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205.※花嫁の打診⑪

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※ロキサイドのエンディングです。
※今回控えめですがアンヌ嬢をロキが手で責めている描写があるので、苦手な方は前半読み飛ばしをお願いします。

****************

良い感じに酒が入ったお陰で誰も俺の思惑に気付かない。
まあもしかしたら暗部の者達は察しているかもしれないけど。

そして始まった兄の前戯。
俺に教えてくれる気満々で取り掛かってくれる兄が可愛い。

「女性は男と違って濡れてくれるから楽なんだぞ」

そう言いながら兄が始めたものの、アンヌ嬢の表情は残念そうだ。
期待していたのと大きく違ったのが原因だろう。
ここで盛り下がられるのはあまりよくない。
だから『俺もやってみていいですか?』と声を掛けて兄に代わってもらった。
そして初めて女性の中に指を入れたのだけど、確かに後ろとは全然違う感じだった。
緩い気がするけどこんなものなんだろうか?

(まあいいか)

やることはそんなに変わらないだろうと思いながら指を増やし、よさげな場所を探りつつ目的の場所を探す。
昔図書室で見た教本に書いてあった二か所を責めればまず間違いはないだろう。
そして最初は『さっさと本番に行って欲しいわ』と言わんばかりだったアンヌ嬢の表情が段々変わり始め、とある場所を責め始めたところでその表情に変化が見られた。

「え?あっ…嘘っ…!」

焦った顔で声を上げて、離してくれと言わんばかりに俺の腕を掴んで腰を引き始める。
この表情には覚えがある。
兄が潮を吹きそうな時の表情にそっくりだ。

「あっ!いやっいやっ!離してっ!あっ!~~~~っ!」

そしてそのままアンヌ嬢は潮を吹いて呆然となっていた。
もしかして初めてだったんだろうか?

「そ…そんなっ……」
「上手に潮吹きさせてあげられてよかったです」

ニコッと無害を装い場所を兄に代わる。
当然だがここでやめる気はない。

「じゃあ兄上、本番をお願いします」
「え?!」
「俺に教えてくれるんですよね?」

そう言いながら期待の眼差しを向けるものの、どうやら兄の方はまだ気分が乗らない様子。
仕方がないから玩具で先に彼女を可愛がることに。
ついでだからさっき言ったように兄にも教えてあげよう。

そして道具箱から出したディルドで彼女を乱れさせたのだけど、交代する前に兄が嫉妬し始めて、自分も俺に虐められたいと言い出してしまった。
適当なところで兄に代わるつもりだったのに。
もうちょっと我慢してほしい。

「やだっ!ロキは俺だけを虐めてっ!」
「陛下っ!素敵!もっとぉっ!」

カオスになってしまった。どうしよう?
仕方がないから彼女をそのままイかせてから放置して、兄を焦らしつつその気にさせて、彼女に挿れさせることに成功した。

「あ…ロキぃ。早くきて…」

彼女に挿れているくせに、甘い声で尻穴を見せつけるように広げながら俺を誘う兄。
とってもエロくて可愛すぎる。

(まあいいか)

このままサンドイッチで終わらせよう。
そう考えながら兄を可愛がり、無事に種付けを終えたのだけど…。

その日以降、アンヌ嬢が俺に色目を使いだしたから辟易する羽目になった。

「ロキ陛下…今夜もお傍に侍ってよろしいでしょうか?」
「お断りします」
「お酒は如何です?それならよろしいでしょう?」
「今日は気分じゃないので」
「マンネリ防止に是非今夜こそ」
「間に合ってます」

はっきり言ってうんざりだ。
どうやら玩具で気持ちよくしてしまったせいで執着されてしまったらしい。

(失敗した…)

でもそれに危機感を抱いたのは俺だけではない。
兄もだった。

「アンヌ嬢。ロキは俺のだ。しつこく迫るのはやめてほしい」
「カリン陛下。独り占めはズルいですわ。私も側妃ではありませんか。少しくらい分けてくださいませ」
「断る」

おかしいな?
アンヌ嬢を抱いたのは兄なのに、どうして俺を取り合っているんだろう?
まあそこで二人仲良くなられるよりはずっとマシなのだけど。

「ロキ陛下。大丈夫ですか?」

そんな気疲れする中、リヒターが勉強時間に気を遣って声を掛けてくれる。
やっぱりリヒターは優しい。

「あんまり大丈夫じゃない。癒しが欲しい…」

そう言ったらリヒターがソファに誘ってくれて、マッサージは如何ですかと言ってくれた。

「ん~…今日はこう後ろからギュッてされたい」
「いいですよ。ではどうぞ」

そしてソファに腰掛け笑顔で両手を広げてくれたので、素直にそこに収まり抱きしめてもらった。
うん。落ち着く。

「はぁ…やっぱりリヒターの腕の中は落ち着くな」
「お役に立てて光栄です」

この優しく包み込まれる何とも言えない安心感は本当に癒しそのものだ。
このまま暫く和んでいよう。

「リヒター。そう言えばカークとの新しい部屋は気に入ったか?」
「ええ。陛下のお部屋の近くにしていただけたので二人で喜んでいます」
「そうか。やっぱりすぐに駆け付けてもらえる場所にして正解だったな」

部屋の広さも満足だし、内装も気に入ったと言ってもらえて良かった。

「そう言えばカークが暗器の収納場所に困っていたんですが、収納箪笥だけ増やしても構いませんか?」
「ああ、家具は好きに増やしてくれ。リヒターは何か足りないものはないか?」
「そうですね。予備の剣を仕舞う場所が欲しいので、また相談させてください」
「わかった」

それなら手入れ道具も一緒にしまえる方がいいかもしれない。
一度家具職人を呼び寄せようかと考えていると、そこに何故かアンヌ嬢がやってきた。
本来なら俺の方は勉強の時間だ。
勉強にとりかかる前にちょっとだけ和んでいたこのタイミングでやってくるなんて、一体何の用なんだろう?

「失礼します。陛下、よければ私もお傍で勉強を…っリヒターお兄様?!ロキ陛下に何を?!」

(何をと言われても癒しだけど?)

そう思いながら首を傾げていると、ツカツカとこちらまでやってきて、鋭い目でリヒターを睨みつけてくる。

「今すぐロキ陛下から離れてくださいませ!」

ビシッと扇を突きつけ、側妃命令と言わんばかりの強い口調。
正直これはいただけない。

「アンヌ嬢?それは聞けない。これは俺がリヒターに頼んでしてもらってるんだ。下がっていて欲しい」
「陛下!いくらなんでもこれは酷いですわ!リヒターお兄様は陛下の教育係兼近衛騎士でしょう?!分を弁えさせなくてはいけませんっ!」

その声があまりに大きかったせいか、兄や宰相達まで駆けつけてくる。

「ロキ!何があった?!」
「カリン陛下!見てくださいませ!リヒターお兄様がロキ陛下にこんなことをっ!」

その言葉を聞き兄の目がこちらに向かう。

「……ロキ?一応聞くが、浮気か?」
「いつもの癒しですけど?」
「またか!どうしてお前はそんなにリヒターにばっかり甘えるんだ!」
「だって落ち着くんですから仕方がないじゃありませんか。ストレスが溜まっているんです。誰のせいとは言いませんけど」
「普通そこで癒しを求めるなら俺だろう?!」

『それか思い切り癒し系のアンヌ嬢に甘えろ!』と言われて思わずスンッと表情をなくしてしまった。
だって兄の口から彼女は癒し系だと聞いてしまったのだからそうもなる。
しかもまさかストレス元を癒しと言われるなんて思ってもみなかった。

「そうですか。兄上にとってアンヌ嬢は癒し系だったんですね」
「え?」
「いいですよ。俺の癒しにはリヒターがいるので、兄上はアンヌ嬢に好きなだけ癒してもらってください」
「ロキ?!」
「……もうわかりましたから、出て行ってください。勉強の邪魔です」

そのタイミングで宰相に目をやると慌ててアンヌ嬢を回収してくれる。

「ロキ陛下!大変失礼いたしました!アンヌ妃にはしっかりと事情をお話しておきますので!」
「頼んだ」
「ロキ!俺は出て行かないぞ?!」
「兄上はどうぞお仕事に戻ってください。カーク。兄上をお連れしろ」
「はい。了解です」

そして部屋はまた静かになったのだけど、正直ここに居たくなかった。
するとリヒターが困ったように笑い、こんな提案をしてくれた。

「陛下。気分転換に暗部の皆と一緒に訓練施設の視察でもしに行きませんか?」
「視察?」
「ええ。前に貴族の屋敷で訓練をしているという話があったでしょう?あそこです」
「ああ、あそこか。そうだな。行ってみたい」
「では行ってみましょう。────バンビ」
「はいよ」
「視察先に連絡を取ってもらえないか?」

そうやってあれよあれよという間に話は決まり、そのまま戻ってきたカークも一緒に視察に出掛けることになった。
そこでは楽しく体を動かして色々な経験ができたし、来てよかったと思う。

「壁のぼりにもやっぱりコツがいりますね」
「そうだな。でも楽しい」

カークは元々暗部だから身軽だけど、リヒターは元が騎士だからコツを掴むのに少し苦労していて、皆であれこれ教えながら楽しんだ。
個人的にボルダリングというのは楽しかったように思う。
あと、ナイフ投げも楽しかったけど、このスキルもいつか使う日が来るんだろうか?
ニコラスにそう尋ねたら、ナイフは近接戦で使うことがほとんどだからあまり機会はないんじゃないかと笑われてしまった。
護身のナイフ術はここ暫く色々教わっていたけど、ここでついでに暗殺術も教えてもらった。
退位するなら手に職は必須だぞとのこと。

折角だし色々やっとけと言われたから取り敢えず挑戦してみる。
練習用のナイフだからなのか、刃を押すと引っ込む仕様になっていてちょっと面白い。
本物そっくりの玩具だから見分け方なんかも教えてもらった。
でもよくよく聞くと、玩具も刃を固定したら一応ちゃんと使えるらしい。
切れ味は当然劣るものの、いざという時は敵の目を騙す武器にもなるそうだ。
それで牢を脱出する場合もあるとか。
なかなか奥が深い。

そんな感じでストレスを思い切り発散してすっきりして城に戻ったら、兄だけではなくアンヌ嬢からも謝られた。
どうやらしっかり宰相に言い聞かせられたようだ。

「陛下…この度は大変申し訳ございませんでした。どうか私をお見捨てにならないでくださいませ」
「…………」
「リヒターお兄様。私が悪かったですわ。昔のことも含めて謝罪いたします。この通り、どうぞお許しくださいませ」

そう言って俺だけではなくリヒターにも頭を下げたから一応許したものの、当然ながら俺の中での彼女の印象はかなり悪くなってしまっている。
だから冷たくなるのも仕方がないと思う。

けれど彼女はそれでも全くめげずに王宮に居続けた。
普通なら俺と距離を置くなり兄にターゲットを変えるなり心折れて離縁を申し入れてきたりしそうなものだけど、そんなこともなく以前と変わらず過ごしている。
俺的にはリヒターとのことに関しては何も言われなくなったからまあいいかという感じだ。

そしてその後、『彼女を少しは見てやれ』とか『気持ちを切り替えてほしい』等と兄やリヒターから二人掛かりで言ってこられ、うんざりする羽目に。
つまりは再度閨に呼べということらしい。

彼女の目の前でリヒターを閨に呼んだのが悪かったのか?
それとも最初の閨以降ちっとも閨に呼ぼうとしないから?
別にいいじゃないか。気分が乗らないんだから。
はっきり言うと、これ以上付きまとわれたくない。

『面倒臭いな』と思ったから、兄との本気の閨でも見せつけて、適当なタイミングで跨がらせようと実行に移した。
それなら俺は彼女に触れなくていいから一石二鳥だ。
嫌なら泣いて王宮を去るだろうし、去らないまでも俺から相手にされていないことくらい理解するだろうと思ったのだ。
大体契約書に俺との閨に期待するなと書いておいたんだから、文句を言わないで欲しい。

結果その後も城に居座り、彼女は俺へのアプローチも諦めなかった。
子はできなかったんだし、別にそのまま泣きながら実家に帰ってくれてもよかったのに。
変なド根性なんて発揮しないでほしい。

まあ兄との本気の閨にも引かれなかったし、時間切れで一応側妃として認めるのは認めたけど。
あれだけやっても兄の方にターゲットを変えずひたすらこちらに向かってくるから、俺もそれに関しては嫉妬せずに済むし、面倒ごとを起こされる心配もなさそうだと判断した形だ。

このままなるようになればいいと思いながら兄との変わらぬ愛の日々を送る俺。
でも────。

冷たい?
もっと構ってやれ?

あまりにも構わなさすぎると兄からそんな苦言が入ってくるのはどうかと思う。
俺は仲良くする気はないんだけど。
王宮内のその他大勢と一括りにしたらダメなんだろうか?
まあ兄に良い影響を与えてくれているようだし、そこだけは認めても良いかもしれない。

そんなこんなで最終的に子を授かることには成功したけれど、正直言って無事に産まれてよかったという安堵と、子の誕生に喜ぶ兄を見て彼女や子に兄を取られるんじゃないかという不安と、また以前のようにお役御免とばかりに王宮内で冷遇が始まるんじゃないかという心が凍り付くような感覚に襲われたのは誰にも内緒だ。




俺はいつかのように誰もいない庭に出て、当時と同じように空を見上げる。
そこから見る景色は当時と何も変わらないのに、あの頃は持っていなかった沢山の幸せを抱えた自分が今ここに居る。
それを全部失うかもしれないと考えると、怖くて怖くて仕方がなかった。

(いっそ失って絶望する前に……)

そう考えたところで後ろからふわりと抱きしめられた。
この包み込むような温もりは────。

「リヒター……」
「陛下。ここは冷えます。ホットミルクでも如何ですか?」
「ロキ様。俺もいますよ。一緒にこの後酒場に行きませんか?ここじゃあ落ち着かないでしょう?」
「俺らもいるぞ!ロキ坊、今なら抜け出し放題だ。さっさと行こうぜ!」

リヒターやカーライルだけではなく、オーリオ達裏稼業の者達が笑顔で誘ってくれる。
それが泣きたくなるほど嬉しくて、俺は笑顔で『ありがとう』と口にした。

どうして…わかってくれたんだろう?
自分が不安に思っていたことを。
いつだって辛い時にそっと支えてくれる彼らの優しさが、どうしようもなく胸に沁みる。

彼らの優しさはなくならないのだと、そう実感できて────。
俺の中の希望の光は決して消えることはないのだと知った。

一人で苦しまなくてもいい。
苦しい時でも彼らが支えてくれる。
そんな安心と信頼がある今の状況に感謝が込み上げてくる。

きっとこれから先、俺はもうさっきのように自暴自棄になることはないだろう。

困ったり悩んだ時には話を聞いてもらって、叱ってもらったり、笑い飛ばしてもらったりしながら一緒に解決策を考えよう。
視察と称して外に飛び出すのも気分転換にもってこいだと、俺はリヒター達に教わった。
王とは言え、城に縛られる必要はないのだ。
俺は城を離れても生きて行けるだけのスキルだって手にしているし、いざとなったらどうとでも生きていける。

今の自分は死に逃げる必要なんてどこにもないほど一人前の大人になった。
いつまでも過去を引きずるのはもうやめよう。
気持ちを切り替えるだけでいくらでも世界は変わるのだと、俺はもう知っているのだから────。

「行こうか」

そして俺は過去を振り払い、力強く新しい人生の一歩を踏み出したのだった。



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