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152.他国からの客人⑱ Side.ユーフェミア王女&レオ
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ロキ陛下とバルコニーで何やら話していたカールを見て、何があったのかと最初は驚いた。
何故ならカールが泣いていたから。
怒鳴られたわけでも暴力を振るわれたわけでもないのに、何故かカールは泣いていた。
しかもロキ陛下と別れた後、二人きりになったところで深々とカールは私に頭を下げたのだ。
「姉上。自己満足とわかった上でけじめとして謝罪をさせて欲しい。本当に申し訳なかった」
パーティー会場の隅で人もあまりいない場所とは言え、いきなりそんな行動に出られて驚くなという方がおかしい。
(あの…傲慢なカールが……)
反抗ばかりで傲慢さを隠しもしなかったカールが初めてこんな風に謝ってきたことに驚き過ぎて咄嗟に身動きが取れず固まってしまう。
「テリー達の件についても監督不行き届きだったと父上には謝罪しようと思う」
「そ…そう…」
あまりの変わりようにそう答えるのがやっとだった。
一瞬頭でも打ったのかと疑ってしまう自分さえいたほどだ。
本当にどうしてしまったのだろう?
一先ず手分けしてテリーを探しましょうと言われ、慌てて本来の目的を思い出し探しはしたものの、頭の中はカールのことでいっぱいだった。
その後レオナルド皇子にも事情を話し、ついでにカールの件も話してみたのだけれど、話を聞いたレオナルド皇子は実に面白そうな顔で『流石ロキ!相変わらずだなぁ』と笑っていた。
どうやらロキ陛下は相当躾のエキスパートのようだ。
「ロキはさ、妙に相手の心に響くことを言ったり、したりしてくるんだ」
『甘ったれていた自分にも渇を入れてくれたんだ』とレオナルド皇子はどこか照れ臭そうに笑う。
「カール王子が変わったなら、ユフィも安心してレトロンに帰れそうだね」
けれどそんな言葉に少しだけ胸が痛んだ。
確かにその通りかもしれないけれど、思いのほかミラルカでの生活は心地よくて、レオナルド皇子の隣も居心地が良かった。
どこか破天荒なレオナルド皇子は自分にないものを沢山持っていて、ハラハラしたりドキドキしたりさせられたものだ。
王族として常に自分を律し揺るがぬ鉄の意思で学び続け、気高くあり続けてきた自分だけれど、彼の前に出るとそんな肩ひじ張って生きている自分が酷くつまらない存在であるような気にさせられる。
もっと自由にのびのび生きてもいいのではないか?
もっと型にはまらず自分らしく生きる術がどこかにあるのではないか?
そんな気持ちにさせられるのだ。
完璧であれと育った自分だけれど、完璧でなくていいというお手本が目の前にあって、だからなのか、彼の傍に居ると気づけば表情は緩み、ホッと息を吐いていることもしばしばあった。
そんなレオナルド皇子の傍を離れて国に帰る────。
(おかしなものね)
そこが元々の自分の居場所だったはずなのに、ミラルカに慣れた今の自分には酷く息苦しそうな場所に思えて仕方がなかった。
できればこのまま────。
そうは思うけど、元はカールに命を狙われ保護という名目で婚約を交わし滞在が許されていたのだ。
元々レオナルド皇子の好みの女性はミーシャ嬢のように明るいタイプで、自分とは天と地ほども離れた可愛げのある女性。
政略結婚とは言っても、いつこの婚約がなくなってもおかしくはない。
「ユフィ?どうかした?」
「いいえ。なんでもありませんわ」
「そう?」
「ええ」
心配そうに聞いてくれるレオナルド皇子は相も変わらずお人好しだ。
この人はこのまま私と結婚してくれるだろうか?それとも…これ幸いと他の相手を探すだろうか?
ふとそんな風に考える自分がいた。
***
【Side.レオナルド皇子】
ユフィからカール王子が改心したという話を聞いて『流石ロキ!』と思った。
こういうことに関してはロキの右に出る者はいないと思う。
だからカール王子に関しては安心できたんだけど、何故かユフィの表情が冴えない気がする。
これで安心して国に帰れるのに、どうしてそんなに暗い顔をしてるんだろう?
他にも何か気になることがあるんだろうか?
(う~ん…わかんないな)
大事な婚約者だし、ちゃんと話して一緒に悩みを解決した方がいいだろうか?
ユフィとは成り行きで婚約した仲ではあるけれど、一緒に暮らしてみて色々わかったことがある。
彼女は本当はとっても可愛らしい人だということ。
見た目は冷たそうだし、常に王族とはこうあるべきという見本のように振舞うから最初は苦手なタイプと思っていた。
でも苦手なワイバーンに乗っている時だったり、薔薇なんかみたいに好きなものの話をする時は素の表情をのぞかせるんだ。
そんな時に『ああ、可愛いなぁ』なんてつい思ってしまう。
鉱山ホテルで見た凛とした姿もドキッとさせられたし、どうも彼女の色んな顔に弱い気がする。
だからもっと素を見せて欲しくて、勝手に愛称で呼んでみたり、あれこれ積極的に話しかけてみたり、わざとハラハラさせるようなことをやってみたりもしてみた。
そんなに肩ひじ張って完璧な仮面をかぶらなくていいから、怒ったり笑ったりする顔を俺に見せて欲しい。
そう思いながら一緒に過ごしてきた。
今ではできればこのまま結婚したいなと思えるくらいには想ってるんだけど…もしかして振られちゃうのかな?
もし断り文句を考えててこんな表情になってるのなら嫌だ。
(でも彼女からしたら俺ってダメダメ皇子だろうし…)
無理と思われたらそれまでだろう。
取り敢えず様子を見てから考えよう。
どうしても諦められなくて困ったらまたロキに相談に乗ってもらおうと思いながら、俺もユフィと共にテリーの姿を探すけど、どうやらこの会場内にはいないっぽい。
仕方がないから会場の外も探そうと思って、ユフィには引き続き中を探してくれと伝えて回廊に出た。
念の為トイレの中も探そうと思ってそちらに向かい、特に隠れている様子もなかったのでついでに用を足して外に出る。
すると酔い覚ましにでも来たのか、シャイナー陛下がこちらへと歩いてくるのが見えた。
「レオ」
「シャイナー陛下。酔い覚ましですか?」
「そうしているとちゃんとミラルカの皇太子だな。いつもとは大違いだ」
「いつもはロキがいるからだし」
「こちらとしてはいつも通りで構わない。それよりロキを見なかったか?」
「え?いないの?」
「ああ。折角話そうと思っていたのに…」
そうして話していたところで少し離れた所から『ロキ様!』という鋭い声が聞こえて来て、揃ってバッとそちらへと目を向けた。
(あれは絶対に何かにまた巻き込まれてる!)
そう思ったのは俺だけじゃなくて、気づけばシャイナー陛下と一緒に走り出していた。
ロキの元へ駆けつけるとキュリアス王子に連れ去られそうになっていたから、やっぱりと思って急いで助けようと思った。
でも蓋を開けてみれば俺もシャイナー陛下も出番がなくて、ロキは自力で脱出しているし、懐から出した縄であっという間に縛り上げて踏みつけてるし、ロキのマイペースさには本当に敵わないなと脱力してしまう。
いや、いいんだけど…いいんだけどさ?
何だろう?凄く疲れた。
しかもその後カリン陛下が来てから何があったのかを聞いたんだけど、最早溜息しか出ない。
(どうしてわざわざカリン陛下との閨に誰かを誘おうとするかな?)
ロキらしいと言えばロキらしいのかも知れないけど、やっぱりかなりズレてるよね?
(普通はそんなことしないから!)
そりゃあカリン陛下も説教の一つや二つ、したくはなるだろう。
いくらロキに染まってるとは言っても、カリン陛下の方はまだ常識的だから。
リヒターに捕まえておけと言いたくなる気持ちも十分すぎるほどにわかってしまう。
大体ロキはいつも隙があり過ぎるんだ。
シャイナー陛下の時もそうだったし、ブルーグレイの王宮で連れ去られた時もそうだった。
本人的に『自分で解決できるから平気』って感じなんだけど、振り回される周囲はたまったものではない。
ここはひとつ、本気で反省を促してやって欲しいと思う。
(でも…難しいかな?)
カリン陛下はなんだかんだでロキに甘いところがあるし、リヒターなんかも普段からロキに激甘だから無理かもしれない。
(そもそもロキ自身、ご主人様気質だもんな…)
だからきっと誰にもロキを調教できる相手なんていないと思う。
いっそセドリック王子なら可能かもしれないけど…。
(怖くて頼める気はしないな。うん)
それからカリン陛下が捕まえてくれていたテリーについても話を聞いて、ユフィやカール王子に事情を説明してくるよう伝えられ、一先ずその場を後にすることに。
ロキの件は兎も角、テリーが見つかって本当に良かった。
これでユフィの憂いも少しは晴れるだろう。
そう思いながら歩いていると、何やら様子を窺っている気配を感じたからわざと警備の甘い方へと足を向けてみる。
すると狙い通り、恐らくテリーを狙っていたであろう刺客らしき者達が現れた。
多分さっきテリーと一緒に居たから狙ってきたんだと思う。
脅して事情でも聞こうとしたのかな?
でもお生憎様。
ちゃんと暗部は護衛にいるんだよ?
「レオナルド様!」
そう言って武器もちゃんと投げてくれるしね。
アルフレッド程ではないけど、これでも剣術はかなり得意だし、こんな刺客達に後れを取ることはないから。
キンキンッ!
暗器だって弾いてみせる!
ロキが暗器の練習をしてるって聞いたから遊んでもらおうと思っていっぱい練習したんだ。
ついでにユフィをドキドキハラハラさせられるし、一石二鳥と思って張り切って訓練したからかなり上手になったと思う。
『変なところで役に立ったな』と思いながら気配を読んで飛来物は全部叩き落してやった。
そうやって自分の暗部と協力して全員倒すことに成功する。
「ふぅ…。これで安心」
万が一にでもロキやユフィ達に危害を加える心配はないだろう。
「ま、他にも残党はいるかもしれないけど」
それだけが心配だ。
「他にも怪しい者が入り込んでいないか調べてくれ」
「御意」
ガヴァムの警備は全く当てにしていないから大目に暗部を連れて来ててよかった。
そう思いながら俺はそのまま一度剣を暗部に託し、悠々とした足取りでパーティー会場へと戻ったのだった。
****************
※何気にレオはこっそり活躍中。
※次話はカリン&リヒター×ロキのRなお仕置き話です。
ロキ受けなので苦手な方はパスしてください。
宜しくお願いしますm(_ _)m
何故ならカールが泣いていたから。
怒鳴られたわけでも暴力を振るわれたわけでもないのに、何故かカールは泣いていた。
しかもロキ陛下と別れた後、二人きりになったところで深々とカールは私に頭を下げたのだ。
「姉上。自己満足とわかった上でけじめとして謝罪をさせて欲しい。本当に申し訳なかった」
パーティー会場の隅で人もあまりいない場所とは言え、いきなりそんな行動に出られて驚くなという方がおかしい。
(あの…傲慢なカールが……)
反抗ばかりで傲慢さを隠しもしなかったカールが初めてこんな風に謝ってきたことに驚き過ぎて咄嗟に身動きが取れず固まってしまう。
「テリー達の件についても監督不行き届きだったと父上には謝罪しようと思う」
「そ…そう…」
あまりの変わりようにそう答えるのがやっとだった。
一瞬頭でも打ったのかと疑ってしまう自分さえいたほどだ。
本当にどうしてしまったのだろう?
一先ず手分けしてテリーを探しましょうと言われ、慌てて本来の目的を思い出し探しはしたものの、頭の中はカールのことでいっぱいだった。
その後レオナルド皇子にも事情を話し、ついでにカールの件も話してみたのだけれど、話を聞いたレオナルド皇子は実に面白そうな顔で『流石ロキ!相変わらずだなぁ』と笑っていた。
どうやらロキ陛下は相当躾のエキスパートのようだ。
「ロキはさ、妙に相手の心に響くことを言ったり、したりしてくるんだ」
『甘ったれていた自分にも渇を入れてくれたんだ』とレオナルド皇子はどこか照れ臭そうに笑う。
「カール王子が変わったなら、ユフィも安心してレトロンに帰れそうだね」
けれどそんな言葉に少しだけ胸が痛んだ。
確かにその通りかもしれないけれど、思いのほかミラルカでの生活は心地よくて、レオナルド皇子の隣も居心地が良かった。
どこか破天荒なレオナルド皇子は自分にないものを沢山持っていて、ハラハラしたりドキドキしたりさせられたものだ。
王族として常に自分を律し揺るがぬ鉄の意思で学び続け、気高くあり続けてきた自分だけれど、彼の前に出るとそんな肩ひじ張って生きている自分が酷くつまらない存在であるような気にさせられる。
もっと自由にのびのび生きてもいいのではないか?
もっと型にはまらず自分らしく生きる術がどこかにあるのではないか?
そんな気持ちにさせられるのだ。
完璧であれと育った自分だけれど、完璧でなくていいというお手本が目の前にあって、だからなのか、彼の傍に居ると気づけば表情は緩み、ホッと息を吐いていることもしばしばあった。
そんなレオナルド皇子の傍を離れて国に帰る────。
(おかしなものね)
そこが元々の自分の居場所だったはずなのに、ミラルカに慣れた今の自分には酷く息苦しそうな場所に思えて仕方がなかった。
できればこのまま────。
そうは思うけど、元はカールに命を狙われ保護という名目で婚約を交わし滞在が許されていたのだ。
元々レオナルド皇子の好みの女性はミーシャ嬢のように明るいタイプで、自分とは天と地ほども離れた可愛げのある女性。
政略結婚とは言っても、いつこの婚約がなくなってもおかしくはない。
「ユフィ?どうかした?」
「いいえ。なんでもありませんわ」
「そう?」
「ええ」
心配そうに聞いてくれるレオナルド皇子は相も変わらずお人好しだ。
この人はこのまま私と結婚してくれるだろうか?それとも…これ幸いと他の相手を探すだろうか?
ふとそんな風に考える自分がいた。
***
【Side.レオナルド皇子】
ユフィからカール王子が改心したという話を聞いて『流石ロキ!』と思った。
こういうことに関してはロキの右に出る者はいないと思う。
だからカール王子に関しては安心できたんだけど、何故かユフィの表情が冴えない気がする。
これで安心して国に帰れるのに、どうしてそんなに暗い顔をしてるんだろう?
他にも何か気になることがあるんだろうか?
(う~ん…わかんないな)
大事な婚約者だし、ちゃんと話して一緒に悩みを解決した方がいいだろうか?
ユフィとは成り行きで婚約した仲ではあるけれど、一緒に暮らしてみて色々わかったことがある。
彼女は本当はとっても可愛らしい人だということ。
見た目は冷たそうだし、常に王族とはこうあるべきという見本のように振舞うから最初は苦手なタイプと思っていた。
でも苦手なワイバーンに乗っている時だったり、薔薇なんかみたいに好きなものの話をする時は素の表情をのぞかせるんだ。
そんな時に『ああ、可愛いなぁ』なんてつい思ってしまう。
鉱山ホテルで見た凛とした姿もドキッとさせられたし、どうも彼女の色んな顔に弱い気がする。
だからもっと素を見せて欲しくて、勝手に愛称で呼んでみたり、あれこれ積極的に話しかけてみたり、わざとハラハラさせるようなことをやってみたりもしてみた。
そんなに肩ひじ張って完璧な仮面をかぶらなくていいから、怒ったり笑ったりする顔を俺に見せて欲しい。
そう思いながら一緒に過ごしてきた。
今ではできればこのまま結婚したいなと思えるくらいには想ってるんだけど…もしかして振られちゃうのかな?
もし断り文句を考えててこんな表情になってるのなら嫌だ。
(でも彼女からしたら俺ってダメダメ皇子だろうし…)
無理と思われたらそれまでだろう。
取り敢えず様子を見てから考えよう。
どうしても諦められなくて困ったらまたロキに相談に乗ってもらおうと思いながら、俺もユフィと共にテリーの姿を探すけど、どうやらこの会場内にはいないっぽい。
仕方がないから会場の外も探そうと思って、ユフィには引き続き中を探してくれと伝えて回廊に出た。
念の為トイレの中も探そうと思ってそちらに向かい、特に隠れている様子もなかったのでついでに用を足して外に出る。
すると酔い覚ましにでも来たのか、シャイナー陛下がこちらへと歩いてくるのが見えた。
「レオ」
「シャイナー陛下。酔い覚ましですか?」
「そうしているとちゃんとミラルカの皇太子だな。いつもとは大違いだ」
「いつもはロキがいるからだし」
「こちらとしてはいつも通りで構わない。それよりロキを見なかったか?」
「え?いないの?」
「ああ。折角話そうと思っていたのに…」
そうして話していたところで少し離れた所から『ロキ様!』という鋭い声が聞こえて来て、揃ってバッとそちらへと目を向けた。
(あれは絶対に何かにまた巻き込まれてる!)
そう思ったのは俺だけじゃなくて、気づけばシャイナー陛下と一緒に走り出していた。
ロキの元へ駆けつけるとキュリアス王子に連れ去られそうになっていたから、やっぱりと思って急いで助けようと思った。
でも蓋を開けてみれば俺もシャイナー陛下も出番がなくて、ロキは自力で脱出しているし、懐から出した縄であっという間に縛り上げて踏みつけてるし、ロキのマイペースさには本当に敵わないなと脱力してしまう。
いや、いいんだけど…いいんだけどさ?
何だろう?凄く疲れた。
しかもその後カリン陛下が来てから何があったのかを聞いたんだけど、最早溜息しか出ない。
(どうしてわざわざカリン陛下との閨に誰かを誘おうとするかな?)
ロキらしいと言えばロキらしいのかも知れないけど、やっぱりかなりズレてるよね?
(普通はそんなことしないから!)
そりゃあカリン陛下も説教の一つや二つ、したくはなるだろう。
いくらロキに染まってるとは言っても、カリン陛下の方はまだ常識的だから。
リヒターに捕まえておけと言いたくなる気持ちも十分すぎるほどにわかってしまう。
大体ロキはいつも隙があり過ぎるんだ。
シャイナー陛下の時もそうだったし、ブルーグレイの王宮で連れ去られた時もそうだった。
本人的に『自分で解決できるから平気』って感じなんだけど、振り回される周囲はたまったものではない。
ここはひとつ、本気で反省を促してやって欲しいと思う。
(でも…難しいかな?)
カリン陛下はなんだかんだでロキに甘いところがあるし、リヒターなんかも普段からロキに激甘だから無理かもしれない。
(そもそもロキ自身、ご主人様気質だもんな…)
だからきっと誰にもロキを調教できる相手なんていないと思う。
いっそセドリック王子なら可能かもしれないけど…。
(怖くて頼める気はしないな。うん)
それからカリン陛下が捕まえてくれていたテリーについても話を聞いて、ユフィやカール王子に事情を説明してくるよう伝えられ、一先ずその場を後にすることに。
ロキの件は兎も角、テリーが見つかって本当に良かった。
これでユフィの憂いも少しは晴れるだろう。
そう思いながら歩いていると、何やら様子を窺っている気配を感じたからわざと警備の甘い方へと足を向けてみる。
すると狙い通り、恐らくテリーを狙っていたであろう刺客らしき者達が現れた。
多分さっきテリーと一緒に居たから狙ってきたんだと思う。
脅して事情でも聞こうとしたのかな?
でもお生憎様。
ちゃんと暗部は護衛にいるんだよ?
「レオナルド様!」
そう言って武器もちゃんと投げてくれるしね。
アルフレッド程ではないけど、これでも剣術はかなり得意だし、こんな刺客達に後れを取ることはないから。
キンキンッ!
暗器だって弾いてみせる!
ロキが暗器の練習をしてるって聞いたから遊んでもらおうと思っていっぱい練習したんだ。
ついでにユフィをドキドキハラハラさせられるし、一石二鳥と思って張り切って訓練したからかなり上手になったと思う。
『変なところで役に立ったな』と思いながら気配を読んで飛来物は全部叩き落してやった。
そうやって自分の暗部と協力して全員倒すことに成功する。
「ふぅ…。これで安心」
万が一にでもロキやユフィ達に危害を加える心配はないだろう。
「ま、他にも残党はいるかもしれないけど」
それだけが心配だ。
「他にも怪しい者が入り込んでいないか調べてくれ」
「御意」
ガヴァムの警備は全く当てにしていないから大目に暗部を連れて来ててよかった。
そう思いながら俺はそのまま一度剣を暗部に託し、悠々とした足取りでパーティー会場へと戻ったのだった。
****************
※何気にレオはこっそり活躍中。
※次話はカリン&リヒター×ロキのRなお仕置き話です。
ロキ受けなので苦手な方はパスしてください。
宜しくお願いしますm(_ _)m
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