黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第一部 アストラス編~王の落胤~

116.煽られた嫉妬

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ロックウェルはアベルからの話を反芻して大きくため息を吐いていた。
正直現在の心境ではフローリアとの結婚などあまり考える気にはなれない。
好き…なはずなのに心が揺れないのだ。
綺麗な姫だとは思うし、アベルが言うようにこれ以上ないほどの良縁だと思う。
けれど全く気が乗らないのは一体どういうことだろう?
そろそろ落ち着いてもいい時期だと言われたらその通りかもしれないが、素直に頷くことができなくて一先ずサラリと躱して逃げてきた。

そんなことよりもロイドが言っていた相手の方が気になる。
いくら記憶を辿ってもそれらしい人物が思い当らない。
頭に靄がかかったようになって、判別がつかないのだ。
部下や友人などは思い出せるのに恋人となると全く分からなかった。

(サシェ…とかか?)

ロイドと接点があったアストラスの者となるとシリィかサシェしかいない気がする。
ただ自分とシリィはそんな関係ではないから、あるとしたらサシェくらいしか思いつかない。
けれど何となく記憶があやふやだが、彼女とは寝ていないと思うのだが…。

「はぁ…」

考えてもさっぱりわからず、深いため息ばかりが口を突く。
そんな中、ロイドがクレイやリーネと共にこちらに歩いてくるのが見えた。

(そうだ。クレイに聞いたら何か教えてもらえるかもしれないな)

ロイドとクレイは随分親しそうだし、友人なら何か知っているかもしれない。
そう思って声を掛けようと思ったところで、ギクリと足を止めた。
少し離れたところで足を止めた三人はその場で楽しげに話し始めたのだが……。

「クレイ…今日もお前の部屋に泊まっても構わないか?」

そんな言葉と共にロイドがクレイの肩にそっと手を置いた。
対するクレイの答えは至極あっさりしたものだが、どこか甘い空気を纏いながらロイドと見つめ合う。

「ああ、別に構わないぞ?」
「あら、私も勿論いいわよね?」
「ああ」

そこに何故かリーネまで乗ってきた。

一体何を……言っているのだろう?

(落ち着け。どうせただの黒魔道士同士の飲み約束だ…)

きっと夜通し話そうという意味に違いないと懸命に思いを振り払おうとするが、何故か胸がバクバクと弾んで仕方がない。

「今日こそクレイにキスマークをつけてみたいわ」

リーネの甘い声が胸を突く。

「私はクレイを縛り上げて可愛い声で啼かせてみたいな」
「ぶっ…!お前はそんなことを考えていたのか?」
「いいだろう別に?あれを書いたのはお前のくせに」
「……!」
「ああ、それより今日こそお前の口に私の物を突っ込みたいものだ」
「お前は…。俺がそう簡単に負けるとでも?」

次々に飛び出すロイドのセリフもたまらなく不快だった。

キスマーク?
縛り上げて…啼かせる?
口に…突っ込みたい?何を…?
何やら嫌な予感しかせず、段々頭がガンガンと痛んできてしまう。

「それより今日は私と一緒に寝てほしいわ。昨日はロイドだったし、いいでしょう?」
「それはそれで問題だろう?別に昨日と一緒でいいじゃないか」
「だってロイドの腕の中でちゃんと眠れたの?私心配で…」
「ふっ…クレイはグッスリだったぞ?なあクレイ?私の腕の中で安心できただろう?」
「ああ。ロイドは基本的に優しいしな」

クレイが…ロイドの腕の中で寝た…?
安心して…?

「魔力交流もじっくりできるし一石二鳥だ」
「ふっ…確かに」

そう言いながらロイドがクレイの顎を持ち上げ、そっと寄り添うように見つめ合う。
そこに流れるどこか甘い雰囲気は、最早恋人同士と言っても過言ではないだろう。

(な…んだ?)

胸がズキズキと痛んで仕方がなかった。
自分は何に対してこんなにショックを受けているのだろうか?

そんな中、横から急に声を掛けられビクリと飛び上がった。

「あれ?ロックウェル様。結局クレイをあいつにやっちゃったんですか?」
「え?」
「まあこうして見るとすごくお似合いだけど……。俺もクレイなら付き合いたかったな~」
「私だってクレイと付き合いたかったわよ!」
「なんだシリィ。焼きもちか?」
「そうよ!だってロイドよ?クレイがソレーユに行っちゃったら会えなくなっちゃうじゃない」
「あ~残念だな。ライアード様と結婚してたらソレーユでクレイと会えたのにな~」
「うぅ…」

シリィとシオンの会話にブルブルと身が震えるのを感じる。
鼓動が跳ねて、焦燥感に襲われてしまう。

(クレイが……私の恋人だったと…でも?)

クレイは自分の友人のはずだ。
昔からの変わらぬ────。

そのはずなのに胸が苦しくて仕方がなかった。
クレイがロイドが言っていた元恋人のはずはない。
けれどどこかでそんな考えを否定する声が鳴り響く。
一体自分に何が起こっているのか…。

「はっ…はぁ…」
「ロックウェル様?!」

思わず胸を押さえて蹲った自分にシリィが回復魔法を掛けてくれる。

「大丈夫ですか?」
「……ああ。大丈夫だ」
「暫く休まれてはいかがです?ここは私達がみてますから」
「いや…」

今ここで場を離れてはいけないと頭が警鐘を鳴らす。
そっとクレイ達の方へと目を向けるとクレイの心配そうな眼差しとぶつかったが、ロイドが耳元で何か囁いた途端背を向けてしまった。
一体何を言われたのだろう?
そう思っていると、誰かが呼びに行ったのかフローリアが慌てたように自分の元へと飛んできた。

「ロックウェル様!」

一体何がと献身的に寄り添い、すぐに回復魔法を掛けてくれるが全く気持ちは楽にならない。

「どうぞあちらでお休みください」

そんな言葉と共にあっという間にその場から動かざるを得ない状況に持ち込まれてしまう。
仕方なく立ち上がりそっと再度クレイ達の方へと目を向けると、ロイドが勝ち誇ったかのようにこちらに目を向けそのままクレイの腰に手を回しグッと抱き込んだ。
クレイはそれを突き放すことなく大人しく受け入れている。
そんな姿が衝撃的だった。




「ロックウェル様。どうぞゆっくりお休みくださいませ」
そんな言葉と共にフローリアが水を差し出してくれる。
「フローリア様……」
「何があったのかは知りませんが、私は貴方の妻になるんですから何でも相談してくださいませ」
「…そのお話は────」
「あら。身分などお気になさらないで?貴方はアストラスの魔道士長と言う立派な肩書がありますわ。きっと父王もお許しくださいます」
「…………」
お慕いしておりますと言ってしなだれかかる姫の甘い香りが鼻腔を擽るが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。
正直さっきの事が頭から離れなくてクレイとロイドの姿ばかりが頭に浮かんでしまう。

「姫……。申し訳ないが、気分が優れないので一人にしていただいても?」
「え?」
「申し訳ない…」
「あ…はい。そうでしたわね。ゆっくりお休みください」

残念そうにそう言って、フローリアはそっと立ち上がり名残惜しげに部屋を出ていった。
それを見届けて、そう言えば自分には眷属がいたというのを思い出す。

「ヴァリアーク…」

一体いつどうやって手に入れた眷属だったのかが思い出せないが、今はそれどころではなかった。
【…は】
「悪いがクレイとロイドの様子を見てきて、すぐに知らせてくれないか?」
【…本当にそれだけで宜しいのですか?】
どこか確認するかのようにそう言ってくる眷属に頷き、兎に角今の二人が気になるから知らせてほしいとだけ伝えた。
【…御意】
そう答えてすぐに動いてくれた眷属にホッと息を吐き、ロックウェルはそのまま横になる。

(クレイが…恋人?まさか…そんなはずはない…)

クレイとは16歳くらいに初めて会ってからずっと友人関係を続けていた。
いつも一人でいるクレイを何かと気に掛けている内に仲良くなって、それからずっとその関係は続いている。
けれど何かが引っ掛かって仕方がなかった。

(そうだ…)

サシェの件で封印をしてしまうまでは確かにそんな関係だった。
でもその後は…?

「う……」

ズキズキと痛む頭を必死に働かせ、記憶を辿る。
けれど思い出されるのは友人としてのクレイの行動ばかりで…恋人だったという記憶は全くと言って思い出せなかった。
それなのに心が辛い辛いと悲鳴を上げている。
頭では友人だと思っているのに、心はまるで違うと言わんばかりにズキズキと痛むのだ。

「私の恋人はフローリアのはずだ…」

彼女は確かに『貴方のフローリア』と言っていた。
それが嘘だとは思えない。
彼女は自分と結婚したいとまで思ってくれているのだ。
自分達の関係は疑いようがないだろう。
それなのに心がまた悲鳴を上げ胸を締め付けてくる。

「はぁっ…!」

苦しくて苦しくて、一刻も早く眷属からの報告を聞きたくて仕方がなかった。
そうしてやっと待ちかねた報告がやってきたのだが…。



ヴァリアークが見たままをそのまま映像で見せてくれると言うので、そっとその頭へと手を置いた。
それと同時にその映像が頭の中で再生される。
そこに映し出されたのは仲良く並んで歩く二人の姿。
どこか元気がないクレイの頭をロイドがクシャリと撫でる。
そんなロイドにクレイが励まされたようにフッと笑い、そっと身体を寄せた。
それから暫く交流会で普通に他の魔道士達と話していたが、タイミングを見計らったかのようにロイドがクレイを誘いその場から離れてしまう。
そして回廊の柱の陰でロイドがクレイへと声を掛け、そっとその体を抱き寄せた。

どうやらクレイは泣いているようだ。
ゆっくりと身を離し涙を指で拭うロイドに、クレイが「すまない」と言ったのが聞こえてきた。
そんなクレイの涙をロイドが「泣くな」と言って今度はそっと唇で吸い取っていく。

「ロイド…」
「…クレイ。無理はするなと昨日言っただろう?」
「うっ…」
「私はお前一人くらい余裕で支えられるぞ?甘えてくれ」
そんな言葉にクレイが縋るような眼差しを向けた。
「ロイド…今夜も一緒に寝てくれるか?」
「もちろんだ。それでお前が安心して眠れるなら喜んで」
そんな言葉にホッと安堵した表情を浮かべたクレイの映像を最後に、その報告は終わってしまう。

それはショック以外の何物でもなくて、自分の中の何かがガラガラと崩れていくような気持ちになった。
クレイはロイドと寝たのだ。
それは昨日だけではなく、今夜も────。
そしてきっとこの先も二人は何度も寝るのだろう。
肌を重ねて…。
それを考えるだけで腸が煮えくり返るような気持ちに襲われた。
付き合っていた事実は何一つ思い出せないのに、何故か激しく嫉妬している自分を感じてしまう。

「クレイ…どうしてお前とのことが思い出せない…?」

こんなに強く嫉妬を覚える程自分はクレイを好きだったはずなのに、頭は友人としてしか認識してくれない。
これは絶対に何かある。
自分は一体どうしたらいいのだろう?

「試せる魔法を何でもいいから唱えてみるか…」

もしかしたら誰かに記憶操作されてしまったのかもしれないと思い、対抗魔法を唱えてみるがそれは何故か無効になってしまう。

「…?既にかかっているのか?」

何故か記憶操作に対する対抗魔法を自分自身に掛けている事実に気が付き、それを解呪する。
一体自分は何の目的でその魔法を自分へと掛けたのか全く思い出せなかった。
けれどそれはきっと今回の件と関係があることで……。
取りあえず納得はいかないが、その他にも解毒魔法や回復魔法、精神安定の魔法等々思いつく限りの魔法を唱えてみるが、クレイとの恋人の記憶は全く戻らなかった。
これはもう記憶喪失と言っても過言ではないのではないかとさえ思えてくる。
何故かこれまでの恋人絡みが一切思い出せないのだから…。

「そうだ」

自分の眷属なら何か事情を知っているかもしれないと思い至り、そっと二体へと声を掛けてみた。

「キサラ、ヴァリアーク」
【お呼びでしょうか?】
「私の記憶が抜けているのだが、何か事情を知らないか?」

そんな言葉に、やっと聞いていただけましたねと答えが返ってくる。

【ロックウェル様はトルテッティの罠に嵌ってしまわれたのでございます】

自分達は主の命を脅かされるか命令がないと動けないため、何もできなかったのだと眷属達は悔しさを滲ませた。

【クレイ様達はロックウェル様の記憶が戻るよう動かれているご様子。どうぞ今暫くご静観を】

けれどそんな言葉にロックウェルとしては納得が行くはずがない。
正直アベルではなく、先にロイドにクレイを奪われてしまっている事実が許せなかった。
今こうしている間にもロイドはクレイを手中にしているのだ。

「私は今すぐ記憶を戻してもらいたい…!」
【今動かれるのは最悪の結果しか招きません】
【そうでございます。クレイ様の状況はヒュース殿からご説明していただきますので…】

そんな言葉と共にもう一体の眷属が姿を現し、のんびりした声で状況を語ってくれる。

【現状あの二人はロックウェル様がご心配頂くようなことにはなっておりませんのでご安心を】

けれどそんな言葉が信じられるはずがない。

「先程クレイとロイドは一緒に寝ていると言っていた…!」
【そうですね~。一緒の寝台で身を寄せ合いながら寝ていましたよ?でもただそれだけです】
「添い寝だとでも?」
【ええ。大体クレイ様はロックウェル様とのお約束を破る気はないそうですし】

それは一体どういうことだと尋ねると、ヒュースは簡単に事情を話してくれた。
どうやら嫉妬に狂った自分が、以前クレイに仕事でもプライベートでも自分以外とは寝てくれるなと言ったらしい。
ロイドとのことは心配だが、ヒュースが他の眷属がそこは絶対に死守すると言ってくれたので、そう言うことなら安心だとホッと息を吐いた。

「それなら私が誘えば私の部屋に来てくれるか?」

記憶は戻らないが、もしかしたらクレイとの時間が何かの切欠になるかもしれないと思ってふとその提案をしたのだが、ヒュースはそれは無理だと断言してくる。

【クレイ様は『ご友人』と肌を重ねる気はないそうです】
「…?」
【記憶のないロックウェル様は恋人ではないらしいので、絶対に寝ないと強く仰っておりました。クレイ様と肌を重ねたいのなら記憶を戻さないと難しいですね】

そんなまさかの返答にロックウェルは空いた口が塞がらなかった。

「なんだそれは!本当なのか?!」
【本当でございます。今のロックウェル様はロイドと同列だそうですよ?】

そんな言葉に怒りが込み上げて仕方がない。

(私があんな男と同列だなんて…!)

【ああ、いいですね。是非ご自身の溢れる嫉妬の力で小娘の魔法を弾き飛ばしてくださいませ】
ヒュースのどこか冷たい言葉が胸を抉る。
それができれば苦労はしない。
けれどできることなら今すぐ記憶を取り戻してクレイの元へと走っていきたいところだ。

【ああ、そうそう。寝るのは難しいですが、カードゲームの罰ゲームに面白いものがありまして…】

(カードゲーム?)
ヒュースは一体何を言い出したのだろう?

【罰ゲームはくじ引き式なんですがね~】
「…何が言いたい?」
【ふふふ…。魔力交流は兎も角、『キスマークをつける』やら『手淫』『口淫』などというスリリングなものも含まれているのですよ】
そんな言葉に思わず目を見開く。

「しゅ、手淫口淫だと?!」
【ええ。昨日は回避できましたが、今日はどうですかね~】

そんな言葉に慌てて部屋を飛び出した。

クレイの部屋は一体どこだろう?

先程の三人の会話はそれだったのだと確信して、焦りばかりが募ってしまう。

「ヒュース!クレイの部屋は?!メンバーは誰だ?!」
【さてさて、時間的にまだ早いですし、今行っても無駄だと思いますが?】
「~~~~っ!!夜に行くから場所を教えてくれ!」
【シリィ様とご一緒に来ればよいだけの話でございます。どうぞご参加ください】

それではと言ってヒュースはそのまま下がってしまった。

(くそっ…!)

けれどここで黙って引き下がるわけにもいかず、すぐさまシリィの姿を求めて駆け出した。


***


「シリィ!」
シリィは先程体調が悪そうだったロックウェルが以前のように勢いよく自分の元へとやってきたので思わず目を見開いた。
「ロックウェル様?もしや記憶が戻られたのですか?」
けれどそれは勘違いだったようで、続く言葉で作戦の方が上手く作用したのだと理解する。
「事情は聴いた。クレイが私の恋人だったというのは本当か?!」
「…本当ですよ」
「ロイドとクレイを見なかったか?!」
「あの二人ならさっきどこかへ行きましたけど」
そろそろ目が覚めただろうから、シュバルツの様子を見てくると言ってそっと席を抜けた二人を見送ったのはつい今しがただ。
「くそっ…!」

どうやらロックウェルは自分の眷属達から事情を聴いて現状を把握したらしい。
実に行動が最近のロックウェルらしくなってきた。
「ああ、でも大丈夫ですよ。二人きりではないので」
シリィはこれを機にロックウェルが二人を追えばシュバルツがいる部屋へと誘導できていいかもしれないと思ったが、如何せんタイミングが悪かった。

(もう少し後なら良かったのに────)

「探してくる…!」
「待ってください。本日の交流会もそろそろ閉会時刻が迫っています。ロックウェル様はそちらの責任者ですから、それが終わってからにしてください」
そんな言葉にロックウェルが思い切り睨み付けてくる。

(こんなに二人の事が気になるのなら、あの姫と寝るなんてしなければよかったのに…)

記憶がないのは仕方がないが浮気は別だ。
姫と関係を持ったのはロックウェルの手の早さが要因で、記憶がないのは何の言い訳にもならないだろう。
はっきり言ってロックウェルの落ち度でしかない。

「ロックウェル様?今回の件は仕方がないことだと理解はしておりますし心配もしておりますが、私はクレイを泣かせたことだけは許しませんから」

そうやって厳しく告げた自分にロックウェルはギリッと悔しさを滲ませる。
けれど続く言葉に大きく目を見開いた。

「…わかった。その件については元に戻ったら責任をもって謝罪しよう。今はとりあえず仕事に戻るが…今夜のカードゲームとやらに私も参加させてはもらえないか?」
「え…?」

一体どうして知っているのだろうか?
流石にあの場にロックウェルを同席させるのは無理だろう。
怖すぎる…。

「えっと…何のことなのか私にはさっぱり…」
「嘘だな。クレイの眷属から参加したらどうかと言われたぞ?」
「ええっ?!」

一体何故そんな事をわざわざ言ったのだろう?
流石に困る。

「あ…あのですね、私はクレイを二人から守るために参加してますので、どうぞ安心してロックウェル様はそのままそちら側で記憶を戻してもらう事に専念してください」
「私は連れていけないと?」
「ええっ?!えっと独断で連れて行くわけにもいかなくてですね…」
なかなか首を縦に振らないシリィにロックウェルが段々イライラを募らせるのを感じたが、こればかりは仕方がない。
けれど追撃が来るかと思ったのも束の間、ロックウェルは意外な事を口にしてきた。
「わかった。それなら今夜自力でフローリアへと頼み込んで魔法を解いてもらう。垂らし込んででも解かせてみせるから、解けたら明日、案内してくれ」
いいなと念を押して踵を返したロックウェルに思わずため息が出る。

(浮気っていう概念はないのね?)

実にロックウェルらしいが、自分は誰かと寝てOKなのに、クレイだけはダメというのは酷いのではないだろうか?

(記憶が戻って、クレイが自分がいない隙にロイドと浮気してたとか言いだしたら庇って上げなくちゃ!)

こうしてこの日の交流会も終わりへと向かったのだった。



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