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第一部 アストラス編~王の落胤~
132.※溺れる
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ルドルフはハインツと仕事中、シュバルツとシリィが一緒に歩く姿を見掛けた。
あの二人に共通点はなさそうなのにと不思議に思いながら何気なく観察していると、どうやらシリィが涙ぐんでいるようだった。
対するシュバルツはどこか怒ったようにしながらシリィの肩を抱いている。
一体何があったのだろう?
まさか連れ去られようとでもしているのかと思い、そっとそちらへと足を向けると二人の会話が漏れ聞こえてきた。
「クレイは本当に女ったらしなだけだから、さっきのは気にせずさっさと忘れたらいい」
「うぅ…違います。クレイは天然なだけ…なんです」
「天然は確かにあるかもしれないが、あれは黒魔道士なだけあって十分女ったらしの域だぞ?!大体ロックウェルを虜にしてる所からして普通じゃないだろう?!視点を変えてみろ!」
「えっ…?ん?あれ?」
「あ・の・ロックウェルがあんなに嫉妬全開で夢中になるのは絶対におかしい!加えてロイドまで夢中にするなんておかしい!絶対誑しスキルが高いんだ!」
「うっ…。そ…そうなのかしら?」
「そうだ!」
随分な言われようだが、完全に否定できないところが痛い。
(クレイ本人は無自覚なんだがな…)
別に誰彼かまわず自分から誑しにかかっているわけではないし、黒魔道士っぽい駆け引きが好きなだけ…なのだと思う。
そう言う意味では黒魔道士がクレイに嵌るのはよくわかる気がした。
シリィはそんなクレイが自分に見せる顔が全く違っているから、もしかしてと期待して振り回されてしまうのだろう。
ただ、ロックウェルが何故クレイに嵌っているのかまでは不明だ。
百戦錬磨のロックウェルがそう簡単に誰かに振り回されるはずがない。
それなのに何故かクレイには振り回されっぱなしのようだ。
もしかしたらそんな風に振り回されるのが好きなだけかもしれないし、クレイのようなタイプを調教するのが好きなだけかもしれない。
理由は兎も角、王にはっきりと宣言し、他に全く目がいかなくなるほど夢中なのは確かだろう。
クレイ一筋なのがよくわかる。
そんな風に考えているところで不意にシュバルツがシリィへと向き合って、そっとその頤へと手を伸ばした。
小柄なシリィの顔がクイッとシュバルツを見上げる形で上へと上げさせられる。
その姿はまるでこれから口づけでもされるかのように見えて────何故か鼓動が跳ね上がった。
「シリィ?ちゃんと現実を受け入れろ。クレイはロックウェルしか見ていない」
それは真っ当な意見だ。
それなのに、その体勢を取ったシュバルツに気が付けばルドルフは二人へと声を掛けていた。
***
ショーンは書類を手にロックウェルの元へと向かっていたのだが、何故か執務室の扉前で戸惑うようにそわそわと立ち尽くす魔道士達に遭遇してしまった。
一体どうしたんだろうと思ってそこまで行くと、理由はすぐにわかってしまう。
中からクレイの懇願の声が聞こえてきたからだ。
「ロックウェル…ちゃんと謝るから…っ!お願い…ッ。そんなに虐めないで…!」
これはきっとまた何かやらかしてお仕置きされる羽目になったのだろう。
とは言え今手元にあるのは王から頼まれた急ぎの書類だ。
絶倫のロックウェルをいつまでも待てるわけがない。
問答無用でコンコンとノックし、きっちり五分待ってから容赦なく扉を開く。
「ロックウェル。お楽しみのところ悪いんだが……」
そう言ってドアを開けたが、ロックウェルの衣類は一切乱れていなかった。
(あれ?)
てっきりクレイに突っ込んで蹂躙しているとばかり思っていたが、違ったのだろうか?
そう言えばクレイの姿がない。
「クレイは?」
だから不思議に思ってそう口にしたのだが、ロックウェルはそれに対してニッコリと微笑みを浮かべてきた。
「眷属に頼んで部屋に送っておいた」
「そうか。じゃあこれ、急ぎだから……」
そう言って書類を差し出した自分の姿に外で窺っていた魔道士達もホッとしながらやってきて、承認待ちの書類を次々と執務机の上に置き静かに下がって行く。
どうやら彼らの今日の仕事はそれでおしまいだったらしい。
そうやってみんなが部屋から出ていったところでショーンは何気なくその言葉を口にした。
「それで?今は放置プレイ中か?」
「まあ…似たようなものだ」
「本当にいい加減にしておかないと、そのうち逃げられるぞ?」
クレイはどちらかと言うとMではなくSな方だと思う。
こんな風に調教されるのはよしとしないのではないかと思ってそう忠告したのだが、その言葉は実にあっさりと否定されてしまった。
「大丈夫だ。あいつは私の前でだけは立派なMに育ったからな。私もあいつにだけSになるし丁度いいだろう?」
そんな風に笑顔で言い切るロックウェルが怖い。
怒らせるとあんなに怖いクレイを調教しきるその手腕には驚くばかりだ。
「……実にお似合いだな」
「ふっ…当然だ。一から育てて漸くここまできたんだ。お似合い以外の言葉など存在しない」
それを横から奪おうとする奴は誰であろうと許さないと嫉妬全開で言い放つものだから、これはまた誰かがクレイに粉でもかけたんだろうなと察することができた。
「はぁ…お前は相変わらず嫉妬深いな~」
一番のライバルが身を引いたのならそれ程カリカリしなくてもいいと思うのだが…。
「クレイは本当に油断も隙もないからな。しっかり繋いでおかないと……」
「…そうか。まあ程々にな」
本気で逃げられないといいがと思いながら、そっと書類を手にヒラリと踵を返す。
「じゃあ、クレイに宜しく」
そう言って、笑顔で執務室を後にした。
ロックウェルは去っていったショーンを見送り、そっとヒュースへと声を掛ける。
「ヒュース、クレイは逃げていないか?」
【酷いとは言ってますけど、逃げる気はなさそうですよ?】
「そうか」
そんな言葉にホッと息を吐く。
クレイの言葉に危うく理性が飛びそうになったが、ここは仕事場だと辛うじて心を落ち着かせ、一方的にクレイだけを乱してやったのはつい先程のこと。
正直そのあまりの痴態に今すぐ犯したい気持ちでいっぱいになってしまった。
下半身だけ露出させ後ろ手に拘束し自分の手で後孔を犯させて耳元で言葉責めを繰り返してやると、その可愛い口からは懇願の言葉が溢れ出て目は涙で潤みつつもその顔は快楽の表情で蕩けきっていたのだ。
その姿はまさに早く挿れてくれと言わんばかり。
あんな姿を見せられたら本当に理性が揺らぐ。
そんな時、突然コンコンとノックの音が聞こえてハッと我に返った。
こんな可愛いクレイの姿を誰にも見せたくないと思い、すぐさま眷属に部屋に運ぶよう命じて自分も魔法で心を落ち着かせた。
ショーンには見透かされていたが、これは激しい独占欲だ。
誰にもクレイは渡したくない。
ましてや自分の部下になど取られてたまるものか…。
ロックウェルは机上に乗せられた書類にザッと目を通しさっさと片付けるとすぐさまクレイが待つ部屋へと足を向けた。
これで今日の仕事はもう終わりだ。
後はただただ可愛がればいい。
【ロックウェル様?ドS全開の笑みが浮かんでいますよ?】
せめて部屋に着くまでは平常心でいて下さいとヒュースから窘められて、思わずクスリと苦笑をこぼしてしまう。
どうやら少々気が逸り過ぎたらしい。
「…すまない」
【いいえ。迂闊なクレイ様を教育して頂けるのはありがたいので、今日も存分に可愛がってあげて下さい】
「善処しよう」
そんな言葉と共にロックウェルは歩を早めた。
***
「はぁ…。うぅ…酷いぃ……」
寝台の上でクレイは身体を震わせながら転がっていた。
服は一応着ているが、下半身は出たままだし後ろ手の拘束もそのままだ。
そんな状態で突然放置されて、身体は物足りないと叫びをあげていた。
「んんっ…はぁっ…変態になりそうで怖い……」
いや。既にかなりその域に達してきている気がする。
どうもドSの海を泳いでいるうちにかなり育てられてしまったらしい。
『クレイ…縛られて自慰をさせられる今の気分はどうだ?』
先程のロックウェルの意地悪な声が耳に蘇る。
『ちゃんと反省しないと絶対に入れてやらないからな?』
そんな言葉にたまらない気持ちになった。
『ほら、もっと手を動かしてしっかり慣らさないと入るものも入らないぞ?』
囁かれる声に熱がこもって、ただただ早く欲しいと言う気持ちだけが募っていったところで突然ノックの音が聞こえて飛び上がった。
それからすぐにここまで運ばれてしまったが、熱が灯った体はとてもすぐには治まってくれそうにない。
「うっ…んんッ!はぁ…うッ…」
後ろがヒクヒクと疼いて、早くロックウェルが欲しいと訴える。
ロックウェルは後どれくらいで来てくれるのだろう?
「んぅっ…。早く…欲しい…」
どうしても待ちきれなくて、仕方なくうつ伏せから腰だけを高く上げそっと先程させられていたように自分の指で後孔を慰める。
最初は恐る恐るだったが、徐々に指を増やして前立腺を探しそこを押した。
「はっ…はぁんッ…気持ち良い…」
これまでの自分ならこんな事絶対にやらなかったのに…どこまでも浅ましい自分がいてそれを認めざるを得なくなってしまう。
「あっあっあっ…」
けれどどうしてもイけそうでイけなくて、思わず腰をくねらせ快楽を追い求めた。
「ロックウェル…ロックウェル…」
愛しい恋人の名を呼びながら恥ずかしい恰好で自慰に耽る自分があまりにも空しく感じられて、やっぱり早く来てほしいと願ってしまう。
「うっ…っく…。早く来て…ロックウェル…」
泣きそうな気持ちでそうやって自分をひたすら慰めていると、カチャリと音を立てて扉が開いた。
そこに居たのは他の誰でもないロックウェルで────。
「ロックウェル…」
あまりにも待ちかねすぎて、思わずホッと安堵の息を吐き涙目で微笑みを浮かべてしまう。
けれどそんな姿がよくなかったのだろうか?
扉を閉めたロックウェルは物凄い勢いでこちらへとやってきたかと思うと、驚く間もなくひっくり返され激しく唇を奪われてしまった。
「んっ、んふ…ぅ…」
しかもただただ翻弄されながら身を任せていると、突然乱暴に衣服を剥ぎ取られ足を大きく広げられたかと思うと、そこに待ち望んでいたものをグッと押し込まれた。
「あぁあああぁああっ!!」
自分の指で慣らしていたとはいえ、突然の激しい挿入に身体が衝撃を受けてそのままふるふると震えてしまう。
「ひっ…ひぅ…」
まさか入れられただけでイッてしまうとは思っても見なかった。
感じすぎてたまらない。
「あっ…ああッ…」
「クレイ…すまない」
余裕がなかったと言うロックウェルに思わず首を振る。
好きにしてくれとさっき言ったのは自分だ。
謝る必要などない。
「ロックウェル…抱きつけないから抱きしめてほしい…」
いっぱい愛してほしい。
他に何も考えられないほど────強く、溺れるほどに…。
「あっあっ…!ロックウェル…はぁッ…!」
そのままひっくり返され、前を可愛がられながら後ろを突き上げられ背に口づけを落とされる。
まるで全身が性感帯になったように打ち震えて、ただただロックウェルに翻弄され続ける自分がいた。
「ほらクレイ?指も舐めたいか?」
「んんぅ…。ふぁっ…」
口内を指で犯されるのを感じながら舌を絡めると何故か快感が増していく気がして、何も考えられなくなっていく。
(気持ちいい…)
全身でロックウェルを感じるのは至福だとさえ感じられて、思わずうっとりと快楽に身を任せそうになってしまった。
たまにはこのまま素直に溺れたい。
けれどそれだけだとまた変態に育てられてしまいそうだから、そうならないように理性を働かせないととやはりどこかで考えてしまう。
「クレイ…考え事か?」
「んんっ…違…うぅ…」
「余裕があるならもっと好きな体位に替えてやろう」
「あっ…!」
「もっともっとお前を愛してやりたいし…な…!」
「あぁんっ…!」
前立腺を擦り上げられながらズンッと一気に奥まで突き上げられて、その後も何度もいいところにそれを与えてくれる。
「あっあっあっ…!いやぁッ!ロックウェル!これ…止まらなッ…!」
その刺激が好きすぎてたまらなくて、思い切り締め上げながら精液を強請るように腰が揺れてしまった。
「ひっ、ひぁあ…ッ!も、お願いっ!熱いのいっぱい欲しいッ!中にロックウェルのが欲しいぃ…!」
あの熱いものが欲しくて、ジワリと広がる感覚を早く感じたくてただただ強請り続ける。
「…わかった。そろそろたっぷり受け取れ」
暫く責められた後、どこか興奮したようなロックウェルの言葉と共に思い切り揺さ振られそのまま奥まで放たれた。
「あっ…」
それを受けて体が歓喜に震えて同時に果てる。
トプンッと自身も吐き出しながら思わず恍惚とした表情を浮かべてしまった。
「ふぁあっ…気持ちいッ…!」
なのにロックウェルはそんな自分を見て、何故かまた雄を高ぶらせてしまう。
もう終わってくれていいのに────。
「やっ…ロックウェル…?!あぁんっ…!」
「お前は本当に…淫乱すぎる…ッ」
「やぁあああっ!!」
そして何故かそのまままた快楽の海を泳がされる羽目になった。
あの二人に共通点はなさそうなのにと不思議に思いながら何気なく観察していると、どうやらシリィが涙ぐんでいるようだった。
対するシュバルツはどこか怒ったようにしながらシリィの肩を抱いている。
一体何があったのだろう?
まさか連れ去られようとでもしているのかと思い、そっとそちらへと足を向けると二人の会話が漏れ聞こえてきた。
「クレイは本当に女ったらしなだけだから、さっきのは気にせずさっさと忘れたらいい」
「うぅ…違います。クレイは天然なだけ…なんです」
「天然は確かにあるかもしれないが、あれは黒魔道士なだけあって十分女ったらしの域だぞ?!大体ロックウェルを虜にしてる所からして普通じゃないだろう?!視点を変えてみろ!」
「えっ…?ん?あれ?」
「あ・の・ロックウェルがあんなに嫉妬全開で夢中になるのは絶対におかしい!加えてロイドまで夢中にするなんておかしい!絶対誑しスキルが高いんだ!」
「うっ…。そ…そうなのかしら?」
「そうだ!」
随分な言われようだが、完全に否定できないところが痛い。
(クレイ本人は無自覚なんだがな…)
別に誰彼かまわず自分から誑しにかかっているわけではないし、黒魔道士っぽい駆け引きが好きなだけ…なのだと思う。
そう言う意味では黒魔道士がクレイに嵌るのはよくわかる気がした。
シリィはそんなクレイが自分に見せる顔が全く違っているから、もしかしてと期待して振り回されてしまうのだろう。
ただ、ロックウェルが何故クレイに嵌っているのかまでは不明だ。
百戦錬磨のロックウェルがそう簡単に誰かに振り回されるはずがない。
それなのに何故かクレイには振り回されっぱなしのようだ。
もしかしたらそんな風に振り回されるのが好きなだけかもしれないし、クレイのようなタイプを調教するのが好きなだけかもしれない。
理由は兎も角、王にはっきりと宣言し、他に全く目がいかなくなるほど夢中なのは確かだろう。
クレイ一筋なのがよくわかる。
そんな風に考えているところで不意にシュバルツがシリィへと向き合って、そっとその頤へと手を伸ばした。
小柄なシリィの顔がクイッとシュバルツを見上げる形で上へと上げさせられる。
その姿はまるでこれから口づけでもされるかのように見えて────何故か鼓動が跳ね上がった。
「シリィ?ちゃんと現実を受け入れろ。クレイはロックウェルしか見ていない」
それは真っ当な意見だ。
それなのに、その体勢を取ったシュバルツに気が付けばルドルフは二人へと声を掛けていた。
***
ショーンは書類を手にロックウェルの元へと向かっていたのだが、何故か執務室の扉前で戸惑うようにそわそわと立ち尽くす魔道士達に遭遇してしまった。
一体どうしたんだろうと思ってそこまで行くと、理由はすぐにわかってしまう。
中からクレイの懇願の声が聞こえてきたからだ。
「ロックウェル…ちゃんと謝るから…っ!お願い…ッ。そんなに虐めないで…!」
これはきっとまた何かやらかしてお仕置きされる羽目になったのだろう。
とは言え今手元にあるのは王から頼まれた急ぎの書類だ。
絶倫のロックウェルをいつまでも待てるわけがない。
問答無用でコンコンとノックし、きっちり五分待ってから容赦なく扉を開く。
「ロックウェル。お楽しみのところ悪いんだが……」
そう言ってドアを開けたが、ロックウェルの衣類は一切乱れていなかった。
(あれ?)
てっきりクレイに突っ込んで蹂躙しているとばかり思っていたが、違ったのだろうか?
そう言えばクレイの姿がない。
「クレイは?」
だから不思議に思ってそう口にしたのだが、ロックウェルはそれに対してニッコリと微笑みを浮かべてきた。
「眷属に頼んで部屋に送っておいた」
「そうか。じゃあこれ、急ぎだから……」
そう言って書類を差し出した自分の姿に外で窺っていた魔道士達もホッとしながらやってきて、承認待ちの書類を次々と執務机の上に置き静かに下がって行く。
どうやら彼らの今日の仕事はそれでおしまいだったらしい。
そうやってみんなが部屋から出ていったところでショーンは何気なくその言葉を口にした。
「それで?今は放置プレイ中か?」
「まあ…似たようなものだ」
「本当にいい加減にしておかないと、そのうち逃げられるぞ?」
クレイはどちらかと言うとMではなくSな方だと思う。
こんな風に調教されるのはよしとしないのではないかと思ってそう忠告したのだが、その言葉は実にあっさりと否定されてしまった。
「大丈夫だ。あいつは私の前でだけは立派なMに育ったからな。私もあいつにだけSになるし丁度いいだろう?」
そんな風に笑顔で言い切るロックウェルが怖い。
怒らせるとあんなに怖いクレイを調教しきるその手腕には驚くばかりだ。
「……実にお似合いだな」
「ふっ…当然だ。一から育てて漸くここまできたんだ。お似合い以外の言葉など存在しない」
それを横から奪おうとする奴は誰であろうと許さないと嫉妬全開で言い放つものだから、これはまた誰かがクレイに粉でもかけたんだろうなと察することができた。
「はぁ…お前は相変わらず嫉妬深いな~」
一番のライバルが身を引いたのならそれ程カリカリしなくてもいいと思うのだが…。
「クレイは本当に油断も隙もないからな。しっかり繋いでおかないと……」
「…そうか。まあ程々にな」
本気で逃げられないといいがと思いながら、そっと書類を手にヒラリと踵を返す。
「じゃあ、クレイに宜しく」
そう言って、笑顔で執務室を後にした。
ロックウェルは去っていったショーンを見送り、そっとヒュースへと声を掛ける。
「ヒュース、クレイは逃げていないか?」
【酷いとは言ってますけど、逃げる気はなさそうですよ?】
「そうか」
そんな言葉にホッと息を吐く。
クレイの言葉に危うく理性が飛びそうになったが、ここは仕事場だと辛うじて心を落ち着かせ、一方的にクレイだけを乱してやったのはつい先程のこと。
正直そのあまりの痴態に今すぐ犯したい気持ちでいっぱいになってしまった。
下半身だけ露出させ後ろ手に拘束し自分の手で後孔を犯させて耳元で言葉責めを繰り返してやると、その可愛い口からは懇願の言葉が溢れ出て目は涙で潤みつつもその顔は快楽の表情で蕩けきっていたのだ。
その姿はまさに早く挿れてくれと言わんばかり。
あんな姿を見せられたら本当に理性が揺らぐ。
そんな時、突然コンコンとノックの音が聞こえてハッと我に返った。
こんな可愛いクレイの姿を誰にも見せたくないと思い、すぐさま眷属に部屋に運ぶよう命じて自分も魔法で心を落ち着かせた。
ショーンには見透かされていたが、これは激しい独占欲だ。
誰にもクレイは渡したくない。
ましてや自分の部下になど取られてたまるものか…。
ロックウェルは机上に乗せられた書類にザッと目を通しさっさと片付けるとすぐさまクレイが待つ部屋へと足を向けた。
これで今日の仕事はもう終わりだ。
後はただただ可愛がればいい。
【ロックウェル様?ドS全開の笑みが浮かんでいますよ?】
せめて部屋に着くまでは平常心でいて下さいとヒュースから窘められて、思わずクスリと苦笑をこぼしてしまう。
どうやら少々気が逸り過ぎたらしい。
「…すまない」
【いいえ。迂闊なクレイ様を教育して頂けるのはありがたいので、今日も存分に可愛がってあげて下さい】
「善処しよう」
そんな言葉と共にロックウェルは歩を早めた。
***
「はぁ…。うぅ…酷いぃ……」
寝台の上でクレイは身体を震わせながら転がっていた。
服は一応着ているが、下半身は出たままだし後ろ手の拘束もそのままだ。
そんな状態で突然放置されて、身体は物足りないと叫びをあげていた。
「んんっ…はぁっ…変態になりそうで怖い……」
いや。既にかなりその域に達してきている気がする。
どうもドSの海を泳いでいるうちにかなり育てられてしまったらしい。
『クレイ…縛られて自慰をさせられる今の気分はどうだ?』
先程のロックウェルの意地悪な声が耳に蘇る。
『ちゃんと反省しないと絶対に入れてやらないからな?』
そんな言葉にたまらない気持ちになった。
『ほら、もっと手を動かしてしっかり慣らさないと入るものも入らないぞ?』
囁かれる声に熱がこもって、ただただ早く欲しいと言う気持ちだけが募っていったところで突然ノックの音が聞こえて飛び上がった。
それからすぐにここまで運ばれてしまったが、熱が灯った体はとてもすぐには治まってくれそうにない。
「うっ…んんッ!はぁ…うッ…」
後ろがヒクヒクと疼いて、早くロックウェルが欲しいと訴える。
ロックウェルは後どれくらいで来てくれるのだろう?
「んぅっ…。早く…欲しい…」
どうしても待ちきれなくて、仕方なくうつ伏せから腰だけを高く上げそっと先程させられていたように自分の指で後孔を慰める。
最初は恐る恐るだったが、徐々に指を増やして前立腺を探しそこを押した。
「はっ…はぁんッ…気持ち良い…」
これまでの自分ならこんな事絶対にやらなかったのに…どこまでも浅ましい自分がいてそれを認めざるを得なくなってしまう。
「あっあっあっ…」
けれどどうしてもイけそうでイけなくて、思わず腰をくねらせ快楽を追い求めた。
「ロックウェル…ロックウェル…」
愛しい恋人の名を呼びながら恥ずかしい恰好で自慰に耽る自分があまりにも空しく感じられて、やっぱり早く来てほしいと願ってしまう。
「うっ…っく…。早く来て…ロックウェル…」
泣きそうな気持ちでそうやって自分をひたすら慰めていると、カチャリと音を立てて扉が開いた。
そこに居たのは他の誰でもないロックウェルで────。
「ロックウェル…」
あまりにも待ちかねすぎて、思わずホッと安堵の息を吐き涙目で微笑みを浮かべてしまう。
けれどそんな姿がよくなかったのだろうか?
扉を閉めたロックウェルは物凄い勢いでこちらへとやってきたかと思うと、驚く間もなくひっくり返され激しく唇を奪われてしまった。
「んっ、んふ…ぅ…」
しかもただただ翻弄されながら身を任せていると、突然乱暴に衣服を剥ぎ取られ足を大きく広げられたかと思うと、そこに待ち望んでいたものをグッと押し込まれた。
「あぁあああぁああっ!!」
自分の指で慣らしていたとはいえ、突然の激しい挿入に身体が衝撃を受けてそのままふるふると震えてしまう。
「ひっ…ひぅ…」
まさか入れられただけでイッてしまうとは思っても見なかった。
感じすぎてたまらない。
「あっ…ああッ…」
「クレイ…すまない」
余裕がなかったと言うロックウェルに思わず首を振る。
好きにしてくれとさっき言ったのは自分だ。
謝る必要などない。
「ロックウェル…抱きつけないから抱きしめてほしい…」
いっぱい愛してほしい。
他に何も考えられないほど────強く、溺れるほどに…。
「あっあっ…!ロックウェル…はぁッ…!」
そのままひっくり返され、前を可愛がられながら後ろを突き上げられ背に口づけを落とされる。
まるで全身が性感帯になったように打ち震えて、ただただロックウェルに翻弄され続ける自分がいた。
「ほらクレイ?指も舐めたいか?」
「んんぅ…。ふぁっ…」
口内を指で犯されるのを感じながら舌を絡めると何故か快感が増していく気がして、何も考えられなくなっていく。
(気持ちいい…)
全身でロックウェルを感じるのは至福だとさえ感じられて、思わずうっとりと快楽に身を任せそうになってしまった。
たまにはこのまま素直に溺れたい。
けれどそれだけだとまた変態に育てられてしまいそうだから、そうならないように理性を働かせないととやはりどこかで考えてしまう。
「クレイ…考え事か?」
「んんっ…違…うぅ…」
「余裕があるならもっと好きな体位に替えてやろう」
「あっ…!」
「もっともっとお前を愛してやりたいし…な…!」
「あぁんっ…!」
前立腺を擦り上げられながらズンッと一気に奥まで突き上げられて、その後も何度もいいところにそれを与えてくれる。
「あっあっあっ…!いやぁッ!ロックウェル!これ…止まらなッ…!」
その刺激が好きすぎてたまらなくて、思い切り締め上げながら精液を強請るように腰が揺れてしまった。
「ひっ、ひぁあ…ッ!も、お願いっ!熱いのいっぱい欲しいッ!中にロックウェルのが欲しいぃ…!」
あの熱いものが欲しくて、ジワリと広がる感覚を早く感じたくてただただ強請り続ける。
「…わかった。そろそろたっぷり受け取れ」
暫く責められた後、どこか興奮したようなロックウェルの言葉と共に思い切り揺さ振られそのまま奥まで放たれた。
「あっ…」
それを受けて体が歓喜に震えて同時に果てる。
トプンッと自身も吐き出しながら思わず恍惚とした表情を浮かべてしまった。
「ふぁあっ…気持ちいッ…!」
なのにロックウェルはそんな自分を見て、何故かまた雄を高ぶらせてしまう。
もう終わってくれていいのに────。
「やっ…ロックウェル…?!あぁんっ…!」
「お前は本当に…淫乱すぎる…ッ」
「やぁあああっ!!」
そして何故かそのまままた快楽の海を泳がされる羽目になった。
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