2 / 48
1.プロローグ
しおりを挟む
思えば俺はきっと我が家では不要な子供だったんだろう。
兄が一人、そしてその次に生まれたのが男女の双子。
兄は家を継ぐし、双子の姉は政略結婚に使える。
じゃあ双子の弟である俺は?
兄に何かがあった時の予備。
ただそれだけなんだと思う。
だからきっとそんな心ないことが言えたんだ。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
俺がそうやって正直に力が顕現したことを報告した際、何故か父から叱責を受けた。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
そんな話、聞いたこともない。
その後図書室で調べて、その力は女性特有の力ではないという記述も見つけたし、別におかしくはないと思ったのだけど……。
「ランスロット。聖なる力をエヴァンジェリンに返したか?」
「そんなこと、できるはずがないじゃないですか!」
返すも何もこれは俺自身の力だ。
その力を他者に譲渡するなんてできるはずがない。
完全に言い掛かりとしか言えないだろう。
なのに母まで一緒になって責めてきた。
「ランスロット!いい加減になさい!他人の力を奪って恥ずかしくないの?!」
「ですから、そんなことはしていません!」
「だっておかしいじゃないの!聖なる力は聖女の力。女性に顕現する力だと相場が決まっているのよ?!早く返しなさい!」
「確率的に女性に多いだけであって、男性に顕現することもあるって本には書いてありました!」
そう訴えても『嘘つき』『泥棒』『さっさと返せ』、そんな言葉を家族から投げつけられ、俺は泣いた。
そして『返せないならその力はエヴァのために使え』と言い放たれ、表向き聖なる力は姉が持っているように偽装されることとなった。
毎日俺は聖なる力を聖輝石という石に補充という形で入れさせられたのだ。
聖輝石────その名の通り聖なる力を蓄えておくことができる希少な石である。
そこに蓄えられた聖なる力は魔力がある人間なら誰でも取り出し使うことができる。
だから姉はそこに蓄えられた聖なる力を自分の力と偽り、様々な人の前で披露してその地位を盤石なものへと築き上げていった。
そして現在俺達は18才になったのだが……。
「ランスロット。私、王子にプロポーズされたの。だからもう貴方に頼る必要はなくなるわ。喜びなさい。お役御免、お払い箱よ」
満面の笑みでそんなことを言ってきた姉。
正直何故婚約が決まったら必要がなくなるのかがさっぱりわからなかった。
なのに『察しが悪いわね』と呆れたような顔で姉は俺へと言い放つ。
「王子妃になったら私はお城に上がるのよ?聖女の仕事なんてしなくて済むようになるってことくらい、理解できないかしら?」
「王子は『聖女』と結婚したいんだろ?エヴァンジェリンが好きとかじゃなく」
なら聖女としての力を示せないと困るんじゃないのかと思って言ったのに、そう言った途端一気に不機嫌になられて、『失礼なこと言わないで頂戴!』と思い切り平手打ちを食らった。
「王子は『聖女』ではなく私個人を望んでくださったのよ!ちゃんと『エヴァ愛してる、結婚してくれ』って言ってくださったもの!」
どうやら俺の勝手な杞憂だったらしい。
「全く姉の幸せも願えないなんて、どういうつもりだ?」
「そうよ!双子の姉の幸せを何だと思っているのかしら!」
「所詮盗人。元々性格が悪いんだろ」
しかもそんな感じで家族は言いたい放題だ。
俺は一応心配して言ったんだけどな。
「じゃあいざ聖女の力を示せって言われたらどうするんだよ?」
「そんなのこれまで通り、上手くやったらいいだけの話でしょう?」
「そうだ!お前がフォローしたらいいだけの話だ!」
「ちゃんと聖輝石に力を込めた物をエヴァが持っていれば問題はない」
「それにどうせそんなこと言われないわよ。王子妃に無理を言えば不敬罪だって言えば済む話なんだから」
さっきもう俺はお払い箱だって言わなかったか?
これまで通りフォローしろだなんて、舌の根も乾かないうちによく言うなと呆れてしまう。
「自分の存在意義を見出そうとしてそんなことを言い出すなんて愚かね。ランスロット。でも無駄よ。」
嘲るようにそう言ってくるエヴァンジェリン。
『お前の心配なんて必要ない』『お前の役割はもう終わったも同然』と言わんばかりの目を向けてくる両親と兄。
(これが家族のすることか?)
今まで利用するだけ利用してきてこれかといい加減腹が立った。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
どうして今までこんな家族に黙って従ってきたんだろう?
いつか『ありがとう』と言ってもらえるんじゃないかなんて、甘い考えを持っていた自分にも腹が立って仕方がなかった。
(もうこんな家知るか!俺だって好きにしてやる!)
俺はこの日とうとう理不尽に耐えきれなくなって、感情のままに家を飛び出した。
兄が一人、そしてその次に生まれたのが男女の双子。
兄は家を継ぐし、双子の姉は政略結婚に使える。
じゃあ双子の弟である俺は?
兄に何かがあった時の予備。
ただそれだけなんだと思う。
だからきっとそんな心ないことが言えたんだ。
「聖なる力が顕現した?嘘を吐くな!」
「本当です!実は今日凄い大怪我が綺麗に治ってびっくりして…」
俺がそうやって正直に力が顕現したことを報告した際、何故か父から叱責を受けた。
「聖なる力を持ってるのがエヴァンジェリンではなくお前だと?ふざけるな!どうせお前が腹の中でエヴァからその力を奪ったんだろう?!」
「そんな?!言い掛かりです!」
そんな話、聞いたこともない。
その後図書室で調べて、その力は女性特有の力ではないという記述も見つけたし、別におかしくはないと思ったのだけど……。
「ランスロット。聖なる力をエヴァンジェリンに返したか?」
「そんなこと、できるはずがないじゃないですか!」
返すも何もこれは俺自身の力だ。
その力を他者に譲渡するなんてできるはずがない。
完全に言い掛かりとしか言えないだろう。
なのに母まで一緒になって責めてきた。
「ランスロット!いい加減になさい!他人の力を奪って恥ずかしくないの?!」
「ですから、そんなことはしていません!」
「だっておかしいじゃないの!聖なる力は聖女の力。女性に顕現する力だと相場が決まっているのよ?!早く返しなさい!」
「確率的に女性に多いだけであって、男性に顕現することもあるって本には書いてありました!」
そう訴えても『嘘つき』『泥棒』『さっさと返せ』、そんな言葉を家族から投げつけられ、俺は泣いた。
そして『返せないならその力はエヴァのために使え』と言い放たれ、表向き聖なる力は姉が持っているように偽装されることとなった。
毎日俺は聖なる力を聖輝石という石に補充という形で入れさせられたのだ。
聖輝石────その名の通り聖なる力を蓄えておくことができる希少な石である。
そこに蓄えられた聖なる力は魔力がある人間なら誰でも取り出し使うことができる。
だから姉はそこに蓄えられた聖なる力を自分の力と偽り、様々な人の前で披露してその地位を盤石なものへと築き上げていった。
そして現在俺達は18才になったのだが……。
「ランスロット。私、王子にプロポーズされたの。だからもう貴方に頼る必要はなくなるわ。喜びなさい。お役御免、お払い箱よ」
満面の笑みでそんなことを言ってきた姉。
正直何故婚約が決まったら必要がなくなるのかがさっぱりわからなかった。
なのに『察しが悪いわね』と呆れたような顔で姉は俺へと言い放つ。
「王子妃になったら私はお城に上がるのよ?聖女の仕事なんてしなくて済むようになるってことくらい、理解できないかしら?」
「王子は『聖女』と結婚したいんだろ?エヴァンジェリンが好きとかじゃなく」
なら聖女としての力を示せないと困るんじゃないのかと思って言ったのに、そう言った途端一気に不機嫌になられて、『失礼なこと言わないで頂戴!』と思い切り平手打ちを食らった。
「王子は『聖女』ではなく私個人を望んでくださったのよ!ちゃんと『エヴァ愛してる、結婚してくれ』って言ってくださったもの!」
どうやら俺の勝手な杞憂だったらしい。
「全く姉の幸せも願えないなんて、どういうつもりだ?」
「そうよ!双子の姉の幸せを何だと思っているのかしら!」
「所詮盗人。元々性格が悪いんだろ」
しかもそんな感じで家族は言いたい放題だ。
俺は一応心配して言ったんだけどな。
「じゃあいざ聖女の力を示せって言われたらどうするんだよ?」
「そんなのこれまで通り、上手くやったらいいだけの話でしょう?」
「そうだ!お前がフォローしたらいいだけの話だ!」
「ちゃんと聖輝石に力を込めた物をエヴァが持っていれば問題はない」
「それにどうせそんなこと言われないわよ。王子妃に無理を言えば不敬罪だって言えば済む話なんだから」
さっきもう俺はお払い箱だって言わなかったか?
これまで通りフォローしろだなんて、舌の根も乾かないうちによく言うなと呆れてしまう。
「自分の存在意義を見出そうとしてそんなことを言い出すなんて愚かね。ランスロット。でも無駄よ。」
嘲るようにそう言ってくるエヴァンジェリン。
『お前の心配なんて必要ない』『お前の役割はもう終わったも同然』と言わんばかりの目を向けてくる両親と兄。
(これが家族のすることか?)
今まで利用するだけ利用してきてこれかといい加減腹が立った。
「もういい!皆好きにすればいいだろ?!」
どうして今までこんな家族に黙って従ってきたんだろう?
いつか『ありがとう』と言ってもらえるんじゃないかなんて、甘い考えを持っていた自分にも腹が立って仕方がなかった。
(もうこんな家知るか!俺だって好きにしてやる!)
俺はこの日とうとう理不尽に耐えきれなくなって、感情のままに家を飛び出した。
386
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる