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第一部 アストラス編~王の落胤~
99.※紫の花
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食事会は王宮内の広間で設けられたのだが、そこに着いた時まだ誰もそこには来ていなかった。
やはりまだ少し時間には早かったようだ。
クレイはそのままドルトに勧められるまま席へと着き、ドルトはその正面の席へと腰を下ろす。
「先に何か飲まれますか?」
「あ…いえ」
気にしなくてもいいとクレイは恐縮しながら俯いた。
正直何を話せばいいのかわからない。
このまま誰かが来るのを待つ以外にないだろうと思っていると、そこに一番来て欲しくなかった王がやって来る。
「なんだ。姿が見えないと思ったら先に来ていたのか」
「陛下。本日は同席させて頂き光栄でございます」
そう言いながらドルトが立ち上がり挨拶をしたので、クレイもそれに習い同じように頭を下げた。
「本日はご足労頂き感謝致します」
そんなクレイに王がフッと笑う。
「お前のそのような殊勝な姿は久方振りだ。その姿がそうさせているのなら、悪くはない」
「……」
嫌味かと思いながらも、今日は女装姿を認めてもらえたのだからと我慢し、クレイはそのまま席へと着いた。
「時に、その髪の花は?」
「はい。先程庭園に咲いておりましたので私の方から髪に挿させて頂きました」
尋ねた王にドルトがそう説明すると、クレイがそっと頰を染めた。
「我が家の庭園にも咲いている花でして、彼女にはこの紫が映えるように思い、つい…」
そんな風に説明するドルトの横でクレイがどこか嬉しげに微笑みを浮かべる。
正直クレイはたとえ女装していようと、女らしい性格でもないし、男の姿でも不遜そのものだ。
どう考えても花を喜ぶような男ではない。
そんなクレイが何故こんな風に嬉しそうなのか王にはさっぱりわからなかった。
これはやはり相手がドルトだからなのだろうか?
そう思っていると、そこへルドルフとハインツがやってきた。
「お待たせいたしました」
「いや。まだ時間には早い。気にするな」
そう言って二人に座るようにと声をかける。
「クレア?その髪の花は?」
ハインツがすぐに気づきそう声を掛けると、クレイはふわりと微笑みながらドルトから貰ったと答えた。
それを受けてルドルフが何か知っていたのか、少し驚いたように目を瞠った後、優しい表情で良かったなと言った。
そんな穏やかな空気になんだか取り残されたようにモヤモヤしながら見遣っていると、そこへ最後の一人、ロックウェルがやってくる。
「遅くなりまして申し訳ございません」
「いや。時間通りだ。では始めるとしようか」
そして王のその言葉で和やかに食事会は始まりを告げた。
***
ロックウェルはさっきまではなかった花がクレイの髪を飾っているのが気になっていた。
しかも本人は嫌がるどころかどこか嬉しげだ。
これはどう考えてもおかしい。
「クレア…その花は?」
タイミングを見計らってそう尋ねると、ドルトから貰ったのだとはにかみながら答えてくる。
「ああ。そう言えばクレア殿はロックウェル様の恋人だとか。余計なことをしてお気を悪くさせてしまったでしょうか?」
ドルトがそう言って気を遣ってくれたが、クレイはその言葉に焦ったように大丈夫だと答えた。
「大丈夫です!ロックウェルはそんな些細な事を気にするような男ではありませんから!」
「…………」
正直気になるから尋ねたのだが、クレイがここまで言うからにはきっと特別な花なのだろうと思い、手洗いに出たついでにこっそりとヒュースへと尋ねてみた。
「あれは何か特別な花なのか?」
そう尋ねた自分にヒュースは言いにくそうに答えてくれる。
【あの花はレイン家に残した、クレイ様の身代わりの花だったのですよ】
「身代わりの花?」
【ええ。クレイ様の存在をご両親に忘れていただくために、あの紫の花をご自分の存在へと置き換えて魔法をかけたのです】
そうして家を出て以来レイン家には帰っていないから知らなかったのだが、どうやら夫婦はあの花をクレイが去った後大切に育ててくれていたらしい。
【あの花を髪に挿していただきその話を耳にしてクレイ様はとても嬉しかったご様子。ですからどうぞあの花はそのままにして差し上げてください】
その話を聞いてロックウェルはやっと納得がいった。
これはクレイが嬉しそうにするのは仕方がないだろう。
「良かった…」
これで少しでもクレイの気持ちが楽になるのならそれに越したことはない。
過去は消せなくても新たな気持ちで前向きにドルトに向き合えるのなら、それは大きな一歩となることだろう。
けれどそう思っていたところで横から声が掛けられる。
「何が良いものか」
そこには王の姿があり、ロックウェルは驚いてすぐに脇へと下がった。
「そこまで嬉しかったのならさっさとドルトに掛けた魔法を解いてしまえば良いのだ」
「陛下…それは」
「そうであろう?今日とてクレイが私の子だとドルトの耳に届いているかもしれないと気にして、わざわざ女装してきたのだろう?そんな事を気にせずいつもの姿で堂々と出席し、いっそのこと紫の瞳を晒してしまえば良かったのだ。そうすれば場合によって記憶を戻す切欠作りもしてやれたかもしれぬのに…」
そこにはクレイに何かしてやりたいという気持ちが溢れているようだったが、正直見当違いもいいところだ。
恐らくクレイはそんなことは望んでいない。
ただそっと…小さな幸せを噛みしめたい────そんな心境なのではないだろうか?
けれど付き合いの長い自分だからこそそう思うのであって、王にはそんなクレイの気持ちは理解できないだろう。
このままあの場に戻れば絶対に何か暴走してしまいそうな気がして、ロックウェルは蒼白になった。
折角の和やかな席をめちゃくちゃにされたくはない。
そう考えているところで、思いがけずヒュースが王へと物申した。
【陛下のお気持ちもわからないではありませんが、私は陛下がクレイ様の母君であるミュラ様に手を出された時からこれまでずっとクレイ様を見守ってまいりましたので、敢えて言わせていただきます】
その言葉は王にとっては衝撃的だったようで、その場で固まってしまう。
【クレイ様は、クレイ様の魔力が怖いのだと震えて泣く母君と決別して相当の思いを飲み込みレイン家を出たのでございます。刃物を自分に向けながら泣く母君の姿に幼子の心が当時どれだけ傷ついたかおわかりですか?】
「……それは…」
【今更それをなかったことにすればいいとは傲慢も甚だしい。ましてや…そこのドルト殿とならまだしも、母君との早急な和解はあり得ません】
その言葉に二人が驚いて振り返ると、そこにはドルトが困ったような顔で立ち竦んでいた。
「…そろそろお暇しようかとお声を掛けさせてもらいに来ただけだったのですが…」
そんなドルトに王もロックウェルも何も言うことができない。
【私は別にドルト殿に秘密にしろとは申しません。ただ、クレイ様がご夫妻に掛けた魔法を解くことはないので、無理強いをしてクレイ様を傷つけてくれるなと言いたいだけでございます】
そうきっぱりと言い切ったヒュースにドルトが恐る恐る話しかける。
「その…私は魔力のない普通の男だが、会話をお願いしても?」
【構いません】
ヒュースは意外にもあっさりと頷いた。
「クレイと言うのは貴方の主人ですか?」
【左様でございます】
「私の勘違いでなければ、クレイは先日陛下がお認めになられた紫の瞳の黒魔道士で、ロックウェル様のご友人だったと思うのだが…」
【左様でございます】
「…先程までの話をまとめると、そのクレイはレイン家にいたと言う話で間違いはないのだろうか?」
【左様でございます。クレイ様はミュラ様の実の御子息でございます】
その言葉にドルトは色々なことを噛みしめたようで、そっと顔を上げた。
「なるほど。何となく合点がいきました。ミュラは陛下から下賜していただいた者でしたし、色々なことが繋がったように思います」
けれどそこまで聞いて、ドルトはそっとヒュースへと願うように声を掛ける。
「その…クレイがレイン家で育ったと言う話も理解できるので、私のものだけでも記憶を戻してもらうことはできないだろうか?」
【ドルト殿はそう仰って下さると何となくわかっておりましたが、クレイ様の記憶操作についてはまた話は別でございます】
「…できないと?」
【クレイ様の願いは夫婦仲の改善及び、お二方の夫婦円満でございました。それが例え自分を犠牲にしたものであろうとも、クレイ様はお二方の幸せを願って家を出たのでございます】
記憶を戻すことによりそれが崩れるのは本意ではないとヒュースは言う。
【今お二方がお幸せであればクレイ様はもうそれでよいのです。それに…先程の紫の花の件でクレイ様はすでにこれ以上ないくらい満たされたご様子ですから…】
その言葉にドルトはえ?と言うように目を見開いた。
「もしかして…」
「…あのクレアがクレイだ」
王が補足するようにそう告げると、ドルトは身を翻して食事会の席へと向かってしまう。
「ドルト殿!」
ロックウェルが慌てて後を追うが、ドルトは意外にも足が速く止め切ることができない。
和やかに食事を楽しんでいると、ドアが突然勢いよく開かれ室内にいた三人は驚きに目を見開いた。
そこには先程今日は顔を出させて貰っただけだからと気を遣って退室を願い出たドルトの姿があり、一体何事かとクレイも思わず尋ねてしまう。
「ドルト殿…。何か忘れ物でも?」
そんなクレイにドルトは物言いたげに口を開きかけジッと視線を止めた後、一呼吸置いたところでゆっくりとその言葉を紡いだ。
「いや…貴方に聞くのを忘れていたと思って…」
その言葉と共にロックウェルが焦ったように戻ってくる。
「ドルト殿!」
「…こちらのロックウェル様とご一緒で、今幸せかと…聞きそびれておりました」
その言葉にクレイは目を見開いた。
まさかそんなことを聞くためだけに戻ってきたと言うのだろうか?
けれどロックウェルの様子から二人に何かあったのを感じてここは素直に気持ちを伝えた方がいいかもしれないと考え、クレイはその問いに笑顔で返した。
「もちろんです。後にも先にもこれ程の相手に出会えるとは思っておりません」
その返答にロックウェルが驚いたように固まったが、本当のことなのだから仕方がない。
ドルトもその返答には満足がいったのか、微笑みながら頷いた。
「そうですか。では私はこれから陛下と共に法改正に尽力しようと思います」
「?…頑張ってください」
よくはわからないがこれから仕事があるのだろうと思い、ただそう返す。
短い時間ではあったが、今日は父と非常に有意義な時間が持てたと思う。
その事に素直に感謝してクレイは改めて言葉を紡いだ。
「ドルト殿。貴殿の仕事を陰ながら応援させていただきます」
「……ありがとう」
そしてドルトは今度こそ笑顔で退室していった。
そんなドルトにロックウェルがホッと息を吐いたので、クレイはそっと席へと促し尋ねてみる。
「何かあったのか?」
「……いや。ドルト殿はできた方だな」
「それはそうだ。あの人は昔からどちらかと言えば寡黙な人だが、だてに長年あの国王を傍で支えてきてはいない」
そう言って、後から戻ってきた王をちらりと見遣った。
「すぐに暴走するどうしようもない王を支える立派な人だ」
その言葉に王がムッとしたように口を開く。
「ドルトがいなくなった途端これか。お前こそすぐに明後日の方へ暴走すると聞いたぞ?人のことは言えないのではないか?」
「俺は王ほど酷くはないはずだ」
「どうだかな。ショーンからは一見取っ付きにくく頑固なくせに、意外と付け込まれやすい性格だとも聞いている。そう言うところは私と言うより母親譲りではないか?」
その言葉にクレイが怒りと共に立ち上がる。
「…言いたいことはそれだけか?」
「もっと言って欲しいなら言ってやるが?」
「不愉快だ!これ以上顔を合わせていたくない!」
流石に母親のことまで持ち出されて腹が立って仕方がなかった。
「ルドルフ!用があればハインツに預けてある使い魔で呼び出してくれ。ハインツ!教育日だけは来るが、それも後数回だ!それが終わったらもう一切ここには来ないから!」
「クレイ!」
そんな呼び止めの言葉など正直聞く気はない。
そうして最後にギッと王を睨み付けると、そのままあっさりと黒衣を翻して影へと身を沈めた。
後にはしまったと項垂れる王の姿があるばかり。
「父上…あれはひどいですよ」
「そうですよ。クレイも不敬ではありましたが、子供の喧嘩ではないのですから…」
「そうは言っても何故かあやつとはつい言い合いになってしまうのだ…」
そんな王に皆が『似た者同士だからですよ』と思いつつ、ただため息を吐いてしまう。
ロックウェルとしても、クレイがここ最近頻繁に王宮に出入りしてくれるようになったと喜んでいただけに、ここで振り出しに戻ってしまうのは残念で仕方がなかった。
(はぁ…。また追いかける日が始まるのか…)
クレイは放っておくと自分からは絶対に来てはくれないのだ。
わざわざ用を作って会いに行かなければならない。
そんな風に密かに落ち込んでいると、ヒュースが楽しげにこっそりと教えてくれた。
クレイ様がお部屋でお待ちですよ────と。
それを受けて、ホッとしながらそっと三人へと視線を向ける。
「では…なんとかクレイを宥めてみようと思いますので、私も今日のところはこれにて失礼いたします」
「ああ。申し訳ないが宜しく頼む」
そうして送り出され、ロックウェルは嬉々として自室へと戻っていった。
***
「クレイ?」
部屋へと入ると、クレイが女装をといてシャワーを浴びようとしているところだった。
髪に飾っていた花はそっと水の張ったコップに入れて飾られてある。
「ロックウェル…」
「一緒に行くか?」
そう言ってやると、クレイは少し考えた末にコクリと頷いた。
「大体、あの王はいつも酷いことばかりだ!」
身体を洗ってゆっくりと二人でバスタブに浸かっていたのだが、クレイは王に対して少しはドルトを見習って欲しいと怒っている。
「もう少し考えればいいのに!」
自分のことは棚に上げて怒るクレイに、ロックウェルも何も言うことができない。
「大体母の件まで持ち出してくるなんてどうかしている!」
大して知りもしないくせにと怒る気持ちもわからないでもないが、確かに王がクレイの母の弱みにつけ込んで抱いた事を考えるに、あながち間違ったことは言っていないとも思えて仕方がなかった。
「気持ちはわかるが、今日はドルト殿と楽しい時間を過ごせた日だろう?私としてはお前に幸せな気持ちでいてもらいたい」
そうやってそっと抱きしめると、クレイはそれもそうだったと我に返る。
「…お前がいてくれてよかった」
そうやってそっと振り返り、クレイが微笑みを浮かべ見つめてくる。
「あんな風にお前を父に紹介できたのが一番嬉しい」
その言葉は自分にとっても嬉しいものだったと言ったら、クレイはどうするだろうか?
後にも先にもなど、正直嬉しくて仕方がなかったのだが…。
「クレイ…今日は私もいっぱいお前と幸せに浸りたい」
「え?」
そうして驚くクレイに口づけて、甘く耳元へと囁きを落とす。
「愛してる…」
「ん…」
そうして頰を染めるクレイを誘って、そのまま一緒に湯船で睦み合う。
「んん…のぼせそう……」
「でもこうしているのも気持ちいいだろう?」
クレイを下から貫き、ゆっくりと腰を揺らしながら奥を突く。
「はぁ…。中にお湯が入る…」
「別に気にすることはない。ほら、じっくり温まろう」
「んっ…!奥まで熱くなる…」
「クスッ…。だいぶ奥が敏感に育ったな」
「だって…ロックウェルが…」
「私が…?」
「いつも奥をいっぱい突いてくるし…。気持ちいいのを身体が覚えているから、期待してしまうんだ…」
真っ赤になりながらそんな言葉を言ってくるから仕方がない。
「それは…責任を取ってやらないといけないな」
「あッ!ひゃぁんッ!」
腰を押さえつけながら思い切り奥まで突き上げる。
バックの騎乗位は元々クレイが感じやすい体位なのに迂闊にも程がある。
「やっ!待ってッ!」
「ああ、狭いからお前は動きにくいだろう?私が好きなだけ突き上げてやるから安心しろ」
「あッ!やぁっ!んふぅうぅッ!」
口に指を入れてやりながらそのまま激しく突き上げると、喘ぐように指に舌を絡ませてくる。
「あっあっあっ…!ひゃ、ひゃぁあんッ!」
口を閉じることができなくて、唾液がクレイの口の端から滴り落ちていく。
「ああ、たまらないな。どんどんいやらしい顔を私にさらけ出してくれ」
「やっ…変態ぃ…!」
「淫乱でいやらしいお前が悪い」
「んあぁああぁッ!」
ヒクヒクと身を震わせるクレイの胸の突起をクリクリと可愛がり、そこも育てていく。
「ここも随分敏感に育ってきたな。耳に舌を入れられるのも好きだし、他の性感帯も全て満遍なく責めてやろう」
「ん…ッ。やだッ!中が一番好きなのに…」
「そんなことは知っている。今日もいっぱい突き上げて満足させてやるからな」
そうしてそのまま抱き上げて寝台へと連れ去った。
「あッ…ロックウェル、早く…」
熱っぽい眼差しで自分を求めてくるクレイに、嗜虐心が煽られる。
「欲しいならお前の好きな体位でねだってみろ」
そう言ってやるとクレイが少し考えてからややうつ伏せ気味で片足を上げてきた。
「はぁ…このまま少し横気味で入れて欲しい…」
それは奥まで蹂躙する時によくやる体位だが、こうして自らねだってくるとは思ってもみなかった。
「クレイ…恥ずかしい格好でねだるのも上手くなったな」
「う…。してくれないならいい…」
そう言って恥ずかしそうに戻そうとするが当然逃すはずがない。
「私以外にねだるなよ?」
念のためそう言い聞かせ、そのまま嬉々として挿入する。
「あ────ッ!!」
入れただけでギュウゥッ!と思い切り締め付けてくるからたまらない。
「クレイ…そんなに欲しかったのか?」
「んんっ…!はぁ…ッ!奥までいっぱい欲しかった…」
「わかった。すぐに可愛がってやるからな」
そしてそのまま突き上げるとクレイが嬉しそうに頰を染め嬌声をあげた。
「あっ、あああッ!あぁんッ!あっあっあっ!」
そして何度も絶頂へと駆け上がり敷き布を握り締めながら身を震わせる。
「ああ。イキっぱなしだな」
こんなに立派に育って…本当に満足感で一杯だ。
「そろそろいっぱい奥に出してやるからな」
クレイの艶姿にこちらとしてもそろそろ限界で思い切り出したくて仕方がない。
だからそう言ったのに、そこでクレイがまだダメだと言い出した。
「んんっ…はぁッ!お前はまだダメ…!はぁ…あぁんッ!」
「クレイ?」
それは生殺しではないのだろうか?
「んっんっ…!俺がここからロックウェルを満足させるんだから…」
そう言って回復魔法を自分にかけた。
あんなにイッていたのにその余裕は一体どこからくるのだろう?
「はっ…この体位、ならいけると思った…んだ…ッ!」
そうしてうっとりとした表情で、そのまま体位を変えてくる。
「動くなよ?」
そして舌舐めずりをしそうな勢いで嬉々として腰を振り始めた。
「うっ…、クレイ!」
絶妙の力加減で後ろをキュッと締めながら自身をスライドされ、思わず甘い息を吐いてしまう。
まさかこんな手を使ってくるとは思わなかった。
「いつも可愛がってもらってばっかりだから、お前がイきそうなタイミングで思い切りイかせてやりたくて…」
「はぁ…ッ、わかったから…!」
クレイから焦らされて、正直すぐにでも激しくしたくて仕方がなかった。
「んんっ…!焦らされた後に出すのは最高だってお前が教えてくれたんだろう?」
そう言って気持ちよさそうにしながらも悪戯っぽく笑ったクレイに、思わず笑みがこぼれてしまう。
「お前は本当に予想外だ。褒美をやるから、たっぷり受け取れ」
その言葉と同時に大きくクレイの足を開き、奥の奥まで激しく突き上げたっぷりと注いでやる。
「んっ…!あぁっ!」
けれどこの体位はそう言えば余裕があるんだったと思い出した。
正直こんな色気たっぷりのクレイを見て一度で満足できるはずもない。
焦らされてイッたとしてもまだ自身は萎えそうになかった。
それなら────。
「これ、だな」
今度は逆に足を閉じさせた状態で擦り上げるように奥を突き上げていく。
「やっ!これじゃ浅いからもっと深いのがいいッ!」
そうやって文句を言ってくるのも予想済みだ。
「ここから…こう、だろう?」
そう言って二人が一番好きな体位へと移行し、そのまま一気に二人で高みへと登り詰める。
「あぁあああッ!そこ好きッ !凄く好きッ…!」
歓喜に震えるクレイの奥を何度も突き上げ再度ドプッと思い切り吐き出して、荒く息を整えそのままクレイを強く抱き締めた。
最高に気持ちよすぎてたまらず、まさに大満足と言っても過言ではないほどだ。
「ロックウェル…お前も二回イッたし、今日はもうこのまま休もうな」
息を整え『満足できただろう?』と笑うクレイに、正直してやられたと思ったが────こういうクレイとの交わりも嫌いではない。
「これまでお前と寝た女は最高の夜を過ごしたんだろうな」
クレイは短時間で相手を満足させるのが好きなようだから、これまで夜を共にした女はクレイとの夜をそうそう忘れられなかったのではないだろうかと、今更ながら思い至った。
けれどクレイはわかっていないのかきょとんとしたように明後日の言葉を紡いでくる。
「?…そのセリフはそっくりそのまま返すぞ」
そして身を寄せてきながら笑顔で可愛いセリフを溢すのだ。
「俺はお前と寝れて最高に幸せだからな」
「クレイ…そういうセリフが罪作りなんだが?」
今日はこのまま大人しく従ってもいいが、明日は朝から美味しくいただこうと心に決めて、ロックウェルは心満たされながらクレイと共に眠りへと落ちていった。
やはりまだ少し時間には早かったようだ。
クレイはそのままドルトに勧められるまま席へと着き、ドルトはその正面の席へと腰を下ろす。
「先に何か飲まれますか?」
「あ…いえ」
気にしなくてもいいとクレイは恐縮しながら俯いた。
正直何を話せばいいのかわからない。
このまま誰かが来るのを待つ以外にないだろうと思っていると、そこに一番来て欲しくなかった王がやって来る。
「なんだ。姿が見えないと思ったら先に来ていたのか」
「陛下。本日は同席させて頂き光栄でございます」
そう言いながらドルトが立ち上がり挨拶をしたので、クレイもそれに習い同じように頭を下げた。
「本日はご足労頂き感謝致します」
そんなクレイに王がフッと笑う。
「お前のそのような殊勝な姿は久方振りだ。その姿がそうさせているのなら、悪くはない」
「……」
嫌味かと思いながらも、今日は女装姿を認めてもらえたのだからと我慢し、クレイはそのまま席へと着いた。
「時に、その髪の花は?」
「はい。先程庭園に咲いておりましたので私の方から髪に挿させて頂きました」
尋ねた王にドルトがそう説明すると、クレイがそっと頰を染めた。
「我が家の庭園にも咲いている花でして、彼女にはこの紫が映えるように思い、つい…」
そんな風に説明するドルトの横でクレイがどこか嬉しげに微笑みを浮かべる。
正直クレイはたとえ女装していようと、女らしい性格でもないし、男の姿でも不遜そのものだ。
どう考えても花を喜ぶような男ではない。
そんなクレイが何故こんな風に嬉しそうなのか王にはさっぱりわからなかった。
これはやはり相手がドルトだからなのだろうか?
そう思っていると、そこへルドルフとハインツがやってきた。
「お待たせいたしました」
「いや。まだ時間には早い。気にするな」
そう言って二人に座るようにと声をかける。
「クレア?その髪の花は?」
ハインツがすぐに気づきそう声を掛けると、クレイはふわりと微笑みながらドルトから貰ったと答えた。
それを受けてルドルフが何か知っていたのか、少し驚いたように目を瞠った後、優しい表情で良かったなと言った。
そんな穏やかな空気になんだか取り残されたようにモヤモヤしながら見遣っていると、そこへ最後の一人、ロックウェルがやってくる。
「遅くなりまして申し訳ございません」
「いや。時間通りだ。では始めるとしようか」
そして王のその言葉で和やかに食事会は始まりを告げた。
***
ロックウェルはさっきまではなかった花がクレイの髪を飾っているのが気になっていた。
しかも本人は嫌がるどころかどこか嬉しげだ。
これはどう考えてもおかしい。
「クレア…その花は?」
タイミングを見計らってそう尋ねると、ドルトから貰ったのだとはにかみながら答えてくる。
「ああ。そう言えばクレア殿はロックウェル様の恋人だとか。余計なことをしてお気を悪くさせてしまったでしょうか?」
ドルトがそう言って気を遣ってくれたが、クレイはその言葉に焦ったように大丈夫だと答えた。
「大丈夫です!ロックウェルはそんな些細な事を気にするような男ではありませんから!」
「…………」
正直気になるから尋ねたのだが、クレイがここまで言うからにはきっと特別な花なのだろうと思い、手洗いに出たついでにこっそりとヒュースへと尋ねてみた。
「あれは何か特別な花なのか?」
そう尋ねた自分にヒュースは言いにくそうに答えてくれる。
【あの花はレイン家に残した、クレイ様の身代わりの花だったのですよ】
「身代わりの花?」
【ええ。クレイ様の存在をご両親に忘れていただくために、あの紫の花をご自分の存在へと置き換えて魔法をかけたのです】
そうして家を出て以来レイン家には帰っていないから知らなかったのだが、どうやら夫婦はあの花をクレイが去った後大切に育ててくれていたらしい。
【あの花を髪に挿していただきその話を耳にしてクレイ様はとても嬉しかったご様子。ですからどうぞあの花はそのままにして差し上げてください】
その話を聞いてロックウェルはやっと納得がいった。
これはクレイが嬉しそうにするのは仕方がないだろう。
「良かった…」
これで少しでもクレイの気持ちが楽になるのならそれに越したことはない。
過去は消せなくても新たな気持ちで前向きにドルトに向き合えるのなら、それは大きな一歩となることだろう。
けれどそう思っていたところで横から声が掛けられる。
「何が良いものか」
そこには王の姿があり、ロックウェルは驚いてすぐに脇へと下がった。
「そこまで嬉しかったのならさっさとドルトに掛けた魔法を解いてしまえば良いのだ」
「陛下…それは」
「そうであろう?今日とてクレイが私の子だとドルトの耳に届いているかもしれないと気にして、わざわざ女装してきたのだろう?そんな事を気にせずいつもの姿で堂々と出席し、いっそのこと紫の瞳を晒してしまえば良かったのだ。そうすれば場合によって記憶を戻す切欠作りもしてやれたかもしれぬのに…」
そこにはクレイに何かしてやりたいという気持ちが溢れているようだったが、正直見当違いもいいところだ。
恐らくクレイはそんなことは望んでいない。
ただそっと…小さな幸せを噛みしめたい────そんな心境なのではないだろうか?
けれど付き合いの長い自分だからこそそう思うのであって、王にはそんなクレイの気持ちは理解できないだろう。
このままあの場に戻れば絶対に何か暴走してしまいそうな気がして、ロックウェルは蒼白になった。
折角の和やかな席をめちゃくちゃにされたくはない。
そう考えているところで、思いがけずヒュースが王へと物申した。
【陛下のお気持ちもわからないではありませんが、私は陛下がクレイ様の母君であるミュラ様に手を出された時からこれまでずっとクレイ様を見守ってまいりましたので、敢えて言わせていただきます】
その言葉は王にとっては衝撃的だったようで、その場で固まってしまう。
【クレイ様は、クレイ様の魔力が怖いのだと震えて泣く母君と決別して相当の思いを飲み込みレイン家を出たのでございます。刃物を自分に向けながら泣く母君の姿に幼子の心が当時どれだけ傷ついたかおわかりですか?】
「……それは…」
【今更それをなかったことにすればいいとは傲慢も甚だしい。ましてや…そこのドルト殿とならまだしも、母君との早急な和解はあり得ません】
その言葉に二人が驚いて振り返ると、そこにはドルトが困ったような顔で立ち竦んでいた。
「…そろそろお暇しようかとお声を掛けさせてもらいに来ただけだったのですが…」
そんなドルトに王もロックウェルも何も言うことができない。
【私は別にドルト殿に秘密にしろとは申しません。ただ、クレイ様がご夫妻に掛けた魔法を解くことはないので、無理強いをしてクレイ様を傷つけてくれるなと言いたいだけでございます】
そうきっぱりと言い切ったヒュースにドルトが恐る恐る話しかける。
「その…私は魔力のない普通の男だが、会話をお願いしても?」
【構いません】
ヒュースは意外にもあっさりと頷いた。
「クレイと言うのは貴方の主人ですか?」
【左様でございます】
「私の勘違いでなければ、クレイは先日陛下がお認めになられた紫の瞳の黒魔道士で、ロックウェル様のご友人だったと思うのだが…」
【左様でございます】
「…先程までの話をまとめると、そのクレイはレイン家にいたと言う話で間違いはないのだろうか?」
【左様でございます。クレイ様はミュラ様の実の御子息でございます】
その言葉にドルトは色々なことを噛みしめたようで、そっと顔を上げた。
「なるほど。何となく合点がいきました。ミュラは陛下から下賜していただいた者でしたし、色々なことが繋がったように思います」
けれどそこまで聞いて、ドルトはそっとヒュースへと願うように声を掛ける。
「その…クレイがレイン家で育ったと言う話も理解できるので、私のものだけでも記憶を戻してもらうことはできないだろうか?」
【ドルト殿はそう仰って下さると何となくわかっておりましたが、クレイ様の記憶操作についてはまた話は別でございます】
「…できないと?」
【クレイ様の願いは夫婦仲の改善及び、お二方の夫婦円満でございました。それが例え自分を犠牲にしたものであろうとも、クレイ様はお二方の幸せを願って家を出たのでございます】
記憶を戻すことによりそれが崩れるのは本意ではないとヒュースは言う。
【今お二方がお幸せであればクレイ様はもうそれでよいのです。それに…先程の紫の花の件でクレイ様はすでにこれ以上ないくらい満たされたご様子ですから…】
その言葉にドルトはえ?と言うように目を見開いた。
「もしかして…」
「…あのクレアがクレイだ」
王が補足するようにそう告げると、ドルトは身を翻して食事会の席へと向かってしまう。
「ドルト殿!」
ロックウェルが慌てて後を追うが、ドルトは意外にも足が速く止め切ることができない。
和やかに食事を楽しんでいると、ドアが突然勢いよく開かれ室内にいた三人は驚きに目を見開いた。
そこには先程今日は顔を出させて貰っただけだからと気を遣って退室を願い出たドルトの姿があり、一体何事かとクレイも思わず尋ねてしまう。
「ドルト殿…。何か忘れ物でも?」
そんなクレイにドルトは物言いたげに口を開きかけジッと視線を止めた後、一呼吸置いたところでゆっくりとその言葉を紡いだ。
「いや…貴方に聞くのを忘れていたと思って…」
その言葉と共にロックウェルが焦ったように戻ってくる。
「ドルト殿!」
「…こちらのロックウェル様とご一緒で、今幸せかと…聞きそびれておりました」
その言葉にクレイは目を見開いた。
まさかそんなことを聞くためだけに戻ってきたと言うのだろうか?
けれどロックウェルの様子から二人に何かあったのを感じてここは素直に気持ちを伝えた方がいいかもしれないと考え、クレイはその問いに笑顔で返した。
「もちろんです。後にも先にもこれ程の相手に出会えるとは思っておりません」
その返答にロックウェルが驚いたように固まったが、本当のことなのだから仕方がない。
ドルトもその返答には満足がいったのか、微笑みながら頷いた。
「そうですか。では私はこれから陛下と共に法改正に尽力しようと思います」
「?…頑張ってください」
よくはわからないがこれから仕事があるのだろうと思い、ただそう返す。
短い時間ではあったが、今日は父と非常に有意義な時間が持てたと思う。
その事に素直に感謝してクレイは改めて言葉を紡いだ。
「ドルト殿。貴殿の仕事を陰ながら応援させていただきます」
「……ありがとう」
そしてドルトは今度こそ笑顔で退室していった。
そんなドルトにロックウェルがホッと息を吐いたので、クレイはそっと席へと促し尋ねてみる。
「何かあったのか?」
「……いや。ドルト殿はできた方だな」
「それはそうだ。あの人は昔からどちらかと言えば寡黙な人だが、だてに長年あの国王を傍で支えてきてはいない」
そう言って、後から戻ってきた王をちらりと見遣った。
「すぐに暴走するどうしようもない王を支える立派な人だ」
その言葉に王がムッとしたように口を開く。
「ドルトがいなくなった途端これか。お前こそすぐに明後日の方へ暴走すると聞いたぞ?人のことは言えないのではないか?」
「俺は王ほど酷くはないはずだ」
「どうだかな。ショーンからは一見取っ付きにくく頑固なくせに、意外と付け込まれやすい性格だとも聞いている。そう言うところは私と言うより母親譲りではないか?」
その言葉にクレイが怒りと共に立ち上がる。
「…言いたいことはそれだけか?」
「もっと言って欲しいなら言ってやるが?」
「不愉快だ!これ以上顔を合わせていたくない!」
流石に母親のことまで持ち出されて腹が立って仕方がなかった。
「ルドルフ!用があればハインツに預けてある使い魔で呼び出してくれ。ハインツ!教育日だけは来るが、それも後数回だ!それが終わったらもう一切ここには来ないから!」
「クレイ!」
そんな呼び止めの言葉など正直聞く気はない。
そうして最後にギッと王を睨み付けると、そのままあっさりと黒衣を翻して影へと身を沈めた。
後にはしまったと項垂れる王の姿があるばかり。
「父上…あれはひどいですよ」
「そうですよ。クレイも不敬ではありましたが、子供の喧嘩ではないのですから…」
「そうは言っても何故かあやつとはつい言い合いになってしまうのだ…」
そんな王に皆が『似た者同士だからですよ』と思いつつ、ただため息を吐いてしまう。
ロックウェルとしても、クレイがここ最近頻繁に王宮に出入りしてくれるようになったと喜んでいただけに、ここで振り出しに戻ってしまうのは残念で仕方がなかった。
(はぁ…。また追いかける日が始まるのか…)
クレイは放っておくと自分からは絶対に来てはくれないのだ。
わざわざ用を作って会いに行かなければならない。
そんな風に密かに落ち込んでいると、ヒュースが楽しげにこっそりと教えてくれた。
クレイ様がお部屋でお待ちですよ────と。
それを受けて、ホッとしながらそっと三人へと視線を向ける。
「では…なんとかクレイを宥めてみようと思いますので、私も今日のところはこれにて失礼いたします」
「ああ。申し訳ないが宜しく頼む」
そうして送り出され、ロックウェルは嬉々として自室へと戻っていった。
***
「クレイ?」
部屋へと入ると、クレイが女装をといてシャワーを浴びようとしているところだった。
髪に飾っていた花はそっと水の張ったコップに入れて飾られてある。
「ロックウェル…」
「一緒に行くか?」
そう言ってやると、クレイは少し考えた末にコクリと頷いた。
「大体、あの王はいつも酷いことばかりだ!」
身体を洗ってゆっくりと二人でバスタブに浸かっていたのだが、クレイは王に対して少しはドルトを見習って欲しいと怒っている。
「もう少し考えればいいのに!」
自分のことは棚に上げて怒るクレイに、ロックウェルも何も言うことができない。
「大体母の件まで持ち出してくるなんてどうかしている!」
大して知りもしないくせにと怒る気持ちもわからないでもないが、確かに王がクレイの母の弱みにつけ込んで抱いた事を考えるに、あながち間違ったことは言っていないとも思えて仕方がなかった。
「気持ちはわかるが、今日はドルト殿と楽しい時間を過ごせた日だろう?私としてはお前に幸せな気持ちでいてもらいたい」
そうやってそっと抱きしめると、クレイはそれもそうだったと我に返る。
「…お前がいてくれてよかった」
そうやってそっと振り返り、クレイが微笑みを浮かべ見つめてくる。
「あんな風にお前を父に紹介できたのが一番嬉しい」
その言葉は自分にとっても嬉しいものだったと言ったら、クレイはどうするだろうか?
後にも先にもなど、正直嬉しくて仕方がなかったのだが…。
「クレイ…今日は私もいっぱいお前と幸せに浸りたい」
「え?」
そうして驚くクレイに口づけて、甘く耳元へと囁きを落とす。
「愛してる…」
「ん…」
そうして頰を染めるクレイを誘って、そのまま一緒に湯船で睦み合う。
「んん…のぼせそう……」
「でもこうしているのも気持ちいいだろう?」
クレイを下から貫き、ゆっくりと腰を揺らしながら奥を突く。
「はぁ…。中にお湯が入る…」
「別に気にすることはない。ほら、じっくり温まろう」
「んっ…!奥まで熱くなる…」
「クスッ…。だいぶ奥が敏感に育ったな」
「だって…ロックウェルが…」
「私が…?」
「いつも奥をいっぱい突いてくるし…。気持ちいいのを身体が覚えているから、期待してしまうんだ…」
真っ赤になりながらそんな言葉を言ってくるから仕方がない。
「それは…責任を取ってやらないといけないな」
「あッ!ひゃぁんッ!」
腰を押さえつけながら思い切り奥まで突き上げる。
バックの騎乗位は元々クレイが感じやすい体位なのに迂闊にも程がある。
「やっ!待ってッ!」
「ああ、狭いからお前は動きにくいだろう?私が好きなだけ突き上げてやるから安心しろ」
「あッ!やぁっ!んふぅうぅッ!」
口に指を入れてやりながらそのまま激しく突き上げると、喘ぐように指に舌を絡ませてくる。
「あっあっあっ…!ひゃ、ひゃぁあんッ!」
口を閉じることができなくて、唾液がクレイの口の端から滴り落ちていく。
「ああ、たまらないな。どんどんいやらしい顔を私にさらけ出してくれ」
「やっ…変態ぃ…!」
「淫乱でいやらしいお前が悪い」
「んあぁああぁッ!」
ヒクヒクと身を震わせるクレイの胸の突起をクリクリと可愛がり、そこも育てていく。
「ここも随分敏感に育ってきたな。耳に舌を入れられるのも好きだし、他の性感帯も全て満遍なく責めてやろう」
「ん…ッ。やだッ!中が一番好きなのに…」
「そんなことは知っている。今日もいっぱい突き上げて満足させてやるからな」
そうしてそのまま抱き上げて寝台へと連れ去った。
「あッ…ロックウェル、早く…」
熱っぽい眼差しで自分を求めてくるクレイに、嗜虐心が煽られる。
「欲しいならお前の好きな体位でねだってみろ」
そう言ってやるとクレイが少し考えてからややうつ伏せ気味で片足を上げてきた。
「はぁ…このまま少し横気味で入れて欲しい…」
それは奥まで蹂躙する時によくやる体位だが、こうして自らねだってくるとは思ってもみなかった。
「クレイ…恥ずかしい格好でねだるのも上手くなったな」
「う…。してくれないならいい…」
そう言って恥ずかしそうに戻そうとするが当然逃すはずがない。
「私以外にねだるなよ?」
念のためそう言い聞かせ、そのまま嬉々として挿入する。
「あ────ッ!!」
入れただけでギュウゥッ!と思い切り締め付けてくるからたまらない。
「クレイ…そんなに欲しかったのか?」
「んんっ…!はぁ…ッ!奥までいっぱい欲しかった…」
「わかった。すぐに可愛がってやるからな」
そしてそのまま突き上げるとクレイが嬉しそうに頰を染め嬌声をあげた。
「あっ、あああッ!あぁんッ!あっあっあっ!」
そして何度も絶頂へと駆け上がり敷き布を握り締めながら身を震わせる。
「ああ。イキっぱなしだな」
こんなに立派に育って…本当に満足感で一杯だ。
「そろそろいっぱい奥に出してやるからな」
クレイの艶姿にこちらとしてもそろそろ限界で思い切り出したくて仕方がない。
だからそう言ったのに、そこでクレイがまだダメだと言い出した。
「んんっ…はぁッ!お前はまだダメ…!はぁ…あぁんッ!」
「クレイ?」
それは生殺しではないのだろうか?
「んっんっ…!俺がここからロックウェルを満足させるんだから…」
そう言って回復魔法を自分にかけた。
あんなにイッていたのにその余裕は一体どこからくるのだろう?
「はっ…この体位、ならいけると思った…んだ…ッ!」
そうしてうっとりとした表情で、そのまま体位を変えてくる。
「動くなよ?」
そして舌舐めずりをしそうな勢いで嬉々として腰を振り始めた。
「うっ…、クレイ!」
絶妙の力加減で後ろをキュッと締めながら自身をスライドされ、思わず甘い息を吐いてしまう。
まさかこんな手を使ってくるとは思わなかった。
「いつも可愛がってもらってばっかりだから、お前がイきそうなタイミングで思い切りイかせてやりたくて…」
「はぁ…ッ、わかったから…!」
クレイから焦らされて、正直すぐにでも激しくしたくて仕方がなかった。
「んんっ…!焦らされた後に出すのは最高だってお前が教えてくれたんだろう?」
そう言って気持ちよさそうにしながらも悪戯っぽく笑ったクレイに、思わず笑みがこぼれてしまう。
「お前は本当に予想外だ。褒美をやるから、たっぷり受け取れ」
その言葉と同時に大きくクレイの足を開き、奥の奥まで激しく突き上げたっぷりと注いでやる。
「んっ…!あぁっ!」
けれどこの体位はそう言えば余裕があるんだったと思い出した。
正直こんな色気たっぷりのクレイを見て一度で満足できるはずもない。
焦らされてイッたとしてもまだ自身は萎えそうになかった。
それなら────。
「これ、だな」
今度は逆に足を閉じさせた状態で擦り上げるように奥を突き上げていく。
「やっ!これじゃ浅いからもっと深いのがいいッ!」
そうやって文句を言ってくるのも予想済みだ。
「ここから…こう、だろう?」
そう言って二人が一番好きな体位へと移行し、そのまま一気に二人で高みへと登り詰める。
「あぁあああッ!そこ好きッ !凄く好きッ…!」
歓喜に震えるクレイの奥を何度も突き上げ再度ドプッと思い切り吐き出して、荒く息を整えそのままクレイを強く抱き締めた。
最高に気持ちよすぎてたまらず、まさに大満足と言っても過言ではないほどだ。
「ロックウェル…お前も二回イッたし、今日はもうこのまま休もうな」
息を整え『満足できただろう?』と笑うクレイに、正直してやられたと思ったが────こういうクレイとの交わりも嫌いではない。
「これまでお前と寝た女は最高の夜を過ごしたんだろうな」
クレイは短時間で相手を満足させるのが好きなようだから、これまで夜を共にした女はクレイとの夜をそうそう忘れられなかったのではないだろうかと、今更ながら思い至った。
けれどクレイはわかっていないのかきょとんとしたように明後日の言葉を紡いでくる。
「?…そのセリフはそっくりそのまま返すぞ」
そして身を寄せてきながら笑顔で可愛いセリフを溢すのだ。
「俺はお前と寝れて最高に幸せだからな」
「クレイ…そういうセリフが罪作りなんだが?」
今日はこのまま大人しく従ってもいいが、明日は朝から美味しくいただこうと心に決めて、ロックウェルは心満たされながらクレイと共に眠りへと落ちていった。
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