黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第一部 アストラス編~王の落胤~

61.※虜

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「あぁっ…!はぁ…ッ!」
「クレイ…クレイ…」
「んんっ…!ロックウェル…」

折角一度終えたのに、シャワーを浴びようと二人で移動したらまたやりたくなって、中を洗ってやると言う口実でまた責め立ててしまった。

「も、立ってられない…」

息も絶え絶えになるクレイの腰を支えて自分の首へと腕を回させる。

「もっと奥まで洗ってやる…」
「あぁあッ!そこ、グリグリしないでッ!気持ちいいッ!!」
「…知っている」
「も、無理…!ふぁっ…!」

ギリギリで辛うじて踏みとどまっていた足から力が抜けるクレイをしっかり支えて、そのまま突き上げるとまた甘い声が上がった。

「んぁ…やぁ…ロックウェルが好きすぎて離れられない…」

そうやって縋ってくるのが可愛すぎる。

「もう一度ベッドで蹂躙してやろうか?」
「うぅ…お願いだからあと一回にしてくれ…」
「わかった」
「あっ…あぁあっ!!」
「ここでの一回が終わったらな」
「ひぁっ…!ああっ…!」
パンパンと腰を打ち付けてやるとクレイは感じすぎて潤む瞳で抱きついてきた。
「あっ…も、好きにして…!はぁッ…あっ…!ああぁあああっ…!!」
そのまま追い上げ中へと注ぐとクレイはビクビクと体を震わせて達してしまう。
「ふ…うぅ…」
焦点の合わない目で震える姿が可愛すぎてたまらない。
そんなクレイを抱き上げて、軽く体を拭きまた寝台へと戻る。
そしてうつぶせで腰を高く上げさせるとそのまま一気に貫いた。
「あぁ────ッ!!」
まだ落ち着いていなかった身体が歓喜の叫びを上げる。
「あぁッ!あ…んぅ…!はぁ…んんッ!」
高みから降りられなくなったクレイが自分の動きに合わせるかのように腰を振り、嬌声を漏らすさまは幾度見ても飽きることがない。
そして何度犯しても締りの良い後ろの具合も最高だった。
「本当に…心も体もこんなに私を虜にするなんて…」
封印しなくて良かったと改めて思いながらクレイをその身でしっかりと味わい尽くす。
「ひと月、ふた月と言わず、ずっと毎日犯したいものだな」
そう言って、ついまた貪るように空が白むまでやってしまったのだった。


***


ちゅんちゅんと鳥の鳴き声で目を覚ますと、隣にはロックウェルの姿があってホッと息を吐く。
体は辛くないから、眠っている間に回復魔法を使ってくれたのだろう。
(相変わらず綺麗な顔……)
さらさらと流れる銀の髪が朝日を受けてキラキラと煌めいて目に眩しい。
白皙の美貌は見惚れるほど本当に綺麗だ。
まだ友人だった頃は思いもしなかったが、こんな関係になって素直に好きだと思える自分が面映ゆかった。
離れていたひと月で気持ちは益々ロックウェルへと囚われて、もう離れるなんてできないとさえ思えた。
(戻ってこれてよかった…)
心からそう思いながら幸せな気持ちでロックウェルを見つめてしまう。

それにしても…今更だが、ロックウェルは自分の何が良かったのだろうか?
ロックウェルが嫉妬するほどのものを自分が持っているとはとても思えないのだが…。
性格で言っても不器用で無愛想なことは自分でも自覚しているし、なんら魅力などないだろう。
それならロイドと同じように自分の魔力に惹かれたのだろうか?
けれど友人の頃は紫の瞳の事も隠していたし、力も封印していたからロックウェルとはそれほど大きな魔力差もない。
そもそも白魔道士と黒魔道士は得意分野だって違うのだから、羨む要素はないと言える。
ファルはロックウェルが自分に劣等感を抱いていたと言っていたがそれに関しては本当によくわからなかった。
時折何かしら過剰評価しているなと思うことがあったが、もしやそれだろうか?
もしそうだとしたら、それ故に嫉妬で最初の封印が行われたのだろうということは何となく理解できた。
それが身体の関係を持ってから好きに変わって、嫉妬の度が増して先日の二度目の封印魔法へと繋がったのだろうとも思う。
けれどやはりロックウェル程の男が自分を求めてくれる理由がさっぱりわからなかった。
ここはやはり最終的な決め手は体の相性だったのだろうか?
別にそれならそれでもいい。
自分もそこは大好きだし、否定する気もない。
今お互いに愛しあっているのだから問題もない。
ロックウェルに愛されて幸せだと、素直に思える自分もいる。

思えばロックウェルとは初めて寝た時から嫌悪感は感じなかった。
口では嫌だと言っていたが、あれは男同士で寝ると言うのがよくわかっていなかったからだ。
まさか自分が襲われる側になるなんて思ったこともなかったし、傷ついた心が更に傷つけられると思ってしまったのもある。
けれどロックウェルと肌を重ねるのは気持ちが良かったし、どこかで身も心も喜んでいる自分がいた。
慣れもあるとは思うが、今では自然と受け入れている自分がいて、それが幸せだとさえ思えるから不思議だ。

「こんな気持ちになるのはどうしてだろうな…」

兎に角今が良ければそれでいい。
そうやって様々な想いに囚われながらポツリと呟き幸せに浸っていると、眠っていると思っていたロックウェルがそっと目を開け唐突に問いかけてきた。

「何がだ?」
「ロ、ロックウェル?!」
「おはよう。クレイ」
「…おはよう」

なんだか居た堪れなくてそのまま寝台を抜け出そうと思ったのだが、逃げる前に手を掴まれ引き寄せられた。

「それで?どんな気持ちの朝だったんだ?」

朝から色気たっぷりに耳元で囁かれて胸が弾んでしまう。
本当にどうしてこう無駄に色香に溢れているのだろうか?

「…お前は本当にずるい」

頰を染めながらポツリとこぼすが、ロックウェルは逃してはくれなかった。
「クレイ?別にこのまま強引に聞き出してもいいんだぞ?」
そうやって艶やかに笑う姿にまで魅了されてしまうから重症だ。
「…お前がそうやってすぐに俺を虜にするから…」
「?」
「…これまで特定の相手は一度も作ってこなかったけど、お前は別だなって…思ってたんだ」
「……」
「お前に初めて襲われた時も気持ち良かったし、好きに抱かれても嫌な気はしないし…」
「クレイ…それは朝からもう一度襲ってほしいと誘っているのか?」
「え?」
違うと否定しようと思ったのに、気が付けばロックウェルが上に乗っていて焦ってしまう。
「だからっ!ただお前の事がやっぱり好きだなと…幸せに浸ってただけで…襲われたいとかそういうんじゃない!んぅ…っ!」
朝から深く口づけられてそのまま蕩けるように気持ち良くさせられる。
「はぁ…気持ちいい…」
そうやってトロリとした眼差しでそっとロックウェルを見遣ると、何故か困った顔をされてしまった。
「また今晩可愛がってやるから、そんな顔で誘うな」
いくらでも抱きたくなると言われてしまい、慌てて飛び起きる。
このまま流されるわけにもいかない。
「さ、誘ってない!今日も仕事だろう?!早く起きるぞ!」
「…わかっている」


そうして二人で身支度を整えて朝食を取っていると、そっと眷属が声を掛けてきた。
【クレイ様。おはようございます。昨日の件でご報告があるのですが…】
「人探しの件か?」
何かわかったのだろうかと尋ねると、現時点でのわかったことを報告してくれる。
【はい。現場に残された僅かな魔力の痕跡を辿りましたが、かなり巧妙に隠されておりまして…】
「……」
【調べましたら、淫魔ではなく、王宮の黒魔道士が噛んでおりました】
その言葉にロックウェルも思わず手を止める。
【一先ず依頼者が見初めた相手までは掴みましたが、どこまでお調べ致しますか?】
「……きな臭いな。敢えて近寄る必要はない。見初めた相手だけ報告して終わりにしてくれていい」
【かしこまりました】
そう言って相手の名を教えてくる。

「王宮魔道士のソフィア…か」

もう下がっていいと伝えると眷属はそのまま静かに消えたが、ロックウェルは気になって仕方がなかった。
「クレイ…お前の仕事に口を出す気はないが…」
「わかっている。だがこの件はここまでだ。その代わりお前にはヒュースをつけることにしたから、何か問題があったら使ってくれ」
王宮魔道士絡みで困ったことが生じたら好きに使ってくれていいとクレイは言う。
「ヒュースは俺が一番最初に契約した眷属だし、子飼いの使い魔も多い。色々勝手もわかっているから使いやすいだろう」
その言葉にロックウェルがいいのかと尋ねてくるが別に構わないと答えた。
「あいつはお喋りだが、仕事は早いし、フォローも的確だ」
「……まあ確かに昨日は助かったが」
その言葉に思わず首を傾げてしまう。
既に何かあったのだろうか?

「……ヒュース」
【なんでしょう?】
「何があった?」
【…昨日はフェルネスの件でお困りだったようなのでアドバイスをしただけでございます】
その言葉を受けて本当かと尋ねるが、本当だとしか答えは返ってこなかった。
【いずれにせよクレイ様のお話などはしておりませんので大丈夫ですよ】
「絶対に余計なことだけは言うなよ?」
【わかっております】
涼しい顔で答えるヒュースに念押しすると、クレイはロックウェルに申し訳なさそうに告げる。
「何かふざけたことを言ってきたらお前のドS全開で虐めてもいいから」
しかしそう言った途端ロックウェルが笑顔で固まった。
「私はドSではないが?」
「……いつも俺を虐めてくるじゃないか」
「あれはお前が悪いだけだろう?」
そういって壮絶な笑みを向けてくるロックウェルが綺麗過ぎて思わず見惚れてしまう。

【クレイ様…。ロックウェル様のドSな笑みも大好きなのはわかりましたが、きちんとお見送りなさってくださいね】

そろそろお時間ですよと呆れたようにぼやかれて、うるさいと叱りつけそのまま下がらせるが、何故かロックウェルに顎を掬われそのまま口づけられた。
「ん…。ロックウェル?」
その瞳は何故か熱くて、自分を求めているのかと問いたくなるほど悩まし気だった。
「ドSと言うから、嫌いなのかと思ったが…」
「え?…いや。あの顔はいつも見惚れるほど綺麗で好き…んんんッ?!」
「いいから…。それ以上は王宮に連れ去ってずっと傍に置きたくなるから黙っていろ」
「ん…ふぅ…んん…っ。はぁ…」
甘く翻弄されて、そのままそっと手を離される。
「また夜に来るから」
甘やかに見つめられながら言われたそんな言葉が嬉しくて仕方がない。
「……待ってる」
そうして二人でそっと微笑みあいながら軽く口づけを交わした。


***


「ロックウェル様!」
王宮へと戻ると部下の一人がやってきて、フェルネスがハインツ王子の呪を解いたと知らせてくれた。
「上手くいったようだな」
「はい!昨日ロックウェル様が尋問を受けるフェルネスに回復魔法を掛けていたと聞き、フェルネスの息の掛かった魔道士達もロックウェル様の御慈悲には感動したようでしたよ」
「…そうか。それはよかった」
「さすがロックウェル様。白魔道士の鏡ですね」
そうやって笑顔で褒めたたえてくる部下にただ笑みで応えながら、なるほどなと歩を進める。
確かに自分は回復魔法しか使っていないから色々な面が上手く収まったと言えるだろう。
(クレイが言うように、ヒュースは使えるな)
実に有効なアドバイスをくれたとロックウェルは満足げに微笑みを浮かべた。


ふとそこで今朝の案件についても何か知らないかと思い至り、部下と別れたところでそっとヒュースへと尋ねてみた。
【今朝のと仰いますと、例の貴族の件でございますか?】
「ああ」
【まあ聞いてはおりますが、全容は調べなくてもよいと言われたのでわかる範囲でしかお話できませんよ?】
「構わない。かかわっていそうな者をそれとなく知っておきたいだけだ」
【そうですか。では…お名前だけ。…ソフィア、レイス、レーチェの三名でございます】
「わかった」
いずれも第三部隊の黒魔道士だなと思いながら、何が目的なのかを考える。
そう言えばフェルネスの件で騒いでいた者達も、第三部隊所属の者が多かったように思う。
今第三部隊を取りまとめているのは部隊長のカルロだが…。

(後で呼び出してみるか…)

もしかしたら三名以外にも何かしら動いている者もいるかもしれない。
何が目的かは知らないが、一応何かあった時のために少しでも情報を把握しておいた方がいいだろう。
そう考えを纏めると、ロックウェルは自分の仕事へと戻っていった。



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