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【番外編】

番外編.※フランテーヌからの客人③ Side.王弟パトリック&ディオン

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※今回後半のディオン視点から背後注意です。
お気をつけください。

****************

今回のグラシアス皇国への訪問は本来であれば甥であり王太子でもあるリンテ=フランの役割だった。
何故なら目的が皇太子との交流だったからだ。
次代を紡いでいく者同士、早めに交流を深めつつ国交をより良いものにしていければそれに勝るものはない。
持ちつ持たれつの間柄。それがこれまでのグラシアス皇国との関係だったから。

だがここに来てそのグラシアス皇国に不穏な気配が漂い始めたと言う。
理由は不明だが、皇太子の座が他の者に入れ替わるかもしれないと言う情報が入ってきたためだ。
病気か、それとも資質不足による廃嫡等、王の意向か。

それがわからないから、見極めるためにも甥ではなく自分が派遣された。
甥はまだ若く経験不足だ。
そんな甥にこんなややこしい案件を任せることなどできはしない。

そして単なる友好を深めるために来たように装い、俺は皇太子と交流を深めるべく暫しの滞在許可を取った。

(取り敢えず病気ではなさそうだな)

実際に会った皇太子は元気そのもので、仕事も問題なくこなしているように見える。
少し話しただけでもその優秀さは垣間見えたし、資質不足という可能性も低いだろう。
普通に考えて、このまま王位に就くのは全く問題ないように思える。
側近として紹介された者達も優秀な者達ばかりで、特に最初に案内役として挨拶をしてきたディオンという者は完璧なフランテ語を話していた。
他国の者であそこまで流暢に話せる者はそうそういない。
聞けば彼は母国語に加え8か国語が話せるらしく、非常に優秀なことが窺い知れた。

(うちの連中ももっと見習ってもらいたいものだな)

今回やってきた者達の中で8か国語も話せる者は誰もいない。
堪能な者でも精々日常会話程度が5か国語で話せればいい方だろう。
そう考えると如何に彼が優秀なのかがわかる。
きっと彼が一番側近の中で優秀なんだろうとそう思っていた。

けれど上には上がいたのだ。

最初は他の側近と同じだと思っていた。
でも皇太子に紹介された際、彼は穏やかに微笑みながら『【大地の女神に愛されしフランテーヌ国に敬意を表し、ラスター=ウィルランがご挨拶申し上げます】』と口にし、見事な礼を取ってきて一同驚いてしまったくらいだ。

「【今回王族の方が来られると聞き、勉強させていただきましたがご不快ではなかったでしょうか?】」

固まっている自分達を見て不安に思ったのかそんなことを言ってくるが、わざわざ自分達のためにそこまでしてくれて気を悪くする者などどこにもいない。
しかもディオンと同じくらい流暢なフランテ語に感心してしまう。

(そう言えばディオンもウィルランと言っていたな)

顔は全く似ていないが、もしかして二人は兄弟、もしくは親戚なんだろうか?
余程素晴らしい家庭教師に学んだのだろうと納得がいった。
もしかしたらその教師がフランテーヌ出身だったのかもしれない。

けれどその後皇太子と二人で話していた際、彼がその優秀さでウィルラン家に養子に入ったのだと聞き非常に驚いてしまった。
何と彼は元平民だったと言うのだ。
独学で語学を学び、母国語と合わせ9か国語を自在に操り、交渉もできると言う。

「それは凄い」

まさに天才だ。
彼がいればきっとこの国は揺らがないだろう。
そう思わせるものが確かにあった。

(皇太子はこうして話していても本当に全く問題のない人物だし、周囲の評価も上々。加えて側近たちの質も非常に良い。何も問題はなさそうなものだが……)

これだけ見れば何も問題はなかったと国に帰って報告を入れれば済む話だが、では何故皇太子の座が危ういという話が伝わって来たのかという話になってしまう。
政敵がいて、そちらが悪い噂を流したというだけの話なんだろうか?
単なる噂話程度であれば気にならないが、こうして城で過ごしているとなんだかそういうわけでもないような気がしてくるから不思議だ。

(周辺から探ってみるか)

そう思い、俺は皇太子と親しくしつつ周辺の側近達へと目を向けた。
彼らと親しくなって具体的にプライベートな話を振ってみよう。

それは本当にただの調査目的だったのだが────。


***


【Side.ディオン】

チュ…クチュッ……ジュルッ…。
卑猥な音を立てて愛しのツガイが俺のそそり立ったモノを口で可愛がる。

(メチャクチャ気持ちいいっ…!)




今日はいっぱい触っていいと言っておいたから、食後ラスターは嬉しそうに俺の服をいそいそと脱がせてうっとりしながら色んなところにキスを落としてきた。
こんなに嬉しそうにしてくれるならもっと早く言ってあげれば良かった。
そしたらもっと俺に夢中にさせられたかもしれないのに。

(いや、今からでも遅くはない)

ここは少しくらい調子に乗ったっていいだろう。

「ラスター。おいで」

ドキドキする。
来てくれるかな?
甘えて欲しい。

そんな俺の気持ちに応えるようにラスターが俺の上に乗ってきて、甘えるようにスリッと胸に頬を寄せてきた。

(か、可愛い…っ!)

そんな風に身悶える俺を見て、どこか楽しげにツツツ…と腹筋に指を滑らせ、そのまま俺の男根へと指を絡ませ優しく扱き始める。

「うっ…ラスター…ッ」
「ディオン。今日は俺にやらせて?」

色香を纏ったラスターに魅了され、思わずドキッと胸を弾ませてしまう。
もう何度も抱いてきたから確かにラスターは色々わかってる。
竜王陛下は本当にどの方面に置いても優秀だった。
学べば学ぶほど全部吸収していく。
俺が全部教えて、一緒に成長してきたんだ。
だから嬉しい。嬉しいんだけど…。

「は…あっ…ラ、ラスター…っ、もぅ…っ」

自分で後ろを慣らしながら俺のモノを咥える姿はどこまでも煽情的で、ただただ興奮させられてしまう。
でも出すならラスターを抱いて中に出したい。
頼むから口を離してほしい。

なのに俺の気持ちを知ってか知らずか、ラスターは喉奥へと俺のモノを引き込んでそのまま吸い上げてくる。
口いっぱいに俺のを一生懸命頬張って、出していいよとばかりに上目遣いに見つめられたらもうダメだった。
こんな風にされたら我慢なんてできるはずがない。

呆気なく達した俺に嬉しそうに微笑んで、愛おしそうに頬擦りする姿に心臓がバクバク跳ねる。
俺の愚息は単純だからスリスリされたらすぐ勃ってしまうんだ。
なのにラスターは前戯は今日はいいからって言いながら、騎乗位で上へと乗ってくる。

「ラスター?!」

流石に性急すぎるし止めようと思ったけど、ラスターが腰を落とす方が早かった。

「あ…あぁっ…」

少し苦しそうに、でも何故か嬉しそうにゆっくりゆっくり腰を落としていくラスター。
そんなに俺が早く欲しかった、とか?
そんな考えがチラリと頭を過ぎる。
もしそうだったら……。

「アッ!な、…んで?おっ、おっきくなった…ぁ……」

知らず興奮が俺の愚息へと伝わり、滾り過ぎたようだ。
ラスターが戸惑うように声を上げる。

「ラスター…」

知りたい。
このまま引き寄せて、奥まで挿れたらどうなるのか。
勿論雑に愛したくないと言う気持ちは大きいけど、これはラスターから望んでくれたことだから、試してもいいって事だろう。

「このまま最後まで挿れるから、捕まってて」

その言葉にラスターはコクリと頷いて、俺に抱きつきながら『早く』と甘く言ってきた。
俺のツガイが可愛過ぎて、理性が保てなくなりそうだ。

それでもなんとか理性を保ち、ドキドキしながら奥まで挿れたらラスターも興奮していたのかそれだけで達してしまって驚いた。

(しかも珍しく凄く恥じらってる?!可愛すぎる…)

いつもは時間をかけて快感に溶けきったところで挿入してるからこんな姿は凄く新鮮だ。
理性が残っているからこそのこの表情なんだろう。

「うぅ…ディオン。どうしよう?思った以上に、は、恥ずかしい……」
「可愛い。ラスター」

チュッとキスを落とすとホッとしたように抱き着いてきて、そのままゆったりと腰を揺らすと凄く可愛い顔で身悶え始めた。
なんだかいつもと少し違う感じ。
もしかしてラスターはこう言うのも好きなのかもしれない。

「あっ、あっ、はぁうっ…」
「ラスター。気持ちいい?」
「んっ…んっ…イイッ…」

そうは言うけど、前戯が足りなかった分ちゃんと愛してあげたくて、俺は丁寧に愛撫をしながら沢山中を擦ってあげた。
もっと色んな顔が見たくてついつい張り切ってしまう。
下から攻めるのもなかなか楽しい。
逃げられないようにしっかり捕まえてキスして可愛がるのはアリだと思った。

その後中休みにラスターに尋ねたら、いつも早く欲しいのにもらえないから今日は自分から攻めてみたかったんだと照れ臭そうに言われた。
どうやらいつも前戯が長すぎたらしい。
丁寧なのは別にいいけど、長いと焦らされてる気になって早く欲しくてしょうがなくなるんだとか。

それはそれでラスターに求められたい俺にとっては願ったり叶ったりだけど、ラスターはこうして性急に繋がるのも好きだとわかったし、たまにはこういうのもいいかもしれない。
がっつき過ぎたら嫌われるかもと思ったけど、そうでもないようだし、これからはその時々で判断していこうかなと思う。

「ラスター。もういい?」

続きがしたいと言えばあっさり聞き入れてくれるラスターにキスをして、押し倒して両足を肩へと担ぐ。

「あ…それ……っ」
「ん。今度は俺が好きな体位で攻めさせて?」

奥まで一つになりたいと言えば真っ赤になりながら頷いてくれる。
本当にどうして孕ませられないんだろう?
男同士でも孕ませられればいいのに。

そんなことを考えながら俺はツガイと一つになるべく腰を進めていく。
そしてゆっくりと貫かれて表情を蕩かせていくラスターの表情を満足げに見つめ、そのまま吐息を奪うように唇を塞いだ。


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