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御礼閑話.※全幅の信頼を愛しの兄へ
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兄の子が双子で産まれた。
名前はディオとディア。
何故か名づけは一週間という期限を切って公募されていた。
そんな中、なんでもガヴァムの兄妹神の名からとったこの名が一番人気だったのだとか。
後から何故公募にしたのか聞いたら、アンヌの案だったらしい。
こうすることで国民に愛される子供達になって欲しかったと。なるほど。
まあセカンドネームは俺と兄が決めたし、別にいいけど。
赤ちゃんはとっても小さくてフニャフニャしているから、なんだか触るのが怖い。
でも兄が子育てに積極的で、俺に誘いをかけてくるから一応頑張って参加してみることに。
兄的には子育てを通して普通の家族というものを俺に教えたいらしい。
これにはリヒターやカークも特に反対はしてこなくてどちらかというと協力的だ。
アンヌは何故か『私が正しく母の愛をお教えいたしますわ!』と張り切っていたけど、どう見てもリヒターやカークの方がアンヌより子育て上手だと思う。
「陛下。抱き方はこうですよ。できるだけ優しく包んであげてください」
「陛下!抱っこは首さえ固定したら適当でも大丈夫ですわ!やってみてくださいませ!」
「アンヌ、煩い。リヒター。これで合ってるか?」
「ええ。大丈夫です」
「ロキ様!ミルクあげてみますか?温度調整してきましたよ!人肌です」
「……じゃあ」
「陛下!ほらほら!こうですわ、こう!よーしよしよし。可愛いでちゅね~」
「アンヌ、煩い。カーク、これでいいかな?」
「ええ。大丈夫ですよ。最後は優しく背中を叩いてゲップを出させてあげてくださいね」
「ロキ。着替えを一緒にやってみないか?」
「はい。折角だし水色でお揃いにしましょうか」
「陛下!ダメですわ!ディアは女の子ですし、レースがたっぷりで可愛いこちらのピンクがお勧めです!」
「アンヌ、邪魔だ。兄上、お揃いと言ってもちょっとだけデザイン違いみたいです。こっちとこっちどっちにします?」
「……こっちかな」
「じゃあ俺はこちらで」
「うぅ…陛下。私の意見も聞いて欲しいですわ」
「邪魔」
兄との時間を邪魔しないで欲しい。
そうしてある程度子供達が大きくなったところで、子育てアドバイザーとしてアンシャンテからエメラルダ夫人を呼び寄せた。
手紙を出したら喜んで引き受けてくれたのだ。
光栄だと言ってすぐに返事ももらえたから、笑顔で出迎え、子供も一緒に今は王宮に部屋を用意し暮らしてもらっている。
屋敷の管理は信用できる者に任せてきたから、時折帰るくらいで特に問題はないとのこと。
教育係はリヒターとカークが真っ先に手を上げてくれたし、問題はない。
他にも立候補者はいるらしいから、吟味した上で補佐的につけるよう伝えておいた。
成長した子供達は可愛いの一言だ。
愛情をたっぷり受け取ってすくすく育ってくれている。
ディオはヒューガー家の血が濃いのかどこか見た目がリヒターに似ていて、俺にとっては癒し系の息子だ。
性格も真面目だし、学ぶ意欲も凄い。
このまま真っ直ぐ育てばきっと将来は立派な王になってくれるだろう。
ディアは兄に似た顔立ちで、おしゃまで凛々しい顔立ちの娘。
幼いのに利発で弁が立つところは昔の兄そっくりで、見ていてなんだかとても懐かしい。
こんなにそっくりだと将来お嫁に出したくないなと思ってしまう。
二人とも自分達の両親は兄とアンヌの二人だと認識はしているものの、兄もアンヌも俺の妃だからという理由で俺のことを父親認定してくれている。
ロキお父様、カリンお父様、アンヌお母様という感じだ。
そんな二人はどちらも俺に懐いてくれている。
ただ戸惑うことも多い上に、答えられないことも多々あった。
「ロキお父様はどこの別荘が一番お勧めですか?」
「ロキお父様は幼い頃、どんな遊びをされましたか?」
この質問なんてその筆頭だ。
別荘はお勧めできるほど知らないし、遊びだってそう言えば記憶にある限りしたことがなかった。
母の詰め込み教育が大変で、昼間は常に睡魔と戦っていたし。
普通はどんな遊びをするものなんだろう?
「……遊んだこと、なかったかも」
でも困ってそうポツリと溢したら、子供達はパッと目を輝かせて、それなら自分達とお揃いだから一緒に遊びましょうと笑顔で誘ってくれた。
優しい。
誘ってくれる遊びは多分カークが教えたんだろうなというようなものが多い。
遊びに見せかけた暗部の技だ。
聞けばカークの実家は暗部の名門ということもあって、子供の頃から遊びにそういう技術を取り入れているらしい。
実に面白いと思う。
「ロキお父様!早く早く!投げてください!」
今日は木にぶら下げた的にボールを当てる遊びだ。
確実に当てられるようになったら、ボールをナイフに替えるらしい。
キャッキャッと楽しく笑う子供達と一緒に少しだけ遊んで仕事に戻った。
ちなみに兄はこういう遊びには付き合ってくれないらしく、子供達からは今度俺から誘ってくれと言われた。
でも兄は一度だけ付き合った後はあまり付き合ってくれなかったから、その分俺が遊んであげることに。
そしてもう少し大きくなったところでやっと勉強や剣の稽古に付き合ってくれるようになったのだけど、どうしてだろう?
そう思って訊いたら、単純に双子達と遊ぶのは退屈だったからという理由らしい。
(退屈させたら俺もつれなくされるのかな?)
それは嫌だ。
そう思ったから、その日の夜は大人の玩具でいっぱい兄と遊ぶことにした。
『俺との遊びは退屈じゃないですか?』と聞いたけど兄は『ロキとの閨が退屈だったことなんて一度もないだろう?!』と言ってくれる。
そのうち『玩具だけは嫌っ!お願いっ、お願いっ!もう抱いてぇっ!』って懇願されたけど、『今日の趣旨は玩具で満足させつつ遊ぶことなので』と言って虐めてあげた。
『はぁ…ぁんっ。ご主人様…せめてご奉仕したいです。させてください』そう言いながら恋しそうにフェラをしてくれる兄。
そんな兄がたまらなく可愛くて、つい我慢しきれず顔にかけてしまったのだけど、その時のうっとりとした顔がまた一段と可愛くて身悶えそうになった。
白濁に塗れる兄に興奮してその後結局抱いてしまったものの、兄はやったとばかりに顔を輝かせ、物凄く嬉しそうに抱かれていたから、もしかしたら確信犯だったのかもしれない。
まあマンネリ防止にも繋がったし、快楽に忠実でしたたかな兄も好きだからいいけど。
『ご主人様のこれが一番好きなのっ!もっと、もっとしてぇっ!』と俺が大好きと全身で語る兄は本当に淫乱で可愛くて、『本当にしょうがない兄上』と思いながらも嬉々として陵辱してしまった。
そんな感じで子供達がいる生活にも慣れ、二人はいつの間にか俺の中でしっかり家族の一員になっていた。
時折戸惑うことはあっても兄やリヒター達周囲の者達がそっと手助けしてくれるから、思ったほど困ることもなかったし、不安になることもなく過ごせた。
そんな俺を見つめる兄の目はいつだって温かくて、年々包容力を増している気さえする。
リヒターが言っていたけど、兄もかなり成長したらしい。
それから少しして、在位10周年のパーティーが企画された。
そう言えばそろそろ退位の時期だ。
セドリック王子にツンナガールで連絡をしたら、『退位できるならしてもいい』と言ってもらえたから、そのつもりでアンヌに少しずつ仕事を教えた。
『ロキ陛下がお声掛けくださるなんて!やっと私に構ってくださって嬉しいです!』と喜んでいたけど、ただの仕事の引き継ぎだから。
アンヌは側妃だし、現状兄の仕事も手伝っているから国政についても把握している。
ディオが成人するまでの繋ぎの王として据えるには問題はないだろう。
幸い本人はやる気に満ち溢れているし、行動力もある上に頭も回る人物だから誰も文句は言わないはず。
そうして日々を過ごし、パーティー後に仕事の引継ぎが終わったら退位する旨を伝えて、兄やリヒター達とフォルティエンヌに移住するって宣言したんだけど、何故か皆から全力で引き留められた。
「聞いていません!聞いていませんわ?!」
そう言えばアンヌには何も言ってなかったな。
すっかり自分の中では決定事項だったから、言ったつもりになっていた。
反省反省。
でも察してくれてもよかったのに。
「「ロキお父様!行かないで!」」
俺としてはアンヌではなく子供達の引き留めの方に困ってしまった。
「「いい子にする!いい子にするからぁっ!うわぁああぁん!捨てないでぇえっ!!」」
ディアだけでなく、最近大人びてきたディオまでそう言いながら泣きついてきたから、とても強行できそうになかったのだ。
別に捨てるとかそういう気はないし、いつでも遊びに来ていいんだけどと言ったけど、ヤダヤダと必死に首を振られてしまった。
アンヌや周囲からも子供達が成人するまではと必死に引き留められて、兄からも『ロキ、今回は諦めろ』と言われてしまった。
やっと兄との生活を満喫できると思ったのにガッカリだ。
でも子供達を泣かせてしまったのだけはちょっと胸が痛くて、可哀想だったなと反省したからちゃんと謝って渋々引き下がった。
その後その時の愚痴をセドリック王子に聞いてもらったら、物凄く楽しげに笑われながら『やっぱりな』と言われてしまった。
どうやら予想通りの展開だったらしい。
「カリンの子を作った時点で、お前の計画は頓挫したも同然だっただろう?」
『ちょっと考えたらわかるだろうに』と言われて、ついムクれてしまう。
しかもそのついでに、ディアをブルーグレイに嫁がせたくなったら言って来いとも言われた。
なんでもアルメリア姫が乗り気なんだとか。
アルフレッドはゴッドハルトのトルセン陛下の娘を是非嫁にと言ってるらしいし、絶対ではないらしいけど。
正直ミラルカからもレトロンからもアンシャンテからもディアを嫁にと言われているから、本人に丸投げしたいところだ。
大臣達は『尊いガヴァムの王族の血を外に出すなんて』と渋っていたが、『まあ同じ轍を踏んでまた困りたいなら好きにやればいいと思う。それにしても、嬉々として自分達で自分の首を絞めにかかるなんて、皆本当にドMだな。まあ知ってたけど』なんて人ごとのように溢したら『ロキ陛下ぁあああっ!』って泣かれてしまった。
まあそのせいで同じ轍は踏まないとばかりに緊急会議が開かれて、これから色々法律的に整理して結婚式も他国から花嫁を迎える場合はガヴァム式にこだわらないようにしようという意見や、他国でも王族になら外に出すのはあり等々皆で話し合って決めていくことに。
その辺りは時代に合わせて変えていって欲しいと思う。
兄そっくりなディアだから、幸せにしてくれる相手を本人の意思で自由に選んで、この先も笑顔で暮らしていってくれれば俺としては嬉しい。
ちなみにディオの相手は今のところミュゼの娘になる可能性が高いけど、本人に聞いたらエメラルダ夫人の娘に恋しているようだったから、そちらはそれとなく手助けしてやれればいいなと思っている。
ディオより少し年上だけど、きっとなんとかなるだろう。
「はぁ…退位して、毎日兄上と一日中イチャイチャしたかったな。もうやる気が出ない…」
思わず仕事中にそうこぼしたら、何故か周囲がサッと動いてくれて、退位しないならひと月兄と旅行に行ってきていいと言ってくれた。
即位十周年のお祝いだから構わないらしい。
その話を聞いて俺は喜び勇んで道具を揃え、すぐさま旅行の計画を立てた。
場所はフォルティエンヌの屋敷だ。
「ロキ。そんなに急がなくても…」
「だって兄上!一か月ですよ?こんなに長く兄上を独り占めできるなんて初めてなので嬉しくて…」
「良かったですね。ロキ様」
「ああ!四人でも楽しみたいな」
「いいですね。ロキ陛下のお望みのままに」
リヒターとカークも同伴してくれるし、楽しみで仕方がない。
そうして旅行に出掛けたのだけど、そのせいで余計に退位の時期が有耶無耶になって、結局ディオが成人して結婚する日まで退位できなくなってしまった。
でもまあ旅行のお陰でモチベーションは上がったし、結果的に悪くはない日々を送れたように思う。
いずれにせよ退位後の残りの人生は予定通り兄とのんびり過ごせるのだし、俺としては文句はない。
「兄上。愛しています」
ずっと約束を違えず変わらぬ愛を与え続けてくれる兄に、俺の変わらぬ愛をこれからも返し続けたい。
二人の幸せな人生はきっと死ぬまで続くだろう。
そんなことを考えながら、俺は全幅の信頼を込めた瞳で愛しい兄を見つめたのだった。
****************
※時間をかけてロキとの信頼を築いたカリン。
そんなカリンをロキが疑う日はもうないよというお話でした。
最後までお付き合いくださった皆様。
スピンオフにもかかわらず二人の幸せをここまで書けたのは、偏に二人を見守ってくださった読者の皆様のお陰だと思います。
本当にありがとうございました(^^)
名前はディオとディア。
何故か名づけは一週間という期限を切って公募されていた。
そんな中、なんでもガヴァムの兄妹神の名からとったこの名が一番人気だったのだとか。
後から何故公募にしたのか聞いたら、アンヌの案だったらしい。
こうすることで国民に愛される子供達になって欲しかったと。なるほど。
まあセカンドネームは俺と兄が決めたし、別にいいけど。
赤ちゃんはとっても小さくてフニャフニャしているから、なんだか触るのが怖い。
でも兄が子育てに積極的で、俺に誘いをかけてくるから一応頑張って参加してみることに。
兄的には子育てを通して普通の家族というものを俺に教えたいらしい。
これにはリヒターやカークも特に反対はしてこなくてどちらかというと協力的だ。
アンヌは何故か『私が正しく母の愛をお教えいたしますわ!』と張り切っていたけど、どう見てもリヒターやカークの方がアンヌより子育て上手だと思う。
「陛下。抱き方はこうですよ。できるだけ優しく包んであげてください」
「陛下!抱っこは首さえ固定したら適当でも大丈夫ですわ!やってみてくださいませ!」
「アンヌ、煩い。リヒター。これで合ってるか?」
「ええ。大丈夫です」
「ロキ様!ミルクあげてみますか?温度調整してきましたよ!人肌です」
「……じゃあ」
「陛下!ほらほら!こうですわ、こう!よーしよしよし。可愛いでちゅね~」
「アンヌ、煩い。カーク、これでいいかな?」
「ええ。大丈夫ですよ。最後は優しく背中を叩いてゲップを出させてあげてくださいね」
「ロキ。着替えを一緒にやってみないか?」
「はい。折角だし水色でお揃いにしましょうか」
「陛下!ダメですわ!ディアは女の子ですし、レースがたっぷりで可愛いこちらのピンクがお勧めです!」
「アンヌ、邪魔だ。兄上、お揃いと言ってもちょっとだけデザイン違いみたいです。こっちとこっちどっちにします?」
「……こっちかな」
「じゃあ俺はこちらで」
「うぅ…陛下。私の意見も聞いて欲しいですわ」
「邪魔」
兄との時間を邪魔しないで欲しい。
そうしてある程度子供達が大きくなったところで、子育てアドバイザーとしてアンシャンテからエメラルダ夫人を呼び寄せた。
手紙を出したら喜んで引き受けてくれたのだ。
光栄だと言ってすぐに返事ももらえたから、笑顔で出迎え、子供も一緒に今は王宮に部屋を用意し暮らしてもらっている。
屋敷の管理は信用できる者に任せてきたから、時折帰るくらいで特に問題はないとのこと。
教育係はリヒターとカークが真っ先に手を上げてくれたし、問題はない。
他にも立候補者はいるらしいから、吟味した上で補佐的につけるよう伝えておいた。
成長した子供達は可愛いの一言だ。
愛情をたっぷり受け取ってすくすく育ってくれている。
ディオはヒューガー家の血が濃いのかどこか見た目がリヒターに似ていて、俺にとっては癒し系の息子だ。
性格も真面目だし、学ぶ意欲も凄い。
このまま真っ直ぐ育てばきっと将来は立派な王になってくれるだろう。
ディアは兄に似た顔立ちで、おしゃまで凛々しい顔立ちの娘。
幼いのに利発で弁が立つところは昔の兄そっくりで、見ていてなんだかとても懐かしい。
こんなにそっくりだと将来お嫁に出したくないなと思ってしまう。
二人とも自分達の両親は兄とアンヌの二人だと認識はしているものの、兄もアンヌも俺の妃だからという理由で俺のことを父親認定してくれている。
ロキお父様、カリンお父様、アンヌお母様という感じだ。
そんな二人はどちらも俺に懐いてくれている。
ただ戸惑うことも多い上に、答えられないことも多々あった。
「ロキお父様はどこの別荘が一番お勧めですか?」
「ロキお父様は幼い頃、どんな遊びをされましたか?」
この質問なんてその筆頭だ。
別荘はお勧めできるほど知らないし、遊びだってそう言えば記憶にある限りしたことがなかった。
母の詰め込み教育が大変で、昼間は常に睡魔と戦っていたし。
普通はどんな遊びをするものなんだろう?
「……遊んだこと、なかったかも」
でも困ってそうポツリと溢したら、子供達はパッと目を輝かせて、それなら自分達とお揃いだから一緒に遊びましょうと笑顔で誘ってくれた。
優しい。
誘ってくれる遊びは多分カークが教えたんだろうなというようなものが多い。
遊びに見せかけた暗部の技だ。
聞けばカークの実家は暗部の名門ということもあって、子供の頃から遊びにそういう技術を取り入れているらしい。
実に面白いと思う。
「ロキお父様!早く早く!投げてください!」
今日は木にぶら下げた的にボールを当てる遊びだ。
確実に当てられるようになったら、ボールをナイフに替えるらしい。
キャッキャッと楽しく笑う子供達と一緒に少しだけ遊んで仕事に戻った。
ちなみに兄はこういう遊びには付き合ってくれないらしく、子供達からは今度俺から誘ってくれと言われた。
でも兄は一度だけ付き合った後はあまり付き合ってくれなかったから、その分俺が遊んであげることに。
そしてもう少し大きくなったところでやっと勉強や剣の稽古に付き合ってくれるようになったのだけど、どうしてだろう?
そう思って訊いたら、単純に双子達と遊ぶのは退屈だったからという理由らしい。
(退屈させたら俺もつれなくされるのかな?)
それは嫌だ。
そう思ったから、その日の夜は大人の玩具でいっぱい兄と遊ぶことにした。
『俺との遊びは退屈じゃないですか?』と聞いたけど兄は『ロキとの閨が退屈だったことなんて一度もないだろう?!』と言ってくれる。
そのうち『玩具だけは嫌っ!お願いっ、お願いっ!もう抱いてぇっ!』って懇願されたけど、『今日の趣旨は玩具で満足させつつ遊ぶことなので』と言って虐めてあげた。
『はぁ…ぁんっ。ご主人様…せめてご奉仕したいです。させてください』そう言いながら恋しそうにフェラをしてくれる兄。
そんな兄がたまらなく可愛くて、つい我慢しきれず顔にかけてしまったのだけど、その時のうっとりとした顔がまた一段と可愛くて身悶えそうになった。
白濁に塗れる兄に興奮してその後結局抱いてしまったものの、兄はやったとばかりに顔を輝かせ、物凄く嬉しそうに抱かれていたから、もしかしたら確信犯だったのかもしれない。
まあマンネリ防止にも繋がったし、快楽に忠実でしたたかな兄も好きだからいいけど。
『ご主人様のこれが一番好きなのっ!もっと、もっとしてぇっ!』と俺が大好きと全身で語る兄は本当に淫乱で可愛くて、『本当にしょうがない兄上』と思いながらも嬉々として陵辱してしまった。
そんな感じで子供達がいる生活にも慣れ、二人はいつの間にか俺の中でしっかり家族の一員になっていた。
時折戸惑うことはあっても兄やリヒター達周囲の者達がそっと手助けしてくれるから、思ったほど困ることもなかったし、不安になることもなく過ごせた。
そんな俺を見つめる兄の目はいつだって温かくて、年々包容力を増している気さえする。
リヒターが言っていたけど、兄もかなり成長したらしい。
それから少しして、在位10周年のパーティーが企画された。
そう言えばそろそろ退位の時期だ。
セドリック王子にツンナガールで連絡をしたら、『退位できるならしてもいい』と言ってもらえたから、そのつもりでアンヌに少しずつ仕事を教えた。
『ロキ陛下がお声掛けくださるなんて!やっと私に構ってくださって嬉しいです!』と喜んでいたけど、ただの仕事の引き継ぎだから。
アンヌは側妃だし、現状兄の仕事も手伝っているから国政についても把握している。
ディオが成人するまでの繋ぎの王として据えるには問題はないだろう。
幸い本人はやる気に満ち溢れているし、行動力もある上に頭も回る人物だから誰も文句は言わないはず。
そうして日々を過ごし、パーティー後に仕事の引継ぎが終わったら退位する旨を伝えて、兄やリヒター達とフォルティエンヌに移住するって宣言したんだけど、何故か皆から全力で引き留められた。
「聞いていません!聞いていませんわ?!」
そう言えばアンヌには何も言ってなかったな。
すっかり自分の中では決定事項だったから、言ったつもりになっていた。
反省反省。
でも察してくれてもよかったのに。
「「ロキお父様!行かないで!」」
俺としてはアンヌではなく子供達の引き留めの方に困ってしまった。
「「いい子にする!いい子にするからぁっ!うわぁああぁん!捨てないでぇえっ!!」」
ディアだけでなく、最近大人びてきたディオまでそう言いながら泣きついてきたから、とても強行できそうになかったのだ。
別に捨てるとかそういう気はないし、いつでも遊びに来ていいんだけどと言ったけど、ヤダヤダと必死に首を振られてしまった。
アンヌや周囲からも子供達が成人するまではと必死に引き留められて、兄からも『ロキ、今回は諦めろ』と言われてしまった。
やっと兄との生活を満喫できると思ったのにガッカリだ。
でも子供達を泣かせてしまったのだけはちょっと胸が痛くて、可哀想だったなと反省したからちゃんと謝って渋々引き下がった。
その後その時の愚痴をセドリック王子に聞いてもらったら、物凄く楽しげに笑われながら『やっぱりな』と言われてしまった。
どうやら予想通りの展開だったらしい。
「カリンの子を作った時点で、お前の計画は頓挫したも同然だっただろう?」
『ちょっと考えたらわかるだろうに』と言われて、ついムクれてしまう。
しかもそのついでに、ディアをブルーグレイに嫁がせたくなったら言って来いとも言われた。
なんでもアルメリア姫が乗り気なんだとか。
アルフレッドはゴッドハルトのトルセン陛下の娘を是非嫁にと言ってるらしいし、絶対ではないらしいけど。
正直ミラルカからもレトロンからもアンシャンテからもディアを嫁にと言われているから、本人に丸投げしたいところだ。
大臣達は『尊いガヴァムの王族の血を外に出すなんて』と渋っていたが、『まあ同じ轍を踏んでまた困りたいなら好きにやればいいと思う。それにしても、嬉々として自分達で自分の首を絞めにかかるなんて、皆本当にドMだな。まあ知ってたけど』なんて人ごとのように溢したら『ロキ陛下ぁあああっ!』って泣かれてしまった。
まあそのせいで同じ轍は踏まないとばかりに緊急会議が開かれて、これから色々法律的に整理して結婚式も他国から花嫁を迎える場合はガヴァム式にこだわらないようにしようという意見や、他国でも王族になら外に出すのはあり等々皆で話し合って決めていくことに。
その辺りは時代に合わせて変えていって欲しいと思う。
兄そっくりなディアだから、幸せにしてくれる相手を本人の意思で自由に選んで、この先も笑顔で暮らしていってくれれば俺としては嬉しい。
ちなみにディオの相手は今のところミュゼの娘になる可能性が高いけど、本人に聞いたらエメラルダ夫人の娘に恋しているようだったから、そちらはそれとなく手助けしてやれればいいなと思っている。
ディオより少し年上だけど、きっとなんとかなるだろう。
「はぁ…退位して、毎日兄上と一日中イチャイチャしたかったな。もうやる気が出ない…」
思わず仕事中にそうこぼしたら、何故か周囲がサッと動いてくれて、退位しないならひと月兄と旅行に行ってきていいと言ってくれた。
即位十周年のお祝いだから構わないらしい。
その話を聞いて俺は喜び勇んで道具を揃え、すぐさま旅行の計画を立てた。
場所はフォルティエンヌの屋敷だ。
「ロキ。そんなに急がなくても…」
「だって兄上!一か月ですよ?こんなに長く兄上を独り占めできるなんて初めてなので嬉しくて…」
「良かったですね。ロキ様」
「ああ!四人でも楽しみたいな」
「いいですね。ロキ陛下のお望みのままに」
リヒターとカークも同伴してくれるし、楽しみで仕方がない。
そうして旅行に出掛けたのだけど、そのせいで余計に退位の時期が有耶無耶になって、結局ディオが成人して結婚する日まで退位できなくなってしまった。
でもまあ旅行のお陰でモチベーションは上がったし、結果的に悪くはない日々を送れたように思う。
いずれにせよ退位後の残りの人生は予定通り兄とのんびり過ごせるのだし、俺としては文句はない。
「兄上。愛しています」
ずっと約束を違えず変わらぬ愛を与え続けてくれる兄に、俺の変わらぬ愛をこれからも返し続けたい。
二人の幸せな人生はきっと死ぬまで続くだろう。
そんなことを考えながら、俺は全幅の信頼を込めた瞳で愛しい兄を見つめたのだった。
****************
※時間をかけてロキとの信頼を築いたカリン。
そんなカリンをロキが疑う日はもうないよというお話でした。
最後までお付き合いくださった皆様。
スピンオフにもかかわらず二人の幸せをここまで書けたのは、偏に二人を見守ってくださった読者の皆様のお陰だと思います。
本当にありがとうございました(^^)
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