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168.ロロイア国へ⑤ Side.リヒター&ロキ
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部屋に飛び込むとすぐ扉前にいた男達が飛びかかってきたので速やかに制圧する。
「カリン陛下!」
その姿を探して声を上げるとベッドの上でキュリアス王子に押し倒され犯されている姿が目に入った。
「何事だ。騒々しい」
しかも踏み込まれた側のキュリアス王子は淡々とこちらを見やり全く焦った様子もない。
状況がわからなくて戸惑いを隠せない。
取り敢えずカリン陛下本人に尋ねるのがいいのだろうか?
「キュリアス王子。速やかにカリン陛下から離れていただきたい」
「ふん。無粋な近衛騎士の言葉に俺が素直に従うとでも?」
不遜な態度でそう言い放たれたがカリン陛下はロキ陛下の大切な人だ。
こちらとしてはこのまま黙って言うことを聞く気はない。
だからスラリと剣を抜き放ち、その喉笛へと突きつける。
「離れろと言っている。誰の許可を得てロキ陛下の大切な王配に手を出しているのか聞かせていただこう」
流石に剣を突き付けられた状況でそう問われたら強気には出られなかったのか大人しく両手を上げた。
「カリン陛下。動けますか?」
「いや。おかしな香を焚かれたせいでまだそこまで動けそうにない」
「わかりました。マーシャル!」
そうしてマーシャルに声をかけてカリン陛下をそこから助け出し保護することに成功した。
「中に出されていないですか?」
「大丈夫だ。遅漏だったしな」
「そうなんですか?」
「ああ」
泣いていた様子もないし、どうやら中にも出されていないようで少しだけホッとする。
「カリン陛下。暴力は振るわれていませんか?」
「それは大丈夫だ」
「乱暴にも抱かれていませんか?」
「ああ。むしろ物足りなさ過ぎて…」
「それは…あるかもしれませんね。あれだけロキ陛下に可愛がってもらっている貴方が普通に抱かれるだけで満足できたら逆に凄いです。俺だって道具がないと無理ですよ」
正直言ってカリン陛下の求めている基準は相当高い。
だからこそ俺はロキ陛下に色々教えてもらいながら抱いてきたのだ。
ちょっと上手いだけの王子が道具も使わず満足させられるはずがなかった。
「ロキ陛下の責めはそれはもう素晴らしいですからね!ちょっと上手いだけの王子にあのレベルまで到達できるはずがありませんよ!俺ももう一度抱かれたい!」
マーシャルがうっとりとそんなことを言うが、それを聞いたキュリアス王子が苦々しい顔で言葉を紡ぐ。
「ちょっと上手いだけの王子だと?不敬だぞ!」
「先に不敬を働いたのはそちらでしょう?この件は速やかに報告し、然るべき処断をしていただくつもりです」
「ふん。俺はこの国の王太子だぞ?次期王だ。罰されることなど有り得ない」
鼻で笑って取り合わないが、彼はわかっていないのだろうか?
ロキ陛下の怒りを買ってしまったということに。
この件を報告すればきっとただでは済まない。
寧ろ今この瞬間にでも国を飛び出しこちらに向かってきている可能性すらあるというのに。
それからカリン陛下を部屋へと連れ帰り、シャワーへと連れて行って部屋の警護を更に厳重にした。
なんだったら全員カリン陛下の部屋に詰めたと言っても過言ではない。
交代で仮眠をとって万全を期す。
その合間にロキ陛下に連絡を取ると案の定こちらへと向かってる最中だと言われた。
しかも思っていた以上に飛ばしてくるらしく、夕刻には着く予定らしい。
カリン陛下を心配している気持ちがそれだけで痛いほどに伝わってくる。
大切なカリン陛下を託して下さっていたのに、その信頼を裏切ってしまって情けない気持ちでいっぱいになってしまう。
会ったらすぐに誠心誠意謝罪して気が済むよう罰してもらおう。
そうして朝を迎え、改めて王へと抗議を入れて夕刻にはロキ陛下もここへ来ると伝えておいた。
真夜中にかなり騒ぎになったということもありどうやらセドリック王子にも何かがあったというのが伝わったようで、帰るのを急遽取りやめたと聞いた。
面白がっているのは明らかだ。
呑気に構えているのは問題を起こした当の本人くらいではないだろうか?
王がキュリアス王子に事実確認をしたところ彼はこう言ったらしい。
「カリン陛下への接待の一環です。カリン陛下も特に拒絶しませんでしたし、同意の上ですよ」
ロロイア王に抗議を入れに行った際、その言葉を聞かされて俺達全員がどれだけ憎悪の感情を抱いたことか。
あの王子はどこまでこちらを馬鹿にすれば気が済むのだろう?
腹立たしいことこの上ない。
唯一の救いがあるとすればカリン陛下が特に気にした様子がないことくらいだろうか?
(ロキ陛下…)
どれだけお怒りか────その心境が読めないだけに、どうしても憂鬱なため息が止まらなかった。
***
【Side.ロキ】
リヒターに兄の寝顔をシャメルで撮ってもらおうと思ってツンナガールで連絡を入れたのに、兄が攫われたと聞かされた。
それを聞いた俺はすぐさま着替えて手早く道具をマジックバッグへと放り込み、ワイバーンの元へと向かった。
そこにいたのはカークとオーリオ。
多分オーリオがカークを急いで捕まえて連れてきてくれたんだろう。
「行くんだろ?」
「ああ」
「食料は携帯食、水は最低限で飛ばしていくぞ」
「いいのか?」
「もちろん。でないとお前がやばいだろ?」
それは確かにその通りだ。
兄に何かあったら俺が正気でいられる自信がない。
補佐官達には後でツンナガールで連絡を入れるだけで十分だろう。
仕事より兄の安否の方が大事だ。
そう思ったからオーリオに手綱を握ってもらい一気にロロイアへと飛んだ。
「今日はこっちに味方するようにいい風が吹いてやがる。これなら上手くいけば夕刻には着くぞ」
「そんなに早く?」
「俺は風をつかむのが上手いんだよ」
そう言ってオーリオが笑った。
途中リヒターから無事に兄を救出したと聞かされたけど、引き返すという選択肢はなかった。
取り敢えずキュリアス王子は俺がこの手で断罪するから誰も手を出さないようにと伝えておいた。
絶対にただで済ませる気はない。
そう思っていたら何故かセドリック王子からツンナガールに連絡が入った。
「はい?」
『ロキか。もしかして今ロロイアに向かっていたりするか?』
「ええ」
『そうか。いつ着く?』
「今日の夕刻予定ですが?」
『意外と早いな。それなら帰るのを一日伸ばそう』
その言葉にもしかして今ロロイアにいるのかと思って尋ねてみると、まさにその通りだった。
益々もってすぐに兄の元に行ってやりたい気持ちが強くなる。
「……セドリック王子。兄はキュリアス王子に泣かされていませんでしたか?」
『さあな。そこまでは知らん。ただ、攫われて寝たのは寝たらしいぞ?』
「……そうですか」
俺がいないのにあんな人に襲われたならきっと凄く心細かったんじゃないだろうか?
泣いていないといいけれど…。
「兄上…」
でももし二人きりで楽しんでたらどうしよう?
俺が知らないところで、兄が可愛く蕩けて溺れていたら?
(……凄く嫌だな)
まあ余程でない限りは大丈夫だろうけど、もしそんな事になってたら、嫉妬からキュリアス王子を嬲って嬲って嬲り尽くしてしまうかもしれない。
だから俺は通話を切った後、カークとオーリオを見比べて、より望む答えをくれそうな方へと声を掛けた。
「オーリオ」
「なんだ、ロキ坊?」
「快楽堕ちさせた後、生きているのが辛いって泣き叫びたくなるほどの絶望ってなんだろう?」
「怖ぇな?!まあいいけどよ」
そう言ってオーリオがいくつか教えてくれたから、一番キュリアス王子が絶望しそうなものを考えながら、俺はロロイアへと思いを馳せた。
****************
※カリンが満足しててもしていなくても、実はどっちも気に入らないロキだったりします。
ロキは自分の許可なくカリンに手を出されるのが大嫌いなので。
「カリン陛下!」
その姿を探して声を上げるとベッドの上でキュリアス王子に押し倒され犯されている姿が目に入った。
「何事だ。騒々しい」
しかも踏み込まれた側のキュリアス王子は淡々とこちらを見やり全く焦った様子もない。
状況がわからなくて戸惑いを隠せない。
取り敢えずカリン陛下本人に尋ねるのがいいのだろうか?
「キュリアス王子。速やかにカリン陛下から離れていただきたい」
「ふん。無粋な近衛騎士の言葉に俺が素直に従うとでも?」
不遜な態度でそう言い放たれたがカリン陛下はロキ陛下の大切な人だ。
こちらとしてはこのまま黙って言うことを聞く気はない。
だからスラリと剣を抜き放ち、その喉笛へと突きつける。
「離れろと言っている。誰の許可を得てロキ陛下の大切な王配に手を出しているのか聞かせていただこう」
流石に剣を突き付けられた状況でそう問われたら強気には出られなかったのか大人しく両手を上げた。
「カリン陛下。動けますか?」
「いや。おかしな香を焚かれたせいでまだそこまで動けそうにない」
「わかりました。マーシャル!」
そうしてマーシャルに声をかけてカリン陛下をそこから助け出し保護することに成功した。
「中に出されていないですか?」
「大丈夫だ。遅漏だったしな」
「そうなんですか?」
「ああ」
泣いていた様子もないし、どうやら中にも出されていないようで少しだけホッとする。
「カリン陛下。暴力は振るわれていませんか?」
「それは大丈夫だ」
「乱暴にも抱かれていませんか?」
「ああ。むしろ物足りなさ過ぎて…」
「それは…あるかもしれませんね。あれだけロキ陛下に可愛がってもらっている貴方が普通に抱かれるだけで満足できたら逆に凄いです。俺だって道具がないと無理ですよ」
正直言ってカリン陛下の求めている基準は相当高い。
だからこそ俺はロキ陛下に色々教えてもらいながら抱いてきたのだ。
ちょっと上手いだけの王子が道具も使わず満足させられるはずがなかった。
「ロキ陛下の責めはそれはもう素晴らしいですからね!ちょっと上手いだけの王子にあのレベルまで到達できるはずがありませんよ!俺ももう一度抱かれたい!」
マーシャルがうっとりとそんなことを言うが、それを聞いたキュリアス王子が苦々しい顔で言葉を紡ぐ。
「ちょっと上手いだけの王子だと?不敬だぞ!」
「先に不敬を働いたのはそちらでしょう?この件は速やかに報告し、然るべき処断をしていただくつもりです」
「ふん。俺はこの国の王太子だぞ?次期王だ。罰されることなど有り得ない」
鼻で笑って取り合わないが、彼はわかっていないのだろうか?
ロキ陛下の怒りを買ってしまったということに。
この件を報告すればきっとただでは済まない。
寧ろ今この瞬間にでも国を飛び出しこちらに向かってきている可能性すらあるというのに。
それからカリン陛下を部屋へと連れ帰り、シャワーへと連れて行って部屋の警護を更に厳重にした。
なんだったら全員カリン陛下の部屋に詰めたと言っても過言ではない。
交代で仮眠をとって万全を期す。
その合間にロキ陛下に連絡を取ると案の定こちらへと向かってる最中だと言われた。
しかも思っていた以上に飛ばしてくるらしく、夕刻には着く予定らしい。
カリン陛下を心配している気持ちがそれだけで痛いほどに伝わってくる。
大切なカリン陛下を託して下さっていたのに、その信頼を裏切ってしまって情けない気持ちでいっぱいになってしまう。
会ったらすぐに誠心誠意謝罪して気が済むよう罰してもらおう。
そうして朝を迎え、改めて王へと抗議を入れて夕刻にはロキ陛下もここへ来ると伝えておいた。
真夜中にかなり騒ぎになったということもありどうやらセドリック王子にも何かがあったというのが伝わったようで、帰るのを急遽取りやめたと聞いた。
面白がっているのは明らかだ。
呑気に構えているのは問題を起こした当の本人くらいではないだろうか?
王がキュリアス王子に事実確認をしたところ彼はこう言ったらしい。
「カリン陛下への接待の一環です。カリン陛下も特に拒絶しませんでしたし、同意の上ですよ」
ロロイア王に抗議を入れに行った際、その言葉を聞かされて俺達全員がどれだけ憎悪の感情を抱いたことか。
あの王子はどこまでこちらを馬鹿にすれば気が済むのだろう?
腹立たしいことこの上ない。
唯一の救いがあるとすればカリン陛下が特に気にした様子がないことくらいだろうか?
(ロキ陛下…)
どれだけお怒りか────その心境が読めないだけに、どうしても憂鬱なため息が止まらなかった。
***
【Side.ロキ】
リヒターに兄の寝顔をシャメルで撮ってもらおうと思ってツンナガールで連絡を入れたのに、兄が攫われたと聞かされた。
それを聞いた俺はすぐさま着替えて手早く道具をマジックバッグへと放り込み、ワイバーンの元へと向かった。
そこにいたのはカークとオーリオ。
多分オーリオがカークを急いで捕まえて連れてきてくれたんだろう。
「行くんだろ?」
「ああ」
「食料は携帯食、水は最低限で飛ばしていくぞ」
「いいのか?」
「もちろん。でないとお前がやばいだろ?」
それは確かにその通りだ。
兄に何かあったら俺が正気でいられる自信がない。
補佐官達には後でツンナガールで連絡を入れるだけで十分だろう。
仕事より兄の安否の方が大事だ。
そう思ったからオーリオに手綱を握ってもらい一気にロロイアへと飛んだ。
「今日はこっちに味方するようにいい風が吹いてやがる。これなら上手くいけば夕刻には着くぞ」
「そんなに早く?」
「俺は風をつかむのが上手いんだよ」
そう言ってオーリオが笑った。
途中リヒターから無事に兄を救出したと聞かされたけど、引き返すという選択肢はなかった。
取り敢えずキュリアス王子は俺がこの手で断罪するから誰も手を出さないようにと伝えておいた。
絶対にただで済ませる気はない。
そう思っていたら何故かセドリック王子からツンナガールに連絡が入った。
「はい?」
『ロキか。もしかして今ロロイアに向かっていたりするか?』
「ええ」
『そうか。いつ着く?』
「今日の夕刻予定ですが?」
『意外と早いな。それなら帰るのを一日伸ばそう』
その言葉にもしかして今ロロイアにいるのかと思って尋ねてみると、まさにその通りだった。
益々もってすぐに兄の元に行ってやりたい気持ちが強くなる。
「……セドリック王子。兄はキュリアス王子に泣かされていませんでしたか?」
『さあな。そこまでは知らん。ただ、攫われて寝たのは寝たらしいぞ?』
「……そうですか」
俺がいないのにあんな人に襲われたならきっと凄く心細かったんじゃないだろうか?
泣いていないといいけれど…。
「兄上…」
でももし二人きりで楽しんでたらどうしよう?
俺が知らないところで、兄が可愛く蕩けて溺れていたら?
(……凄く嫌だな)
まあ余程でない限りは大丈夫だろうけど、もしそんな事になってたら、嫉妬からキュリアス王子を嬲って嬲って嬲り尽くしてしまうかもしれない。
だから俺は通話を切った後、カークとオーリオを見比べて、より望む答えをくれそうな方へと声を掛けた。
「オーリオ」
「なんだ、ロキ坊?」
「快楽堕ちさせた後、生きているのが辛いって泣き叫びたくなるほどの絶望ってなんだろう?」
「怖ぇな?!まあいいけどよ」
そう言ってオーリオがいくつか教えてくれたから、一番キュリアス王子が絶望しそうなものを考えながら、俺はロロイアへと思いを馳せた。
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