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171.※ロロイア国へ⑧ Side.ロロイア王妃&カリン

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【Side.ロロイア王妃】

私の息子が、愛するキュリアスがガヴァムの狂王に連れ去られた。
どうして?
淫乱な王配カリンを正しく接待しようとしただけでしょう?
何が悪いと言うの?

「キュリアスは何も悪くないわ!」

許せない。
こんなこと、許されていいはずがない。
そう。許されていいはずがないのだ。

「それならいっそ帰る前に…!」

ロロイアは薬に特化した国だ。
当然普通の薬だけではなく媚薬から毒薬まで千差万別。
帰るまでに確実に殺せるよう毒を盛ろう。
さて、何の毒がいいだろう?
すぐに楽にするのも癪だ。
眠るように死ぬのもダメ。
キュリアスの苦しみをわからせてやるためにできるだけ酷いものがいい。
あの綺麗な顔が爛れるようなものにしてやろうか?
いや、女じゃないからそこに重きを置いていない可能性もあるかもしれない。
それなら不能になる薬?
いや確実に殺したいからそれではダメだ。

「そうだわ。錯乱系にして自分で自死させてやればいいのよ」

それなら勝手に自分で死んだということになるからこちらが責められることもない。
これでいこう。

そう思って早速厨房へと足を運んだ。
毒の種類を指示し、今日の晩餐のメインに盛るよう伝えておいた。
幸いこの毒は風味が香草と近しいからバレにくい。
部屋で食べるこの状況では他と比べようがないからうってつけだ。

「うふふ。見ていなさいよ」

そう思いながらほくそ笑んだ。


***


【Side.カリン】

コンコンコン。
ロキを嬉々として受け入れていると唐突に部屋の扉がノックされた。
ロキが誰何の声を掛けると、思いがけず相手はセドリック王子だった。
一体何をしに来たのだろう?
『取り込み中でもよければ』とロキが言ったのに対し、『別にいい』と返してきたからには何か深刻な話なんだろう。
仕方がない。
ここは一旦切り上げようと名残惜しい気持ちでいたら、ロキが「そんな寂しそうな顔をしないでください」と言って繋がったまま膝の上に俺を乗せてきた。

「ちゃんと抜かずにいてあげますから」

密やかにそう言われたものの、流石にこれはマズくないかと思わないでもない。
けれど俺が何かを言う前にセドリック王子は部屋へと入ってきてしまった。
ロキの方は全く気にした様子はないが、俺は恥ずかしくてたまらなかった。
羞恥に顔に熱がたまってしまう。

「セドリック王子。どうかされましたか?」

俺を抱きしめながらロキが尋ねると、セドリック王子は気にした様子もなくあっさりと要件を口にした。

「実はさっきこっちの食事に毒が盛られていてな。アルフレッドが食べて大変だったんだ。これから報復に行くが、その前にお前達にも警告しておいてやろうと思ってな」
「「?!」」

その言葉があまりにもあり得ないものだったため、俺もロキも思わずセドリック王子を凝視してしまう。

「何故こちらではなくそちらに?」

それは本当にそう思った。
もしかしてこちらに盛る予定の毒が手違いでセドリック王子達の方にいってしまったんだろうか?

「さてな。俺がお前の味方をしたのが気に入らなかったのか、あるいはどうせ破滅するなら道連れにとでも思われたか…」
「それはとんだとばっちりでしたね。ご迷惑をおかけしてすみません」

いずれにせよ命知らずにもほどがある行為だ。
この王子を怒らせてただで済むとは思えない。
案の定、セドリック王子はあっさりと結論を口にした。

「いや。昨日もやらかした上でこれだったからな。死にたいならお望み通り殺してやる。一応聞いてやるが、別に構わないな?」

最早それは決定事項と言わんばかり。
けれどここでロキが何でもないことのように話を振った。

「まあこちらとしては別に構いませんけど、逆にロロイアから薬が入らなくなってそちらは困りませんか?」
「そうだな。小さくとも薬に関してはトップの国だからうちは取引も多い、少々厄介と言えば厄介だが…」
「それなら完全に潰すのではなくトップだけ入れ替えたらどうです?ちょうどこの間メルケ国のトップを冷遇されていた王族に挿げ替えたら上手くいったんですよね」
「ほお?」
「ここもほら、誰か適当な王族に挿げ替えるか、どこからか適当な人材を持ってきたらどうです?」
「確かにその方が混乱は少ないだろうな」

まさかのセドリック王子の説得に成功した。
ロキは本当にやることが凄い。
これでロロイアの王城ですぐさま皆殺しとはならずに済むのではないだろうか?
しかもロキはここでまさかの便乗する行動に出た。

「でしょう?そうだ!ついでにこちらも十年後に退位の許可をもらいたいんですけど」
「十年後?」
「ええ。兄上が在位十周年に記念パーティーを開きたいって言うので、そこまでは頑張って、後は某国で伯爵として悠々自適に暮らそうかなと」
「ほお?楽しそうだな」
「でしょう?兄上と四六時中一緒にいられるなんて夢みたいですよね」

嬉々として将来を語ってくれるのはいいが、そこは一つの区切りだ!
勝手に退位をしようとするな!

「幸せそうで何よりだ。そうだな。十年国をもたせることができたなら褒美に退位を許してもいいぞ」
「本当ですか?!」

しかも絶対にOKを出しそうになかったはずのセドリック王子がまさか、許可を出すなんて!

(ありえない!)

そう思って抗議しようと思ったのに、興奮したロキの腰が揺れてつい甘い声が口から飛び出してしまった。

「あ…んっ、ロキ、勝手なこと、言う、なっ!」

けれどロキは全く気にした様子はなく、嬉しそうに抱きしめてくるばかり。

「兄上。でも老後まで一緒だって約束してくれたじゃありませんか」

確かに言ったけど、それとこれとは別だ!

(なんとか説得しないと…!)

そう思うのに、何故かドSスイッチが入ったのか、楽しそうに俺を虐め始めてしまった。
背面座位の体位で、セドリック王子に見せつけるように大きく開脚させられて羞恥に顔が真っ赤に染まる。
しかも強めに突き上げられて思わず嬌声を上げてしまった。

「兄上。気持ちいいですか?」
「あっ、ロキ!深いぃ…これダメぇ…」
「ふふっ。ここをこうして抉りながら恥ずかしい格好をさせられるのに弱いんですよね?」
「い、やだっ!ロキッ!」

頼むからやめて欲しい。
ロキは見せるのが楽しいのかも知れないが、セドリック王子からしたら見たくないものを無理矢理見せられているようなものだ。
ただでさえアルフレッドが毒を摂取してしまったことでピリピリしているだろうに、ここでこれは自殺行為としか思えない。

(殺されるぞ?!)

そう思った矢先に物凄い殺気が飛んできて、その恐怖に思わずロキを思い切り締め付けてしまう。

(ひっ!)

『殺される!』と怯える俺とは対照的に、ロキは何故かご満悦だ。

「セドリック王子の殺気で兄上の締め付けが凄いです。ありがとうございます」

ニコニコと上機嫌で言い放ったロキに、俺は『死んだ』と思ったが、予想に反してセドリック王子はさっさと殺気を引っ込め、剣さえ突きつけてはこなかった。
何故だ…。
何にせよロキが殺されなくて本当に良かった。

「取り敢えずロロイア王にどういうつもりか問い詰めに行ってくる。お前達はあれは絶対に食べるな。特にロキ。お前が錯乱したらヤバそうだからな」

その言葉に盛られた毒が錯乱系の物だったことがわかって、背筋が寒くなる。
毒耐性薬で一番ロキに強く作用したのが錯乱系の毒だった。
つまりそれが一番ロキと相性が悪いということに他ならないと俺は考えている。
アルフレッドには悪いが、ロキが摂取する前に気づいてくれて本当に良かった。
もしロキが摂取していたらと考えると、怖くて仕方がなかったから。

「わかりました。念のため水にも気を付けておきますね」
「ああ、そうしろ」

セドリック王子はそう言って部屋から出て行ったが、俺はロキの目がチラリと夕餉の皿に向けられたのを見逃さなかった。
だからそちらから意識をそらせたくて、必死に後ろを振り向きながらロキの唇を奪いにかかる。

「ロキ。耐毒効果を試したいなら闇医者がいる場で裏の者達の許可を得て試せ。あれはダメだ。それに…俺を満足させてくれるんじゃなかったのか?」

ちょっとあざといかもしれないが、俺は潤む目で上目遣いにロキを誘った。
何でもいいから毒のことを忘れてほしかった。
間違っても自分から毒を口にしてほしくはない。

「可愛い兄上…。ちゃんと満足するまで可愛がってあげますね?」

結果的に俺の目論見は成功し、ロキは毒を摂取することよりも俺を満足させる方を選んでくれた。
そのこと自体にホッとしつつ、俺はロキの手で最高の快楽を与えてもらい、あっという間に溺れていったのだった。



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