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10.下準備 Side.ルシアン
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※ここまでの話をほんの少し書き足しました。
話の流れは変わらないので、引き続きお楽しみいただければと思います。
****************
無事にカイザーリードの婚約者に収まることができたのはいいが、俺は大人しくしているつもりなど一切なかった。
誰にも取られたくない相手だ。
さっさと手に入れたいに決まっている。
カイザーリードは元魔剣。
それを知っている俺だからこそわかることがある。
たとえ人へと生まれ変わろうと、元々魔剣として魂を得たことに変わりはなく、その本質は何も変わらない。
故にこいつは主人と認めた相手以外に屈することはない。
それ以外はほぼどうでもよくて、基本的に皆平等な有象無象に過ぎない。
そんな相手に普通に接しても何の意味もない。
時間の無駄もいいところだ。
だからこそ俺は隙を突いて押し倒し、俺を意識せざるを得ない状況へと持ち込んだ。
先手必勝。
それはある意味成功したと言える。
初めての口づけに息の仕方もわからぬままパニック状態で翻弄されるその姿にゾクゾクして、たまらなく興奮してしまったくらいだ。
カイザーリードとの口づけは想像以上に甘美で、俺の心をこれでもかと満たしていく。
愛おしい────そんな感情を感じたのは初めてだったかも知れない。
その後少々騒ぎになってしまったが、婚約解消とはならなかった。
俺がそんなヘマをやらかすはずがない。
憎いユージィン含め、カイザーリードの側にいる奴らの心象は悪くないようコントロール済みだからな。
後はジワジワと追い詰めていけばいい。
分かりやすく毛を逆立たせこちらを警戒するよう威嚇してくればくるほどこちらの優位は高まると、わかっているのかどうか。
素直な反応が可愛すぎてつい揶揄いたくなってしまう。
今頃俺への怒りで頭がいっぱいになっているだろうか?
無関心でなければいいのだが。
そんな事を考えながらクスリと笑う。
手元の手紙にはそっけない文面が並ぶが、その字にはイライラとした感情が乗せられていて、非常にわかりやすい。
(もっと。もっとだ。カイザーリード)
俺のことだけ考えて、俺のことで頭をいっぱいにしてほしい。
その為にも学園が始まったら適度に煽らなければ。
愛称で呼び、イラつく態度で翻弄してやればあっという間に俺だけを見てくるカイザーリード。
警戒しているくせに猫を被った俺に徐々に慣れ、時折隙を見せてくるのが可愛い。
早く抱きたい。
俺だけに夢中になれと言ってやりたい。
だがそれにはまだ早い。
(チッ。この身体はどうしてこうも背が低いんだ)
父親は背が高いから確実に伸びるはずだが、できればサッサと大きくなってしまいたかった。
抱くだけならいつでもできるが、小さいままだとうっかり反撃を許して逃げられるかも知れない。
リスクは少ないに限る。
そう考えながらゆっくりゆっくりカイザーリードの警戒を解いていく。
そうして半年が過ぎたところでカイザーリードよりも大きくなることができた。
漸くだ。
これでやっと仕掛けることができる。
そして俺は兄妹達に魅力的な観光地の話を吹き込みつつ、例年訪れる別荘にカイザーリードを連れて行く計画を立てた。
双方の両親の信用は得ているし根回しもしっかりしておいた。
何も問題はない。
旅行に行く日の当日、馬車で迎えに行くとカイザーリードは俺の両親がいないことを不審に思ったようだったから、種明かしをしてやった。
その時の顔がまたたまらなく素直で、騙したなと怒り狂っていた。
本当になんてわかりやすいんだろう?
カイザーリードが俺に向ける感情全てが俺へと向けられていることに感動してしまう。
その怒りすら愛おしい────。
こんなことを言えばバルトブレイクにまた変態と言われてしまうかもしれないが、俺は相手がカイザーリードなら全く構わなかった。
しかも馬車の中で猫を脱いだ俺にカイザーリードは一瞬見惚れていたのだ。
見間違いではない。
きっとここ最近猫を被った姿しか見せていなかったせいだろう。
ギャップ萌えという奴だな。
口で何と言おうとカイザーリードは俺をちゃんと意識してくれているのだ。
それがわかってどうしようもなく胸が弾んだ。
ここからは少しずつ距離を縮めていこう。
そのためにも強引に行くのは一旦やめにしておかないといけない。
何事も緩急が大切だ。
行きの馬車の中でくらい初心なカイザーリードに合わせてやるとしよう。
取り敢えず俺という存在を自然な形で傍に置きたくなるよう会話をしつつ、適度にスキンシップを図っていくか。
そう考えそっとキスをしてからその手を取り、手を繋いで指を絡めてやった。
────その表情にあるのは戸惑い。
案の定その後の会話で恋愛感情も性的欲求もよくわかっていないということがわかりそっとほくそ笑む。
(なんて楽しいんだろう?)
全部全部真っ新なカイザーリード。
そんなカイザーリードを俺がこの手で育てていけるということに得も言われぬ感情が込み上げてくる。
前世でユージィンと戦いを通してやり取りするのも楽しかったが、それ以上に楽しみで仕方がない。
(まずはキスから仕込んでいくか)
途中に寄る街までまだかなり距離はある。
それまでしっかりキスを教え込んで、これが普通だと覚えさせてやろう。
そして俺は警戒に彩られたその表情が蕩け切るほどカイザーリードをキスで酔わせ、きっちり感じてくれているのを確認しながらほくそ笑んだのだった。
話の流れは変わらないので、引き続きお楽しみいただければと思います。
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無事にカイザーリードの婚約者に収まることができたのはいいが、俺は大人しくしているつもりなど一切なかった。
誰にも取られたくない相手だ。
さっさと手に入れたいに決まっている。
カイザーリードは元魔剣。
それを知っている俺だからこそわかることがある。
たとえ人へと生まれ変わろうと、元々魔剣として魂を得たことに変わりはなく、その本質は何も変わらない。
故にこいつは主人と認めた相手以外に屈することはない。
それ以外はほぼどうでもよくて、基本的に皆平等な有象無象に過ぎない。
そんな相手に普通に接しても何の意味もない。
時間の無駄もいいところだ。
だからこそ俺は隙を突いて押し倒し、俺を意識せざるを得ない状況へと持ち込んだ。
先手必勝。
それはある意味成功したと言える。
初めての口づけに息の仕方もわからぬままパニック状態で翻弄されるその姿にゾクゾクして、たまらなく興奮してしまったくらいだ。
カイザーリードとの口づけは想像以上に甘美で、俺の心をこれでもかと満たしていく。
愛おしい────そんな感情を感じたのは初めてだったかも知れない。
その後少々騒ぎになってしまったが、婚約解消とはならなかった。
俺がそんなヘマをやらかすはずがない。
憎いユージィン含め、カイザーリードの側にいる奴らの心象は悪くないようコントロール済みだからな。
後はジワジワと追い詰めていけばいい。
分かりやすく毛を逆立たせこちらを警戒するよう威嚇してくればくるほどこちらの優位は高まると、わかっているのかどうか。
素直な反応が可愛すぎてつい揶揄いたくなってしまう。
今頃俺への怒りで頭がいっぱいになっているだろうか?
無関心でなければいいのだが。
そんな事を考えながらクスリと笑う。
手元の手紙にはそっけない文面が並ぶが、その字にはイライラとした感情が乗せられていて、非常にわかりやすい。
(もっと。もっとだ。カイザーリード)
俺のことだけ考えて、俺のことで頭をいっぱいにしてほしい。
その為にも学園が始まったら適度に煽らなければ。
愛称で呼び、イラつく態度で翻弄してやればあっという間に俺だけを見てくるカイザーリード。
警戒しているくせに猫を被った俺に徐々に慣れ、時折隙を見せてくるのが可愛い。
早く抱きたい。
俺だけに夢中になれと言ってやりたい。
だがそれにはまだ早い。
(チッ。この身体はどうしてこうも背が低いんだ)
父親は背が高いから確実に伸びるはずだが、できればサッサと大きくなってしまいたかった。
抱くだけならいつでもできるが、小さいままだとうっかり反撃を許して逃げられるかも知れない。
リスクは少ないに限る。
そう考えながらゆっくりゆっくりカイザーリードの警戒を解いていく。
そうして半年が過ぎたところでカイザーリードよりも大きくなることができた。
漸くだ。
これでやっと仕掛けることができる。
そして俺は兄妹達に魅力的な観光地の話を吹き込みつつ、例年訪れる別荘にカイザーリードを連れて行く計画を立てた。
双方の両親の信用は得ているし根回しもしっかりしておいた。
何も問題はない。
旅行に行く日の当日、馬車で迎えに行くとカイザーリードは俺の両親がいないことを不審に思ったようだったから、種明かしをしてやった。
その時の顔がまたたまらなく素直で、騙したなと怒り狂っていた。
本当になんてわかりやすいんだろう?
カイザーリードが俺に向ける感情全てが俺へと向けられていることに感動してしまう。
その怒りすら愛おしい────。
こんなことを言えばバルトブレイクにまた変態と言われてしまうかもしれないが、俺は相手がカイザーリードなら全く構わなかった。
しかも馬車の中で猫を脱いだ俺にカイザーリードは一瞬見惚れていたのだ。
見間違いではない。
きっとここ最近猫を被った姿しか見せていなかったせいだろう。
ギャップ萌えという奴だな。
口で何と言おうとカイザーリードは俺をちゃんと意識してくれているのだ。
それがわかってどうしようもなく胸が弾んだ。
ここからは少しずつ距離を縮めていこう。
そのためにも強引に行くのは一旦やめにしておかないといけない。
何事も緩急が大切だ。
行きの馬車の中でくらい初心なカイザーリードに合わせてやるとしよう。
取り敢えず俺という存在を自然な形で傍に置きたくなるよう会話をしつつ、適度にスキンシップを図っていくか。
そう考えそっとキスをしてからその手を取り、手を繋いで指を絡めてやった。
────その表情にあるのは戸惑い。
案の定その後の会話で恋愛感情も性的欲求もよくわかっていないということがわかりそっとほくそ笑む。
(なんて楽しいんだろう?)
全部全部真っ新なカイザーリード。
そんなカイザーリードを俺がこの手で育てていけるということに得も言われぬ感情が込み上げてくる。
前世でユージィンと戦いを通してやり取りするのも楽しかったが、それ以上に楽しみで仕方がない。
(まずはキスから仕込んでいくか)
途中に寄る街までまだかなり距離はある。
それまでしっかりキスを教え込んで、これが普通だと覚えさせてやろう。
そして俺は警戒に彩られたその表情が蕩け切るほどカイザーリードをキスで酔わせ、きっちり感じてくれているのを確認しながらほくそ笑んだのだった。
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