黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第一部 アストラス編~王の落胤~

124.※罰ゲーム

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絶対に負けられない────。
そんな気持ちを抱え、皆自分の欲望を胸に本気で挑んでいた。

「……ロックウェル。そう言えばお前は浮気をした記憶はあるのか?」

ロイドがいきなり揺さ振りを掛けるようにその言葉を発してくる。

「あの女はそこのシュバルツの女だったらしいぞ?お前もひどいことをする」

そしてクッと楽しげに言いながらカードを交換し、そっと挑発の眼差しを向けてきた。
そんなロイドにロックウェルも妖しく笑いながらそっとカードを捨て、新しいカードへと手を伸ばす。

「そう言うお前の方こそ、傷心のシュバルツを手籠めにしたんだろう?クレイは私に任せてお前は新しい恋人と仲良くやるんだな」

そんな言葉にシュバルツが頬を染めて手籠めにはされていないと言い放つ。

「私はロイドとの口づけと魔力交流が好きになったんだ…」

そう言ってバサッとカードを捨て新しいカードをめくった。

「でもそう言えばさっきロイドと寝てみたいと言っていたな。あれは興味があるからだろう?」

クレイがそっとその言葉を口にしながら何でもないことのようにカードを交換する。
これにはロイドも多少動揺したようだ。

「クレイ……私がお前一筋だと知っているくせに相変わらずつれないな」
「……まあ俺が好きなのはずっとロックウェルだしな。そこは仕方がない」
「昨日はあんなに私の物を美味しそうに頬張って飲んでくれたくせに……」

その言葉には今度はロックウェルとクレイが動揺する。

「なっ…!あれはただの技能講習だ!美味しそうに頬張ってなんかないだろう?!」
「しっかり味わっていたくせによく言う」

そんな言葉にロックウェルがわなわなと震えだす。

「ロックウェル!誤解だ!あれはただの罰ゲームで……!」
「リーネの罰ゲームを横取りしてまで舐めてくれただろう?私のものなら舐めてもいいと思ってくれたからそうしたのかと思ったが、違ったのか?」
「ロイド!」

そんな風に煽りに煽られまくったせいでクレイの動揺が激しく、結果はロックウェルが勝者でクレイが敗者だった。

「…早くくじを引け」

どこまでも低い声で言われ、クレイは蒼白になりながらそっとくじを引く。

「なんだった?」

ロイドが楽しげに促してきたが、クレイとしては怖いとしか思えないものだった。

────敗者は勝者の要求を全て受け入れる。

「えっと…?俺は一体どうしたらいいんだ?」

別にロックウェルに言われたらなんでも受け入れるのは構わないのだが、ロックウェルが恐ろしい笑みを浮かべているのが怖くて仕方がない。
できれば怖い要求は一つにしてもらいたいところだ。

「…勝負は三回だったな?全て終わってから纏めてお前には受け入れてもらおうか」

もうこれは朝までお仕置きコースまっしぐらだと暗に言われたようなもので、思わず身震いしてしまう。
これでは怒らせた分だけ要求は増えると言うことではないだろうか?
一体何をされてしまうのだろう?
けれど罰ゲームは罰ゲームなのだから要求は甘んじて受け入れざるを得ないだろう。

「…わかった。覚悟しておく」

そう答えた自分にロックウェルは満足そうに笑い、ロイドは面白くなさそうにカードを回収して次のカードを配り始めた。

「ふん…まだ勝負は始まったばかりだ。次は私が勝ってみせる」

そして勝負は始まったのだが、今度の勝者はクレイで敗者はロイドだった。
そして罰ゲームのくじはなんと────『口淫』。
それを見てクレイは一気に蒼白になる。

「…今回はやめないか?」

クレイはロックウェルからの視線が怖くてそう提案したのだが、ロイドは嬉しそうにクレイへとにじり寄った。

「ふっ…私が昨日のお返しをさせてもらうチャンスを逃すはずがないだろう?罰ゲームは絶対だ」
「うぅ…そうは言っても……」

クレイはしきりにロックウェルを気にするが、ロックウェルは苛立たしげにロイドを睨み付けるばかり。
双方の間に迸る火花が異様に怖い。
そんな中、シュバルツがじゃあ次で最後だからとさっさとカードを配り始めた。

「最後くらい勝てたらいいんだが……」

そう言いながら最後の勝負を始めてしまう。

「…フルハウス」
「フォーカード」
「スリーカード」
「ストレートフラッシュ」

そんな言葉と共に最後の勝負に決着がつく。
最後の勝敗は勝者がロックウェルで敗者がシュバルツだった。
なんだかその組み合わせは怖いものがあって、クレイはドキドキしながらくじの結果を待った。

「なんだった?」

ロイドがそっと促すと、シュバルツは残念そうにため息を吐く。

「あまり嬉しくない結果だった」

そこに書いてあるのは『勝者は敗者に言葉責め』と言う言葉で……。

「嫌だ!!」

クレイは思わずそれを見て叫んでいた。

「クレイ?」
「ロックウェルが俺以外をドSで責めるところなんて見たくない…」

そうやって急に情緒が不安定になり泣きだしたクレイにロイドがそっと寄り添う。

「クレイ…泣くことはないだろう?お前がロックウェルを好きなのは知っているが、これはただのゲームだ。聞きたくないなら私とあっちの部屋に避難すればいい。口淫をしながら慰めてやるから何も心配するな」

そんな風にクレイの心に入り込むロイドを当然ロックウェルが許すはずがない。

「クレイ?言葉責めがしてほしいなら後でいくらでもしてやるから、ロイドの言葉に乗るな」
「え?」
「シュバルツ殿。可愛い恋人が泣くので特別に他のくじを引いていただけないだろうか?」

そんな言葉にシュバルツがいいのかと言う視線をクレイ達へと向けてくる。

「俺は構わないが?」

クレイはそうしてもらえるなら是非と言い、ロイドもそんなクレイに渋々同意した。

「シュバルツ。引いてみろ」

その言葉を受けてシュバルツは恐る恐る次のくじへと手を伸ばした。
そこには『勝者は敗者を虐め倒す』の言葉がある。
それを見てクレイは益々目に涙を溜めた。

「酷い!!やっぱりトルテッティの奴は俺をどこまでも虐めたいんだ……!」
「ええっ?!」

言いがかりだとシュバルツは慌てて言ってくるが、クレイは相手がロックウェルだからか引こうとしない。

「クレイ!…落ち着け」

ロイドが慌ててクレイを抱きしめて、そのまま落ち着かせるようにすかさず口づけ魔力を送りこむ。

「うっ…うぅ…」

そうして大人しくなったクレイをそっと宥めながら優しく口づけを落としていく。
その姿はまるで恋人同士のようだ。

「ほら…大丈夫だから」
「う…ロイド…」

そんな光景にロックウェルは心がどこまでも冷えていくのを感じた。
これはとても看過できるものではない。
一体ロイドはどこまでクレイの心の中に入り込んだのだろうか?
このまま二人の距離がどんどん近づくのだけは許せない。
口づけがあの自然さで、しかも口淫までした仲だ。
もはや一線を越えるのも時間の問題ではないだろうか?
そんな風にさえ思ってしまう。


(ロイドに思い知らせてやりたい……)


自分の中にどす黒い嫉妬の炎が湧き上がるのをロックウェルは止めることができなかった。
けれどどうしてやるのが一番いいだろう?
そこでふと閃いた。
取りあえずシュバルツは部屋から追い出して、その提案をしてみようと思い至る。
勝負は終わったのだから問題はないだろう。

「クレイ。勝負は終わったが…どうする?シュバルツ殿の罰ゲームは他のものにしてもらうか?」

三度目の正直でくじを引いてみるかとロックウェルが促すとシュバルツは少し悩んだ末に本当にいいのかと尋ね、クレイは引いてみろと許可を出した。

そこには『魔力交流』の言葉────。

これならクレイもロイドとしているし問題ないだろうとロックウェルはホッと安堵したが、クレイはそれを受けて思わぬ行動に出た。

「お前にそいつと魔力交流させるくらいなら俺が今すぐそいつと交流する!」

そんな言葉と同時にクレイはあっという間に瞳の封印を解いて、止める間もなく勢いよくシュバルツへと口づけ魔力を送りこんだ。
そこには躊躇など一切ない。

「んんんっ…?!」

その魔力のあまりの濃厚さに、シュバルツが身を震わせ恍惚とした表情で一気に意識を飛ばしてしまう。

「羨ましくはあるが……酷いなクレイ」

いきなり激しく魔力で侵してやるなんてとロイドが苦笑しながらそっとシュバルツをソファへと運ぶ。

「酷いも何もあるものか。ロックウェルは俺だけのものだ!」

強くそう言い返したクレイにロイドがそっと手を差し伸べる。

「妬けるな…」
「何とでも言え…」

そう言いながらも二人の距離はまた近づいて、そのまま流れるように唇が重なりそうになったのでロックウェルはすかさず二人を引き離した。

「クレイ…ロイドとの仲を私に見せつけて嫉妬させたいのか?」
「え?」

そんな気はなかったと言わんばかりにきょとんとしている姿を見る限り、本人はどうも無意識のようだと理解する。
けれどこの状況は非常に危険だ。

「さて…私達の罰ゲームも始めるとしようか…」

その言葉と共に、ロックウェルはゾクリとするような恐ろしい笑みでクレイを寝台へと誘った。


***


「ロイド…お前は好きな時にクレイに口淫をしてさっさと自分の部屋に帰れ」

ロックウェルがクレイを腕の中へと閉じ込めながら挑発するようにロイドへとその言葉を告げる。

「好きな時に…か。それはつまり最初にするも途中で乱入するも好きにしろと言うことか?」

ロイドがそれを受けて恐ろしく壮絶な笑みを浮かべた。

「その通りだ。私としてはクレイが私の物だとお前に思い知らせてやりたい気分でいっぱいだからな。じっくり見学していってもらっても構わないぞ?」
「クッ…そんなことを言って後悔するなよ?逆に私の口淫でよがるクレイに嫉妬させてやる」

そんな二人の会話にクレイが一気に蒼白になってふるふると首を振り始めた。

「ちょっ…!そんな3Pみたいなこと…っ!」
「勘違いするな?お前に選択権はない」
「そうだ。これは純粋に罰ゲームの実行に過ぎないからな。お前はロックウェルの提案を全て受け入れて、私の口淫を楽しめばいいだけの話だ」

二人からそう言われ、クレイは逃げ場はないとばかりに追い込まれる。

「大丈夫だ。ロイドに口淫以上のことをさせる気はないからな。お前はいつも通り私に愛されていろ」

そんな言葉と共にロックウェルが自身の魔力を口に乗せクレイへと注ぎ込んだ。

「んぅ…」

たちまち蕩けるような表情になったクレイをそのまま寝台へと連れていき、ロックウェルはそのまま何度も口づけながら甘く溶かしていく。

「魔力交流も言葉責めもお前とだけしてほしいんだったな?ああ、虐め倒すと言うのもあったな。全部実行してやるから楽しみにしておけ」

「ロックウェル…」


***


クレイのそのどこかうっとりとしたような眼差しを受けてロイドの嫉妬心が激しく煽られる。

(折角ここまで来たのに…)

自然にクレイと口づけられるくらいに距離を縮めたと言うのに、どこまでもロックウェルには勝てない自分が悔しくて仕方がなかった。

(まあ…大人しく引き下がる気は一切ないがな…)

ロックウェルが自分達の距離感に嫉妬したのは確実なのだ。
これも二人の仲を自分に見せつけて諦めさせるつもりで言い出したのだろう。
とは言えロックウェルは好きな時に口淫しろと言っていたし、望み通りタイミングを見計らってクレイを堪能してやるとほくそ笑んだ。
自分の口淫でクレイを悦ばせてやれるチャンスをむざむざ逃す気はない。

(しかし…ここは慎重にいくべきか)

先程のクレイの状態を思い返すに、やはりロックウェルを取り戻しはしたが心はかなり傷ついているとみて間違いはないだろう。
それは自分との距離を近づけるのにはうってつけではあるが、いつまでもそのままにしてやりたくはない。

(私にも白魔道士のように癒しの力があればよかったんだが……)

こればかりはない物ねだりをしても仕方がないのでロックウェルに任せるほかないだろう。
ただ…ロックウェルはどこまでクレイの状態をわかってやれているのだろうか?
ロックウェル自身も本調子でない可能性が高い分、もしもあまり分かっていないのならこちらがフォローに回る必要も出てくるかもしれない。
正直ロックウェルはどうでもいいが、クレイを癒してやりたい気持ちが大きかった。

「ロックウェル。今回は癒しは私に任せて、お前はクレイを好きなだけ責めてやるといい。クレイはお前に蹂躙されたいと言っていたからな」

ロックウェルの場合は何をしてもクレイへの癒しに繋がるだろうからと一応そう言ってやったのだが、その言葉にロックウェルは眉を顰めてしまった。

「クレイを癒すのは私の役目だが?」
「ふっ…お前みたいなドSに癒せるとは思えないが?それにクレイはお前に激しくされるのも好きらしいからな。精一杯可愛がってやるといい」

そうやってつい嫉妬を押し殺しながら挑発するように口にしてやると、ギリギリと睨み付けられてしまう。

「ロックウェル…!ロイドは……」

そんな中クレイが自分の言いたいことを違わず察してそう声を上げてくれるが、それはロックウェルの嫉妬を煽る行為以外の何物でもなかったようで────。

「クレイ。お前は黙っていろ。ロイド…お前に言われなくてもクレイの望むようにちゃんと可愛がってやる」
「それならいいが…」

お手並み拝見といこうかと言ってやると、ロックウェルはそのまま嫉妬交じりにクレイへと激しく口づけた。

「んっ…んんぅ…!」

そのままするするとクレイの衣服を剥いでロックウェルがクレイを口づけで酔わせていく。
その肌には既に愛された跡があちこちに散らばっていて、より美味しそうにクレイを彩っていた。

「ふぅ…んぅ…」
「クレイ…そんなに物欲しそうにして…。待たせて悪かったな」
「ちがっ…!恥ずかしいだけだ…!」

ロイドに見られているからと真っ赤になるクレイにロックウェルが意地悪く笑う。

「ああ…見られながらやるのが楽しみなんだな?」

それにかぶせるようにロイドもクスリと笑って言ってやった。

「そんなに私を意識してくれるなんて…嬉しい限りだ。あとで混じってやるから期待していろ」

そんな言葉にクレイがフルリと震える。

「ああ、二人で言葉責めも楽しそうだな。こんなにあっという間に感じて…」
「やっ…違う……」
「違わないだろう?ほら、もうここはこんなに期待で打ち震えているじゃないか」

ピクピクと立ち上がったクレイの自身をそっと握りこみながらロックウェルが妖艶に笑う。

「違っ…あぁっ!」

ちゅっちゅっと雄に何度も軽い口づけを落とすだけでクレイの物が大きく立ち上がり、期待に揺れた。

「本当に素直じゃない奴だな。もっと素直になればいいのに…」

そう言いながらロックウェルはクレイをうつぶせに返し、そのまま腰を高く持ち上がらせ後孔へと指を入れ慣らし始める。

「ひっ…!」

そのままツプツプと出し入れしながら更にロックウェルは言葉で責め立てていく。

「さっきまで私と散々したからな。ここはいつでも私を受け入れられそうだぞ?ほら…こんなに物欲しそうに指を受け入れて…」
「やっ…だめ…ッ」
「一息に挿れられて蹂躙されるのと、焦らされてギリギリで嬲られるのとどちらがいい?」
「あ…そんな…」

そう尋ねながらもロックウェルの指は徐々に増やされ、後孔は期待するように収縮し締め付けているようだ。
けれど見られている中で強請るのは恥ずかしいのか、クレイは理性との狭間で身悶えその瞳は不安げに揺れている。

「ロックウェル…」
「クレイ…私がいっぱい癒してやるから…お前は何も考えずただ感じるままに乱れていればいい」

そんな言葉と同時にロックウェルはクレイを嬉々として可愛がり始めた。




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