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191.毒への誘い⑮ Side.カリン
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酒場から連れ出されて城へと戻る道すがら、俺はリヒターから散々叱られてしまった。
あそこは俺にはアウェーなんだから迂闊に近寄るなと。
それと、今日の件についての報告もある程度は受けた。
やはりユーツヴァルトがメルケ国の城に保護された件で出掛けていたらしい。
俺が話を聞かなかったせいで、ロキ的には自分で考えてみようと直接動いたのだとか。
「何故止めない?!」
「場合によっては裏の連中任せでも良かったかもしれませんが、今後のことを考えてロキ陛下の成長のために敢えて止めませんでした」
「なっ…!」
「ロキ陛下はこの国の王ですが、普段からどちらかというと消極的です。なので本人がやる気を出した時が成長を促すタイミング。それを逃す気はありません」
安全をしっかり確保しつつロキの成長も促すのが傍にいる者の役割だとリヒターが言い切った。
それに対してカーライルも確かにと頷いている。
「でも…俺はロキには安全な場所にいてほしいんだ」
危険な場所にわざわざ向かう必要はない。
だってロキは王なのだから。
「俺も大概過保護ですが、カリン陛下は更に酷いですね」
「うるさい!」
「大事に大事に城に囲ってしまえば確かに安全かもしれませんが、それだと以前の二の舞ですよ?」
それは恐らく護衛を大量につけた時のことを示唆しているのだろう。
息が詰まってロキが追い込まれたアレだ。
確かに言われてみればその通りだが…。
「それでも心配なんだ…」
だからそう溢した。
それに対してリヒターはあっさりとこう答えてくる。
「だからこそ俺やカークがいるんですよ」
リヒターはロキの側近になるより騎士を望んでいる。
それは偏にいついかなる時もロキをすぐそばで守れるようにとの思いからだ。
「お前はズルい」
俺だってロキの傍で守ってやりたいのに、王配という立場は仕事では助けてやれても、実際にこの手で守ってやることができない。
こうして置いて行かれたら何もできないのだ。
「悔しい…」
腹立たしい。
でもそれは俺があまりにも不甲斐ないからだ。
これがあのセドリック王子だったならきっとロキをしっかり守る手を打つのだろうとも思う。
「結局ロキが頼るのは俺じゃなくお前だ…」
「そんなことはありませんよ。ロキ陛下はちゃんと貴方を頼っています。今回だってちゃんと相談に行ったでしょう?」
「…………。でも昨日はお前の部屋に行った」
「そうですね。でも全部カリン陛下のお話でした。それに何かご不満でも?」
「……?!う、嘘を吐くな!」
「本当ですよ。お疑いならカークにも聞いてみてください。その場にいましたから」
「カーライル!」
「え?本当ですよ?ロキ様、カリン陛下のどこが可愛いとか惚気たり、リヒターと一緒にカリン陛下の感じる体位の話で盛り上がったりしてましたけど…」
「なっ?!」
そんな恥ずかしい話で盛り上がらないで欲しい。
想像するだけで顔が熱くなってしまうではないか。
「あと、カリン陛下がロキ様を抱く時にベストな体位はどれかっていう談義もしてましたね」
「なんだと?!」
「カーク!」
「あっ?!」
リヒターがそれ以上言うなと止めにかかったのを見ると、どうやらそっちは秘密だったらしい。
「…………詳しく聞こうか?」
「え?ロキ様に殺されるのでそれはちょっと…」
「俺も黙秘します」
「なんだと?!」
「気になるのならご自分でロキ陛下にお尋ねください」
「横に同じです」
「~~~~っ!!」
この二人に訊いた俺が馬鹿だった。
「もういい!ロキに訊く!」
そうして俺は怒りながらロキの帰りをひたすら待った。
カチャ…。
すっかり待ちくたびれて眠ってしまっていた深夜。
ドアを開く音が耳に入って、ゆっくりと意識が浮上していく。
「ん…」
「兄上?寝てていいですよ」
「ロキ…?」
「様子を見に来ただけですから」
それはつまり一緒には寝ないということじゃないだろうか?
「やっ…!」
一緒に寝てほしい。
どこにもいかないで欲しい。
そんな思いでロキの衣服をそっと掴んで引き留める。
「一緒に…寝たい」
「いいんですか?」
「もう怒ってないから…」
そう言ったらそっと頭を撫でられて、そのままキスで唇をふさがれた。
「無神経なことを言ってしまってすみませんでした」
その言葉に俺は素直に頷きを落とす。
「あれから皆に話を聞いてもらったら、相変わらずずれてるって笑われて、天然でグサグサ刺し殺しに行くなんて流石ドSって散々言われちゃいました」
どうやら裏の連中はロキを揶揄って遊んでいたらしい。
いつもそんな感じなんだろうか?
なんだか羨ましくなった。
俺にも気心の知れた飲み仲間がいればいいのに…。
(今度マーシャルかエディオンでも誘って飲みに行こうか?)
意外と悪くないかもしれない。
ロキのことを愚痴るには補佐官よりもそちらの方が話を聞いてくれやすそうではあった。
「ロキ。取り敢えずこっちに来い」
そう言って掛け布を捲ると先にシャワーだけ浴びてきますと言ってサラリと躱されてしまう。
「…………ちゃんと戻ってきてくれるか?」
「戻ってきますよ?なので先に寝ててください」
「……待ってる」
そう答えた俺にロキは嬉しそうに顔をほころばせて、『すぐに戻ってきます』と言い部屋から出て行った。
「兄上。お待たせしました」
そう言いながら戻ってきたロキは本当に急いでシャワーを浴びたらしく、髪からはポタポタ水滴が落ちている始末。
「タオルを貸せ。風邪を引くぞ?」
そう言ってタオルを奪ってロキの頭をガシガシ拭いてやる。
すると嬉しそうにしながらクスクスと笑いだした。
「どうした?」
「いいえ。なんでも」
「なんでもないことがあるか!気になるから言え」
「でも兄上は聞きたくないと思って」
その答えになんとなくリヒター絡みだと察しがついてしまう。
きっと俺がリヒターの話なんて聞きたくないと言ったから気を遣ってるんだろう。
その分話してくれる内容が減って、秘密っぽくなりそうだなとなんだかモヤモヤしてしまった。
「……リヒター絡みでもいい。ちゃんとなんでも話してほしい」
「え?」
「秘密にされる方が嫌だ」
「ふふっ。我儘ですね」
そう言いながらもロキは、リヒターに何度かこうやって頭を拭いてもらって気持ちよかったから、俺にもしてもらえて嬉しいと言った。
「そうか。他にもやってもらって嬉しかったことはあるか?」
「他ですか?そうですね…」
それからちょっと考えてから、俺がいないような眠れない夜は、よく眠れるようにとホットミルクを用意してくれたり、添い寝をしてくれたりするからつい甘えてしまうんだと笑顔で話され嫉妬してしまった。
とは言えロキの話しぶりからは、なんだか恋人というより一般的な母親について話しているような印象を受けた。
まあ母親は子供を抱いたりしないから微妙なところだが…。
「それで?リヒターの部屋に泊まった時は何の話をしたんだ?」
取り敢えずここが大事とばかりに、そう話を切り出してみる。
「え?リヒターの部屋でですか?」
「ああ」
「概ね全部兄上の話でしたけど?」
「そ…そうか」
どうやらそこを隠す気はないらしい。
「可愛い兄上の話で盛り上がれるのはリヒターかカークくらいのものでしょう?裏の皆は相談には乗ってくれますけど、惚気は聞いてくれないんですよね」
「まあそうだろうな」
敵認定されている俺との惚気なんてとても聞いてもらえるとは思えない。
そもそも悩み相談に乗ってもらえることの方が不思議だ。
本当にちゃんと真面に悩み相談になってるんだろうか?
別れろと口々に言われていないか心配だ。
(それにしてもリヒターに対しても残酷な奴だな)
どこの世界に自分のことを好きな相手に別の相手との惚気話をする奴がいるんだ?
流石に同情してしまう。
それに比べたら自分はまだマシだったのかもしれない。
(まあいい)
それよりも気になるのは例のアレだ。
「時にロキ。気になることを聞いたんだが…」
「なんでしょう?」
「俺がロキを抱く時のベストな体位について、話していたらしいな?」
「知りません」
ニコッと誤魔化すロキ。
いつもの俺なら誤魔化されるが、今日は誤魔化される気はない!
「知らないなんてことはないだろう?ちゃんと聞いたんだぞ?!」
「じゃあ俺から聞く必要はないですよね?」
「ぐっ…」
「兄上が聞いたように抱いてみますか?それとも俺が愛撫から教えましょうか?」
「……その言い方はズルい」
絶対にわかってて言っている。
その証拠にロキは余裕の表情を崩さないんだから。
(この余裕を崩してやりたい…!)
俺にだってやればできるというところを見せてやりたい。
でも、どうやって?
(そうだ!ロキの真似をしてやろう!)
俺がいつもと違うことをするなんてきっとロキは考えていないはずだし、きっとこの方法なら余裕を崩してやることができるはず。
そう思って俺はロキに口づけ『抱いてやる』と言ってやった。
思えばこれまで俺は正攻法でロキに挑み過ぎてたように思う。
基本的に正常位とバックと後は騎乗位くらいのものだろうか?
敢えて言うなら、奥まで挿れるのにちょっと苦しい態勢を取らせたりはしたが、それくらいだろう。
そこまで考えてふとこの間の闇医者の実技講習を思い出した。
『カリン陛下。相手がどこで感じるのかちゃんと把握できてますか?前立腺の位置さえ知らないとか言いませんよね?』
流石にそれくらいはわかるとその時は言ったが、そう言えばロキがどこで感じるとか、全然把握していなかった気がする。
これまでは適当に突いてたらそのうち感じるところに当たるだろうと考えていたし、リヒターと一緒にロキを抱いた時は既に感じている状態ばかりだったから気にしなくても良かったんだ。
はっきり言って『喘いだら気持ちがいいってことなんだろうな』程度の認識しかない。
そんな自分だからダメなんだろうと今は反省はしたし、今日はそれを踏まえた上で頑張ってみようか?
折角指導してもらったんだ。それを生かさない手はない。
「ロキ。俺の特訓の成果を見せてやる」
そう言ってやったらロキは目を丸くした後、クスリと笑った。
きっといつも通りの展開になると思っているんだろうが、見ていろ!
あそこは俺にはアウェーなんだから迂闊に近寄るなと。
それと、今日の件についての報告もある程度は受けた。
やはりユーツヴァルトがメルケ国の城に保護された件で出掛けていたらしい。
俺が話を聞かなかったせいで、ロキ的には自分で考えてみようと直接動いたのだとか。
「何故止めない?!」
「場合によっては裏の連中任せでも良かったかもしれませんが、今後のことを考えてロキ陛下の成長のために敢えて止めませんでした」
「なっ…!」
「ロキ陛下はこの国の王ですが、普段からどちらかというと消極的です。なので本人がやる気を出した時が成長を促すタイミング。それを逃す気はありません」
安全をしっかり確保しつつロキの成長も促すのが傍にいる者の役割だとリヒターが言い切った。
それに対してカーライルも確かにと頷いている。
「でも…俺はロキには安全な場所にいてほしいんだ」
危険な場所にわざわざ向かう必要はない。
だってロキは王なのだから。
「俺も大概過保護ですが、カリン陛下は更に酷いですね」
「うるさい!」
「大事に大事に城に囲ってしまえば確かに安全かもしれませんが、それだと以前の二の舞ですよ?」
それは恐らく護衛を大量につけた時のことを示唆しているのだろう。
息が詰まってロキが追い込まれたアレだ。
確かに言われてみればその通りだが…。
「それでも心配なんだ…」
だからそう溢した。
それに対してリヒターはあっさりとこう答えてくる。
「だからこそ俺やカークがいるんですよ」
リヒターはロキの側近になるより騎士を望んでいる。
それは偏にいついかなる時もロキをすぐそばで守れるようにとの思いからだ。
「お前はズルい」
俺だってロキの傍で守ってやりたいのに、王配という立場は仕事では助けてやれても、実際にこの手で守ってやることができない。
こうして置いて行かれたら何もできないのだ。
「悔しい…」
腹立たしい。
でもそれは俺があまりにも不甲斐ないからだ。
これがあのセドリック王子だったならきっとロキをしっかり守る手を打つのだろうとも思う。
「結局ロキが頼るのは俺じゃなくお前だ…」
「そんなことはありませんよ。ロキ陛下はちゃんと貴方を頼っています。今回だってちゃんと相談に行ったでしょう?」
「…………。でも昨日はお前の部屋に行った」
「そうですね。でも全部カリン陛下のお話でした。それに何かご不満でも?」
「……?!う、嘘を吐くな!」
「本当ですよ。お疑いならカークにも聞いてみてください。その場にいましたから」
「カーライル!」
「え?本当ですよ?ロキ様、カリン陛下のどこが可愛いとか惚気たり、リヒターと一緒にカリン陛下の感じる体位の話で盛り上がったりしてましたけど…」
「なっ?!」
そんな恥ずかしい話で盛り上がらないで欲しい。
想像するだけで顔が熱くなってしまうではないか。
「あと、カリン陛下がロキ様を抱く時にベストな体位はどれかっていう談義もしてましたね」
「なんだと?!」
「カーク!」
「あっ?!」
リヒターがそれ以上言うなと止めにかかったのを見ると、どうやらそっちは秘密だったらしい。
「…………詳しく聞こうか?」
「え?ロキ様に殺されるのでそれはちょっと…」
「俺も黙秘します」
「なんだと?!」
「気になるのならご自分でロキ陛下にお尋ねください」
「横に同じです」
「~~~~っ!!」
この二人に訊いた俺が馬鹿だった。
「もういい!ロキに訊く!」
そうして俺は怒りながらロキの帰りをひたすら待った。
カチャ…。
すっかり待ちくたびれて眠ってしまっていた深夜。
ドアを開く音が耳に入って、ゆっくりと意識が浮上していく。
「ん…」
「兄上?寝てていいですよ」
「ロキ…?」
「様子を見に来ただけですから」
それはつまり一緒には寝ないということじゃないだろうか?
「やっ…!」
一緒に寝てほしい。
どこにもいかないで欲しい。
そんな思いでロキの衣服をそっと掴んで引き留める。
「一緒に…寝たい」
「いいんですか?」
「もう怒ってないから…」
そう言ったらそっと頭を撫でられて、そのままキスで唇をふさがれた。
「無神経なことを言ってしまってすみませんでした」
その言葉に俺は素直に頷きを落とす。
「あれから皆に話を聞いてもらったら、相変わらずずれてるって笑われて、天然でグサグサ刺し殺しに行くなんて流石ドSって散々言われちゃいました」
どうやら裏の連中はロキを揶揄って遊んでいたらしい。
いつもそんな感じなんだろうか?
なんだか羨ましくなった。
俺にも気心の知れた飲み仲間がいればいいのに…。
(今度マーシャルかエディオンでも誘って飲みに行こうか?)
意外と悪くないかもしれない。
ロキのことを愚痴るには補佐官よりもそちらの方が話を聞いてくれやすそうではあった。
「ロキ。取り敢えずこっちに来い」
そう言って掛け布を捲ると先にシャワーだけ浴びてきますと言ってサラリと躱されてしまう。
「…………ちゃんと戻ってきてくれるか?」
「戻ってきますよ?なので先に寝ててください」
「……待ってる」
そう答えた俺にロキは嬉しそうに顔をほころばせて、『すぐに戻ってきます』と言い部屋から出て行った。
「兄上。お待たせしました」
そう言いながら戻ってきたロキは本当に急いでシャワーを浴びたらしく、髪からはポタポタ水滴が落ちている始末。
「タオルを貸せ。風邪を引くぞ?」
そう言ってタオルを奪ってロキの頭をガシガシ拭いてやる。
すると嬉しそうにしながらクスクスと笑いだした。
「どうした?」
「いいえ。なんでも」
「なんでもないことがあるか!気になるから言え」
「でも兄上は聞きたくないと思って」
その答えになんとなくリヒター絡みだと察しがついてしまう。
きっと俺がリヒターの話なんて聞きたくないと言ったから気を遣ってるんだろう。
その分話してくれる内容が減って、秘密っぽくなりそうだなとなんだかモヤモヤしてしまった。
「……リヒター絡みでもいい。ちゃんとなんでも話してほしい」
「え?」
「秘密にされる方が嫌だ」
「ふふっ。我儘ですね」
そう言いながらもロキは、リヒターに何度かこうやって頭を拭いてもらって気持ちよかったから、俺にもしてもらえて嬉しいと言った。
「そうか。他にもやってもらって嬉しかったことはあるか?」
「他ですか?そうですね…」
それからちょっと考えてから、俺がいないような眠れない夜は、よく眠れるようにとホットミルクを用意してくれたり、添い寝をしてくれたりするからつい甘えてしまうんだと笑顔で話され嫉妬してしまった。
とは言えロキの話しぶりからは、なんだか恋人というより一般的な母親について話しているような印象を受けた。
まあ母親は子供を抱いたりしないから微妙なところだが…。
「それで?リヒターの部屋に泊まった時は何の話をしたんだ?」
取り敢えずここが大事とばかりに、そう話を切り出してみる。
「え?リヒターの部屋でですか?」
「ああ」
「概ね全部兄上の話でしたけど?」
「そ…そうか」
どうやらそこを隠す気はないらしい。
「可愛い兄上の話で盛り上がれるのはリヒターかカークくらいのものでしょう?裏の皆は相談には乗ってくれますけど、惚気は聞いてくれないんですよね」
「まあそうだろうな」
敵認定されている俺との惚気なんてとても聞いてもらえるとは思えない。
そもそも悩み相談に乗ってもらえることの方が不思議だ。
本当にちゃんと真面に悩み相談になってるんだろうか?
別れろと口々に言われていないか心配だ。
(それにしてもリヒターに対しても残酷な奴だな)
どこの世界に自分のことを好きな相手に別の相手との惚気話をする奴がいるんだ?
流石に同情してしまう。
それに比べたら自分はまだマシだったのかもしれない。
(まあいい)
それよりも気になるのは例のアレだ。
「時にロキ。気になることを聞いたんだが…」
「なんでしょう?」
「俺がロキを抱く時のベストな体位について、話していたらしいな?」
「知りません」
ニコッと誤魔化すロキ。
いつもの俺なら誤魔化されるが、今日は誤魔化される気はない!
「知らないなんてことはないだろう?ちゃんと聞いたんだぞ?!」
「じゃあ俺から聞く必要はないですよね?」
「ぐっ…」
「兄上が聞いたように抱いてみますか?それとも俺が愛撫から教えましょうか?」
「……その言い方はズルい」
絶対にわかってて言っている。
その証拠にロキは余裕の表情を崩さないんだから。
(この余裕を崩してやりたい…!)
俺にだってやればできるというところを見せてやりたい。
でも、どうやって?
(そうだ!ロキの真似をしてやろう!)
俺がいつもと違うことをするなんてきっとロキは考えていないはずだし、きっとこの方法なら余裕を崩してやることができるはず。
そう思って俺はロキに口づけ『抱いてやる』と言ってやった。
思えばこれまで俺は正攻法でロキに挑み過ぎてたように思う。
基本的に正常位とバックと後は騎乗位くらいのものだろうか?
敢えて言うなら、奥まで挿れるのにちょっと苦しい態勢を取らせたりはしたが、それくらいだろう。
そこまで考えてふとこの間の闇医者の実技講習を思い出した。
『カリン陛下。相手がどこで感じるのかちゃんと把握できてますか?前立腺の位置さえ知らないとか言いませんよね?』
流石にそれくらいはわかるとその時は言ったが、そう言えばロキがどこで感じるとか、全然把握していなかった気がする。
これまでは適当に突いてたらそのうち感じるところに当たるだろうと考えていたし、リヒターと一緒にロキを抱いた時は既に感じている状態ばかりだったから気にしなくても良かったんだ。
はっきり言って『喘いだら気持ちがいいってことなんだろうな』程度の認識しかない。
そんな自分だからダメなんだろうと今は反省はしたし、今日はそれを踏まえた上で頑張ってみようか?
折角指導してもらったんだ。それを生かさない手はない。
「ロキ。俺の特訓の成果を見せてやる」
そう言ってやったらロキは目を丸くした後、クスリと笑った。
きっといつも通りの展開になると思っているんだろうが、見ていろ!
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