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閑話2.転生 Side.ルシアン
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死んだと思ったら赤子に転生していた。
どうやらバルトブレイクの言っていたことは本当だったらしい。
だが赤子にできることなどたかが知れていて、俺は随分長い時間を無駄に過ごした。
ある程度成長してからも、簡単すぎるあれこれをサラリとこなし無駄な時間を省こうとしたら、天才と称され持て囃されてうんざりするほど構われ倒し、肝心のカイザーリードを探す時間を奪われてしまうし、何度舌打ちしたことか。
こっちは早く見つけ出して親しくなりたいというのに…。
そもそも女に転生したのか男に転生したのかすらわからないのだ。
早く探さないと誰かに奪われてしまうかもしれない。
あれは絶対に転生後も人目を惹く見た目をしているに決まっているのだ。
のんびりしている暇はない。
そう思って5才になった時点で茶会に参加し始めたのだが、全くそれらしい相手に出会うことができない。
転生しているのは確かなのに、どうして出会えないのか。
仕方がないから両親に勧められるままに勉学に励み剣を嗜み、魔法を鍛えた。
どれもこれも前世で嫌というほどやったことばかりだから効率的な鍛え方を知っていたし、何だったら教師すら不要だと思った。
こんなことをしている時間があれば早くカイザーリードを見つけ出したい。
そんなことを考えながら月日ばかりが無駄に過ぎ去り、やっと手がかりを掴んだのが9歳の頃。
とあるパーティーに参加して帰宅した両親が仇敵であるユージィン=ユグレシアの話をし始め、いつものように聞きたくないと踵を返したところでその言葉が耳へと飛び込んできたのだ。
「ユージィンはカイザーリードを可愛がるのはいいが、相変わらずの親バカだったな」
「ホホホ。でもとっても子供らしくて可愛らしいではないですか。父君のように完璧な相手と結婚したいだなんて、とても微笑ましいですわ」
(カイザーリード、だと?!)
「…………っ!!」
前世で俺を殺した相手をとことん避けていたのが間違いだったと知り、衝撃を受けた。
考えてみれば当然なのに、どうして俺はそこに思い至らなかったのか。
そもそも魔剣が愛すべき主人の側に転生しないなんてあり得ないではないか。
(まさかユージィンの息子に転生していたなんて…!)
完全に盲点だったと悔しく思い、それと同時に大量の猫を被って両親へと近づいた。
「父上。そのカイザーリード様とはどういった方ですか?」
「お?ルシアン。珍しいな。興味があるのか?」
「はい、とても」
「そうかそうか。カイザーリードは話によると綺麗な青髪に澄んだ水色の瞳の可愛らしい子だそうだ」
間違いない。絶対に魔剣カイザーリードの生まれ変わりだ。
あの美しい刀身を思い出し、俺の身に歓喜が満ちる。
「是非会ってみたいです!」
「そうか。それなら茶会で一度会ってみるといい」
そして10才になってすぐの茶会でやっとその姿を見ることができた。
美しく輝く姿を目にして感動を覚える。
それと共に胸にジワジワと込み上げてくる感情があった。
(ああ、早く手に入れたい)
どう口説けばカイザーリードを手に入れられるだろうか?
そうやってボーッと眺めていたらあっという間に茶会が終わってしまった。
(しまった!)
あまりにも好みの容姿過ぎて、見つめるだけで終わってしまったではないか。
これではダメだ。
早く捕まえに行かないと。
そう思い両親にカイザーリードと婚約したいと即刻言いに行くと、物凄く困ったような顔で言われてしまう。
なんでもカイザーリードは、父ユージィンと同じくらい頭がよく、剣技に優れ、魔法の腕も良く、人当たりもいい相手でなければ結婚したくないと言っているのだとか。
それを受けてユージィンが相手に対し吟味に吟味を重ねているため、これまで数多の婚約話が消えていっているらしい。
(クッ…クククッ。素晴らしい。素晴らしいぞカイザーリード!)
何と言ってもそのお陰で俺が手を下すまでもなく、邪魔な奴らが近寄っていけなかったのだから。
「大丈夫です。僕ならきっと条件を満たせますから、是非ユグレシア侯爵家へ婚約の打診をお願いいたします」
そして俺はその日から今まで以上に剣技を磨き、魔法を鍛え、人当たりの良さをアピールするために猫を被り、あらゆるプラス材料になりそうな技能の習得に励みながら勉学へと身を投じた。
(ふん。ユージィンを超えることくらい朝飯前だ。見ていろカイザーリード。お前の婚約者の座は俺が頂く)
それから数年後、憎いユージィンにまで愛想を振りまき、俺は念願だったカイザーリードの婚約者の座を射止めることに成功する。
(ああ、やっと。やっとだ。カイザーリード)
「初めまして。カイザーリード=ユグレシアだ。よろしく」
「初めまして。ルシアン=ジェレアクトです。会えるのを楽しみにしていました」
にこやかに笑いながら俺は待ち望んでいた獲物を前に内心で舌舐めずりをする。
捕まえたからにはもう絶対に逃がさない。
美しく成長したお前を一刻も早く食べてしまいたい。
きっとその唇はどこまでも甘美に俺を酔わせてくれることだろう。
そんなことを考えながら、俺は愛しのカイザーリードを熱く見つめたのだった。
どうやらバルトブレイクの言っていたことは本当だったらしい。
だが赤子にできることなどたかが知れていて、俺は随分長い時間を無駄に過ごした。
ある程度成長してからも、簡単すぎるあれこれをサラリとこなし無駄な時間を省こうとしたら、天才と称され持て囃されてうんざりするほど構われ倒し、肝心のカイザーリードを探す時間を奪われてしまうし、何度舌打ちしたことか。
こっちは早く見つけ出して親しくなりたいというのに…。
そもそも女に転生したのか男に転生したのかすらわからないのだ。
早く探さないと誰かに奪われてしまうかもしれない。
あれは絶対に転生後も人目を惹く見た目をしているに決まっているのだ。
のんびりしている暇はない。
そう思って5才になった時点で茶会に参加し始めたのだが、全くそれらしい相手に出会うことができない。
転生しているのは確かなのに、どうして出会えないのか。
仕方がないから両親に勧められるままに勉学に励み剣を嗜み、魔法を鍛えた。
どれもこれも前世で嫌というほどやったことばかりだから効率的な鍛え方を知っていたし、何だったら教師すら不要だと思った。
こんなことをしている時間があれば早くカイザーリードを見つけ出したい。
そんなことを考えながら月日ばかりが無駄に過ぎ去り、やっと手がかりを掴んだのが9歳の頃。
とあるパーティーに参加して帰宅した両親が仇敵であるユージィン=ユグレシアの話をし始め、いつものように聞きたくないと踵を返したところでその言葉が耳へと飛び込んできたのだ。
「ユージィンはカイザーリードを可愛がるのはいいが、相変わらずの親バカだったな」
「ホホホ。でもとっても子供らしくて可愛らしいではないですか。父君のように完璧な相手と結婚したいだなんて、とても微笑ましいですわ」
(カイザーリード、だと?!)
「…………っ!!」
前世で俺を殺した相手をとことん避けていたのが間違いだったと知り、衝撃を受けた。
考えてみれば当然なのに、どうして俺はそこに思い至らなかったのか。
そもそも魔剣が愛すべき主人の側に転生しないなんてあり得ないではないか。
(まさかユージィンの息子に転生していたなんて…!)
完全に盲点だったと悔しく思い、それと同時に大量の猫を被って両親へと近づいた。
「父上。そのカイザーリード様とはどういった方ですか?」
「お?ルシアン。珍しいな。興味があるのか?」
「はい、とても」
「そうかそうか。カイザーリードは話によると綺麗な青髪に澄んだ水色の瞳の可愛らしい子だそうだ」
間違いない。絶対に魔剣カイザーリードの生まれ変わりだ。
あの美しい刀身を思い出し、俺の身に歓喜が満ちる。
「是非会ってみたいです!」
「そうか。それなら茶会で一度会ってみるといい」
そして10才になってすぐの茶会でやっとその姿を見ることができた。
美しく輝く姿を目にして感動を覚える。
それと共に胸にジワジワと込み上げてくる感情があった。
(ああ、早く手に入れたい)
どう口説けばカイザーリードを手に入れられるだろうか?
そうやってボーッと眺めていたらあっという間に茶会が終わってしまった。
(しまった!)
あまりにも好みの容姿過ぎて、見つめるだけで終わってしまったではないか。
これではダメだ。
早く捕まえに行かないと。
そう思い両親にカイザーリードと婚約したいと即刻言いに行くと、物凄く困ったような顔で言われてしまう。
なんでもカイザーリードは、父ユージィンと同じくらい頭がよく、剣技に優れ、魔法の腕も良く、人当たりもいい相手でなければ結婚したくないと言っているのだとか。
それを受けてユージィンが相手に対し吟味に吟味を重ねているため、これまで数多の婚約話が消えていっているらしい。
(クッ…クククッ。素晴らしい。素晴らしいぞカイザーリード!)
何と言ってもそのお陰で俺が手を下すまでもなく、邪魔な奴らが近寄っていけなかったのだから。
「大丈夫です。僕ならきっと条件を満たせますから、是非ユグレシア侯爵家へ婚約の打診をお願いいたします」
そして俺はその日から今まで以上に剣技を磨き、魔法を鍛え、人当たりの良さをアピールするために猫を被り、あらゆるプラス材料になりそうな技能の習得に励みながら勉学へと身を投じた。
(ふん。ユージィンを超えることくらい朝飯前だ。見ていろカイザーリード。お前の婚約者の座は俺が頂く)
それから数年後、憎いユージィンにまで愛想を振りまき、俺は念願だったカイザーリードの婚約者の座を射止めることに成功する。
(ああ、やっと。やっとだ。カイザーリード)
「初めまして。カイザーリード=ユグレシアだ。よろしく」
「初めまして。ルシアン=ジェレアクトです。会えるのを楽しみにしていました」
にこやかに笑いながら俺は待ち望んでいた獲物を前に内心で舌舐めずりをする。
捕まえたからにはもう絶対に逃がさない。
美しく成長したお前を一刻も早く食べてしまいたい。
きっとその唇はどこまでも甘美に俺を酔わせてくれることだろう。
そんなことを考えながら、俺は愛しのカイザーリードを熱く見つめたのだった。
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