【完結】お役御免?なら好きにしてやる!

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
5 / 48

4.到着

しおりを挟む
馬車で三日かけてバーリッジ公爵領へと到着!
勿論国境もちゃんとお金を払って通った。
この辺りは最早手慣れたものだ。

そしてシリウスにちゃんと連絡は入ってるかなとドキドキしながら屋敷の門番へと伝えると、お待ちしておりましたと言ってすぐに通してもらうことができた。
良かった。

「ランスロット!」
「シリウス!」

シリウスの変わらぬ笑みにこっちも思わず笑顔になる。

「会いたかった!」
「俺も!元気そうで安心した!」

そしてこれまたいつも通りの抱擁と髪に落とされる親愛のキス。
うん。落ち着く。

「なんかまた背が伸びてないか?」
「そうかな?」
「そうだって!だって俺なんてすっぽりって感じだし」
「嫌か?」
「いや?収まりがいいから好きだけど、俺ばっかり甘えてるみたいに見えるんじゃないかってさ」
「そんな事気にしなくていい。ここには俺達のことを昔から知ってる者しかいないんだから」
「それもそうか」

顔ぶれは確かに変わらないよなと思いながら、俺は促されるまま歩き出した。

「ランスロット。部屋は後で案内するから、荷物は一旦俺の部屋にでも置いてゆっくり話そう」

わざわざここまで来た俺を労うようにシリウスが優しく言ってくれる。

「ちゃんと今日もランスロットが好きな物を揃えておいたんだ」

そしてソファーへと座ったところで、目の前に俺の好きな紅茶やお菓子がズラッと並べられた。
これも割と昔からだ。
悲しいことがあった時も嬉しいことがあった時も、俺がいつだって気分良く話せるようにってシリウスはこうやって気遣ってくれる。
こういうところが俺は大好きなんだ。

ちなみにソファーでは並んで座るのが定位置。
シリウスは俺が正面に座ったら距離を置かれたみたいで寂しいんだって。
『俺達、親友だよな?』なんていつだったか泣きそうな顔で言われたっけ。
身体は俺よりずっと大きくなったけど、シリウスにはそんな可愛いところもあるんだ。

「それで?何があった?」
「それがさ…」

俺は家出に至った経緯を余すことなくシリウスへと話した。
エヴァンジェリンが王子と婚約したこと。
それを受けて俺はお役御免になったこと。
最後まで家族からの扱いが酷かったこと。

「いい加減嫌になって、もう好きにしてやるって飛び出してきた」
「そうか。辛かったな。そんな場所、もう二度と帰らなくていい」
「シリウス」
「昔約束しただろう?俺と結婚してずっと一緒に暮らせばいいから」

優しくそう言われて思わずウルッと涙が出てきた。

「シリウス…」
「お前がいつ家出しても連れ戻されたりしないように、ちゃんとしっかり手を打っておいたんだ」

そしてシリウスはサイン済みの婚姻届と、国籍の変更届、公爵領領地への住民登録届、ついでに聖魔法の登録届を俺の前に並べて置いた。

聖魔法の登録は、俺の場合追加って感じで出しておいたら法的に問題はないんだってさ。
二属性と言うのを家族が把握できてなくて、後から本人が成人後に追加登録するということも事例としては割とあるから、心配しなくて大丈夫ってシリウスは教えてくれた。
問題があるとしたらそれはエヴァンジェリンの虚偽報告の方だ。
国を騙したってことだから、これについての両親の罪は重いらしい。
バレたら牢屋行き確定だから、さっさと国籍自体を変えて侯爵家と縁は切ろうなって言われて、俺は思い切り頷いた。
連座させられたり罪を押し付けられたりしないよう、打てる手は打っておきたい。

「俺と結婚したらもう誰にも文句なんて言わせない。公爵家の力で法的に守ってやるから、大船に乗ったつもりでいてくれ」

そんな頼もしい言葉を俺にくれるシリウス。
本当。モテるのがすっごくわかる良い男だよな。シリウスって。

「迷惑かけてゴメンな?そのうち良い縁談がきたら俺とはサクッと離縁でいいから」

実家と縁が切れただけでもラッキーと思って、その時は一人で生きて行こう。
これ以上シリウスに迷惑がかからないようにしないと。
そう思ったのに、シリウスは『俺達の仲で遠慮なんてしなくていい』と言い切り、『なんだったら今夜にでも本当の夫婦になろう?』なんて抱き寄せられながら耳元で囁かれてしまった。
ノリノリだな。

「シリウスは本当に優しいな」
「お前にだけだよ」
「本当に?」
「ああ。お前より大切な奴なんてどこにもいないから、安心して頼ってほしい」

にこやかに言い切られて思わず赤面してしまう。
恥ずかしいからこんな殺し文句を言ってこないでほしい。
きっと俺が真っ赤になるのを見て楽しんでるんだろうな。
別にいいけどさ。

しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

僕の策略は婚約者に通じるか

BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。 フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン ※他サイト投稿済です ※攻視点があります

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

処理中です...