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13.風呂場にて
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さっきは滑った所を助けてもらったから仕方はなかったけど、触らないという約束もあるから俺が先に湯船に浸かってルシアンが身体を洗う。
(うぅ…やっぱり羨ましい)
俺だって鍛えてるのにと思いながらつい恨めしげにジッと見つめてしまう。
何か効率的な鍛え方でもあるんだろうか?
(元将軍だしな)
知っていてもおかしくはない。
(聞いたら教えてくれるかな?)
でも素直に教えてくれるとも思えなくて、すぐにフルフルと首を横に振って思考を振り払った。
「カイ。終わったぞ?」
ルシアンからにこやかにそう言われて慌ててザバッと湯船から出て、場所を交代する。
その際上から下まで視線が動いたのを俺は見逃さなかった。
しかもコイツはその後鼻で笑ったんだ。
(どうせお前に比べたら貧相だよ!悪かったな?!)
無性にそれが悔しくて、ついつい洗う手が雑になる。
そんな俺を見て『ちゃんと丁寧に洗えよ』なんて言ってくるから更に腹が立った。
「俺の勝手だろ?!」
そう言った俺にルシアンがクスリと笑う。
その目はまるで聞き分けのない子供を見つめているかのように感じられてイライラした。
(俺と同い年のくせに…!)
気に入らない、気に入らない、気に入らない!
そんな気持ちが込み上げて、つい口が滑ってしまった。
「どこが悪いか言ってみろよ!そしたらその通りにやってやるから!」
「本気か?」
「男に二言はない!」
「そうか。それなら教えてやる」
そう言ってルシアンは本当に丁寧に俺に教えてきた。
「耳の後ろが洗えてないからそこもちゃんと洗って」
確かにそこは抜けていたかも知れない。
「背中は無理に手を伸ばすと洗えてないところが出てくるから、こうタオルを斜めにして洗うんだ。勿論逆もするんだぞ?」
な、なるほど。
つい最近まで人に洗ってもらってたからこんな事知らなかった。ちょっと目から鱗だ。
他にも指の間や恥ずかしい場所の洗い方まで教えてもらって、物凄くこれまでの自分が適当だったと自覚してしまう。
そんな俺にルシアンはこれから気をつければいいと言ってくれて、ふと思い出したように口を開いた。
「そうだ。カイ。尻穴の洗い方は知ってるか?」
「……は?」
そんなこと、知っているはずがない。
そもそも必要なのか?甚だ疑問だ。
だから当然知らないと答えた。
「そんなの必要ないだろ?」
「必要だぞ?俺達は結婚するんだから」
「???」
結婚はまあするんだろう。
婚約したんだし当然だ。
でも男同士だし、キスして愛撫して肌を重ねて抜き合っておしまいじゃないんだろうか?
それが嫌だから共寝にならないよう拒否してたのに、何を言い出したのかわからなくて首を傾げてしまう。
「言われている意味がわからない」
だって男同士で子作りはできないんだし、それ以上どうしろと?
そんな俺にルシアンが『無知だな』と言ってくる。
「カイザーリード。本当にお前は人の事を知らないな」
「どういう意味だ?」
「人は剣とは違って快楽が好きなんだ」
「?」
「つまり、男同士でもそれを追求してるってことだ」
その言葉に俺はさらに困惑する。
意味がさっぱりわからない。
だからどうなんだと言いたい。
そんな俺の心境がわかったんだろう。
ルシアンはいきなり豹変して二ッと笑うと、そっと耳元へ唇を寄せて『教えてやろうか?』と言ってきた。
「知りたいだろう?」
「…………別に」
「本当に?」
「本当だ」
そうは言っても少し気になるのは確かだ。
言っても人のこういったことに対して非常に疎い自覚はある。
でもなんとなく酷い目に合いそうで、自分から頼むのはやめようと思いとどまった形だ。
(どうせ断っても無理矢理してくるだろうしな)
そう思ったのに意外なことにルシアンはあっさり引いた。
「それなら無理強いはしない。知りたくなったら聞いてこい」
「え……」
まさかそんなに簡単に引き下がるなんて思いもしなかった。
もしかして本当に誰でも知っているような極当たり前の事だったりするんだろうか?
なんだか物凄くモヤモヤする。
でも話が終わってしまったせいで何も言えない。
そうして俺は結局悶々としたまま風呂から上がって、抱き枕よろしくルシアンに抱き着かれながらベッドで寝た。
しかも予想外にここでも何もされなかった。
(あ~クソッ!なんで何もしてこないんだよ?!)
ただの抱き枕状態だと暑苦しいとしか文句が言えないし、ベッドから落ちるかもと思うと強くも突き放せないから非常に困る。
(ウガー!!)
そんなこんなで眠りが浅くなって、俺は寝不足のせいで翌日馬車でルシアンに凭れ掛かるように眠る羽目になったのだった。
(うぅ…やっぱり羨ましい)
俺だって鍛えてるのにと思いながらつい恨めしげにジッと見つめてしまう。
何か効率的な鍛え方でもあるんだろうか?
(元将軍だしな)
知っていてもおかしくはない。
(聞いたら教えてくれるかな?)
でも素直に教えてくれるとも思えなくて、すぐにフルフルと首を横に振って思考を振り払った。
「カイ。終わったぞ?」
ルシアンからにこやかにそう言われて慌ててザバッと湯船から出て、場所を交代する。
その際上から下まで視線が動いたのを俺は見逃さなかった。
しかもコイツはその後鼻で笑ったんだ。
(どうせお前に比べたら貧相だよ!悪かったな?!)
無性にそれが悔しくて、ついつい洗う手が雑になる。
そんな俺を見て『ちゃんと丁寧に洗えよ』なんて言ってくるから更に腹が立った。
「俺の勝手だろ?!」
そう言った俺にルシアンがクスリと笑う。
その目はまるで聞き分けのない子供を見つめているかのように感じられてイライラした。
(俺と同い年のくせに…!)
気に入らない、気に入らない、気に入らない!
そんな気持ちが込み上げて、つい口が滑ってしまった。
「どこが悪いか言ってみろよ!そしたらその通りにやってやるから!」
「本気か?」
「男に二言はない!」
「そうか。それなら教えてやる」
そう言ってルシアンは本当に丁寧に俺に教えてきた。
「耳の後ろが洗えてないからそこもちゃんと洗って」
確かにそこは抜けていたかも知れない。
「背中は無理に手を伸ばすと洗えてないところが出てくるから、こうタオルを斜めにして洗うんだ。勿論逆もするんだぞ?」
な、なるほど。
つい最近まで人に洗ってもらってたからこんな事知らなかった。ちょっと目から鱗だ。
他にも指の間や恥ずかしい場所の洗い方まで教えてもらって、物凄くこれまでの自分が適当だったと自覚してしまう。
そんな俺にルシアンはこれから気をつければいいと言ってくれて、ふと思い出したように口を開いた。
「そうだ。カイ。尻穴の洗い方は知ってるか?」
「……は?」
そんなこと、知っているはずがない。
そもそも必要なのか?甚だ疑問だ。
だから当然知らないと答えた。
「そんなの必要ないだろ?」
「必要だぞ?俺達は結婚するんだから」
「???」
結婚はまあするんだろう。
婚約したんだし当然だ。
でも男同士だし、キスして愛撫して肌を重ねて抜き合っておしまいじゃないんだろうか?
それが嫌だから共寝にならないよう拒否してたのに、何を言い出したのかわからなくて首を傾げてしまう。
「言われている意味がわからない」
だって男同士で子作りはできないんだし、それ以上どうしろと?
そんな俺にルシアンが『無知だな』と言ってくる。
「カイザーリード。本当にお前は人の事を知らないな」
「どういう意味だ?」
「人は剣とは違って快楽が好きなんだ」
「?」
「つまり、男同士でもそれを追求してるってことだ」
その言葉に俺はさらに困惑する。
意味がさっぱりわからない。
だからどうなんだと言いたい。
そんな俺の心境がわかったんだろう。
ルシアンはいきなり豹変して二ッと笑うと、そっと耳元へ唇を寄せて『教えてやろうか?』と言ってきた。
「知りたいだろう?」
「…………別に」
「本当に?」
「本当だ」
そうは言っても少し気になるのは確かだ。
言っても人のこういったことに対して非常に疎い自覚はある。
でもなんとなく酷い目に合いそうで、自分から頼むのはやめようと思いとどまった形だ。
(どうせ断っても無理矢理してくるだろうしな)
そう思ったのに意外なことにルシアンはあっさり引いた。
「それなら無理強いはしない。知りたくなったら聞いてこい」
「え……」
まさかそんなに簡単に引き下がるなんて思いもしなかった。
もしかして本当に誰でも知っているような極当たり前の事だったりするんだろうか?
なんだか物凄くモヤモヤする。
でも話が終わってしまったせいで何も言えない。
そうして俺は結局悶々としたまま風呂から上がって、抱き枕よろしくルシアンに抱き着かれながらベッドで寝た。
しかも予想外にここでも何もされなかった。
(あ~クソッ!なんで何もしてこないんだよ?!)
ただの抱き枕状態だと暑苦しいとしか文句が言えないし、ベッドから落ちるかもと思うと強くも突き放せないから非常に困る。
(ウガー!!)
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