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1.プロローグ
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隣国との戦争。
そこで俺は前世、沢山の兵を斬り殺していた。
けれど俺は人ではなく一振りの剣────魔剣だった。
主人と契約を交わした魔剣は意思を持ち、主人のステータスを向上させ、敵を殲滅していく。
俺の主人は元々魔力も強く剣技も素晴らしかった。
誇らしい主人を持てて俺はどこまでも幸せだった。
だから常に強く、賢く、美しい主人の手にあり続け、このまま最期まで一緒にと願っていたんだ。
────それなのに…。
「はぁ、はぁ…。クッ、ハハハハッ!これで俺に勝ったと思うなよ?お前の剣も、道連れにしてやる」
そう言ったのは主人に追い詰められた敵の将軍だった。
そんな彼が血まみれになりながらニヤリと笑う。
この男は俺の主人には劣るがかなりの腕前を持つ男ではあった。
それは認めよう。
でも、最後の最後で俺を叩き折りにかかるってどういうことだ?!
ガキンッ!
激しい戦闘でかなり限界に近かったのは認めるが、主人が魔力を回復して修復してくれればまだまだ折れずに済んだはずだったのに、この将軍はその名の通り命がけで俺を叩き折ったのだ。
「カイザーリード!!」
ああ。主人の声がどこか遠くに聞こえる。
きっとここまで見事に叩き折られたんだし、もう二度と修復は不可能なんだろう。
それは仕方がない。
でも、願わくばずっと一緒にいたかった。
この敬愛する主人の元で、主人の家族、主人の子孫を見守っていきたかった。
いや。それよりも……。
(戦争を終えて、主人が幸せになる姿だけは…見たかったな────)
それが何よりの心残りだった。
(ああ、嫌だ。こんなところで終わるなんて…。主人ともっともっと一緒に居たかったのに…な)
そんなことを考えながら俺の意識は薄れていった。
***
生まれ変わりというものは、魔剣にも適応されるのだろうか?
オギャー!!
気づけば俺は赤子に転生していた。
そう。赤子だ。
つまり人間だ。
こんなことがあるんだろうか?
初めて聞いた。
しかも────。
「よしよし。いい子だ。エリアンヌ。可愛い息子を産んでくれてありがとう。疲れただろう?ゆっくり体を休めてくれ」
産まれたばかりの俺をその腕に抱きあげ妻を労う男は前世での俺の主人、ユージィン=ユグレシアその人だった。
どうやら俺は主人の息子としてこの世に生まれ変わったらしい。
「貴方。この子の名はお決まりですか?」
「そうだな。強く気高く育ってほしいから、カイザーリードと名付けたい」
「その名は…」
「ああ。私の愛剣の名だ」
「よろしいのですか?」
「もちろん。きっとカイザーリードも許してくれる」
そう言いながら切なげな表情を浮かべる主人、いやもう父か。
「カイザーリード。お前の名は世界一素晴らしい魔剣の名から貰ったんだ。その名に恥じぬよう、誇りをもって生きていってくれ」
その言葉に今でも俺を大事に思ってくれている気持ちを感じて、俺は胸が温かくなって泣きたくなった。
「ほぎゃぁああっ、ほぎゃぁああっ」
決めた。
俺の願いは思わぬ形で叶ったようだし、これからは主人が幸せに過ごす姿を側で見守ろう。
そして俺は主人が望むよう、誇りをもってこの生を生きよう。
こうして俺の新たな人生はスタートを切ったのだった。
そこで俺は前世、沢山の兵を斬り殺していた。
けれど俺は人ではなく一振りの剣────魔剣だった。
主人と契約を交わした魔剣は意思を持ち、主人のステータスを向上させ、敵を殲滅していく。
俺の主人は元々魔力も強く剣技も素晴らしかった。
誇らしい主人を持てて俺はどこまでも幸せだった。
だから常に強く、賢く、美しい主人の手にあり続け、このまま最期まで一緒にと願っていたんだ。
────それなのに…。
「はぁ、はぁ…。クッ、ハハハハッ!これで俺に勝ったと思うなよ?お前の剣も、道連れにしてやる」
そう言ったのは主人に追い詰められた敵の将軍だった。
そんな彼が血まみれになりながらニヤリと笑う。
この男は俺の主人には劣るがかなりの腕前を持つ男ではあった。
それは認めよう。
でも、最後の最後で俺を叩き折りにかかるってどういうことだ?!
ガキンッ!
激しい戦闘でかなり限界に近かったのは認めるが、主人が魔力を回復して修復してくれればまだまだ折れずに済んだはずだったのに、この将軍はその名の通り命がけで俺を叩き折ったのだ。
「カイザーリード!!」
ああ。主人の声がどこか遠くに聞こえる。
きっとここまで見事に叩き折られたんだし、もう二度と修復は不可能なんだろう。
それは仕方がない。
でも、願わくばずっと一緒にいたかった。
この敬愛する主人の元で、主人の家族、主人の子孫を見守っていきたかった。
いや。それよりも……。
(戦争を終えて、主人が幸せになる姿だけは…見たかったな────)
それが何よりの心残りだった。
(ああ、嫌だ。こんなところで終わるなんて…。主人ともっともっと一緒に居たかったのに…な)
そんなことを考えながら俺の意識は薄れていった。
***
生まれ変わりというものは、魔剣にも適応されるのだろうか?
オギャー!!
気づけば俺は赤子に転生していた。
そう。赤子だ。
つまり人間だ。
こんなことがあるんだろうか?
初めて聞いた。
しかも────。
「よしよし。いい子だ。エリアンヌ。可愛い息子を産んでくれてありがとう。疲れただろう?ゆっくり体を休めてくれ」
産まれたばかりの俺をその腕に抱きあげ妻を労う男は前世での俺の主人、ユージィン=ユグレシアその人だった。
どうやら俺は主人の息子としてこの世に生まれ変わったらしい。
「貴方。この子の名はお決まりですか?」
「そうだな。強く気高く育ってほしいから、カイザーリードと名付けたい」
「その名は…」
「ああ。私の愛剣の名だ」
「よろしいのですか?」
「もちろん。きっとカイザーリードも許してくれる」
そう言いながら切なげな表情を浮かべる主人、いやもう父か。
「カイザーリード。お前の名は世界一素晴らしい魔剣の名から貰ったんだ。その名に恥じぬよう、誇りをもって生きていってくれ」
その言葉に今でも俺を大事に思ってくれている気持ちを感じて、俺は胸が温かくなって泣きたくなった。
「ほぎゃぁああっ、ほぎゃぁああっ」
決めた。
俺の願いは思わぬ形で叶ったようだし、これからは主人が幸せに過ごす姿を側で見守ろう。
そして俺は主人が望むよう、誇りをもってこの生を生きよう。
こうして俺の新たな人生はスタートを切ったのだった。
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