黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第一部 アストラス編~王の落胤~

80.※就任祝い

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部屋に戻ってもクレイはまだ意識が戻っておらず、寝台で微かに頬を染めながら横たわっていた。
そんなクレイの下肢を大きく開き、そのまま舌で嬲っていく。
根元の拘束はそのままなので、大きくはなるがイクことはない。
ついでだからと、両腕も片方ずつ拘束してベッドサイドへと固定してやった。
服がそのままだからか、その姿はやけに淫靡に映る。
そのままクチュクチュと雄を口で可愛がり、後ろも指で犯していくと、クレイがピクリと身を震わせてゆっくりと目を開いた。

「あ、やっ…、何?!」
「起きたか?」
「ロックウェル?」

こんなのは嫌だと訴えてくるクレイにそっと近づきそのまま目隠しをしてやる。

「なっ…!」
「お前は黙ってそのまま感じていろ」

そこからは正直懇願の嵐だった。
顔を見ることも抱きつくこともできず、欲を吐き出すこともできない。
ただ只管後ろの一番感じる場所を責め立てられイカされ続け、快楽に溺れていく。
意識が飛びそうになる度に調整して揺さ振り、回復魔法をかけずにそのまま犯し続けると、だんだん呂律が回らなくなってきて、口の端には涎が止まらなくなっていた。

「も、無理ィ…ひゃあぅッ…らめっんあぁっ!!熱いッ!熱イィい…!!ひゃらぁ…ッ!」

パンパンと奥に好きなだけ注ぎ、幾度でも自分自身は回復させて立ち上がらせる。
クレイの後孔からは自分が注いだ精液がダラダラとたれ出てくるがそんな姿にまで欲情して仕方がなかった。

「ひぅッ!許してッ…!もう許してェッ!お腹苦し…!も、溢れすぎて入らないぃ…!」
「仕方がないな。そんなにいっぱいなら掻き出してやる」

そう言って一度楔を抜くとそのまま二本の指で精液を掻き出してやる。
クレイはそんな行為にすら感じるのか泣き叫びながら達した。

「やっ…やらぁ…!!イク!イクぅ…!あぁん!イきたい!イきたいぃ!ひっ…やぁあああああっ…!!」
「さっきからイきっぱなしだろうに。ああ…こんなにドライでもイきまくって…。仕方のない淫乱だな」
「ひやぁああぁあ…ッ!あはぁ…!ああぁんッ!も、ダメェ…!!お尻ダメェ…!」

再度入れてやっただけでまたビクビクと身を震わせるクレイに満足げに微笑んでそっと根元の拘束だけを解いてやる。

「さあ、今度は好きなだけ抜いてやる」
「ひああぁあぁあッ!!」

その言葉と共に身悶えるクレイを可愛がり、ロックウェルは愉悦に満ちた顔で前後を激しく責め立てていく。

「も、出ない…でないぃ…!んあぁあぁあっ…!!ひっ!死んじゃうぅうッ!」

それは息も絶え絶えに身を震わせその言葉を最後に気を失ったクレイを抱き締めるまで止まることはなかった。




クレイがそっと目を覚ますと目の前は真っ暗だった。

(あ…れ…?)

一体何があったのかと思い返すがどうも頭がハッキリしない。
そっと自分の使い魔に声を掛け、目を覆う布を取ってもらうと、そこはどうも寝台の上のようだった。
そこは見慣れた恋人の部屋のようで安堵はしたが、また嫉妬に狂われてお仕置きされたのかとため息をつきたくなる。

「とりあえずシャワーが浴びたい」

どれだけ犯されたのか知らないが、服さえ着たままで犯されたらしく、どこもかしこもドロドロだった。
ロックウェル本人の姿がないが、シャワーにでも行っているのだろうか?

(これは…逃げてもいいよな?)

体は辛いし正直動きたくない気持ちで一杯だったが、今夜は約束があるのだ。
時計を見る限り、時間にまだ余裕はある。

(仕方がない…か)

使い魔に言ってそっと懐に入れていた圧縮魔法入り黒曜石を取り出すと、そのまま魔力を吸収する。
それと同時に解呪魔法を唱えて手の拘束を外した。

「うぅ…辛い…」

けれどやらなければと自分を叱咤し、瞳の魔法を解いて回復魔法を唱える。

(よしッ!)

後は自宅でシャワーを浴びて着替えるだけだ。
さっきは気づかなかったが、どうも寝台周りに結界が張られているらしい。
恐らく自分が脱出を計ったらすぐに気付けるようにだろうが…。

(甘いな…)

例えロックウェルの結界でもこちらがその気になれば容易にバレないよう逃げられるのに…。

「紫の瞳はダテじゃないんだぞ?」

クスリと笑って結界を物ともせず一気に自宅まで移動する。
そしてその足ですぐさま着替えを用意し、ササっとシャワーを浴びた。
それから瞳を封印し直すと、念のため幾つか黒曜石のストックも持って今度は一気にソレーユへと向かう。
場合によっては暫く家出してやると思いながら…。




ヒュースはどうしたものかと思案していた。
折角なんとか諌めようとしたのにどうやら嫉妬の方が上回ってしまったようで、ロックウェルはクレイを散々犯してソレーユに行けないようにするつもりのようだった。
けれど一度シャワーを浴びたタイミングで運悪く急ぎの仕事が入ってしまったのだ。
執務室へと向かう前に寝台に結界を張ってはいたが、クレイが本気になればあんなものは何の役にも立たない。
つい先程クレイが目を覚ましたのを感じたのだが、さすがに部下と話している時にロックウェルに声を掛けるわけにもいかなかった。
そうこうしているうちに案の定クレイはあっさりと部屋から脱出してしまう。

【はぁ…】

正直拘束魔法も結界も、いつもロックウェルに翻弄されているから解呪する気にならないだけで、やろうと思えばやれるだけの力はあるのだ。

【本当に…ロックウェル様に虐められるのが好きな方ですね~】

本来Mではないはずなのだが、ロックウェルにだけは滅法弱い主に最早苦笑しか出ない。
けれどソレーユに向かった主人の持ち物にハッとなってしまう。

【…ああ、これは思った通りまずい展開になってしまいましたね】

だから追い込むなと忠告したのにとヒュースは溜息をついた。

【ロックウェル様。そのままお聞きください。クレイ様がソレーユに向かわれました】

足元で囁かれたその言葉にロックウェルの動きがピタリと止まる。
「ロックウェル様?」
部下が訝しげにするが、ロックウェルは厳しい表情を崩さなかった。
「すぐに戻る」
それだけを伝えるとすぐさま部屋へと引き返し確認するが、そこは既に蛻の殻だ。

「くそッ!」

苦々しげな言葉と共に壁に拳をぶつけるが、クレイはすでにソレーユに向かってしまった。

【眷属達に注意喚起してまいります】

そう言うや否やヒュースはそのままクレイの元へと向かう。
最早そこに賭けるしか手はない。

(私は何をやっているんだ…)

クレイが自分を好きだと実感し、何でも許してもらえる気でいた。
折角ヒュースが色々忠告してくれていたと言うのに…。
これでロイドと関係でも持たれたらそれこそ後悔してもしきれないではないか。

「最悪だ…」

そうして今ここにいないクレイに、小さく戻ってきてほしいと呟いた。


***


「クレイ!」
待ち合わせ場所へと行くとそこには既にリーネとロイドの姿があった。

「待たせてすまない」
「いいのよ。どうせロックウェル様が頷いてくれなかったんでしょう?」
「強行突破してきた」
「いいな」

逃げてきたと言うと二人は楽しげにしながらクレイを迎えてくれる。

「じゃあ今日はリーネの祝杯だ」
「あら。クレイの愚痴も聞くわよ?」
「あんな嫉妬深い男に縛られずにいつでもこっちにくればいいと言っているのに…」

そうして三人の飲み会が始まった。

「おめでとう。リーネ」
「ありがとう。ロイドとさっき話していたんだけど、二人はまだ付き合いは浅いのよね?」
「ああ。サシェの件からだから本当にここ数か月の付き合いだ」

カツンとグラスを合わせてそれぞれが好きな酒を飲み始める。

「もしかしてあの水晶化はロイドが?」
「ああ」
「あれは見事だったわ。王宮の魔道士の誰も解けなかったのよ」
「あれはあの魔法自体を知っている者も少ないからな」

だからこそクレイが犯人扱いされた訳なのだが…。

「じゃあロイドのせいでクレイが封印されたってこと?」
「…そう言うことなら責任は取ってやるぞ?クレイ」
「え?」
「私はいつでもお前を受け入れてやると言っている」
「あら。私だってクレイの事は本気だから、いつでも頼ってくれていいわ」
「…いや。封印の件はロックウェルの嫉妬からだったみたいだし…」
「何よそれ?」
「ああ。どうせ魔力の高いお前に嫉妬でもしたんだろう?狭量な男だな」

ロイドはいちいちロックウェルに対して厳しい。

「いや…多分誤解だから」

愚痴を溢しに来たはずなのに何故自分はロックウェルのフォローに回っているのだろうか?

「じゃあたまには度量の大きな所も見せてくれるの?」
「いや…。今日も行けないように寝台に拘束されて酷い目に合わされた」

その言葉に二人がブッと吹き出す。

「大体白魔道士はやることがいちいち酷い!」

クレイがムッとしたように怒ったので、そっとロイドが酒を注いでくれた。

「クレイ…今からでも遅くはないぞ?こっちで一緒に暮らさないか?」
「そうよ。せめてロックウェル様と別れたらいいのに…」
「うぅ…二人とも優しい…」

そりゃそうだと思いながら、二人がにっこりとクレイを慰める。

「大体眷属達まで一緒になって人をうっかりとか天然とか、言いたい放題なんだ!」
「確かに否定はしないが…そこがお前の可愛いところなのにな(つけ込みやすくて)」
「そうよ。そこがクレイのいいところなのに…(つけ込みやすくて)」
「…そんな風に言ってくれるのは二人くらいだ」

すっかり落ち込んでしまっているクレイに二人が次々に酒を注いでいく。

「まあまあ。嫌なことは忘れて、彼女でも作らない?私が立候補するわよ?」
「ロックウェル以外と付き合うのは私も賛成だな。取りあえず一次的にこちらに避難してくればいい」

タイミングを見計らって二人が自分達をアピールしにかかる。

「うっ…ロイドぉ…」

泣きそうなクレイをロイドが満足げに抱き寄せ、リーネに勝ち誇ったように微笑む。
どうやら少し酒もまわってきたらしい。
けれど凭れながらもクレイの会話は普通に続いていく。

「そうそう。…お前のあの圧縮魔法。今回もすごく役に立ったぞ?助かった」
「ああ。あれか」
「ふふ…石を常に持ち歩くようにしてるんだ」

そう言いながらクレイが懐から黒曜石を取り出すと、リーネも興味津々というように話に乗ってくる。

「え?なあに?」
「ロイドが魔力の圧縮魔法を編み出したから教えてもらったんだ。自分の中に圧縮させたら魔力が上がるし、こうして黒曜石に込めておけば、いざと言う時魔力を取り込んで回復させることも可能だ」

黒曜石を見せながら説明するクレイに、リーネは俄然目を輝かせた。

「面白そう!私もやってみたいわ!」

そんなリーネにロイドが目を丸くする。

「興味があるのか?」
「もちろんよ。私の目標は魔道士長よ?もっともっと魔力を高めてロックウェル様の魔力より上を目指すんですもの。できることは何でも試したいわ!」
「ああ。それで俺とも魔力交流をしたがったんだな」
「ええ。でも今はクレイを好きだから魔力交流がしたいのよ?」

そこは間違えないでねとリーネが魅惑の笑みを浮かべた。

「はぁ…ロイドもリーネも優しいし、ロックウェル以外を好きになれれば良かったのに…」

その言葉を最後にクレイがロイドに凭れながらウトウトと眠ってしまう。
どうやら疲れていたところに酒が入ってダウンしてしまったらしい。

「はぁ…まさか最後まで惚気を聞かされるとは…」
「…クレイって意外にもロックウェル様にベタ惚れなのね」

二人が呆れたようにクレイを見つめる。

「それで?既成事実は作らないのかしら?」

リーネが楽しそうにロイドへと問いかけてくるが、ロイドはサラリとそれを流した。

「クレイには一年掛けて落としてみろと言われているしな。ここで関係を悪化させる気はない」
「そう。まあ私も部隊長として成長する姿を見せてからでないと手は出せないわね」

そうやって己の立ち位置を相手に伝えながらも、そっとクレイの身体を支え合う。

「ちょうどいい。さっきの圧縮魔法を教えてやるから、一緒に来ないか?」
「いいわね。明日の朝すぐに帰れば問題ないもの」

そうして二人でクスリと笑いあいながらそっとクレイを支え、ロイドの部屋へと向かったのだった。


***


「う…ん…」
ちゅんちゅんと鳥の囀りでそっと目を覚ますと、何故かそこは寝台で、右にはロイド、左にはリーネが眠っていた。

「?」

むくりと体を起こすとちゃんと服は着ているようだが、これは一体どういう状況なのだろうか?
そうやってぼんやりしていると、ロイドが笑顔でおはようと声を掛けてきた。

「クレイ。よく眠れたか?」
「…?ああ」
「気分は悪くないかしら?」
「え?…ああ、大丈夫だ」

リーネも目が覚めたらしく嬉しそうに声を掛けてくる。

「クレイは昨日店で酔いつぶれちゃったでしょう?昨日あれからここに帰って、私も圧縮魔法を試したのよ?」
「え?」
「お前が先にベッドを占拠したから、終わってから両側で寝かせてもらっただけで、何もしていないから安心するといい」

そうやって説明してもらえて、なんだそうだったのかと安堵の息を吐く。

「迷惑をかけてすまない」
「いや?お礼は勿論魔力交流で…」

そう誘ってくるロイドにクレイは苦笑せざるを得ない。

「お前は本当にいつまでも変わらないな」
「当たり前だ。お前の魔力に夢中なんだからな」

そうやってニッと笑うロイドにいつもの癖でそっと瞳の魔法を解いて口づけてやる。

「んっ…」

そして満足いくように交流してやるとロイドが嬉しそうにうっとりと微笑んだ。

「やっぱりお前の魔力は最高だな」

そんな二人にリーネが大きく目を見開いてくる。

「…クレイ?」

そこにあるのはいつもとは違う綺麗で吸い込まれそうな紫の瞳────。

「なんだ。リーネはまだ知らなかったのか?」
「ああ。そう言えば言っていなかった」

しまったとそっと瞳を封印し直そうとするクレイにリーネはちょっと待ってと声を掛けた。

「秘密だったのなら誰にも言わないわ!だから…私にも味合わせてもらえないかしら?」

その言葉に二人が顔を見合わせるがリーネは本気だった。
このチャンスを逃す手はない。

「じゃあ口止め料で、ちょっとだけ…」

そしてそっと重ねられたその唇から漏れ出たのは、先日の物とは遥かに濃度が違う極上の魔力────。

(これは……)
「はぁ…」

唇を離すと同時に漲るその魔力にリーネはため息を吐いた。

「クレイ…ロックウェル様とこの間これで交流をした?」
「…?ああ。いつもは封印は解かないけど、あの時は第三部隊の方で随分魔力を消費していたようだったからな」

と言うことはつまり、最初からロックウェルの恋人はクレイだけで、あの眷属もまたクレイのものと言うことなのではないだろうか?
思い返せば祝典でもあの女魔道士はロイドとずっと一緒だったし、あの時ロックウェルと踊っていたのが実はクレイだった可能性は高い。

「…ロックウェル様に眷属も預けてる?」
「ああ」

それがどうしたと尋ねてくるクレイにリーネはゾクゾクするのを止めることができなかった。
この紫の瞳と高い魔力は王族所縁の者で間違いはない。
彼を手に入れることができれば、ロックウェルのように自分の魔力をもっともっと高めていける。

「クレイ!俄然やる気が出たわ!王族に興味はないけど、絶対に貴方を落として私、初の女魔道士長になってみせるから!」

そんなリーネにクレイとロイドが同時に吹き出した。

「はっ…ははっ…!」
「リーネは本当に面白い女だな」

王族に興味はないと言い切り、自分の魔力を高めるためなら色々やるというその心意気は立派だとクレイが楽しそうに笑う。

「何よ。私は妃に興味はないし、魔道士であるからには魔道士長を狙うのが一番でしょう?」
「…どうかな。流しの魔道士の俺にはわからないが、もしロックウェルに失脚させられたら俺と組んで仕事でもすればいいし、自分の力でできる限り頑張ってみろ」

そんなエールにリーネは嬉しそうに笑った。

「ありがとう。最高のエールだわ」

そして三人でそのままそっと寝台を降りる。

「リーネとロイドはこれからすぐに仕事だろう?」
「ええ」
「ああ。お前はどうする?家に戻るのか?」
「いや。最初はここに滞在しようと思ったんだが、…ちょっと気になる情報もあるし、アストラスのとある街に行こうと思っている」
「そうか…。まあ仕事もあるだろうし、何かあればいつでもまた頼ってくれ」
「私も、いつでも力になるわよ?」
「…ありがとう」

そしてクレイは嬉しい気持ちになりながらもそのまま二人と別れ、その足で王宮へと向かった。




「クレイ?」

突然現れたクレイにルドルフは驚いたようだったが、話を聞いてあっさりと納得してくれる。

「ばれていたか。クレイは本当に情報通だな。何か母上の事で情報が得られたらすぐに教えてもらえるか?」

そんなルドルフに任せておけと微笑んで、クレイはそっとその街へと向かったのだった。



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