【完結】元主人が決めた婚約者は、まさかの猫かぶり野郎でした。

オレンジペコ

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17.※逸る心 Side.ルシアン

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予定通り本屋へとカイザーリードを誘導できたはいいものの、どうやらカイザーリードには悩みがあるらしい。
わざわざ俺へと尋ねてきたのがその証拠だ。
それにしても人の感情について詳しく書かれてある本か……。

チラリと護衛としてついてきている騎士に目を向ける。
一応訝しんでいる様子はない。
だが万が一にでも不可解に思われてしまっては困る。
そう思い、極自然な形で俺は敢えてカイザーリードを心理学の本が置かれているスペースへと連れて行った。
これなら然程おかしくはないだろう。
後は頃合いを見て本当にカイザーリードが求めている本が置かれているコーナーへと誘導するだけだ。

(きっと初めての感情に戸惑っているんだろうな)

俺にはわかる。
ならその答えを知るために必要なのはここにある本ではなく恋愛本だ。
ここでおかしな誘導をしてしまったら勘違いさせてしまうだろうし、的確に本を選んで勧めなくてはならない。
それには男女物の恋愛本ではなく同性同士の物を勧めなければならない。
且つ内容がピュア過ぎても大問題だ。
それが普通と思い込まれたらこっちが困る。

(適度にエロくて、それが普通と思えるような書物……)

そんなことを考えながら、心理学の本を手にして難しい顔をしているカイザーリードをそっと見守り、タイミングを見計らってそちらへと連れ込んだ。

パラリパラリとページをめくる姿を目にして、カイザーリードの求めていたものはやっぱりこれだったと会心の笑みを浮かべる。
しかもまとめ買いしたいだと?
勿論いいに決まっている。
金は全額俺が出そう。
必要経費だ。

しかも許可を出したら初めてカイザーリードが物凄く嬉しそうな笑みを俺へと向け、礼を口にしてくれた。

「グッ…!」

あまりにも眩しい笑みが胸へと突き刺さる。
魅了され過ぎて会心の一撃を食らった気分だ。
その笑みの破壊力をカイザーリードはちゃんとわかっているんだろうか?
いや、きっとわかっていない。

そしてなんとか自分を立て直し、俺はカイザーリードと共に馬車へと乗り込む。

(落ち着け。落ち着くんだ)

感情を表に出さず、何事もなかったように本のページをめくり続ける。
内容?
頭に入るはずがない。

(カイザーリードはこの本達を読んで、ちゃんと理解するだろうか?)

俺との行為を想像して頬を染めてほしい。
そう思いながら時折その美麗な横顔へと視線を送る。
なのに期待はあっさりと裏切られ、その口からはあり得ない言葉が飛び出した。

「やっぱりここは性の不一致で婚約をなかったことにするのが一番か?」

(性の不一致……だと?)

寝てから言われたならまだわかるが、そもそも何も始まってないだろう?!
そう思った時には既に俺はカイザーリードを引き寄せてその忌々しい唇を塞いでいた。

「ンンッ!んーッ!」
「今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするな?」
「ル、ルシアン…」
「俺で感じないかどうか、試してみるか?」

怯えたようにカイザーリードが俺の方を見てくるが、俺を怒らせる方が悪い。
すぐにでも襲ってやりたいところをこんなに色々我慢してやってるのに、随分いい度胸だ。

(その身にわからせてやる!)

そして俺はカイザーリードを膝へと抱き上げ背後からしっかり捕まえると、キスをしながら下穿きへと手を滑り込ませ、スリスリと後ろの入り口を撫で始めた。
するとたちまち勃ち上がってくる雄芯。
俺のものよりも一回りは小さいが、芸術品のように美しくて思わずしゃぶりたくなる。
でもここは我慢だ。
先にカイザーリードにはわからせてやらないといけない。
お前は俺の愛撫で感じているのだと────。

わかりやすくその雄を扱きあげ先端を可愛がってやると、あっという間に涎を垂らすかのように先走りが滲みだす。

(ほら見ろ。こんなに感じているだろうに)

性の不一致なんて絶対に言わせない。
知らないなら俺がこの手で教えてやるまでの事。

「カイ。何も知らないお前に俺がきっちり教えてやる。快感というものをな」

そこからは逃げようとするカイザーリードを押さえ込みながらの調教だ。
初めての快感に翻弄されて涙をにじませるカイザーリードにしっかりと教え込む。

もしかしたらカイザーリードは初めて前でイッたのかもしれない。
性欲も殆どないと言っていたから、普段から自慰もしていなかった可能性が高い。
そんなカイザーリードが可愛くて少しだけ溜飲が下がる。
チュッチュッとキスを落としながら白濁を掬い取り、後孔へと指を伸ばした。
物欲しげな顔をするカイザーリードの目には俺しか映っていない。
それが俺の劣情を兎角刺激する。
もうこのまま犯してやりたい。
でも固く閉じた蕾は指を一本受け入れるのも難しそうで、とても馬車移動の短い時間ではほぐせそうになかったから、諦めて極浅いところだけをクプクプと出し入れしてやり、ここに受け入れるんだと教えてやった。
ついでに裏筋も撫でて可愛がってやったら余程気持ち良かったのか俺に甘えるように縋りついてきた。
その姿に知れず心が弾む。
何度も口づけを交わし、蕩けるような目で俺を見つめてくるカイザーリード。

「ルシアン…」
「ルシィだ。カイ。言ってみろ」
「んっ…やっ…」
「カイ。ほら。言え」
「ひゃっ…!ん…ルシィ…」
「そうだ。これからはそう呼べ」

愛称を呼ぶよう言えば、いつかの時とは違い少し促すだけであっさりと呼んでもらうことができた。
なんて愛おしいんだろう?

「ああ、こんなに素直になって。本当に可愛すぎてしょうがないな」

まさかこんなに快感に弱いとは思ってもみなかった。
いや、もしかしたら知らなかったからこそ弱いのか?
その可能性は非常に高い。

早く宿に着かないだろうか?
これならきっと今夜にでも抱けるはず。
そんな逸る気持ちで浮き立つ心を必死に抑えながら、俺はカイザーリードをひたすら愛でたのだった。


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