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第一部 アストラス編~王の落胤~
25.※頑なな気持ちの解し方
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「クレイ…」
そっと寝室へと入り声を掛けると、布団にくるまっていたクレイの身がびくりと震えた。
「ロッ……ェル?」
「ああ」
そっと寝台の縁へと腰かけ、顔を見せてくれないクレイの髪をサラリと撫でる。
暫く何を言っていいのかわからぬままにただそうやって優しく髪を梳いていたロックウェルだったが、何か言わなければと思い切って重いその口を開いた。
「クレイ…ファルが言っていたことだが…」
そうやって折角口を開いたのに、クレイはすぐにわかっていると言葉を重ねてくる。
「あれはファルが勝手に言っていただけだから気にする必要はない。悪いが今日は帰ってくれ」
そこにあるのは『拒絶』────。
けれど僅かに震える肩と、その声の固さに…ロックウェルにもほんの少しクレイのことがわかった気がした。
自分は一体これまでクレイの何を見ていたのだろう?
彼がこうやって人の意見を最後まで聞こうとしないのも、勝手に自己完結してしまうのも…自分の心を守るためにそうしているのだということを────全くわかっていなかった。
(自己防衛…か)
つまりはそれ以上傷つけられたくないほどに…追い込まれていたということなのだろう。
「クレイ…こちらを向いてくれないか?」
そうやって声を掛けるのに、クレイはちっとも顔を向けてはくれない。
だから肩を掴んで無理やりこちらへと引き寄せ、その顔を向けさせた。
(やっぱり…)
その顔は思っていた通り泣きそうに歪んでいて心が痛んだ。
それなのにすぐにそれを隠そうとしてしまうから、隠せないようにとそのままゆっくりと口づけを交わした。
「んんっ…。はぁッ…」
角度を変えて何度もあやすように口づけると、最初は抵抗しようとしていたクレイも大人しくなった。
「は…ぁ…」
唇を離すと、熱に浮かされたような眼差しが縋るように自分へと向けられる。
「クレイ…」
そう声を掛けると同時にクレイの腕が自分を引き寄せてきた。
それはまるで待っていたと甘えてきているように思えて仕方がなかった。
(クレイは寝台の上でだけ素直になるな…)
普段は何を考えているのかわからないのに、ここでだけは他の誰よりもわかりやすいのだ。
それならそれで、こうして甘やかしながら本音を聞き出すのもいいかもしれない。
これまで嫉妬で抱き潰してきたけれど、今日は優しく抱いてやりたいと思った。
「んん…」
舌を絡めてグイッと抱き起こし、衣服を順に床へと落としてゆく。
そうしてその肌を堪能し始めたところでやんわりと拒絶された。
「はぁ…ロックウェル…。やっぱり…ダメだ」
蕩けるようにうっとりしながら自分と口づけを交わす癖に、その口から自分を拒絶する言葉を吐いてくるのは何故なのか?
「何がダメなんだ?」
「…俺は…お前のセフレになりたくない…」
その言葉はそっくりそのまま返してやりたい気分だったが、クレイの目があまりにも切なく自分を見つめてくるから、きっと何か理由があるのだろうと思った。
だから今日は安心させるようにちゃんと目を見て答えてやる。
「それなら恋人になってくれればいいだろう?」
「……そんなこと…」
そうやってどこか遠慮するようにそっと押し退けてくるから、まだ言葉が足りないのかと重ねて言った。
どうやらファルが言うように一度クレイとはちゃんと向き合う必要があるようだ。
「私はお前に言っただろう?私のものになれ…と」
それは本気で欲しいと思ったから言ったことなのに、どうして信じてもらえないのだろう?
これまで他の誰にもそんな言葉を言ったことはない。
クレイにだけ、言った言葉なのに────。
「…俺は愛人になる気もない」
ポツリと溢された言葉の真意がわからなくてもどかしくて仕方がなかった。
「私にはお前だけだ」
「嘘だ」
「嘘?」
こんなにも自分を捉えて離さないくせに、お前がそれを言うのか?
「お前がモテることもお前に恋人が沢山いることも知っている。今…シリィの事が…好きなのも…」
その言葉に昼間の言葉がやっと繋がった気がした。
『大丈夫だ!俺は絶対に邪魔をしないから!』
あれはこういう意味だったのか。
「私には今他に恋人なんていないし、私とシリィはそんな関係じゃない。私はお前だけが欲しいんだ」
どこまでも鈍いクレイにちゃんと伝わるようにはっきりと口にする。
さすがにここまではっきり言えば勘違いをすることはないだろう。
「……」
けれど自分の言葉にクレイは目を瞠った後、暫し何か考えた末にその衝撃的な言葉を溢した。
「お前は…単純に相性がいい俺と寝るのが好きなだけなんだろう?」
どうしてこれだけはっきり言っているにも関わらず、こんな言葉が飛び出すのだろうか?
それは確かに間違ってはいない。
相性が良いのは確かだ。
間違ってはいないのだが…それだけのはずがないではないか。
どこか諦めたような…痛みに耐えるような表情をするクレイに何と言ってやれば伝わるのだろう?
好きだから抱きたい。好きだから溺れるのだと…何故わからないのか。
「そうじゃない」
ただそう答えることしかできない自分が歯痒かった。
「…お前は気持ちいいことを好きだと言っているに過ぎない。それは花街の女に対する睦言と変わらないだろう?」
どこか自嘲するかのように笑ったクレイに対し、いくら言っても伝わらない焦燥感に襲われて、ロックウェルは噛みつくようにクレイへと口づけた。
「わかった。もういい」
どうやっても信じてもらえないのなら、それならそれで体にわからせてやろう。
「言葉で伝わらないなら、お前が理解するまで抱いてやる」
折角優しくしてやろうと思ったのに────…。
そうやってロックウェルはクレイを押し倒すとその吸い付くような肌に唇を寄せて、次々と所有の証を刻み込んだ。
「あっ…やっ…!」
クレイがすぐに抵抗し始めるがそんなことは構わない。
口では拒んでも胸の突起に舌を這わせ甘く噛むと反応を返してふるりと身を震わせるのはわかっている。
「やっ…!ロックウェル!」
クレイの雄へと手を伸ばししごき上げるとあっという間に張りつめさせ、気持ちいいとばかりに嬌声が上がる。
「はぁ…んんっ…!あぁっ…!」
「お前は何もわかってない」
「やっめ…!んぅ…!」
「私はお前以外の誰かにこれほど夢中になったことなんて一度もない」
「…?!」
「私をこれほど溺れさせることができるのは…お前しかいないんだ」
(たかが花街の女にこんな気持ちになってたまるか…!)
こうやって本気で落としにかかったり、時に嫉妬したりするのにはそれなりに理由があるのに何故わからないのか?
勘違いにも程がある。
「そ…んなの…、ただ体…の、相性…が…いい、だけ…だ…!ふぅッ…んぁッ!」
そんな自分の気持ちを理解せず、可愛げのないことを言ってくるクレイの後孔へとゆっくりと指を差し込み中をほぐしていくと、そこは待ちかねていたかのようにゆっくりと美味しそうに指を味わって締めつけてきた。
クレイの体はどこまでも正直だ。
「ふっふぁっ…んぁあっ…!」
前立腺を擦り上げると甘い嬌声を上げながら腰を揺らす。
「はッ…はぁ…」
そのままあっという間に絶頂まで駆け上がり、敷き布を握りしめながらとろりと快楽の色を含んだ瞳を向けてきたクレイに、ロックウェルは目を奪われて視線を逸らすことすらできない。
紅潮した頬…。汗の滲んだ媚態…。物欲しげに向けられた誘うような眼差し…。
まだ入れてもいない状態でこれだ。
こんなに全身で自分を求めるように見つめてくるくせに…クレイ自身は気づいていないのだろうか?
どう見てもクレイだって自分を好きなはずなのに…相性が良いだけだなどとよくも言えたものだ。
まさか自分の気持ちを全否定してそんな風に思っていたなんてと腹も立った。
本当にどこまでも追い込まれないとその心を口にしてくれない男だ。
「はぁ…ロックウェル…」
その眼差しはもう挿れてほしいとばかりに情欲を滲ませていたが、このまま望み通り挿れてやるつもりはない。
ここで挿れたらまた互いに溺れ合って同じことの繰り返しになってしまう可能性が高いだろう。
それではいつまで経っても自分達の関係は変わらないのだ。
それを変えるには……。
(しっかりとわからせてやらないとな)
「今日は指だけで何度イけるのか…楽しみだな?クレイ」
だからそうやって、焦らすようにニッと笑った。
***
「やっ…!も…許して…!」
ロックウェルが自分を襲う。
三本の指で中を掻き回し、前立腺を擦り上げ、知り尽くされたいいところを責め立てられる。
波のような快感に身を襲われながらも、それでもどこか足りないもどかしさに身悶えさせられ、クレイは甘く啼いた。
最初は二回立て続けにイかせてくれたのに、先程からイきそうになる度に指を止められ、雄の根元をせき止められる。
これではイくにいけなくて体がうずいて仕方がなかった。
「はぁ…ロックウェル…もっ…離して…くれ…」
「ダメだ…もっともっと気持ち良くしてやる」
「やッ…!イきたい…!イかせて…くれ!はっ…あぁっ!」
頼むから早くイかせてほしい。
できれば後ろにもう挿れてほしい。
一緒に気持ち良くなってロックウェルに縋りつきたかった。
けれど涙目で訴えてもロックウェルは離してくれそうにない。
一体何が悪かったというのだろう?
自分の認識が間違っていたとでも言うのだろうか?
「ふぅ…うぅ…。も…。ぃや…だ…」
快感を追い求めるように腰が揺れて仕方がなかった。
気持ちいいのに物足りなくて、ただただ目の前の男に請うことしかできない自分が居た堪れなかった。
できればこんな浅ましい自分をロックウェルに見せたくはなかったのに……。
「はぁ…もっ…欲しい…!ロックウェル…」
いつもの様に一思いに抱いてほしかった。
蹂躙して何もかも忘れさせてほしかった。
「お願いだ…。なんでも…するから…」
お前が望むなら好きに抱いてくれていいから…いい加減もう焦らさずに楽にさせてほしかった。
「もうお前にメチャクチャに犯されて溺れたい…!」
溺れて何も考えられなくなるほど犯し尽くしてほしかった。
そうすれば自分でもよくわからないロックウェルへのこの気持ちを考えなくてもいいと思ったから…。
「クレイ…」
「あ…早くきて…」
涙目でそう訴えると同時に足を持ち上げられ、やっと待ち望んだそれをロックウェルが与えてくれた。
「あ────ッ!!!!」
挿れられた途端、頭が真っ白になって身体が歓喜に震えるのを感じる。
「あっあぁあああっ!!はぁ…んんっ!」
あまりの快感の強さに最早嬌声しか紡げない。
「ふあぁっ!あっあっあっ…!」
高みから下りれない自分をロックウェルが嬉しそうに責め立てた。
「クレイ…」
そうやって熱のこもった声と眼差しで自分の名を呼ぶロックウェルが好き。
「はぁ…たまらない…」
そうやって気持ちよさそうな声を聞くのが好き。
「クレイ…」
そうやって抱き寄せてくれる腕が心地いい。
ロックウェルが全身で自分を求めてくれるのを感じているのが好き。
こうして肌を重ねるのが好き。
だから腕を伸ばしてしがみつく。
「あっ…あ…んッ…はぁ…んんッ…!」
ずっとずっとこの腕の中に居たくて…。
でもまた離れていかれるのが怖くて…。
信じたいのに…信じて裏切られたくないから信じないようにと歯止めをかける。
この男は一体自分をどうしたいのだろう?
逃げたいのに甘い言葉で絡め取られ、足掻いても足掻いても逃げ出せない。
それでも────。
(傍に居たい…)
────それが今の自分の気持ちの全てだった。
そっと寝室へと入り声を掛けると、布団にくるまっていたクレイの身がびくりと震えた。
「ロッ……ェル?」
「ああ」
そっと寝台の縁へと腰かけ、顔を見せてくれないクレイの髪をサラリと撫でる。
暫く何を言っていいのかわからぬままにただそうやって優しく髪を梳いていたロックウェルだったが、何か言わなければと思い切って重いその口を開いた。
「クレイ…ファルが言っていたことだが…」
そうやって折角口を開いたのに、クレイはすぐにわかっていると言葉を重ねてくる。
「あれはファルが勝手に言っていただけだから気にする必要はない。悪いが今日は帰ってくれ」
そこにあるのは『拒絶』────。
けれど僅かに震える肩と、その声の固さに…ロックウェルにもほんの少しクレイのことがわかった気がした。
自分は一体これまでクレイの何を見ていたのだろう?
彼がこうやって人の意見を最後まで聞こうとしないのも、勝手に自己完結してしまうのも…自分の心を守るためにそうしているのだということを────全くわかっていなかった。
(自己防衛…か)
つまりはそれ以上傷つけられたくないほどに…追い込まれていたということなのだろう。
「クレイ…こちらを向いてくれないか?」
そうやって声を掛けるのに、クレイはちっとも顔を向けてはくれない。
だから肩を掴んで無理やりこちらへと引き寄せ、その顔を向けさせた。
(やっぱり…)
その顔は思っていた通り泣きそうに歪んでいて心が痛んだ。
それなのにすぐにそれを隠そうとしてしまうから、隠せないようにとそのままゆっくりと口づけを交わした。
「んんっ…。はぁッ…」
角度を変えて何度もあやすように口づけると、最初は抵抗しようとしていたクレイも大人しくなった。
「は…ぁ…」
唇を離すと、熱に浮かされたような眼差しが縋るように自分へと向けられる。
「クレイ…」
そう声を掛けると同時にクレイの腕が自分を引き寄せてきた。
それはまるで待っていたと甘えてきているように思えて仕方がなかった。
(クレイは寝台の上でだけ素直になるな…)
普段は何を考えているのかわからないのに、ここでだけは他の誰よりもわかりやすいのだ。
それならそれで、こうして甘やかしながら本音を聞き出すのもいいかもしれない。
これまで嫉妬で抱き潰してきたけれど、今日は優しく抱いてやりたいと思った。
「んん…」
舌を絡めてグイッと抱き起こし、衣服を順に床へと落としてゆく。
そうしてその肌を堪能し始めたところでやんわりと拒絶された。
「はぁ…ロックウェル…。やっぱり…ダメだ」
蕩けるようにうっとりしながら自分と口づけを交わす癖に、その口から自分を拒絶する言葉を吐いてくるのは何故なのか?
「何がダメなんだ?」
「…俺は…お前のセフレになりたくない…」
その言葉はそっくりそのまま返してやりたい気分だったが、クレイの目があまりにも切なく自分を見つめてくるから、きっと何か理由があるのだろうと思った。
だから今日は安心させるようにちゃんと目を見て答えてやる。
「それなら恋人になってくれればいいだろう?」
「……そんなこと…」
そうやってどこか遠慮するようにそっと押し退けてくるから、まだ言葉が足りないのかと重ねて言った。
どうやらファルが言うように一度クレイとはちゃんと向き合う必要があるようだ。
「私はお前に言っただろう?私のものになれ…と」
それは本気で欲しいと思ったから言ったことなのに、どうして信じてもらえないのだろう?
これまで他の誰にもそんな言葉を言ったことはない。
クレイにだけ、言った言葉なのに────。
「…俺は愛人になる気もない」
ポツリと溢された言葉の真意がわからなくてもどかしくて仕方がなかった。
「私にはお前だけだ」
「嘘だ」
「嘘?」
こんなにも自分を捉えて離さないくせに、お前がそれを言うのか?
「お前がモテることもお前に恋人が沢山いることも知っている。今…シリィの事が…好きなのも…」
その言葉に昼間の言葉がやっと繋がった気がした。
『大丈夫だ!俺は絶対に邪魔をしないから!』
あれはこういう意味だったのか。
「私には今他に恋人なんていないし、私とシリィはそんな関係じゃない。私はお前だけが欲しいんだ」
どこまでも鈍いクレイにちゃんと伝わるようにはっきりと口にする。
さすがにここまではっきり言えば勘違いをすることはないだろう。
「……」
けれど自分の言葉にクレイは目を瞠った後、暫し何か考えた末にその衝撃的な言葉を溢した。
「お前は…単純に相性がいい俺と寝るのが好きなだけなんだろう?」
どうしてこれだけはっきり言っているにも関わらず、こんな言葉が飛び出すのだろうか?
それは確かに間違ってはいない。
相性が良いのは確かだ。
間違ってはいないのだが…それだけのはずがないではないか。
どこか諦めたような…痛みに耐えるような表情をするクレイに何と言ってやれば伝わるのだろう?
好きだから抱きたい。好きだから溺れるのだと…何故わからないのか。
「そうじゃない」
ただそう答えることしかできない自分が歯痒かった。
「…お前は気持ちいいことを好きだと言っているに過ぎない。それは花街の女に対する睦言と変わらないだろう?」
どこか自嘲するかのように笑ったクレイに対し、いくら言っても伝わらない焦燥感に襲われて、ロックウェルは噛みつくようにクレイへと口づけた。
「わかった。もういい」
どうやっても信じてもらえないのなら、それならそれで体にわからせてやろう。
「言葉で伝わらないなら、お前が理解するまで抱いてやる」
折角優しくしてやろうと思ったのに────…。
そうやってロックウェルはクレイを押し倒すとその吸い付くような肌に唇を寄せて、次々と所有の証を刻み込んだ。
「あっ…やっ…!」
クレイがすぐに抵抗し始めるがそんなことは構わない。
口では拒んでも胸の突起に舌を這わせ甘く噛むと反応を返してふるりと身を震わせるのはわかっている。
「やっ…!ロックウェル!」
クレイの雄へと手を伸ばししごき上げるとあっという間に張りつめさせ、気持ちいいとばかりに嬌声が上がる。
「はぁ…んんっ…!あぁっ…!」
「お前は何もわかってない」
「やっめ…!んぅ…!」
「私はお前以外の誰かにこれほど夢中になったことなんて一度もない」
「…?!」
「私をこれほど溺れさせることができるのは…お前しかいないんだ」
(たかが花街の女にこんな気持ちになってたまるか…!)
こうやって本気で落としにかかったり、時に嫉妬したりするのにはそれなりに理由があるのに何故わからないのか?
勘違いにも程がある。
「そ…んなの…、ただ体…の、相性…が…いい、だけ…だ…!ふぅッ…んぁッ!」
そんな自分の気持ちを理解せず、可愛げのないことを言ってくるクレイの後孔へとゆっくりと指を差し込み中をほぐしていくと、そこは待ちかねていたかのようにゆっくりと美味しそうに指を味わって締めつけてきた。
クレイの体はどこまでも正直だ。
「ふっふぁっ…んぁあっ…!」
前立腺を擦り上げると甘い嬌声を上げながら腰を揺らす。
「はッ…はぁ…」
そのままあっという間に絶頂まで駆け上がり、敷き布を握りしめながらとろりと快楽の色を含んだ瞳を向けてきたクレイに、ロックウェルは目を奪われて視線を逸らすことすらできない。
紅潮した頬…。汗の滲んだ媚態…。物欲しげに向けられた誘うような眼差し…。
まだ入れてもいない状態でこれだ。
こんなに全身で自分を求めるように見つめてくるくせに…クレイ自身は気づいていないのだろうか?
どう見てもクレイだって自分を好きなはずなのに…相性が良いだけだなどとよくも言えたものだ。
まさか自分の気持ちを全否定してそんな風に思っていたなんてと腹も立った。
本当にどこまでも追い込まれないとその心を口にしてくれない男だ。
「はぁ…ロックウェル…」
その眼差しはもう挿れてほしいとばかりに情欲を滲ませていたが、このまま望み通り挿れてやるつもりはない。
ここで挿れたらまた互いに溺れ合って同じことの繰り返しになってしまう可能性が高いだろう。
それではいつまで経っても自分達の関係は変わらないのだ。
それを変えるには……。
(しっかりとわからせてやらないとな)
「今日は指だけで何度イけるのか…楽しみだな?クレイ」
だからそうやって、焦らすようにニッと笑った。
***
「やっ…!も…許して…!」
ロックウェルが自分を襲う。
三本の指で中を掻き回し、前立腺を擦り上げ、知り尽くされたいいところを責め立てられる。
波のような快感に身を襲われながらも、それでもどこか足りないもどかしさに身悶えさせられ、クレイは甘く啼いた。
最初は二回立て続けにイかせてくれたのに、先程からイきそうになる度に指を止められ、雄の根元をせき止められる。
これではイくにいけなくて体がうずいて仕方がなかった。
「はぁ…ロックウェル…もっ…離して…くれ…」
「ダメだ…もっともっと気持ち良くしてやる」
「やッ…!イきたい…!イかせて…くれ!はっ…あぁっ!」
頼むから早くイかせてほしい。
できれば後ろにもう挿れてほしい。
一緒に気持ち良くなってロックウェルに縋りつきたかった。
けれど涙目で訴えてもロックウェルは離してくれそうにない。
一体何が悪かったというのだろう?
自分の認識が間違っていたとでも言うのだろうか?
「ふぅ…うぅ…。も…。ぃや…だ…」
快感を追い求めるように腰が揺れて仕方がなかった。
気持ちいいのに物足りなくて、ただただ目の前の男に請うことしかできない自分が居た堪れなかった。
できればこんな浅ましい自分をロックウェルに見せたくはなかったのに……。
「はぁ…もっ…欲しい…!ロックウェル…」
いつもの様に一思いに抱いてほしかった。
蹂躙して何もかも忘れさせてほしかった。
「お願いだ…。なんでも…するから…」
お前が望むなら好きに抱いてくれていいから…いい加減もう焦らさずに楽にさせてほしかった。
「もうお前にメチャクチャに犯されて溺れたい…!」
溺れて何も考えられなくなるほど犯し尽くしてほしかった。
そうすれば自分でもよくわからないロックウェルへのこの気持ちを考えなくてもいいと思ったから…。
「クレイ…」
「あ…早くきて…」
涙目でそう訴えると同時に足を持ち上げられ、やっと待ち望んだそれをロックウェルが与えてくれた。
「あ────ッ!!!!」
挿れられた途端、頭が真っ白になって身体が歓喜に震えるのを感じる。
「あっあぁあああっ!!はぁ…んんっ!」
あまりの快感の強さに最早嬌声しか紡げない。
「ふあぁっ!あっあっあっ…!」
高みから下りれない自分をロックウェルが嬉しそうに責め立てた。
「クレイ…」
そうやって熱のこもった声と眼差しで自分の名を呼ぶロックウェルが好き。
「はぁ…たまらない…」
そうやって気持ちよさそうな声を聞くのが好き。
「クレイ…」
そうやって抱き寄せてくれる腕が心地いい。
ロックウェルが全身で自分を求めてくれるのを感じているのが好き。
こうして肌を重ねるのが好き。
だから腕を伸ばしてしがみつく。
「あっ…あ…んッ…はぁ…んんッ…!」
ずっとずっとこの腕の中に居たくて…。
でもまた離れていかれるのが怖くて…。
信じたいのに…信じて裏切られたくないから信じないようにと歯止めをかける。
この男は一体自分をどうしたいのだろう?
逃げたいのに甘い言葉で絡め取られ、足掻いても足掻いても逃げ出せない。
それでも────。
(傍に居たい…)
────それが今の自分の気持ちの全てだった。
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