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3.婚約②
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ある晴れた爽やかな日、俺は婚約者、ルシアン=ジェレアクトと対面を果たした。
艶やかな黒髪に柔らかな新緑を思わせるペリドットのような黄緑色の瞳。
少々垂れ目なところがその優し気な雰囲気をより一層引き立てているように感じられた。
身長は俺よりもほんの少し低い。
対する俺は海のように深いマリンブルーの髪にアクアマリンのような水色の瞳だ。
その目はどちらかというとつり目っぽい、アーモンド形をしている。
元が剣だからか警戒を怠らないのが癖になっていて、傍から見ると目つきが悪く見えなくもない。
全体的な色合いが青系統だから、余計に冷たく見えてしまう可能性もあると思う。
まあ何が言いたいかというと、二人並んだらどう見ても俺がいじめっ子で向こうがいじめられっ子に見えるということだ。
(ま、俺がキツク当たらなかったら大丈夫だろ)
そんなことを考えながら取り敢えず自己紹介をして握手を求めた。
「初めまして。カイザーリード=ユグレシアだ。よろしく」
「初めまして。ルシアン=ジェレアクトです。会えるのを楽しみにしていました」
にこやかな挨拶。
柔らかく握り返される握手の手。
何も問題はない初対面を終え、その姿に安心したのか双方の両親は『二人でゆっくり話しておいで』と言い置き部屋を出た。
きっとこの後具体的に婚約書類などにサインをするんだろう。
俺としても特に否やはない。
「ルシアン。折角来たんだし、この後庭園でも見て行かないか?」
「……是非」
だからはにかむように微笑むルシアンを連れ、俺は好意を持って庭園を案内することにしたんだ。
綺麗に整えられた庭園は今が見頃の花があちこちで咲き誇っていて、随所に庭師のこだわりが感じられる。
「これは見事ですね」
「そう言ってもらえたら嬉しい。そうだ!もう婚約者になったんだし、そんなに堅苦しく話さなくてもいいぞ?もっと気楽に話してくれ」
少しでも気安い仲にと考え、気さくにそう提案する。
でもその提案は少し早かったようで、困ったように返されてしまった。
「そうですか?でもいきなりは難しいので、少しずつ変えさせてください」
まあいい。
こういうのは焦っても仕方がないものだし、ゆっくり行こう。
そしてこの先をずっと行くと四阿もあるし、そこで少し話して屋敷に戻ろうと考えながら当たり障りのない話をしつつそちらへと向かった。
「ここは…」
「四阿。ここなら静かだし誰も来ないから、親睦を深めがてらちょっと話そう」
「いいですね」
そして長椅子に並んで腰掛けたところで奴はまさかの豹変を見せた。
完全に油断していたタイミングで、いきなりドサッと押し倒されたんだ。
しかもそれに対してこちらが文句を言う前に引き寄せられてそのまま問答無用で唇を塞がれてしまう。
その上どこか手慣れた様子で舌を潜り込ませてきて、俺を見つめながら逃げる俺の下を追いかけ絡めてこられた。
「~~~~っ?!?!」
まさか押し倒されてそんな濃厚なキスされるなんて思ってもみなかったから、俺は内心大パニック状態。
言葉が出ないとはこういうことかと思った。
「んっ、ん~!んんんー!!」
なんとか引き離そうと胸を押すけど、着痩せするタイプなのか、意外にもがっしりしていてびくともしない。
段々酸欠になって苦しくなっていく俺。
(これ、どうしたらいいんだよ?!)
「フッ。思った通り、可愛いな」
そんな俺を思う存分好き勝手に味わったルシアンはそっと唇を離すと、さっきまでの謙虚な姿勢から一変。
舌舐めずりをするようにペロリと唇を舐めると、まるで肉食獣のような目で俺を見てきてツンと指先で俺の胸を突いてきた。
「カイザーリード」
「な、なんだよ?!」
「折角婚約者になったんだ。これからはこうして仲良くしような?」
仲良く?
こうして?
それはつまり、こんなのは始まりに過ぎないってことなのか?
「だ、だ、だっ…誰が仲良くするかぁあああっ!」
やっと何が起こったのか認識できた俺は真っ赤になりながらも大きな声でそう叫び、ルシアンを強く睨みつけたのだった。
艶やかな黒髪に柔らかな新緑を思わせるペリドットのような黄緑色の瞳。
少々垂れ目なところがその優し気な雰囲気をより一層引き立てているように感じられた。
身長は俺よりもほんの少し低い。
対する俺は海のように深いマリンブルーの髪にアクアマリンのような水色の瞳だ。
その目はどちらかというとつり目っぽい、アーモンド形をしている。
元が剣だからか警戒を怠らないのが癖になっていて、傍から見ると目つきが悪く見えなくもない。
全体的な色合いが青系統だから、余計に冷たく見えてしまう可能性もあると思う。
まあ何が言いたいかというと、二人並んだらどう見ても俺がいじめっ子で向こうがいじめられっ子に見えるということだ。
(ま、俺がキツク当たらなかったら大丈夫だろ)
そんなことを考えながら取り敢えず自己紹介をして握手を求めた。
「初めまして。カイザーリード=ユグレシアだ。よろしく」
「初めまして。ルシアン=ジェレアクトです。会えるのを楽しみにしていました」
にこやかな挨拶。
柔らかく握り返される握手の手。
何も問題はない初対面を終え、その姿に安心したのか双方の両親は『二人でゆっくり話しておいで』と言い置き部屋を出た。
きっとこの後具体的に婚約書類などにサインをするんだろう。
俺としても特に否やはない。
「ルシアン。折角来たんだし、この後庭園でも見て行かないか?」
「……是非」
だからはにかむように微笑むルシアンを連れ、俺は好意を持って庭園を案内することにしたんだ。
綺麗に整えられた庭園は今が見頃の花があちこちで咲き誇っていて、随所に庭師のこだわりが感じられる。
「これは見事ですね」
「そう言ってもらえたら嬉しい。そうだ!もう婚約者になったんだし、そんなに堅苦しく話さなくてもいいぞ?もっと気楽に話してくれ」
少しでも気安い仲にと考え、気さくにそう提案する。
でもその提案は少し早かったようで、困ったように返されてしまった。
「そうですか?でもいきなりは難しいので、少しずつ変えさせてください」
まあいい。
こういうのは焦っても仕方がないものだし、ゆっくり行こう。
そしてこの先をずっと行くと四阿もあるし、そこで少し話して屋敷に戻ろうと考えながら当たり障りのない話をしつつそちらへと向かった。
「ここは…」
「四阿。ここなら静かだし誰も来ないから、親睦を深めがてらちょっと話そう」
「いいですね」
そして長椅子に並んで腰掛けたところで奴はまさかの豹変を見せた。
完全に油断していたタイミングで、いきなりドサッと押し倒されたんだ。
しかもそれに対してこちらが文句を言う前に引き寄せられてそのまま問答無用で唇を塞がれてしまう。
その上どこか手慣れた様子で舌を潜り込ませてきて、俺を見つめながら逃げる俺の下を追いかけ絡めてこられた。
「~~~~っ?!?!」
まさか押し倒されてそんな濃厚なキスされるなんて思ってもみなかったから、俺は内心大パニック状態。
言葉が出ないとはこういうことかと思った。
「んっ、ん~!んんんー!!」
なんとか引き離そうと胸を押すけど、着痩せするタイプなのか、意外にもがっしりしていてびくともしない。
段々酸欠になって苦しくなっていく俺。
(これ、どうしたらいいんだよ?!)
「フッ。思った通り、可愛いな」
そんな俺を思う存分好き勝手に味わったルシアンはそっと唇を離すと、さっきまでの謙虚な姿勢から一変。
舌舐めずりをするようにペロリと唇を舐めると、まるで肉食獣のような目で俺を見てきてツンと指先で俺の胸を突いてきた。
「カイザーリード」
「な、なんだよ?!」
「折角婚約者になったんだ。これからはこうして仲良くしような?」
仲良く?
こうして?
それはつまり、こんなのは始まりに過ぎないってことなのか?
「だ、だ、だっ…誰が仲良くするかぁあああっ!」
やっと何が起こったのか認識できた俺は真っ赤になりながらも大きな声でそう叫び、ルシアンを強く睨みつけたのだった。
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