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6.俺の嫁② Side.シリウス
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俺の嫁がとうとう俺の元へとやってきた。
しかも書類にもサラッとサインをしてくれたし、俺との結婚に全く抵抗はない様子。
最高だ!
とは言え『良い縁談がきたら離縁でいい』という言葉だけはいただけない。
俺が好きなのはランスロットだけなのに…。
やっぱりここは絶対に逃がさないためにも焦らずきっちり絡めとろう。
長年かけて抱擁も親愛のキスも受け入れてもらえるようになったんだ。
一緒に風呂だって入ってくれるし、何だったらのぼせた時に水を飲ませるという名目で何度も唇だって奪った。
ソファで隣同士座るのも最早定番!
位置取りは完璧だ。
後は恋人の距離感に持ち込んで、緩急つけながらじっくり落とすのみ!
適度に思わせぶりな行動をして、さり気なく意識してもらえる方向に持ち込んでみせる!
そんなことを考えながらウキウキと俺達の新居へと案内した。
そして一通り説明し終わったところでやっと荷解きに入る。
俺は傍でその姿を微笑ましく見ていた。
するとランスロットはふと思い出したように俺へと言ってきたんだ。
「そうだ、シリウス。俺さ、家を出る時に何も持たずに出てきたから、バーリッジ公爵家で執事長に色々借りたんだ」
どうやら着の身着のまま家出をしてきたらしく、王都にある屋敷の方で色々借りてきたらしい。
それは全然構わなかったし、寧ろ頼ってもらえて嬉しいとも思った。でも…。
「金とかか?」
「それもあるけど、服とか。でもその服ってお前のだったから俺には大きくてさ、取り敢えず最初に寄った街で服だけ買って、お前のシャツはその…パジャマ代わりにさせてもらってたんだよ」
…………言っていいだろうか?
想像した途端、鼻血を吹くかと思った。
(お、俺のシャツがパジャマ代わり…だと?)
湯上りに俺のシャツを着るランスロット。
ダボダボのシャツから覗く白い項。
裾からスラッと伸びる素足。
見えそうで見えないその魅惑の尻。
しかも絶対萌え袖だろう?!
(ヤバいヤバいヤバい!)
ちょっと想像しただけで頭の中が一気にピンクに染まった。
これは絶対に回収だ。
洗濯に出す気はない!
表面上きちんと紳士の仮面をかぶりつつ、『洗濯に出してくる』と尤もらしい言い訳を口にしてそれらを自室に持っていった。
後からそのシャツをクンクン嗅いだ後、綺麗に畳んで箱詰めしてたら『変態ですね。頭大丈夫ですか?』という目で側近に見られたけど、知るものか!
「そんなことよりアルバーニ侯爵家の動向をしっかり探るよう指示を出しておけ」
「そちらは既に手配済みです」
「そうか。仕事が早くて助かる」
「ええ、ええ。主人が幸せになるよう手を尽くすのが側近の役割なので」
優秀な側近には感謝しかない。
「では、食事の方はまたお持ちしますので」
「ああ。よろしく頼む」
こうして俺の幸せ新婚生活は幕を開けた。
その頃王都では────。
「まあ、素敵なドレス」
「エヴァンジェリンに似合いの素晴らしいドレスだな」
「これを着て城に挨拶に来て欲しいと王子がくださったの」
ウキウキでドレスを手にするエヴァンジェリン。
そしてそれを着て城へと向かったのだが…。
「エヴァ!良かった。実は母上がここ暫く具合が悪くてな」
「まあ大変。王妃様が?」
「ああ。すまないがこれからすぐ、診てもらえないか?」
「わかりましたわ」
出迎えてくれた王子が申し訳なさそうに頼んできた。
ここで渋っても何も良いことはない。
幸い聖輝石に魔力はたっぷりある。
なくなってもランスロットに頼めばいいだけの話だと思い、王妃の元へと向かった。
「母上。聖女を連れて参りました」
「お初にお目にかかります。エヴァンジェリン=アルバーニでございます」
寝台に横たわる王妃の顔色は悪く、病に侵されているのは明らかだ。
そんな王妃に丁寧に挨拶し、容態を確認する。
「どうだ?」
「これなら私でも治すことはできそうです」
そして聖輝石を手にしながら『治れ』と強く願うと忽ち王妃の身体を淡い光が包み込み、光がおさまったところで病魔は消えた。
「凄いわ…」
驚いたように王妃が起き上がり、ハラハラと涙を流しながら私の手を両手で包み込む。
「ありがとう。貴女は私の命の恩人よ」
「当然のことをしたまでです。お元気になられて良かったですわ」
ニコッと笑みを浮かべながらそう言うと、顔を輝かせて王妃は私を見てきた。
そんな王妃に王子が笑顔で声を掛ける。
「母上。エヴァンジェリンはとても素晴らしい女性なので、私の妃にと考えているのですが」
「まあ!それは素敵ね。もしかしてこれから陛下のところへ?」
「はい。父上も是非会ってみたいと言ってくださったので」
「そう。きっとあの人もお認めになるわ。だってこんなに素敵な令嬢なんですもの」
「そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます」
私を認めてもらえたのが嬉しいのか、王子が輝く笑顔でそう答え、また様子を見に来ますと声を掛けて部屋を出た。
「ありがとう、エヴァンジェリン。君のお陰だ」
「いいえ。恐れ多いことでございます」
「どうかこれからも私の側で、苦しむ者達や民の為にその尊い力を存分に振るって欲しい」
「…………微力ながら精一杯頑張らせていただきます」
笑顔で応え、その後国王陛下にも挨拶を行って無事に婚約者として認めてもらったのだが……。
「ランスロット!ランスロット!どこに行ったの、ランスロット!」
思いの外王妃の治療に聖なる力を使ってしまったため残量が少ない。
そのためいつものように補給してもらおうと思ったのに、弟の姿がどこにもなくてイライラが募る。
「どこに行ったのかしら、あの子は」
「本当に使えない奴だな」
「どうせシリウス様に愚痴をこぼしにバーリッジ公爵家に行っているんだろ?すぐ帰ってくるさ」
「そうね。シリウス様も長い付き合いとは言え、迷惑していないといいけれど…」
そんな家族の文句など、最早本人には届きはしない。
そして────彼らは戻らないランスロットに苛立ちと焦燥を募らせていくことになる。
しかも書類にもサラッとサインをしてくれたし、俺との結婚に全く抵抗はない様子。
最高だ!
とは言え『良い縁談がきたら離縁でいい』という言葉だけはいただけない。
俺が好きなのはランスロットだけなのに…。
やっぱりここは絶対に逃がさないためにも焦らずきっちり絡めとろう。
長年かけて抱擁も親愛のキスも受け入れてもらえるようになったんだ。
一緒に風呂だって入ってくれるし、何だったらのぼせた時に水を飲ませるという名目で何度も唇だって奪った。
ソファで隣同士座るのも最早定番!
位置取りは完璧だ。
後は恋人の距離感に持ち込んで、緩急つけながらじっくり落とすのみ!
適度に思わせぶりな行動をして、さり気なく意識してもらえる方向に持ち込んでみせる!
そんなことを考えながらウキウキと俺達の新居へと案内した。
そして一通り説明し終わったところでやっと荷解きに入る。
俺は傍でその姿を微笑ましく見ていた。
するとランスロットはふと思い出したように俺へと言ってきたんだ。
「そうだ、シリウス。俺さ、家を出る時に何も持たずに出てきたから、バーリッジ公爵家で執事長に色々借りたんだ」
どうやら着の身着のまま家出をしてきたらしく、王都にある屋敷の方で色々借りてきたらしい。
それは全然構わなかったし、寧ろ頼ってもらえて嬉しいとも思った。でも…。
「金とかか?」
「それもあるけど、服とか。でもその服ってお前のだったから俺には大きくてさ、取り敢えず最初に寄った街で服だけ買って、お前のシャツはその…パジャマ代わりにさせてもらってたんだよ」
…………言っていいだろうか?
想像した途端、鼻血を吹くかと思った。
(お、俺のシャツがパジャマ代わり…だと?)
湯上りに俺のシャツを着るランスロット。
ダボダボのシャツから覗く白い項。
裾からスラッと伸びる素足。
見えそうで見えないその魅惑の尻。
しかも絶対萌え袖だろう?!
(ヤバいヤバいヤバい!)
ちょっと想像しただけで頭の中が一気にピンクに染まった。
これは絶対に回収だ。
洗濯に出す気はない!
表面上きちんと紳士の仮面をかぶりつつ、『洗濯に出してくる』と尤もらしい言い訳を口にしてそれらを自室に持っていった。
後からそのシャツをクンクン嗅いだ後、綺麗に畳んで箱詰めしてたら『変態ですね。頭大丈夫ですか?』という目で側近に見られたけど、知るものか!
「そんなことよりアルバーニ侯爵家の動向をしっかり探るよう指示を出しておけ」
「そちらは既に手配済みです」
「そうか。仕事が早くて助かる」
「ええ、ええ。主人が幸せになるよう手を尽くすのが側近の役割なので」
優秀な側近には感謝しかない。
「では、食事の方はまたお持ちしますので」
「ああ。よろしく頼む」
こうして俺の幸せ新婚生活は幕を開けた。
その頃王都では────。
「まあ、素敵なドレス」
「エヴァンジェリンに似合いの素晴らしいドレスだな」
「これを着て城に挨拶に来て欲しいと王子がくださったの」
ウキウキでドレスを手にするエヴァンジェリン。
そしてそれを着て城へと向かったのだが…。
「エヴァ!良かった。実は母上がここ暫く具合が悪くてな」
「まあ大変。王妃様が?」
「ああ。すまないがこれからすぐ、診てもらえないか?」
「わかりましたわ」
出迎えてくれた王子が申し訳なさそうに頼んできた。
ここで渋っても何も良いことはない。
幸い聖輝石に魔力はたっぷりある。
なくなってもランスロットに頼めばいいだけの話だと思い、王妃の元へと向かった。
「母上。聖女を連れて参りました」
「お初にお目にかかります。エヴァンジェリン=アルバーニでございます」
寝台に横たわる王妃の顔色は悪く、病に侵されているのは明らかだ。
そんな王妃に丁寧に挨拶し、容態を確認する。
「どうだ?」
「これなら私でも治すことはできそうです」
そして聖輝石を手にしながら『治れ』と強く願うと忽ち王妃の身体を淡い光が包み込み、光がおさまったところで病魔は消えた。
「凄いわ…」
驚いたように王妃が起き上がり、ハラハラと涙を流しながら私の手を両手で包み込む。
「ありがとう。貴女は私の命の恩人よ」
「当然のことをしたまでです。お元気になられて良かったですわ」
ニコッと笑みを浮かべながらそう言うと、顔を輝かせて王妃は私を見てきた。
そんな王妃に王子が笑顔で声を掛ける。
「母上。エヴァンジェリンはとても素晴らしい女性なので、私の妃にと考えているのですが」
「まあ!それは素敵ね。もしかしてこれから陛下のところへ?」
「はい。父上も是非会ってみたいと言ってくださったので」
「そう。きっとあの人もお認めになるわ。だってこんなに素敵な令嬢なんですもの」
「そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます」
私を認めてもらえたのが嬉しいのか、王子が輝く笑顔でそう答え、また様子を見に来ますと声を掛けて部屋を出た。
「ありがとう、エヴァンジェリン。君のお陰だ」
「いいえ。恐れ多いことでございます」
「どうかこれからも私の側で、苦しむ者達や民の為にその尊い力を存分に振るって欲しい」
「…………微力ながら精一杯頑張らせていただきます」
笑顔で応え、その後国王陛下にも挨拶を行って無事に婚約者として認めてもらったのだが……。
「ランスロット!ランスロット!どこに行ったの、ランスロット!」
思いの外王妃の治療に聖なる力を使ってしまったため残量が少ない。
そのためいつものように補給してもらおうと思ったのに、弟の姿がどこにもなくてイライラが募る。
「どこに行ったのかしら、あの子は」
「本当に使えない奴だな」
「どうせシリウス様に愚痴をこぼしにバーリッジ公爵家に行っているんだろ?すぐ帰ってくるさ」
「そうね。シリウス様も長い付き合いとは言え、迷惑していないといいけれど…」
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