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206.※花嫁の打診⑫ Side.カリン
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※前話を読まなかった方への軽い説明。
ロキに気持ちよくしてもらえて大満足なアンヌはロキにアプローチを始めましたが、全く相手にされません。
でもそのアプローチの日々にストレスが溜まったロキは勉強時間の際にリヒターに癒してもらっていました(ただの抱擁)。
それをアンヌが責め、カリンが地雷を踏んで…という流れです。
ではどうぞ↓
****************
ロキを怒らせて部屋から追い出されてしまった。
カーク曰く、今ロキはアンヌ嬢のせいでストレスが溜まっているからあれくらい許容すべきとのこと。
そんなにストレスが溜まっているならアンヌ嬢への接し方を変えればいいのに。
ロキが無視するから多分アンヌ嬢も多少強引になるんだと思う。
それで過剰に付きまとわれた方が俺が嫌だし、少しは構ってやって欲しい。
それがイコール癒しになるならいいと思うのだが…。
「カリン陛下。カリン陛下の癒しってどんなものですか?」
「え?こう…ふんわりした和む感じだが?」
「それは女性的な?」
「そうだ」
素直に肯定したらカーライルから呆れたような溜息を吐かれた。
「あのですね、カリン陛下。ロキ様にとっての女性像ってただでさえ最悪なんですよ。心身共に甚振って蔑んで無能呼ばわりしてくるクズ達って感じの印象がどうしても強いわけです」
「うっ…」
確かに言われてみればその通りかもしれない。
「そんなイメージの中、例外はあると思えたのは奇跡だと思うんです」
「ま、まあそうだな」
それはキャサリン妃やアルメリア姫達に感謝したいところだ。
「まあだからこそロキ様が側妃を迎えたこと自体、ある種奇跡的ですよね?」
「ああ」
それはその通りだと思う。
結局は俺が抱くわけではあるが、宰相達から望まれたとはいえ子作りに関して考えてくれたことに関しても奇跡だろう。
「これ以上をロキ様に求めないでください」
だからカーライルが言いたいこともわからなくはない。
「大体ですね、ロキ様が求めてる癒しを彼女は何一つ与えられないと思いますよ?」
「ロキが求めてる癒し?」
「そうですよ。温かな腕の中に包まれたい、笑顔で他愛のない話をしたい、甘やかしてほしい、どんな自分でも受け入れてほしい、そういうのがロキ様が真っ先に求めているものなんです」
カーライルがきっぱりと言い放つ。
「子供の時に与えてもらえなかったそれらを一つずつ大事に満喫してるのに、奪いにかかるなんて俺としては言語道断だと思うんですが、カリン陛下はどう思われますか?」
「うぅ…」
確かに言われてみればその通りだ。
ロキが求めているのは一般的な癒しとは大きく違う。
俺はそれをわかっているようで少しわかっていなかった。
その視点で見ると、確かに彼女は小柄でロキを包んでやることはできない。
他愛のない話を笑顔でできるほどの信頼もまだ全然築けてはいない。
だからこそ甘やかすということもロキが警戒してできないし、どんなロキでも受け入れるというほどロキの何を知っているわけでもないからできるはずがない。
そして俺はその中の三つはできても包み込んでやることだけはできない。
ロキに抱かれる時は良いけれど、こういう時困るのが同じくらいの体格という点だ。
「く、悔しい……」
ロキをすっぽり包めるようになりたかった。
でもこのサイズ感が抱きやすくて好きとも言われているから、物凄いジレンマだ。
ここはその点だけでもリヒターに譲るべきだろうか?
そして仕事にとりかかったはいいもののやっぱり気になって仕方がない。
だから勉強時間が終わった頃合いを見計らって再度ロキのところに行こうと思っていたのだが、その前にアンヌ嬢がこちらにやってきて、一緒に謝りに行きたいと言われた。
確かに最初にやらかしたのはアンヌ嬢だし、気持ちはわかる。
だから一緒に謝りに行くことにしたのだけれど────。
「視察に行った?」
一足先にロキは外に視察へと出てしまったらしい。
これはまた夜まで帰ってこないパターンではないだろうか?
「また置いて行かれた…」
これでは落ち込むなという方がおかしい。
そんな俺をアンヌ嬢が励ましてくれて、ついでに慰めてくれた。
やっぱり彼女は癒し系だと思う。
抱き寄せられて柔らかい身体に癒されるのを感じた。
そして帰ってきたロキに二人で謝りに行ったのだけど、なんとアンヌ嬢はちゃんとリヒターにも謝罪を入れていた。
なかなかできることではない。
これにはロキも少しほだされたのか、一応許すとは言っていた。
でも腹は立っていたらしく、その後怒りながらこんなことを言ってきた。
「兄上。暫く優しく優しく抱いてあげるので…しっかりと反省してください」
そんなことを言ってこられて、よくわからないものの『抱いてもらえるならまあいいか』と最初は思ったのだけど────。
「やだ!ロキ!激しいのが好きなの!優しくは嫌ぁっ!」
「ダメですよ。俺は兄上を抱いている時も癒されてたのに、あんな事を言ってくるんですから。お仕置きです。ふふっ。今日から暫く俺の優しさを存分に発揮してあげますから、好きなだけ堪能してくださいね」
「うぅっ…嫌っ嫌だっ!俺が悪かったからっ!ご主人様っ!許してっ!許してぇっ!もうあんな事言わないからぁっ!」
焦らしテクに磨きをかけて、仲直りのあれとはまた全然違う、恐ろしいほどのもどかしさを感じるセックスに持ち込まれてしまった。
愛撫と舌技で体中の官能を引き出しつつ時折指で適度な刺激を与えられるのに、中に挿れられた俺が大好きなモノはいつものようには好きな刺激を与えてはくれない。
焦らすようにゆっくりゆっくり往復されるだけだ。
「ロキッ、ロキッ!お願い!いやぁあああっ!」
こんな風に焦らされ続けるのはある意味地獄だ。
正直言ってすぐさま懇願する羽目になった。
なのにロキは冷たくて、なかなか許してくれない。
「うっ、あっ、ひゃぁんっ!」
「今日は優しく優しく前立腺を可愛がってあげますね、兄上」
ツププと沈められるプジーにホッとしたのも束の間。
「ひうぅっ!両側から虐めてるのに、なんでぇっ?!イキたい!イキたいぃっ!」
「ふふっ…このちょっと加減する感じがいいでしょう?イけそうでイけない絶妙な感じを沢山味わってください」
「酷いぃいっ!もっと、あっ、もうちょっとだけでいいから!お願いだからぁっ!あっあっ…揺らしてっ!嬲ってっ!掻き混ぜてぇえっ!」
泣きながら毎夜ねだること7日。
言葉責めをされながら与えられない刺激を自分で脳内補完させていたら、想像だけでイクようになってしまった。
最悪だ。
「兄上。すっかり想像だけでイッちゃうようになりましたね。こういうのを想像イキって言うらしいですよ?ふふっ」
「あ…あぁん…。ごひゅじんしゃまの…好きぃ…」
「そろそろ許してあげるので、今度は想像じゃなく俺のモノで沢山気持ちよくなって溺れてください」
その後許してもらえた後のロキとの閨は蕩けるほどに気持ち良くて、完全に3日くらい快楽堕ちしてしまうほど最高だったけど、もう優しいだけの閨なんて絶対にお断りだし、お仕置きは滅茶苦茶に犯される方向にしてもらいたいと思う。
ついでに言うと、それ以降俺は自分を取り繕うのをあっさり諦め、アンヌ嬢が来る以前のようにロキと接するようになった。
結局のところ、それが一番ロキの機嫌がいいと気付いたから。
ちなみにアンヌ嬢もそれなりにロキから報復はされていた。
彼女の場合は求める閨を与えられないこと。
どんなにロキを誘っても一切相手にされず、閨にも全く呼んでもらえない。
挙句ロキは彼女の目の前でリヒターを閨に誘う始末。
本当に酷い。
リヒターは困った顔をしつつも純粋に嬉しそうで、ちょっと腹立たしかったが、俺も反省はしたから反対はしなかった。
気持ちいいのは気持ちいいし、俺が余計なことさえ言わなければ基本二人揃って俺を抱くだけだから問題はない。
そうやって日々を送っていたら、何を思ったのか彼女の行動が変わった。
普通なら心折れて離縁を申し入れるところだろう。
なのに彼女は諦めない不屈の精神で、いきなり剣を教えてくれと俺に言ってきたのだ。
どうせただの思い付きだろうとは思ったものの、一応丁寧に剣の型を教えてみることに。
すると朝晩剣を手に鍛錬を始めたではないか。
これには正直驚きを隠せなかった。
そしてすぐに諦めるだろうという誰しもの予想を裏切って、彼女は朝晩の鍛錬をすっかり日課に取り入れてしまう。
「剣が振れるようになれば護衛と称してロキ陛下のお傍に居やすくなりますわ!」
(ロキの周りにいる奴はほぼ全員剣は振れるんだが?!)
確かにその中に一人だけ女性で剣が振れたら目立つかもしれないが、アピールポイントがズレている気がしてならない。
何がどうしてそうなったと思わなくはないが、努力を否定するのもよくないと思い一応見守った。
けれど当然の如くロキのつれない態度は何一つ変わらなかった。
これには流石にリヒターも同情したのか、俺に相談を持ち掛けてきたほどだ。
曰く、そろそろロキに取り成してやってはどうかとのこと。
まあ俺も一応時々はアンヌ嬢を少しは気にかけてやってくれと言っては来たが、梨の礫なのだ。
どうしようもない。
だから正直にそう口にしたら、二人がかりで説得すればいけるかもしれないとリヒターが言ってきたから、それならと場を改めてロキに提言してみることに。
「物凄くどうでもいいし、全くやる気が起きないんですけど」
「そう言うな。彼女もお前に少しでもアピールしようと剣を覚えようと頑張ってるんだぞ?」
「そんなもの、アピールしようと頑張っているのは彼女だけじゃないでしょう?俺の犬と称する者達は大抵何かしら頑張ってますよ?」
「でも彼女は女性だ。元々剣を振っていた者達とは全然違う。そこを少しは汲んでやって欲しい」
「…………」
「陛下。このままズルズル引きずるのもよくありません。どうぞ一度気持ちの切り替えをお願いします」
リヒターもロキの様子を見ながら後押ししてくれた。
だからその夜、彼女を閨に呼びはしてくれたのだが────。
「気分が乗れば混ぜてあげるので、そこで見ていてくださいね?」
このドSな弟は、嬉々としてやってきたアンヌ嬢に笑顔でそう言い放ち、ベッドの上で俺を滅茶苦茶に抱いた。
「あっあっ!ロキッ!やめてっ!恥ずかしいぃっ!」
「大好きなくせに」
そう言いながら全く性癖を隠すことなく事に及ぶロキ。
普通の令嬢ならもうこの時点で無理じゃないだろうか?
いっそ全部曝け出して、向こうから逃げ出させよう作戦か?
やることが酷い。
(ロキの馬鹿!このドS!)
なのにアンヌ嬢はこちらをどこか羨ましそうな目で見ながら興奮して息を荒げていた。
お預けを食らった俺と同じような感じだ。
そんな彼女に見られているのがまた恥ずかしく感じられて、いつも以上に乱れまくった気がする。
それから興が乗ったところでロキがアンヌ嬢に俺の上に跨れと告げた。
前戯も何もしてないだろうに、なんて鬼畜なんだ。
これには流石のアンヌ嬢も半泣きになって叫んでいた。
「私もロキ陛下に可愛がられたいです!ご慈悲を!」
(何か間違ってないか?!)
でもロキ的にそのセリフを聞いて何故か気が変わったらしく、ちょっとだけ手伝って感じさせた後、俺に跨らせていた。
とは言え酷いのは酷い。
(本当に身内に対する優しさと比べて、ほんのちょっとしか優しくないな?!)
こんな扱いを受けたし、きっとアンヌ嬢も諦めがついただろう。
これで子ができなかったらもう諦めるはず。
なのに彼女の不屈の精神は凄くて、ここでも子ができなかったにもかかわらず、諦めなかった。
そのド根性は思わず見習いたくなったほどだ。
何が彼女をそうさせるのだろうか?
ロキに意地でも自分を認めさせてやると言わんばかりに張り切り、貴族女性達の意識改革まで成し遂げてしまった彼女。
もうこんな姿を見せられたら俺もうじうじ悩んでばかりはいられない。
時には考えてばかりいるよりも勢いが大事なのだと思い知った。
彼女の場合、本当にそのうちロキに認められるんじゃないかと思い始めて、俺も負けるかとばかりにあれこれなりふり構わず頑張ることに。
手始めに、これまで保守的に考えて手つかずだった改革案を積極的に検討して取り掛かり始めることにした。
国政も落ち着いているし、メルケ国の情勢は気にはなるものの、二の足を踏むほどでもない。
やるなら今だろう。
彼女の存在が俺にとっていい発奮材料になったと思う。
言って見れば彼女はリヒターとは別の意味でのライバルだ。
切磋琢磨できる好敵手のようなものかもしれない。
ロキはそんな風に頑張り出した俺に『兄上素敵です。カッコいい』とうっとり言ってくれるが、彼女は全く応援されてないのに頑張ってるからな?!
結果的に国としてまた発展していくことになるのだが、そんなプラス効果をもたらした彼女に褒美くらいちゃんとやれとロキに言ってやったら、やっと普通に閨に呼んだ。
「まあ兄上の魅力アップに貢献してくれたようなので、今日は特別です」
そう言いながら玩具で満足させ、『兄上。今日は兄上のモノでの可愛がり方を教えてあげます』と言って俺にあれこれアドバイスしながら彼女を抱かせた。
(なるほど。こうしたら良かったのか)
とっても勉強になったから、今度ロキを抱く時にも活用しようと俺は上機嫌でその日の閨を終えた。
そして三度目にしてやっと宰相達念願の子宝を授かることができたのだが、ロキはこの時点で興味はなさそうな感じだった。
でもその後産まれてきた赤子を見てそれなりに感動していたように見えたし、これからゆっくり家族を感じさせてやりたいと思う。
ロキはもう昔のロキとは違う。
俺が居て、リヒターやカーライル、闇医者や裏稼業の者達が居る。
それだけではなく、他にも沢山の者達がロキを大事に思ってる。
それはロキ自身が築き上げたものだ。
これからの人生はずっと長く続いていて、それは決して辛いものではなく、皆が手を差し伸べてくれる優しい未来なのだと教えてやりたい。
「ロキ。子が産まれた事で変わることもあるかもしれないが、だからと言ってそれがお前の存在を脅かすようなことには繋がらない。俺と一緒に、お前自身の幸せをこれからも沢山沢山積み重ねていこう。お前の隣にはいつも俺が側にいてやる。約束だ」
子が産まれた日の夜。
酒場から帰ってきたロキにそう言ってやったら、ロキは泣いていた。
どうやら子が産まれたことで、またお役御免とばかりに冷遇される可能性もあるかもと考えていたようだ。
昔の俺なら『祝い酒を飲みに行ったんだろう』程度にしか思わなかったと思うけど、今は『気を紛らわせに行ったんだろう』とわかるから、浮かれ過ぎずちゃんと話して本当に良かった。
すぐに不安定になる困ったロキだが、そんなロキも俺が包んでやれるようにもっと成長していきたいと思う。
永遠の愛を、俺の愛する弟に。
「ロキ。一生をかけて俺がお前を幸せにすると言った言葉に嘘はない。だから…この先のお前の人生も全部俺にくれ」
そう言ってそっと抱き締めると、ロキは『もらってください』と言ってポロポロと涙を零しながら、俺にギュッと抱き着いた。
****************
※心機一転頑張るぞと思っていた矢先に愛するカリンから言葉がもらえて、ロキの胸はいっぱいに。
きっと幸せな人生を謳歌できるはず。
ロキに気持ちよくしてもらえて大満足なアンヌはロキにアプローチを始めましたが、全く相手にされません。
でもそのアプローチの日々にストレスが溜まったロキは勉強時間の際にリヒターに癒してもらっていました(ただの抱擁)。
それをアンヌが責め、カリンが地雷を踏んで…という流れです。
ではどうぞ↓
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ロキを怒らせて部屋から追い出されてしまった。
カーク曰く、今ロキはアンヌ嬢のせいでストレスが溜まっているからあれくらい許容すべきとのこと。
そんなにストレスが溜まっているならアンヌ嬢への接し方を変えればいいのに。
ロキが無視するから多分アンヌ嬢も多少強引になるんだと思う。
それで過剰に付きまとわれた方が俺が嫌だし、少しは構ってやって欲しい。
それがイコール癒しになるならいいと思うのだが…。
「カリン陛下。カリン陛下の癒しってどんなものですか?」
「え?こう…ふんわりした和む感じだが?」
「それは女性的な?」
「そうだ」
素直に肯定したらカーライルから呆れたような溜息を吐かれた。
「あのですね、カリン陛下。ロキ様にとっての女性像ってただでさえ最悪なんですよ。心身共に甚振って蔑んで無能呼ばわりしてくるクズ達って感じの印象がどうしても強いわけです」
「うっ…」
確かに言われてみればその通りかもしれない。
「そんなイメージの中、例外はあると思えたのは奇跡だと思うんです」
「ま、まあそうだな」
それはキャサリン妃やアルメリア姫達に感謝したいところだ。
「まあだからこそロキ様が側妃を迎えたこと自体、ある種奇跡的ですよね?」
「ああ」
それはその通りだと思う。
結局は俺が抱くわけではあるが、宰相達から望まれたとはいえ子作りに関して考えてくれたことに関しても奇跡だろう。
「これ以上をロキ様に求めないでください」
だからカーライルが言いたいこともわからなくはない。
「大体ですね、ロキ様が求めてる癒しを彼女は何一つ与えられないと思いますよ?」
「ロキが求めてる癒し?」
「そうですよ。温かな腕の中に包まれたい、笑顔で他愛のない話をしたい、甘やかしてほしい、どんな自分でも受け入れてほしい、そういうのがロキ様が真っ先に求めているものなんです」
カーライルがきっぱりと言い放つ。
「子供の時に与えてもらえなかったそれらを一つずつ大事に満喫してるのに、奪いにかかるなんて俺としては言語道断だと思うんですが、カリン陛下はどう思われますか?」
「うぅ…」
確かに言われてみればその通りだ。
ロキが求めているのは一般的な癒しとは大きく違う。
俺はそれをわかっているようで少しわかっていなかった。
その視点で見ると、確かに彼女は小柄でロキを包んでやることはできない。
他愛のない話を笑顔でできるほどの信頼もまだ全然築けてはいない。
だからこそ甘やかすということもロキが警戒してできないし、どんなロキでも受け入れるというほどロキの何を知っているわけでもないからできるはずがない。
そして俺はその中の三つはできても包み込んでやることだけはできない。
ロキに抱かれる時は良いけれど、こういう時困るのが同じくらいの体格という点だ。
「く、悔しい……」
ロキをすっぽり包めるようになりたかった。
でもこのサイズ感が抱きやすくて好きとも言われているから、物凄いジレンマだ。
ここはその点だけでもリヒターに譲るべきだろうか?
そして仕事にとりかかったはいいもののやっぱり気になって仕方がない。
だから勉強時間が終わった頃合いを見計らって再度ロキのところに行こうと思っていたのだが、その前にアンヌ嬢がこちらにやってきて、一緒に謝りに行きたいと言われた。
確かに最初にやらかしたのはアンヌ嬢だし、気持ちはわかる。
だから一緒に謝りに行くことにしたのだけれど────。
「視察に行った?」
一足先にロキは外に視察へと出てしまったらしい。
これはまた夜まで帰ってこないパターンではないだろうか?
「また置いて行かれた…」
これでは落ち込むなという方がおかしい。
そんな俺をアンヌ嬢が励ましてくれて、ついでに慰めてくれた。
やっぱり彼女は癒し系だと思う。
抱き寄せられて柔らかい身体に癒されるのを感じた。
そして帰ってきたロキに二人で謝りに行ったのだけど、なんとアンヌ嬢はちゃんとリヒターにも謝罪を入れていた。
なかなかできることではない。
これにはロキも少しほだされたのか、一応許すとは言っていた。
でも腹は立っていたらしく、その後怒りながらこんなことを言ってきた。
「兄上。暫く優しく優しく抱いてあげるので…しっかりと反省してください」
そんなことを言ってこられて、よくわからないものの『抱いてもらえるならまあいいか』と最初は思ったのだけど────。
「やだ!ロキ!激しいのが好きなの!優しくは嫌ぁっ!」
「ダメですよ。俺は兄上を抱いている時も癒されてたのに、あんな事を言ってくるんですから。お仕置きです。ふふっ。今日から暫く俺の優しさを存分に発揮してあげますから、好きなだけ堪能してくださいね」
「うぅっ…嫌っ嫌だっ!俺が悪かったからっ!ご主人様っ!許してっ!許してぇっ!もうあんな事言わないからぁっ!」
焦らしテクに磨きをかけて、仲直りのあれとはまた全然違う、恐ろしいほどのもどかしさを感じるセックスに持ち込まれてしまった。
愛撫と舌技で体中の官能を引き出しつつ時折指で適度な刺激を与えられるのに、中に挿れられた俺が大好きなモノはいつものようには好きな刺激を与えてはくれない。
焦らすようにゆっくりゆっくり往復されるだけだ。
「ロキッ、ロキッ!お願い!いやぁあああっ!」
こんな風に焦らされ続けるのはある意味地獄だ。
正直言ってすぐさま懇願する羽目になった。
なのにロキは冷たくて、なかなか許してくれない。
「うっ、あっ、ひゃぁんっ!」
「今日は優しく優しく前立腺を可愛がってあげますね、兄上」
ツププと沈められるプジーにホッとしたのも束の間。
「ひうぅっ!両側から虐めてるのに、なんでぇっ?!イキたい!イキたいぃっ!」
「ふふっ…このちょっと加減する感じがいいでしょう?イけそうでイけない絶妙な感じを沢山味わってください」
「酷いぃいっ!もっと、あっ、もうちょっとだけでいいから!お願いだからぁっ!あっあっ…揺らしてっ!嬲ってっ!掻き混ぜてぇえっ!」
泣きながら毎夜ねだること7日。
言葉責めをされながら与えられない刺激を自分で脳内補完させていたら、想像だけでイクようになってしまった。
最悪だ。
「兄上。すっかり想像だけでイッちゃうようになりましたね。こういうのを想像イキって言うらしいですよ?ふふっ」
「あ…あぁん…。ごひゅじんしゃまの…好きぃ…」
「そろそろ許してあげるので、今度は想像じゃなく俺のモノで沢山気持ちよくなって溺れてください」
その後許してもらえた後のロキとの閨は蕩けるほどに気持ち良くて、完全に3日くらい快楽堕ちしてしまうほど最高だったけど、もう優しいだけの閨なんて絶対にお断りだし、お仕置きは滅茶苦茶に犯される方向にしてもらいたいと思う。
ついでに言うと、それ以降俺は自分を取り繕うのをあっさり諦め、アンヌ嬢が来る以前のようにロキと接するようになった。
結局のところ、それが一番ロキの機嫌がいいと気付いたから。
ちなみにアンヌ嬢もそれなりにロキから報復はされていた。
彼女の場合は求める閨を与えられないこと。
どんなにロキを誘っても一切相手にされず、閨にも全く呼んでもらえない。
挙句ロキは彼女の目の前でリヒターを閨に誘う始末。
本当に酷い。
リヒターは困った顔をしつつも純粋に嬉しそうで、ちょっと腹立たしかったが、俺も反省はしたから反対はしなかった。
気持ちいいのは気持ちいいし、俺が余計なことさえ言わなければ基本二人揃って俺を抱くだけだから問題はない。
そうやって日々を送っていたら、何を思ったのか彼女の行動が変わった。
普通なら心折れて離縁を申し入れるところだろう。
なのに彼女は諦めない不屈の精神で、いきなり剣を教えてくれと俺に言ってきたのだ。
どうせただの思い付きだろうとは思ったものの、一応丁寧に剣の型を教えてみることに。
すると朝晩剣を手に鍛錬を始めたではないか。
これには正直驚きを隠せなかった。
そしてすぐに諦めるだろうという誰しもの予想を裏切って、彼女は朝晩の鍛錬をすっかり日課に取り入れてしまう。
「剣が振れるようになれば護衛と称してロキ陛下のお傍に居やすくなりますわ!」
(ロキの周りにいる奴はほぼ全員剣は振れるんだが?!)
確かにその中に一人だけ女性で剣が振れたら目立つかもしれないが、アピールポイントがズレている気がしてならない。
何がどうしてそうなったと思わなくはないが、努力を否定するのもよくないと思い一応見守った。
けれど当然の如くロキのつれない態度は何一つ変わらなかった。
これには流石にリヒターも同情したのか、俺に相談を持ち掛けてきたほどだ。
曰く、そろそろロキに取り成してやってはどうかとのこと。
まあ俺も一応時々はアンヌ嬢を少しは気にかけてやってくれと言っては来たが、梨の礫なのだ。
どうしようもない。
だから正直にそう口にしたら、二人がかりで説得すればいけるかもしれないとリヒターが言ってきたから、それならと場を改めてロキに提言してみることに。
「物凄くどうでもいいし、全くやる気が起きないんですけど」
「そう言うな。彼女もお前に少しでもアピールしようと剣を覚えようと頑張ってるんだぞ?」
「そんなもの、アピールしようと頑張っているのは彼女だけじゃないでしょう?俺の犬と称する者達は大抵何かしら頑張ってますよ?」
「でも彼女は女性だ。元々剣を振っていた者達とは全然違う。そこを少しは汲んでやって欲しい」
「…………」
「陛下。このままズルズル引きずるのもよくありません。どうぞ一度気持ちの切り替えをお願いします」
リヒターもロキの様子を見ながら後押ししてくれた。
だからその夜、彼女を閨に呼びはしてくれたのだが────。
「気分が乗れば混ぜてあげるので、そこで見ていてくださいね?」
このドSな弟は、嬉々としてやってきたアンヌ嬢に笑顔でそう言い放ち、ベッドの上で俺を滅茶苦茶に抱いた。
「あっあっ!ロキッ!やめてっ!恥ずかしいぃっ!」
「大好きなくせに」
そう言いながら全く性癖を隠すことなく事に及ぶロキ。
普通の令嬢ならもうこの時点で無理じゃないだろうか?
いっそ全部曝け出して、向こうから逃げ出させよう作戦か?
やることが酷い。
(ロキの馬鹿!このドS!)
なのにアンヌ嬢はこちらをどこか羨ましそうな目で見ながら興奮して息を荒げていた。
お預けを食らった俺と同じような感じだ。
そんな彼女に見られているのがまた恥ずかしく感じられて、いつも以上に乱れまくった気がする。
それから興が乗ったところでロキがアンヌ嬢に俺の上に跨れと告げた。
前戯も何もしてないだろうに、なんて鬼畜なんだ。
これには流石のアンヌ嬢も半泣きになって叫んでいた。
「私もロキ陛下に可愛がられたいです!ご慈悲を!」
(何か間違ってないか?!)
でもロキ的にそのセリフを聞いて何故か気が変わったらしく、ちょっとだけ手伝って感じさせた後、俺に跨らせていた。
とは言え酷いのは酷い。
(本当に身内に対する優しさと比べて、ほんのちょっとしか優しくないな?!)
こんな扱いを受けたし、きっとアンヌ嬢も諦めがついただろう。
これで子ができなかったらもう諦めるはず。
なのに彼女の不屈の精神は凄くて、ここでも子ができなかったにもかかわらず、諦めなかった。
そのド根性は思わず見習いたくなったほどだ。
何が彼女をそうさせるのだろうか?
ロキに意地でも自分を認めさせてやると言わんばかりに張り切り、貴族女性達の意識改革まで成し遂げてしまった彼女。
もうこんな姿を見せられたら俺もうじうじ悩んでばかりはいられない。
時には考えてばかりいるよりも勢いが大事なのだと思い知った。
彼女の場合、本当にそのうちロキに認められるんじゃないかと思い始めて、俺も負けるかとばかりにあれこれなりふり構わず頑張ることに。
手始めに、これまで保守的に考えて手つかずだった改革案を積極的に検討して取り掛かり始めることにした。
国政も落ち着いているし、メルケ国の情勢は気にはなるものの、二の足を踏むほどでもない。
やるなら今だろう。
彼女の存在が俺にとっていい発奮材料になったと思う。
言って見れば彼女はリヒターとは別の意味でのライバルだ。
切磋琢磨できる好敵手のようなものかもしれない。
ロキはそんな風に頑張り出した俺に『兄上素敵です。カッコいい』とうっとり言ってくれるが、彼女は全く応援されてないのに頑張ってるからな?!
結果的に国としてまた発展していくことになるのだが、そんなプラス効果をもたらした彼女に褒美くらいちゃんとやれとロキに言ってやったら、やっと普通に閨に呼んだ。
「まあ兄上の魅力アップに貢献してくれたようなので、今日は特別です」
そう言いながら玩具で満足させ、『兄上。今日は兄上のモノでの可愛がり方を教えてあげます』と言って俺にあれこれアドバイスしながら彼女を抱かせた。
(なるほど。こうしたら良かったのか)
とっても勉強になったから、今度ロキを抱く時にも活用しようと俺は上機嫌でその日の閨を終えた。
そして三度目にしてやっと宰相達念願の子宝を授かることができたのだが、ロキはこの時点で興味はなさそうな感じだった。
でもその後産まれてきた赤子を見てそれなりに感動していたように見えたし、これからゆっくり家族を感じさせてやりたいと思う。
ロキはもう昔のロキとは違う。
俺が居て、リヒターやカーライル、闇医者や裏稼業の者達が居る。
それだけではなく、他にも沢山の者達がロキを大事に思ってる。
それはロキ自身が築き上げたものだ。
これからの人生はずっと長く続いていて、それは決して辛いものではなく、皆が手を差し伸べてくれる優しい未来なのだと教えてやりたい。
「ロキ。子が産まれた事で変わることもあるかもしれないが、だからと言ってそれがお前の存在を脅かすようなことには繋がらない。俺と一緒に、お前自身の幸せをこれからも沢山沢山積み重ねていこう。お前の隣にはいつも俺が側にいてやる。約束だ」
子が産まれた日の夜。
酒場から帰ってきたロキにそう言ってやったら、ロキは泣いていた。
どうやら子が産まれたことで、またお役御免とばかりに冷遇される可能性もあるかもと考えていたようだ。
昔の俺なら『祝い酒を飲みに行ったんだろう』程度にしか思わなかったと思うけど、今は『気を紛らわせに行ったんだろう』とわかるから、浮かれ過ぎずちゃんと話して本当に良かった。
すぐに不安定になる困ったロキだが、そんなロキも俺が包んでやれるようにもっと成長していきたいと思う。
永遠の愛を、俺の愛する弟に。
「ロキ。一生をかけて俺がお前を幸せにすると言った言葉に嘘はない。だから…この先のお前の人生も全部俺にくれ」
そう言ってそっと抱き締めると、ロキは『もらってください』と言ってポロポロと涙を零しながら、俺にギュッと抱き着いた。
****************
※心機一転頑張るぞと思っていた矢先に愛するカリンから言葉がもらえて、ロキの胸はいっぱいに。
きっと幸せな人生を謳歌できるはず。
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