて…!」
「笑い事じゃないわ。もうそっちは諦めて魔法修行に切り替えちゃったくらいなのよ?」
「ああ…それもいいな」

クレイは自分の事をよくわかっているから、魔法面でのサポートを視野に入れてくれたのだろうとどこかロイドは嬉しそうに微笑んだ。
そうやって離れていてもちゃんとお互いを理解しあっているこの二人がなんだか羨ましいなとリーネは思ってしまう。
だからだろうか?

「ロイド…今日はちゃんと慰めてよね」

思わず対抗意識を燃やしてそんな言葉を紡いでしまった。

「構わないぞ?クレイの後始末のようなものだし、喜んで」

そう言いながらそっと口づけてくるロイドに身を任せ、リーネはゆっくりと目を閉じる。
なんだかんだでロイドとの触れ合いに少しずつ嵌っていく自分がいて…なんだか今日は二人の男に振り回されているような気分に陥ってしまった。


***


それから食事を終えてロイドの部屋へとやってきた後、シャワーを浴びるかと訊かれたのでリーネはフフッと蠱惑的に笑った。
振り回されてばかりはやはり面白くはない。

「今日クレイに選んでもらったのは服だけじゃないのよ?」
「ほう?」

そんな言葉にロイドもどこか期待するように妖しい笑みを浮かべる。

「そんなものまで買ってもらうなんてやるな」
「いいでしょ?今度はロイドにも選んでもらいたいものだわ」
「まあ考えてやってもいいな」

そう言いながら口づけを交わし、ゆっくりと服を脱がせていく。

「ロイド…」

甘い声で誘うとわかっているとばかりに魔力も交流してくれた。

「ああ…確かに凄く似合っているな」

上品にシフォンが重なったデザインのハーフカップブラと揃いのTバックショーツ。
その色合いは落ち着いたダークワインレッドで、リーネの白い肌をこれ以上ないほど美味しそうに彩っていた。
それに重ねられた黒のガーターベルトの繊細なレースがまたそれにスパイスを与えていて、なんとも言えない魅力を醸し出している。
本当に最高だとロイドは満足げに笑った。

「今日のお前はたまらなくいい女だ」
「ありがとう♡」

そう言いながらロイドに手を引かれるままにベッドへと向かい、そのまま跨るように上へと乗せられた。
腰を引き寄せられて甘い口づけを与えられ、そのままうっとりと酔わされてしまう自分がいて…。

「ん…んん…」

はぁ…と熱い吐息を交し合いながら夢中になって魔力を交流し始めるとロイドがどこか楽しげに笑った。
こうしていつも余裕の表情なのが本当に腹立たしい。

(失敗したかしら…)

やはり自分ではロイドを陥落させたりハッとさせたりはできないのだろうかと少し残念に思う。
それなりに経験豊富なロイドはいつも丁寧で繊細な手つきで自分をこれ以上ないくらい気持ちよくさせてくれるが、たまには貪るように激しく抱いてくれてもいいのに────。
きっとそんな抱き方をするのは心から好きになった相手にだけなのだろうなと…そう思うと何故か胸がモヤモヤするのを感じた。

(ダメダメ)

この気持ちはこれ以上育てないように、勘違いしないようにと自分に言い聞かせる。
クレイに続き、こんな男にまで嵌ってしまったらまた失恋決定だ。
いくらなんでも自分はそこまで馬鹿じゃないと思いたかった。
自分達は黒魔道士同士、セフレのような関係でいいのだ。
ロイドは失恋を癒すために。自分は魔力を上げるために。
そうだ。この関係は契約のようなものでしかないのだから期待はすべきではない。

「ロイド…今日は何を教えてくれるのかしら?」

ただこうして…愛よりも黒魔道士としてのスキルを求めるだけでいい。
けれどこの男はどこまでも甘く、悪魔のように囁くのだ。

「ふっ…そうだな。リーネの事は大体わかったし…今日は味わったことがないほどの快楽を教えてやる」

そんな言葉に、背筋がゾクゾクと期待に震えてしまった。
この男はできない事はそうそう口にはしない。
だからこそ絶対の確信を持ってそんな言葉を口にするのだ。
期待するなという方がおかしいのかもしれない。
正直よくクレイはロイドから逃げ切れたなと思う。
例えロックウェルと付き合っていたとしても、ロイドから誘われてふらっとしなかったのだろうか?
もしも抱かれたいと欠片も思わなかったとしたら、物凄い精神力だと感心してしまう。




「あぁっ!」

ロイドの手が、唇が、心地良く肌へと這わされてあっという間に全身が快楽に染め上げられていく。
ここ数日で自分の良いところも弱いところも全て知り尽くされてしまった。
指の間をペロリと舐めながら妖艶に笑うロイドに体の奥がどんどん熱くなっていく。
そのまま胸を揉みしだかれゆっくりとブラが外されて、ぷるんとまろび出た胸がロイドの手にすっぽりと覆われ下から刺激を加えられるとたまらなく気持ち良くて、声を抑えることができなくなってしまった。

「あっあぁんッ!」

そのまま突起も甚振られて、促されるように腰が揺れてしまう。

「ほら。魔力交流もしたいんだろう?」

そう言いながら施される口づけもどこか宥めるように優しくて、なんだか愛されているような錯覚に襲われそうになった。
このまま溺れたい。
そうは思うがそういうわけにはいかない。
自分だって黒魔道士としてのプライドがある。
酩酊させるようなロイドの濃い魔力に溺れそうになりながら、リーネは自分にできることを試みた。

「リーネ…上手になったな」

教えられた通りに覚えた手淫でロイドの物を大きくすると 、クラクラする頭をなんとかそちらへと持っていき口淫へと切り替える。
そうやって美味しそうに頬張る自分にロイドがご褒美だと言わんばかりに下を可愛がってくれた。
クチュクチュと淫らな音を立てながら愛液をかき混ぜてくるロイドの指はどこまでも優しい。

「んんっ…」

二本三本と増やされ、泡立てるようにかき回されて腰が震えて早く欲しくて堪らなくなってしまったが、ロイドは何故か楽しげに笑うばかりで今日はなかなか入れてくれそうになかった。

「ロイド…早くきて…」

強請るように腰を揺らし、そっと身を起こしながら熱く見つめるとロイドは意地悪く笑みを深めその言葉を紡いでくる。

「言っただろう?今日はこれまでと違う快楽に溺れさせてやる」
「え?きゃっ…!」

うつ伏せにされ腰を高く上げさせられた状態でゆっくりとショーツを膝まで降ろされ、驚きに目を瞠る。

「ひぁっ!」

そしてロイドはジュルジュルと蜜を啜り舌で花芽を可愛がり始めた。

「あっ…!ダメぇッ!」

正直ロイドの口淫は自分を翻弄できる程上手だった。
時に吸い上げ緩急をつけて可愛がってくるその舌技に口からこぼれる甘い声が止められなくなる。
しかもそうやって嬲りながら蜜壺へと指を突き込み、執拗に前側を擦り上げられるから気持ちよすぎて堪らない。

「あっあっあっ…!」

蠢く舌に翻弄されてどんどん頭が真っ白になっていき、口からは間断なく喘ぎがこぼれ落ちた。

「もっ…イッちゃうぅ…ッ!」

いつもよりも早くそんな声を上げた自分に、ロイドはクスリと笑いつつ指である一点を責め立ててくる。

「はっ…そこ、そんなに押しちゃダメ────!!」

突然尿意のようなものに襲われて我慢しようと思ったのも束の間、ロイドに容赦なく追い上げられて堪らずプシュッと勢いよくそれが噴き出してしまった。

「あぁ…ッ!」

あまりの衝撃にそのままベッドへと突っ伏してしまうが、ロイドは満足げだった。

「上手に潮吹きできたな」

そんな言葉に驚きを隠せない。
これまで何人かの男と寝たが、自分を潮吹きさせてくる男は誰もいなかったからだ。
以前年上の黒魔道士の男に尋ねたこともあったが、こういうのはできる女とできない女がいるから気にするなと言われた。
だから自分はできない女なのだろうと思っていたのだが、それは間違いだったのだろうか?

「なんだ。もしかして初めてだったのか?」

そんな問いに思わず真っ赤になるがここは素直に頷かざるを得ない。
こうして色々な経験を積ませてもらえるのは素直に嬉しかったからだ。

「はぁ…ロイド…」
「ああ。さっきよりも色気が増したな。もっともっと可愛がってやるから安心しろ」

そう言ってガーターベルトも外してすべての肌をさらけ出される。

「ん…はぁ…」

生まれたままの姿でロイドと抱き合って、熱い口づけで隅々まで可愛がられ幸福感に包まれてしまう。
どうしてこの男はこんなにもズルいのだろう?
時に言葉で責め立てる癖にその愛撫はどこまでも丁寧で優しくて思わず泣きたくなってくる。

「あっ、もぅ焦らさないでぇ…ッ!」

そして繊細な愛撫に体がもっともっとと熱くなったところで、クスリと笑いながらゆっくりと熱く滾った雄を挿入された。

「そうやって強請る姿も唆られる…なっ!」
「あぁあああッ!!」

そのあまりの快感に体が歓喜に震えながら絶頂へといざなわれる。
入れただけでイかされるなんて初めての経験だった。

「やっ…あぁんっ!あっあっ、ダメッダメッ!」

そのあまりの気持ち良さにキュウキュウと締め付けながら逃げようとするが、ロイドはグッと腰を引きつけて離してはくれない。

「はぁ…リーネ。凄いな。今日のお前は最高に気持ちいい…」

どこかうっとりとした声になんとかそちらへと目を向けると、これまで見たこともないほど恍惚とした顔をしたロイドの姿があって驚いた。

「あ…ロイド…気持ちいい…」

ロイドが自分を求めてくれるのならこれほど嬉しいことはない。
その余裕をなくしてやれるのなら、メチャクチャに抱かれても全然構わなかった。

「激しくしてほしいの…。もっと私に教えて…ッ」
「任せておけ」

それを合図にロイドの動きが一気に激しくなる。

「あっ!んあぁあああっ!」

パンパンと腰を打ち付ける音と、グチュグチュと泡立つ愛液の音が淫猥に響き耳まで犯していく。

「あぁっ!だめっ!そんなに同時に責めないでッ!」

しかも中だけにとどまらず花芽も指でクリクリと可愛がり、空いた手で胸を絶妙の力加減で揉み上げながら更に口づけで性感帯まで責め立ててくるからたまらない。
最早こちらに余裕などと言う言葉は一切存在しなかった。
何度も絶頂へ駆け上がらされて乱れ狂い嬌声を上げさせられる。

「んやぁああッ!溺れちゃうぅ…ッ!」

そして飲みこめなくなった涎を滴らせながら一際甲高く嬌声を上げたところでロイドが耐えるようにクッと息を吐いた。

「…ッ。もうイクぞ」
「やぁっ!抜かないで!」

ロイドになら中に出してもらっても全然構わないと思った。
その熱を全身で感じたかった。
けれどそれは絶対に叶えてはもらえない願いで────。

「あぁあああ────っ!!」

ずんっと弱いところを突き上げられてぎゅうぅと締め付けながら最高に気持ちいい絶頂へと達した途端、ロイドのものがずるりと抜かれ勢いよく腹の上に白濁を吐き出される。

「はぁ…はぁ…持っていかれるかと思ったぞ?」
「あ…あぁん…」

ビクビクと絶頂の余韻に浸りながらロイドを見上げると、そこには少し困ったように笑うロイドの姿があった。
汗で張りついた髪を掻き上げる仕草が色っぽくて、たまらなく魅力的だった。

(本当にいい男…)

優しいヘーゼルアイの瞳に魅了され、思わずうっとりと見惚れてしまう。

(中身は結構性格ねじ曲がってたりもするんだけど…)

それでもそれを補って余りあるほどいい男だと思った。
クレイが認めるだけのことはあると思う。

「じゃあシャワーに行ってから寝るとするか」

暫くして落ち着いた頃、そう言いながらふわりと抱き上げそのままシャワーまで運んでくれるくらいには優しい男だ。

「ロイドは性格悪い癖にこういうところは優しくてズルいのよね」

だからつい甘えるように大人しく抱き上げられながらそんな悪態をついてしまう。

「馬鹿だな。私の所為で立てなくなってるんだからこれくらい当然の事だ」
「そういう罪作りなところはクレイに似てなくもないわよ?」
「ふっ…それは私を喜ばせようとでもしてるのか?」
「ロイドって実はMよね。クレイにフラれたくせにクレイの話を出すと喜ぶんだから」
「まあ初恋だしな。そうそうすぐに忘れられるものじゃない」
「初恋~?!」

『冗談でしょう?!』と言いながら二人で仲良くシャワーを浴びる。
それは先程までの淫靡な時間からはほど遠い友人のような会話でしかない。

「そういうリーネこそクレイの事は忘れられたのか?」
「お陰様で」

そう。気が付けばロイドに心も体も解されて、クレイへの気持ちはすっかり綺麗に消えていた。

「それは良かった」

だからこうして嫣然と笑ってこられると非常に困ってしまう。

「もうっ!折角クレイの事を忘れられたのに、こんなに気持ち良くさせられたら今度はロイドに夢中になりそうで嫌だわ!」

照れ隠しにそうやってそっぽを向くのはロイドの言葉を聞きたくないから。
だってロイドが言う言葉は簡単にわかってしまうから。

「ふっ…私に嵌ってもいいことは何もないぞ?」

それはそうだろう。
ある意味難攻不落の男なのだから。

(本当に…厄介よね~…)

優秀な黒魔道士ほどタチの悪いものはない。
いつかこの男を本気で落とせるくらい魅力的になりたいなとそっとため息を吐きながら、今日も寄り添いながら眠れる幸せを噛み締めたのだった。



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