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第二章 フォルクナー帝国編(只今友情堪能中)

40.ダンジョンに潜ってみた俺

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それぞれ準備を万端に整えてダンジョンの入り口へと向かうと、そこには門番のような人がいて、各パーティーから手数料を受け取っていた。
これはダンジョンから一か月以上出てこないパーティーが出た際に捜索隊が出される時の資金にするものだそうで、思ったよりも多い金額を取られるようだ。
パーティー一組一日の宿代相当と言ったところか。
でも日帰りではなくダンジョンに何日も潜るなら別に損ではないお値段設定だと思う。
だから気にせず払って俺達もダンジョンの中へと足を踏み入れた。

ギルドで地図を購入する際に得た情報によるとこのダンジョンは現在42階層まで攻略されているらしい。
それよりも下の階にも上位冒険者達は挑戦してはいるようなのだが、手強い敵が多々いるようで遅々として攻略は進んでいないとのこと。
因みに横にもかなり広がっているダンジョンなので、俺達が行く十層というのは五日で行って戻ってくるにはちょうどいい階層だと聞いた。
もっと慣れた冒険者だと何ヶ所かある下に降りる階段の位置を正確に把握しサクサクと下へと進んでいくようだけど、初心者には王道と言われるルートが無難とのこと。
迷って出られなくなるよりかはギルドのアドバイスを素直に聞いておいた方がいいだろう。
地図があるとはいえ現在位置を見失ったら意味がない。

ダンジョンの中はどういう原理か壁が発光しているので思っていた以上に明るくなっている。
そして思っていた以上に一層から五層までは魔物の数も少なかった。
これは入ってくる冒険者達が次々と倒していくからこんなものなのだとか。
出てくるのも浅層はゴブリンやコボルト、スライムなどの弱いものばかり。
確かにこれなら学園のダンジョン演習などに使っても何ら問題は出ないだろう。

強い敵が出てくるのは十層を過ぎたあたりかららしい。
それまではゴブリンリーダー、ゴブリンソーサラー、ゴブリンキングとか、ワイルドボアやオーク、オーガがバンバン出てきた。
まあこの辺は全然余裕だけど……。
そんな感じだったのでちょうどいいからと連係プレーの練習をすることにした。

群れで来られても前衛にヒースとケインを置いて、俺が魔法で各自フォローしつつメイビスが魔法で仕留めるという基本の連携を練習しまくったのだ。
最初は俺が前衛に出ようかとも言ったんだけど、ケインが許してくれなかったし、ヒースもお前は後衛で全体を俯瞰してみる練習とか言ってきたのでそれもそうかと納得した。
でもそのお陰で敵は弱くてもヒースは気は抜かないんだなと凄く勉強になった。
圧倒的に敵よりもヒースの方が強いから、手を抜いたら抜いた分だけ気も抜けて適当になるのかと思っていたからこれは凄く意外。

で、その日の夜セーフティスポットとかいう場所で夕食を食べている時にその点を聞いてみたら、気を張りすぎても疲れるだけだが、相手が弱いからとずっと気を緩めていると思わぬ反撃にあって予期せぬ怪我に繋がることがある。それが猛毒だったら最悪だ。パーティーだからと安心せずメリハリをつけて自分なりに考え対処して経験を積んでいけと有難いお言葉を頂いた。
うん。この言葉は深い。
確かに強いメンバーばかりのパーティーだからと認識がソロの時よりも甘くなっていたかもしれない。
俺も気をつけよう。

そして翌日目的の十階層までやってきたところで俺達は聞いていたウルフに遭遇した。
けれどそれはただのウルフではなくギガントウルフだった。
十層から強い敵が出てくるというのはどうやら本当らしい。
とは言えこの階層でギガントウルフに出会うのはかなりレアだそうだけど…。
ギガントウルフは通常のウルフよりも遥かに大きく力も強い。
会ったら運が悪かったと思えとギルドでは言われていたくらいだ。
しかも一匹ではなく三匹もいた。だから一般的には俺達は運が悪かったというやつなんだろう。
でも今回のメンバーなら全然平気だ。
しかもこれなら個別で倒した方がいいくらいじゃないだろうか?

「ヒース!」
「任せておけ!」
「メイビス!」
「こちらも大丈夫だ!」
「ケイン!」
「お任せください!」

三人に声を掛けると同時に付与魔法を発動させ全員の攻撃力向上、防御力向上、思考速度上昇をかける。
ちなみに思考速度上昇は咄嗟の時の判断力が上がるので結構使える魔法だ。
紙一重で避けることもできるし普段から強敵と戦う時は必ず使っているので練度も高い。
ついでにスロウを三体同時に掛けて援助。
これでかなり余裕で倒せるはず。
でも────油断はしない。
あちらを三人に任せているうちに周囲を索敵!
やっぱり思った通りこちらに向かってくる個体が二匹もいた。
先程仲間を呼ぶように遠吠えをしていたから来ると思ったのだ。

『アースバインド!』

十階層は月光草があるだけあって森の地層を要しているから、二匹同時に拘束するのもなんてことはない。

「ふっ!」

素早くそのままギガントウルフの懐へと飛び込み一撃でコアを貫くと同時に身を翻し、二匹目のコアも剣の勢いを殺さぬようにしながら勢いよく刺し貫いた。

パリン…ッと確実にコアが壊れ、二匹を倒したのを確認してゆっくりと周囲を確認した後ピッと剣を振って血を払いクリーンを掛けて鞘へと仕舞う。
でもそんな俺を他の三人が呆れたように見ていた。
いや、主にヒースクリフだろうか?

「お前な…。何一人で片付けてんだ?」
「え?だってそっちはそっちで戦ってたし」
「ああ、お前のお陰で余裕ですぐに終わったよ」
「…?じゃあ別にいいんじゃ…」
「向かってきてた残りの二匹は連携の練習台にしようかと思って振り向いたらもう倒してたから呆れたんだ」

ああなるほど。それは失敗だった。

「ごめん、ごめん。でもまあ、まだまだ機会はあると思うし、許してくれよ」

「お前なぁ…」とヒースは呆れっぱなしで溜息を吐くが、俺だってそろそろちょっとは戦っておきたかったんだ。
後衛で援護だけって結構暇だし。
やっぱ体は動かしておきたいって言うか何と言うか…。

(わかってくれるよな?)

そんな気持ちでニコッと笑ってごまかした俺だった。


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