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198.花嫁の打診④ Side.ロキ&カリン
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兄の突然の言葉に驚いたものの、どうやらそれはシャイナー対策だったらしい。
リヒターを暗殺者から守るためにカークを傍に置きたかったようだ。
まあその二人なら本当に夫婦になっても上手くやっていけるような気がするし、悪くはないと思う。
リヒターの気持ちは嬉しいけど、二人に幸せになってもらえるならその方が嬉しい。
カークは忠義者だからその点でもリヒターと相性はいいんじゃないだろうか?
取り敢えず兄の手前無理をしていても可哀想だし、後で二人とはゆっくり話してみよう。
それよりも忘れないうちに宰相からの話を兄に通しておかないと。
前にこの手の話を後回しにして『遅い!』と叱られたこともあるし、早いに越したことはないだろう。
そう思ってちゃんと忘れず話したのに、何故か叱られてしまった。
驚かせたのは兄も一緒なのに、酷い。
「取り敢えずゆっくり話そう」
そう言われてお茶を飲みながらちゃんと話すことに。
「それで?何がどうしてそうなった?」
「ええ。宰相が条件に合う令嬢を見つけたと言ってこの資料を渡してきたんです」
「……どれ」
兄が眉間に皺を寄せながら資料をめくる。
「ヒューガー侯爵家の出戻りの娘?」
「ええ。リヒターの義妹にあたるそうです」
その言葉にリヒターがピクリと一瞬動揺を示した。
「俺や兄上よりも年上なんですけど、3Pの閨で兄上に跨ってもいいと言ってきたらしくて」
「……なるほど?確かに処女でないならそれくらいやってやると思ってもおかしくはなさそうだな」
「でしょう?ただ子作りをするのは兄上ですし、性格が悪い人は流石に俺もお断りなので、一度会ってから判断しようかなと」
「そう言うことか」
「もちろん胆力が本当にあるのかも試してからになるんですけど…」
「ああ、あの父親を玩具で弄ぶ奴だろう?別に了承さえ得ていればいいんじゃないか?」
「そうですか。じゃあ宰相には会っても構わないと伝えておきますね」
「そうしろ」
案外あっさりと了承が得られた。
兄的にはやっぱり血を繋ぎたいのかもしれない。
「兄上はやっぱり王家の血は繋ぎたいと思いますか?」
「まあ…そういう風に育てられたからな」
ただ兄的にはもう普通に女性を抱くのは無理だから、条件次第と言ったところらしい。
ちなみに俺が女を抱くのは嫌だとも言ってくれた。
「ま…まあ、一度くらい経験したいと言うなら別に反対はしないが…」
そう言ってちょっと拗ねたように言う兄が可愛くて、兄上だけを抱きたいですと言って俺は満面の笑みで答えた。
その後宰相へと話を持っていくと、喜び勇んで『すぐに場を整えます』とトントン拍子に話が進んでいった。
ちなみにその間、リヒターに義妹の為人を聞いたのだけど、困ったような顔で『実際に見てご判断ください』とだけ言われてしまった。
エメラルダ夫人の時とは大違いで、その目には温かな光は欠片も見られない。
(なるほど。リヒター的にはお勧めしないということか)
言葉にしなくても付き合いも長くなったし、それくらいのことはわかる。
まあ余程性格が悪くなければ子供だけ作ってもらって、後はどこかに屋敷を用意してそこで悠々自適な日々を過ごしてもらえば問題はないだろう。
俺の正式な伴侶は王配の兄上だし、どうせ彼女が政務にかかわる必要なんてどこにもないのだから。
取り敢えず会ってから判断しようと思いながら俺はその日を迎えた。
「ロキ陛下。カリン陛下。この度は我が家にお声掛けいただき誠に光栄の極みにございます。エドワード=ヒューガー。お召しにより御前に参上致しました」
「両陛下にお初にお目にかかります。アンヌ=ヒューガーと申します。お目通りが叶い恐悦至極に存じます」
親子揃って頭を垂れて恭しく挨拶をしてくる二人。
特に俺に嫌悪感を抱いている様子もないし、第一印象は悪くはない。
「遠方からわざわざ足を運んでいただきありがとうございます。本日は少しお話ができればと思っていますので、どうぞこちらへ」
取り敢えず一緒にお茶でもと思いながらテーブルへと促し、兄と一緒に二人を吟味することに。
とは言え話すのは概ね兄の方だ。
面倒だし、俺は話を振られた時だけ話せば十分だろう。
(さて。どうなるかな…)
そっとアンヌというリヒターの義妹────ではなく、兄の方へと目を向け、俺はそっとカップを傾けた。
***
【Side.カリン】
ロキからいきなり見合い話を持ってこられて本気で心臓が止まるかと思った。
ドッキリにもほどがある。
でもまあ話を聞いて少し納得はいった。
周囲の者達が王族の血を繋いでほしいと切望しているのは嫌というほど感じていたからだ。
なんだったら個人的に俺に話を持ってきた大臣もいるくらい、後継は望まれている。
ロキの説得をしてもらえないかと言われたこともあるし、それはフォルティエンヌの姫との縁談が消えた後から更に顕著になった。
それを俺は嫌だと突っぱねてきたし、このままそれをずっと押し通す気もあった。
ロキがその気にならないなら仕方がないだろうと言い続けてきた。
ロキが頷かないのを知っていたからこそどこかで安堵し、頼むから女を抱いてくれるなと思い続けてきたのだ。
それなのに────。
(宰相め!!)
まさか条件をそろえた上でロキを篭絡してくるとは…。
幸いにもロキは女を抱く気はないようだが、そうなると当然女を抱くのは俺ということになる。
ロキにしか勃たないという言い訳も、3Pの閨でOKと言われた時点で意味をなさなくなってしまう。
だって俺をいつだって悦ばせてくるロキの前で勃たないなんてあり得ないのだから。
(くそっ…!)
こうなったら相手を見極めてそれ次第で断ってやると思った。
王家の血を繋げるのは確かにできればそれに越したことはないが、もっと後でも…それこそロキと5年くらい夫婦生活を堪能してからだって別にいいじゃないか。
どうして邪魔をしてくるんだろう?
ただでさえ次から次に問題が生じて全く結婚生活を満喫できていないのに、皆あんまりだ。
そんなことを考えながら見合いの日を迎えたのだが、やってきた令嬢は意外にも癒し系の令嬢だった。
あんな条件にOKを出してくるくらいだからもっとスカーレットのようなタイプを想像していたのだが、はっきり言って拍子抜けしてしまう。
庇護欲をそそられるような小柄な姿態。
なのに年上特有の落ち着いた雰囲気。
おっとりとした優し気な口調。
正直に言っていいだろうか?
ロキにぴったりだと物凄く思ってしまった。
病んだロキを包み込んで甘やかして可愛がってくれそうな女性。
それが彼女だった。
(…マズい。文句のつけようがない)
正直言って嫉妬はしてしまうが、俺だけで手に余るロキを一緒に癒してくれるのならありかもしれないと凄く思ってしまった。
とは言えそれだけで決めるわけにもいかない。
取り敢えず話してみなければと俺主体で彼女と話していく。
すると聞いていた通り実に博識で、商売についての知識も豊富だった。
これは宰相も気に入るわけだ。
再婚と言われてもアリと思わせるものが確かにあった。
ロキの突飛なアイデアもすぐに商売に繋げてくれそうな安心感があるし、他国の情勢などについても詳しくて、こちらも何も不足はなかった。
少し教えれば王配の仕事のサポートもしてくれそうな気がする。
(ぐぅ…っ、こ、ここは腹を決めるべきか?)
この先ここまで優良な花嫁候補は出てこないのではないかと思わせられて、悩みに悩む。
(そうだ。ここはロキに…)
彼女についての意見を聞こうと目をやったらロキは興味なさげにしながら父親の方に目をやっていた。
(興味なしだと?!)
いや。でもロキの場合、俺が気に入ればそれでいいと考えていそうな気はする。
なんだったら俺の様子を見て『兄上は彼女が気に入ったようだし、それなら父親をどう責めるか考えるか…』くらい思っていても全くおかしくはない。
「…………と、取り敢えず、仮で話を進めてみるか」
ここで父親が嬲られているところを見てやっぱりダメだったという結果に終わる可能性だってある。
もうそこに賭けよう。
そう思いながら俺は話を進めてみることにした。
****************
※あれこれ言ってますが、単純にアンヌの見た目がカリンの元々のタイプだったという話。
ただ、本人は無自覚です。
元々自分の妃選定の時に色んなファクターで女性を見るクセがあって、それが今回こんな風な思考になった要因だったりします。
ロキは本気でアンヌのことはどうでもいいと思ってるので、対照的ですね(^^;)
リヒターを暗殺者から守るためにカークを傍に置きたかったようだ。
まあその二人なら本当に夫婦になっても上手くやっていけるような気がするし、悪くはないと思う。
リヒターの気持ちは嬉しいけど、二人に幸せになってもらえるならその方が嬉しい。
カークは忠義者だからその点でもリヒターと相性はいいんじゃないだろうか?
取り敢えず兄の手前無理をしていても可哀想だし、後で二人とはゆっくり話してみよう。
それよりも忘れないうちに宰相からの話を兄に通しておかないと。
前にこの手の話を後回しにして『遅い!』と叱られたこともあるし、早いに越したことはないだろう。
そう思ってちゃんと忘れず話したのに、何故か叱られてしまった。
驚かせたのは兄も一緒なのに、酷い。
「取り敢えずゆっくり話そう」
そう言われてお茶を飲みながらちゃんと話すことに。
「それで?何がどうしてそうなった?」
「ええ。宰相が条件に合う令嬢を見つけたと言ってこの資料を渡してきたんです」
「……どれ」
兄が眉間に皺を寄せながら資料をめくる。
「ヒューガー侯爵家の出戻りの娘?」
「ええ。リヒターの義妹にあたるそうです」
その言葉にリヒターがピクリと一瞬動揺を示した。
「俺や兄上よりも年上なんですけど、3Pの閨で兄上に跨ってもいいと言ってきたらしくて」
「……なるほど?確かに処女でないならそれくらいやってやると思ってもおかしくはなさそうだな」
「でしょう?ただ子作りをするのは兄上ですし、性格が悪い人は流石に俺もお断りなので、一度会ってから判断しようかなと」
「そう言うことか」
「もちろん胆力が本当にあるのかも試してからになるんですけど…」
「ああ、あの父親を玩具で弄ぶ奴だろう?別に了承さえ得ていればいいんじゃないか?」
「そうですか。じゃあ宰相には会っても構わないと伝えておきますね」
「そうしろ」
案外あっさりと了承が得られた。
兄的にはやっぱり血を繋ぎたいのかもしれない。
「兄上はやっぱり王家の血は繋ぎたいと思いますか?」
「まあ…そういう風に育てられたからな」
ただ兄的にはもう普通に女性を抱くのは無理だから、条件次第と言ったところらしい。
ちなみに俺が女を抱くのは嫌だとも言ってくれた。
「ま…まあ、一度くらい経験したいと言うなら別に反対はしないが…」
そう言ってちょっと拗ねたように言う兄が可愛くて、兄上だけを抱きたいですと言って俺は満面の笑みで答えた。
その後宰相へと話を持っていくと、喜び勇んで『すぐに場を整えます』とトントン拍子に話が進んでいった。
ちなみにその間、リヒターに義妹の為人を聞いたのだけど、困ったような顔で『実際に見てご判断ください』とだけ言われてしまった。
エメラルダ夫人の時とは大違いで、その目には温かな光は欠片も見られない。
(なるほど。リヒター的にはお勧めしないということか)
言葉にしなくても付き合いも長くなったし、それくらいのことはわかる。
まあ余程性格が悪くなければ子供だけ作ってもらって、後はどこかに屋敷を用意してそこで悠々自適な日々を過ごしてもらえば問題はないだろう。
俺の正式な伴侶は王配の兄上だし、どうせ彼女が政務にかかわる必要なんてどこにもないのだから。
取り敢えず会ってから判断しようと思いながら俺はその日を迎えた。
「ロキ陛下。カリン陛下。この度は我が家にお声掛けいただき誠に光栄の極みにございます。エドワード=ヒューガー。お召しにより御前に参上致しました」
「両陛下にお初にお目にかかります。アンヌ=ヒューガーと申します。お目通りが叶い恐悦至極に存じます」
親子揃って頭を垂れて恭しく挨拶をしてくる二人。
特に俺に嫌悪感を抱いている様子もないし、第一印象は悪くはない。
「遠方からわざわざ足を運んでいただきありがとうございます。本日は少しお話ができればと思っていますので、どうぞこちらへ」
取り敢えず一緒にお茶でもと思いながらテーブルへと促し、兄と一緒に二人を吟味することに。
とは言え話すのは概ね兄の方だ。
面倒だし、俺は話を振られた時だけ話せば十分だろう。
(さて。どうなるかな…)
そっとアンヌというリヒターの義妹────ではなく、兄の方へと目を向け、俺はそっとカップを傾けた。
***
【Side.カリン】
ロキからいきなり見合い話を持ってこられて本気で心臓が止まるかと思った。
ドッキリにもほどがある。
でもまあ話を聞いて少し納得はいった。
周囲の者達が王族の血を繋いでほしいと切望しているのは嫌というほど感じていたからだ。
なんだったら個人的に俺に話を持ってきた大臣もいるくらい、後継は望まれている。
ロキの説得をしてもらえないかと言われたこともあるし、それはフォルティエンヌの姫との縁談が消えた後から更に顕著になった。
それを俺は嫌だと突っぱねてきたし、このままそれをずっと押し通す気もあった。
ロキがその気にならないなら仕方がないだろうと言い続けてきた。
ロキが頷かないのを知っていたからこそどこかで安堵し、頼むから女を抱いてくれるなと思い続けてきたのだ。
それなのに────。
(宰相め!!)
まさか条件をそろえた上でロキを篭絡してくるとは…。
幸いにもロキは女を抱く気はないようだが、そうなると当然女を抱くのは俺ということになる。
ロキにしか勃たないという言い訳も、3Pの閨でOKと言われた時点で意味をなさなくなってしまう。
だって俺をいつだって悦ばせてくるロキの前で勃たないなんてあり得ないのだから。
(くそっ…!)
こうなったら相手を見極めてそれ次第で断ってやると思った。
王家の血を繋げるのは確かにできればそれに越したことはないが、もっと後でも…それこそロキと5年くらい夫婦生活を堪能してからだって別にいいじゃないか。
どうして邪魔をしてくるんだろう?
ただでさえ次から次に問題が生じて全く結婚生活を満喫できていないのに、皆あんまりだ。
そんなことを考えながら見合いの日を迎えたのだが、やってきた令嬢は意外にも癒し系の令嬢だった。
あんな条件にOKを出してくるくらいだからもっとスカーレットのようなタイプを想像していたのだが、はっきり言って拍子抜けしてしまう。
庇護欲をそそられるような小柄な姿態。
なのに年上特有の落ち着いた雰囲気。
おっとりとした優し気な口調。
正直に言っていいだろうか?
ロキにぴったりだと物凄く思ってしまった。
病んだロキを包み込んで甘やかして可愛がってくれそうな女性。
それが彼女だった。
(…マズい。文句のつけようがない)
正直言って嫉妬はしてしまうが、俺だけで手に余るロキを一緒に癒してくれるのならありかもしれないと凄く思ってしまった。
とは言えそれだけで決めるわけにもいかない。
取り敢えず話してみなければと俺主体で彼女と話していく。
すると聞いていた通り実に博識で、商売についての知識も豊富だった。
これは宰相も気に入るわけだ。
再婚と言われてもアリと思わせるものが確かにあった。
ロキの突飛なアイデアもすぐに商売に繋げてくれそうな安心感があるし、他国の情勢などについても詳しくて、こちらも何も不足はなかった。
少し教えれば王配の仕事のサポートもしてくれそうな気がする。
(ぐぅ…っ、こ、ここは腹を決めるべきか?)
この先ここまで優良な花嫁候補は出てこないのではないかと思わせられて、悩みに悩む。
(そうだ。ここはロキに…)
彼女についての意見を聞こうと目をやったらロキは興味なさげにしながら父親の方に目をやっていた。
(興味なしだと?!)
いや。でもロキの場合、俺が気に入ればそれでいいと考えていそうな気はする。
なんだったら俺の様子を見て『兄上は彼女が気に入ったようだし、それなら父親をどう責めるか考えるか…』くらい思っていても全くおかしくはない。
「…………と、取り敢えず、仮で話を進めてみるか」
ここで父親が嬲られているところを見てやっぱりダメだったという結果に終わる可能性だってある。
もうそこに賭けよう。
そう思いながら俺は話を進めてみることにした。
****************
※あれこれ言ってますが、単純にアンヌの見た目がカリンの元々のタイプだったという話。
ただ、本人は無自覚です。
元々自分の妃選定の時に色んなファクターで女性を見るクセがあって、それが今回こんな風な思考になった要因だったりします。
ロキは本気でアンヌのことはどうでもいいと思ってるので、対照的ですね(^^;)
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