【完結】第二王子の失恋〜傷心旅行先で出会ったのはイケメン王子でした〜

オレンジペコ

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第二章 フォルクナー帝国編(只今友情堪能中)

45.皇帝に謁見した俺

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翌朝、一つのベッドで仲良く眠る俺達の姿を見てケインが蒼白になりながら飛んできた。

「ルマンド様!貞操は大丈夫ですか?!」
「へ?」
「ああよかった。衣はきちんと着られておりますね」
「そりゃあ着てるよ」

俺は寝巻はちゃんと着て寝るタイプなんだから。
そんなことより貞操は大丈夫かっていきなりなんてことを言うんだ。
俺達友達だから!知ってるくせに!

「全く…ケインは発想が突飛なんだから」

とは言えケインのお陰で意外とあっさり眠気が飛んでいったので良しとしよう。
その後、朝の支度をし朝食を食べ終えたところでメイビスが俺へと手を差し出し謁見の時間まで城内を案内しようかと言ってくれた。
それは確かに魅力的な誘いではあったけど、俺は城内でポーションを作っている場所はないかと試しに聞いてみた。
コーリックでは作り方は秘匿されているので誰かから教わるというのは難しそうだったから、もしここで教えてもらえたらと思ったのだ。
そしたらメイビスは少し考えた後で快く薬師の元へと連れて行って実際に作っているところを見せてもらうことが出来た。
これにはヒースも興味津々で、二人でかなりガッツリ見てしまったほどだ。
基本のポーションに使う薬草は三種類で、どれもコーリックの森でも手に入る物。
そして一番大事なのは薬草を煮る時に供給する魔力の量。
多すぎても少なすぎても失敗してしまうし、作るポーションによっても変動するので難しいのだと薬師は言っていた。
きっとコーリックでポーションを作っている薬師はこれがあるからお高く設定しているのだろう。
そこに大臣やらがピンハネする分の利を込めるから余計に高くなる。
なんとなく読めた気がした。

「ヒース。俺も成人したからさ、帰ったらポーションについてとことん調べ上げて絶対もう少し安くポーションを卸してもらえるよう交渉してみる」

そんな俺の決意をヒースは誰よりもわかってくれているようで、励ますように背中を叩いてくれた。

「お前が頑張ってくれるなら期待させてもらう」
「ああ、任せてくれ!」

そんなやり取りに何か思うこともあったのか、薬師の人が一通りのレシピを見せてくれた。
本当は極秘だけど、渡すんじゃなく見せるだけならタダだから改革に必要ならできる限り覚えていきなとエールを送ってくれる。
どうやらコーリックのポーションが他国に比べて高額なのを知ってくれていたようで、少しでも手助けできればと思ってくれたらしい。
なんだかそれが嬉しくて、せめてものお礼にと彼女の辛そうだった腰をヒールで治しておいた。
ポーション作りってずっと同じ姿勢だから痛めやすいみたいだ。
お大事にと言ったら物凄く嬉しそうにお礼を言われた。
これでどうやら俺は彼女に気に入られたようで、御礼と共に珍しい丸薬型の毒消しポーションや即効性の眠気覚ましポーションなどまで頂いてしまった。
本当に有難い限りだ。




そうこうしているうちに謁見の時間になり、俺はメイビスの父と対面することになった。
謁見の間に入ったのは俺とメイビスの二人だけ。
流石にケインとヒースは皇帝への目通りは叶わなかった。

それにしても凄い貫禄だ。入ってきた瞬間顔を伏せていてもわかるその存在感はまさに帝国の王────。

レターニアはこの皇帝くらい貫禄がある相手がいいんだと熱く語ってたんだっけ?確か。
これは無理じゃないか?これは明らかに年を重ねた故の威厳と言える。
俺達と同世代でこの貫禄の持ち主が居たらそちらの方が驚きだ。

「面をあげよ」

重厚な低い声でそう言われ、俺はそっと顔を上げ皇帝を見る。
そこにいるのはメイビスとよく似たコバルトブルーの髪と湖水の瞳を持っている、存在感が圧倒的過ぎる人物だった。
その瞳に宿るのは優しさというよりは…好奇心?

「よくぞ参られた。コーリックの王子よ。この度は我が息子メイビスが世話になった。感謝する」
「いえ。微力ながらお手伝いさせて頂いただけですのでどうぞお気になさらず」
「ふむ。何度も窮地から救ってくれたと報告を受けたのだが心当たりはないと?」

これは何のことを言ってるんだろう?ハーピーの件とワイバーンの件かな?

「私は王子ではありますが一冒険者としても活動しております。ですので当然の事をしたまでと考えております」
「そうか。では同じ王子、同じ冒険者として今後も我が息子メイビスと仲良くしてもらえたら嬉しく思う」

おおっ!皇帝から仲良くしても大丈夫だとOKがもらえた。やった!
これで何も気にせず帰ることが出来る。
そう思っていると、折角こうしてよしみを結んだのだから今日は盛大にパーティーを開かせてほしいと言われてしまった。
なんだか大歓迎である。
しかもどうやら城を飛び出したメイビスを無事に連れ帰ってきてくれたというお礼まで含まれている様子。
皇帝からそこまで言われて断る勇気は俺にはなかった。
寧ろ断ったら失礼になるだろう。

「ルマンド=コーネ、陛下のご厚意を有難くお受けいたします」

だからそう言ってそっと頭を下げた。

「うむ。ではまた今宵会えるのを楽しみにしておるぞ」
「は…」

────終わった。
もう本当に肩が凝った。
王子としての礼儀作法、大丈夫だったかな?
このあたりの初謁見時の作法は国によって違うからちょっと不安だ。
ケインがフォルクナーでは最初に名を名乗らず、相手が自分を認めてくれたとわかってから初めてフルネームを名乗るのを許されるんだと教えてくれたからその通りにしたけど…。本当に謁見って面倒臭い。

何はともあれ今日はパーティーにお呼ばれしたから帰れない旨は連絡しておかないと。


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