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146.※他国からの客人⑫ Side.カリン
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その話は寝耳に水の話だった。
「カリン陛下!ロキ陛下がエリザ王女との縁談に乗り気だと言う話は本当ですか?!」
俺がパーティーの警備配置を確認しながら各所に指示を出していたら、突然内務大臣が嬉々とした満面の笑みで俺にそんなことを言ってきた。
「何の話だ?」
「先程オスカー王子が今朝ロキ陛下にエリザ王女との縁談話をしたところ、笑顔でカリン陛下に相談してから決めたいと返されたと言っておりまして、これはもう本決まりなのではと!」
あのロキ陛下が側室を取ってくださるなんてと大臣はすっかり舞い上がっているが、俺はそんな話は聞いていない。
何かの間違いではないのかと思ったものの、そう言えばと思い出す。
今朝ロキは俺に何かを話そうとしていた。
もしかしてあの時、これについて話そうとしていたんだろうか?
(いや。でもそんな大事な話ならもっと食い下がって必死に話しにくるはずだ)
ついでにその件でリヒターとも話したいとかなんとか言っていなかっただろうか?
(何故リヒターが関係してくるんだ?)
『側室を迎えようと思うんだけどどう思う?』と相談しようとでも思ったんだろうか?
俺が聞かなかったから?
「リヒター!リヒターはいるか?!」
そうして執務室の前で護衛に当たっていたリヒターを捕まえて尋ねてみたが、ロキは今日は仕事が忙しいらしく、休憩時間も取らないままずっと執務室に籠っているから、全く話せていないと言われてしまった。
つまり話は自分達の状況を置き去りにしたまま大臣達に広まっているということかと愕然となる。
このまま外堀を埋められたら断れなくなってしまう。
(どうしていつもみたいに即断らないんだ!)
もしかしてエリザ王女が気に入ったんだろうか?
ロキの性癖にマッチするような話で盛り上がったとか、それともフォルティエンヌで作られた夜の道具は一味違うとでも言って乗せられたんだろうか?
ロキはああ見えて真新しいものが好きだし、何か気に入るような魔道具でもちらつかせられて『政略結婚ならまあいいか。国と国の繋がりなら兄上も納得しそうだし』などとお気楽に考えたんじゃないかと凄く心配になった。
(ちゃんと話を聞いておけばよかった…)
いつものロキがあまりにも俺中心と言う感じだから油断してしまったとしか言いようがない。
取り敢えず、対処法を考えないといけないし、事実確認とロキの本音を確認したい。
そう思いながら執務室へと突撃した。
「ロキ!!エリザ王女を側室にするというのは本当か?!」
勢い任せに言わないと泣いてしまうと思いながらそう告げると、どこかキョトンとした顔で小首を傾げ、『いえ。兄上に断り方を相談しようと思ってたんですけど?』と返ってきた。
断り方ってなんだ、断り方って?!
思わず脱力する答えに反射的に言い返してしまう。
「遅すぎる!早く言え!」
朝一番にちゃんと伝えてくれていたらすぐ済んだ話だったのにと、聞かなかった自分を改めて呪いたくなった。
外堀は既にほとんど埋められてしまっている。
ここから断るのはきっとかなり難しいだろう。
ロキは大袈裟だと言うが、国と国同士だからこそ断り辛い話というのはあるのだ。
特にフォルティエンヌとは三ヵ国事業に多々貢献してくれた国だ。
ここで無碍に断り心証を悪くすることは恩を仇で返す様なもの。
それは流石にマズいだろう。
断りたい。
でも断れない。
ロキは断る気満々だが、何か名案でもあるのかと尋ねると安易な答えが返って来てガックリ肩を落とした。
やっぱりここは自分が何か考えないといけないだろう。
なんとか食事会で心証を悪くしないよう話を弾ませた上で、少し考えさせてほしいと言ってみようか?
最終的に破談になればそれでいい。
そう思いながら食事会に挑んでみたが、場は既にすっかり相手ペース。
外堀は埋め終わり、他国の者達にまでお祝いムードが広がっていて、ここまで来たら諦めるしかない気がしてきた。
どうしよう。どうしたら…。
焦る気持ちばかりが空回り、いい現状打破の案が全く出てこない。
どうして俺はロキが絡むとポンコツになるんだろう?
そうして歯痒い思いでいたら、ロキが笑顔でどんどん話を進めていった。
表面上は穏やかに、けれど縁談はあくまでも検討中だと周囲にしっかりと伝えていく。
その姿を見てオスカー王子は俺へとターゲットを変えてきた。
きっと俺の方が国と国同士の付き合いを前面に押し出した場合、説得がしやすいと踏んだのだと思う。
ロキはその点とてもシンプルで、そこに重きを置いていないから、オスカー王子的に説得には不向きと判断したのだろう。
俺が国に重きを置いているのはある意味つけ込みやすい隙に繋がってしまうのだと痛感した。
結局キャサリン嬢の援護射撃もあり、かなり自然に破談になりそうな空気で食事会は終わりを迎えたが、俺は無力感でいっぱいだった。
ガヴァム式の結婚式を知らなかった者もこれなら破談になっても仕方ないと言った同情的な目で成り行きを見守っていたし、ロキがガヴァムの伝統というのを前面に押し出した事で、こちらを批判するような者も誰一人としていなかった。
それ自体はホッとしたし、良かったと思う。
でも────真剣に検討しないといけませんねとロキが言った時、俺は胸を抉られたようなショックを受けた。
ロキが俺じゃない相手を結婚式で抱くという、そのことを想像しただけで苦しくて、悲しくて、泣きたくなった。
勿論そこに愛がないこともわかっているし、ロキからすれば断る一択だから問題ないでしょうといった軽い気持ちで言った言葉なんだろうけれど、それが現実になったら俺はきっと絶望的な気持ちに陥ってしまうような気がする。
(くそっ!もっとしっかりしないと…!)
母の件であんなにもこれからはしっかりしなければと心に誓ったと言うのに…!
ロキとラブラブなのはいいが、腑抜けになったら意味がない。
そうやって自分自身に激しく腹を立てていたら、何故かロキに拗ねていると勘違いされてしまった。
違うのに。
「兄上。そんなに拗ねないでください。ちゃんと断りやすいように話したじゃないですか」
「…別に拗ねてない」
「じゃあ何に怒っているのか、ちゃんと話してもらえませんか?」
以前とは違ってちゃんと俺に向き合ってくれるロキ。
そんなロキに俺もちゃんと向き合うべきだけど、俺は自分に怒っているだけなんだ。
そんな情けないこと、口にできるはずがない。
だから代わりにもう一つの気持ちを吐き出しておく。
「…………お前が…」
「俺が?」
「俺以外の誰かをよがり狂わせる姿なんて見たくなくて……」
嫌なんだ。
素直な気持ちを口にしてみた。
すると凄く幸せそうな顔で笑ってロキは俺を見つめてくる。
「兄上。そんなに可愛いとここで抱いてしまいますよ?」
「うっ……だ、誰もいない…か?」
誰もいないなら抱いてほしいとは思った。
ロキに抱いてもらえたら嫌な気持ちを全部忘れさせてもらえるような気がしたから。
「こんな夜にここまで来る酔狂な客人もいないのでは?近衛も皆ちゃんと離れてくれてますし大丈夫でしょう?」
そう言いながらもロキはさり気なく近衛達に合図を送り、こちらに客人達が入ってこないようにはしてくれた。
これなら安心だ。
そう思ってホッとしたところで、優しく俺の唇を塞いでこられた。
舌が差し込まれ、弱いところを的確に擽っていく。
それが気持ちが良くて、つい熱っぽい眼差しを向けてしまう。
「んん…ロキ……」
火照った身体を外気が心地良く冷ましてくれるけど、それ以上にロキの手が俺を的確に嬲って身の内を焦がしていくのを感じた。
「ふ…うぅ…」
服の隙間から滑り込んできた手で腹を撫で上げられ、耳朶を食まれ、ちろりと舐め上げられるとたまらない気持ちにさせられる。
「カリン…」
俺にだけ聞こえる囁くような声で名を呼ばれれば、ゾクゾクして甘い声が口からこぼれ落ちた。
「あ…はぁ、ん…ぅ……」
身体が期待でどんどん熱くなり、早く抱いて欲しくてたまらなくなる。
そんな俺にロキはこともなげに言い放つ。
「声はできれば我慢してくださいね?」
「そ、そんなっ…」
それは正直言ってかなり難しい。
「ふふっ。ここに滞在している皆さんに聞こえてもいいなら止めませんけど」
「や、やぁ…っ」
でもそれは嫌だ。
とは言え部屋まで連れて行ってと言えないくらいには熱が高まっていて、とても我慢できそうにない。
「頑張って声を殺しながら俺に犯されてください」
凄く楽しそうにするロキの姿にゾクゾクさせられながら、俺は熱の籠った期待に染まった眼差しを向ける。
するとそれを受けてわかっているとばかりに弱いところを責め始めるロキ。
身体をまさぐり官能を引き出していくその手技はいつもながら凄まじく、劣情をこれでもかと煽られてしまった。
するりと内腿を撫で上げたかと思うと胸をコリコリと可愛がり、かと思えば背を指先でツツツと辿られ身悶えさせられる。
そして後ろも焦らしながら少しずつほぐされて、早く早くと気ばかりが急いてしまった。
「ふぁあっ!ロキッ、ロキぃ…。も、早くぅっ…!」
「ふふっ。そんなに欲しいなら広げながらおねだりしてください。上手にできたら挿れてあげますよ?」
(ああ、本当に大好き過ぎてたまらない…)
ロキの嗜虐に染まった顔が俺の心を満たしていく。
俺だけのご主人様が俺を虐めてくるこの至福の時に拒絶の言葉なんて紡げるはずがない。
「う…ご、ご主人様、淫乱なメス穴に挿れて奥の奥まで躾けてください…」
早くロキに滅茶苦茶に犯されたい。
それしか考えられなくて、自分でそこを指で広げながら強請ってしまった。
「いい子ですね」
「────ッあぁっ!~~~~ッ!!」
抱き寄せられながらそのままバックで挿れられて、悲鳴を絡めとるように唇を塞がれた。
しかもそのまま片足を抱え上げられて、恥ずかしい格好を取らされながら突き上げられる。
それがまた大好きなところに当たりまくって気持ち良過ぎてたまらない。
「やぁ…ロキ、凄いぃ…っ。奥、気持ちいィ…っ!」
「兄上は恥ずかしい格好も俺に奥まで挿れられるのも大好きですもんね。たっぷり味わってください」
「あっあっ、きもひぃい、すごいぃ…っ!」
奥をズンズン突かれては時折ちゅぽんと抜かれるその感覚に夢中になってしまう。
カリが奥から抜かれる瞬間が特に良くて、何度でも堪能したくなった。
やっぱりロキのものは最高だと思わざるを得ない。
テクニックもそうだが、やはり逸物の形が大好きだ。
離したくなくてついつい強請る声に甘さが滲んでしまう。
「あぁん…もっと、もっとぉ…!」
「ふふっ。こんなにトロトロになって。本当に兄上は俺のをここでしゃぶるのが大好きですね」
そう言いながら奥をグリグリかき混ぜられて、ついつい涎が出てしまう。
「ほら、こんなに美味しそうに咥えこんで」
「はぁあ…しゅき…っ、これ、しゅきぃ…っ」
「可愛いカリン。このままイくところをあそこにいる皆に見てもらいましょうか?カリンが声を我慢しないから、痴態が観たくて仕方がない者達が無理矢理見学に来てしまいましたよ?」
「ひやぁ…っ!あっあっ、んぅ…っ!」
「ちゃんとイくところを見せてあげましょうね」
そう言ってロキは腰を押し付けるようにしながら奥を容赦なく責め始める。
「あっあっ!ダメッ!ダメぇッ!そこッ、我慢できないっ!イイッ!気持ちイイッ!あぁんっ!」
誰かに見られているのが酷く恥ずかしい。
けれどそれがまた気持ち良さに輪をかけていく。
ただでさえ絶妙な責め苦に身体はどんどん追い込まれていくのに、羞恥心と相俟ってもうとても耐えきれそうになかった。
それでもなんとか声は我慢しなければと必死になりながら両手で口を塞ごうとしたけれど、その両手は抱き寄せてきているロキに封じられて、舌を吸い上げられながらイかされる羽目に。
「~~~~ッ!!」
はっきり言って気持ちいいなんてものじゃない。
天国を見たような錯覚に襲われながらそのまま何度もイかされ続ける。
「ふふ…本当に見られながらするのが大好きですよね?ねえ、兄上?締め付けが凄いことになってますよ?」
そこからは正直よく覚えてなくて、気づけば部屋のベッドで朝を迎えていた。
何かを忘れているような気がしたけど、なんだったっけといくら考えても全く何も思い出せない。
そんな俺に隣からそっと引き寄せられて、チュッとキスを落とされ甘く微笑まれたら当然ロキの方に意識が向いてしまうというものだ。
「兄上。おはようございます」
「…おはよう」
「ん…。顔色もいいですね。できる限り煩わしいことは俺が片付けておくので、兄上は今日も各国の方々のおもてなしをお願いしますね?」
「ああ。お前も俺がいなくても仕事をサボらないように」
「サボりませんよ。サボりたくてもライオネルがいたらサボらせてもらえませんし」
「そうか。ならいい。間違っても他の補佐官を丸め込んで逃げるなよ?」
「わかってます」
今日もそれぞれの仕事をこなしてパーティー本番に向けて頑張ろうと、俺はチュッとロキにキスをした。
****************
※近衛達は『客人達が』来ないようにしていただけで、ロキのイヌ達は合言葉一つで通しちゃいました。
「カリン陛下!ロキ陛下がエリザ王女との縁談に乗り気だと言う話は本当ですか?!」
俺がパーティーの警備配置を確認しながら各所に指示を出していたら、突然内務大臣が嬉々とした満面の笑みで俺にそんなことを言ってきた。
「何の話だ?」
「先程オスカー王子が今朝ロキ陛下にエリザ王女との縁談話をしたところ、笑顔でカリン陛下に相談してから決めたいと返されたと言っておりまして、これはもう本決まりなのではと!」
あのロキ陛下が側室を取ってくださるなんてと大臣はすっかり舞い上がっているが、俺はそんな話は聞いていない。
何かの間違いではないのかと思ったものの、そう言えばと思い出す。
今朝ロキは俺に何かを話そうとしていた。
もしかしてあの時、これについて話そうとしていたんだろうか?
(いや。でもそんな大事な話ならもっと食い下がって必死に話しにくるはずだ)
ついでにその件でリヒターとも話したいとかなんとか言っていなかっただろうか?
(何故リヒターが関係してくるんだ?)
『側室を迎えようと思うんだけどどう思う?』と相談しようとでも思ったんだろうか?
俺が聞かなかったから?
「リヒター!リヒターはいるか?!」
そうして執務室の前で護衛に当たっていたリヒターを捕まえて尋ねてみたが、ロキは今日は仕事が忙しいらしく、休憩時間も取らないままずっと執務室に籠っているから、全く話せていないと言われてしまった。
つまり話は自分達の状況を置き去りにしたまま大臣達に広まっているということかと愕然となる。
このまま外堀を埋められたら断れなくなってしまう。
(どうしていつもみたいに即断らないんだ!)
もしかしてエリザ王女が気に入ったんだろうか?
ロキの性癖にマッチするような話で盛り上がったとか、それともフォルティエンヌで作られた夜の道具は一味違うとでも言って乗せられたんだろうか?
ロキはああ見えて真新しいものが好きだし、何か気に入るような魔道具でもちらつかせられて『政略結婚ならまあいいか。国と国の繋がりなら兄上も納得しそうだし』などとお気楽に考えたんじゃないかと凄く心配になった。
(ちゃんと話を聞いておけばよかった…)
いつものロキがあまりにも俺中心と言う感じだから油断してしまったとしか言いようがない。
取り敢えず、対処法を考えないといけないし、事実確認とロキの本音を確認したい。
そう思いながら執務室へと突撃した。
「ロキ!!エリザ王女を側室にするというのは本当か?!」
勢い任せに言わないと泣いてしまうと思いながらそう告げると、どこかキョトンとした顔で小首を傾げ、『いえ。兄上に断り方を相談しようと思ってたんですけど?』と返ってきた。
断り方ってなんだ、断り方って?!
思わず脱力する答えに反射的に言い返してしまう。
「遅すぎる!早く言え!」
朝一番にちゃんと伝えてくれていたらすぐ済んだ話だったのにと、聞かなかった自分を改めて呪いたくなった。
外堀は既にほとんど埋められてしまっている。
ここから断るのはきっとかなり難しいだろう。
ロキは大袈裟だと言うが、国と国同士だからこそ断り辛い話というのはあるのだ。
特にフォルティエンヌとは三ヵ国事業に多々貢献してくれた国だ。
ここで無碍に断り心証を悪くすることは恩を仇で返す様なもの。
それは流石にマズいだろう。
断りたい。
でも断れない。
ロキは断る気満々だが、何か名案でもあるのかと尋ねると安易な答えが返って来てガックリ肩を落とした。
やっぱりここは自分が何か考えないといけないだろう。
なんとか食事会で心証を悪くしないよう話を弾ませた上で、少し考えさせてほしいと言ってみようか?
最終的に破談になればそれでいい。
そう思いながら食事会に挑んでみたが、場は既にすっかり相手ペース。
外堀は埋め終わり、他国の者達にまでお祝いムードが広がっていて、ここまで来たら諦めるしかない気がしてきた。
どうしよう。どうしたら…。
焦る気持ちばかりが空回り、いい現状打破の案が全く出てこない。
どうして俺はロキが絡むとポンコツになるんだろう?
そうして歯痒い思いでいたら、ロキが笑顔でどんどん話を進めていった。
表面上は穏やかに、けれど縁談はあくまでも検討中だと周囲にしっかりと伝えていく。
その姿を見てオスカー王子は俺へとターゲットを変えてきた。
きっと俺の方が国と国同士の付き合いを前面に押し出した場合、説得がしやすいと踏んだのだと思う。
ロキはその点とてもシンプルで、そこに重きを置いていないから、オスカー王子的に説得には不向きと判断したのだろう。
俺が国に重きを置いているのはある意味つけ込みやすい隙に繋がってしまうのだと痛感した。
結局キャサリン嬢の援護射撃もあり、かなり自然に破談になりそうな空気で食事会は終わりを迎えたが、俺は無力感でいっぱいだった。
ガヴァム式の結婚式を知らなかった者もこれなら破談になっても仕方ないと言った同情的な目で成り行きを見守っていたし、ロキがガヴァムの伝統というのを前面に押し出した事で、こちらを批判するような者も誰一人としていなかった。
それ自体はホッとしたし、良かったと思う。
でも────真剣に検討しないといけませんねとロキが言った時、俺は胸を抉られたようなショックを受けた。
ロキが俺じゃない相手を結婚式で抱くという、そのことを想像しただけで苦しくて、悲しくて、泣きたくなった。
勿論そこに愛がないこともわかっているし、ロキからすれば断る一択だから問題ないでしょうといった軽い気持ちで言った言葉なんだろうけれど、それが現実になったら俺はきっと絶望的な気持ちに陥ってしまうような気がする。
(くそっ!もっとしっかりしないと…!)
母の件であんなにもこれからはしっかりしなければと心に誓ったと言うのに…!
ロキとラブラブなのはいいが、腑抜けになったら意味がない。
そうやって自分自身に激しく腹を立てていたら、何故かロキに拗ねていると勘違いされてしまった。
違うのに。
「兄上。そんなに拗ねないでください。ちゃんと断りやすいように話したじゃないですか」
「…別に拗ねてない」
「じゃあ何に怒っているのか、ちゃんと話してもらえませんか?」
以前とは違ってちゃんと俺に向き合ってくれるロキ。
そんなロキに俺もちゃんと向き合うべきだけど、俺は自分に怒っているだけなんだ。
そんな情けないこと、口にできるはずがない。
だから代わりにもう一つの気持ちを吐き出しておく。
「…………お前が…」
「俺が?」
「俺以外の誰かをよがり狂わせる姿なんて見たくなくて……」
嫌なんだ。
素直な気持ちを口にしてみた。
すると凄く幸せそうな顔で笑ってロキは俺を見つめてくる。
「兄上。そんなに可愛いとここで抱いてしまいますよ?」
「うっ……だ、誰もいない…か?」
誰もいないなら抱いてほしいとは思った。
ロキに抱いてもらえたら嫌な気持ちを全部忘れさせてもらえるような気がしたから。
「こんな夜にここまで来る酔狂な客人もいないのでは?近衛も皆ちゃんと離れてくれてますし大丈夫でしょう?」
そう言いながらもロキはさり気なく近衛達に合図を送り、こちらに客人達が入ってこないようにはしてくれた。
これなら安心だ。
そう思ってホッとしたところで、優しく俺の唇を塞いでこられた。
舌が差し込まれ、弱いところを的確に擽っていく。
それが気持ちが良くて、つい熱っぽい眼差しを向けてしまう。
「んん…ロキ……」
火照った身体を外気が心地良く冷ましてくれるけど、それ以上にロキの手が俺を的確に嬲って身の内を焦がしていくのを感じた。
「ふ…うぅ…」
服の隙間から滑り込んできた手で腹を撫で上げられ、耳朶を食まれ、ちろりと舐め上げられるとたまらない気持ちにさせられる。
「カリン…」
俺にだけ聞こえる囁くような声で名を呼ばれれば、ゾクゾクして甘い声が口からこぼれ落ちた。
「あ…はぁ、ん…ぅ……」
身体が期待でどんどん熱くなり、早く抱いて欲しくてたまらなくなる。
そんな俺にロキはこともなげに言い放つ。
「声はできれば我慢してくださいね?」
「そ、そんなっ…」
それは正直言ってかなり難しい。
「ふふっ。ここに滞在している皆さんに聞こえてもいいなら止めませんけど」
「や、やぁ…っ」
でもそれは嫌だ。
とは言え部屋まで連れて行ってと言えないくらいには熱が高まっていて、とても我慢できそうにない。
「頑張って声を殺しながら俺に犯されてください」
凄く楽しそうにするロキの姿にゾクゾクさせられながら、俺は熱の籠った期待に染まった眼差しを向ける。
するとそれを受けてわかっているとばかりに弱いところを責め始めるロキ。
身体をまさぐり官能を引き出していくその手技はいつもながら凄まじく、劣情をこれでもかと煽られてしまった。
するりと内腿を撫で上げたかと思うと胸をコリコリと可愛がり、かと思えば背を指先でツツツと辿られ身悶えさせられる。
そして後ろも焦らしながら少しずつほぐされて、早く早くと気ばかりが急いてしまった。
「ふぁあっ!ロキッ、ロキぃ…。も、早くぅっ…!」
「ふふっ。そんなに欲しいなら広げながらおねだりしてください。上手にできたら挿れてあげますよ?」
(ああ、本当に大好き過ぎてたまらない…)
ロキの嗜虐に染まった顔が俺の心を満たしていく。
俺だけのご主人様が俺を虐めてくるこの至福の時に拒絶の言葉なんて紡げるはずがない。
「う…ご、ご主人様、淫乱なメス穴に挿れて奥の奥まで躾けてください…」
早くロキに滅茶苦茶に犯されたい。
それしか考えられなくて、自分でそこを指で広げながら強請ってしまった。
「いい子ですね」
「────ッあぁっ!~~~~ッ!!」
抱き寄せられながらそのままバックで挿れられて、悲鳴を絡めとるように唇を塞がれた。
しかもそのまま片足を抱え上げられて、恥ずかしい格好を取らされながら突き上げられる。
それがまた大好きなところに当たりまくって気持ち良過ぎてたまらない。
「やぁ…ロキ、凄いぃ…っ。奥、気持ちいィ…っ!」
「兄上は恥ずかしい格好も俺に奥まで挿れられるのも大好きですもんね。たっぷり味わってください」
「あっあっ、きもひぃい、すごいぃ…っ!」
奥をズンズン突かれては時折ちゅぽんと抜かれるその感覚に夢中になってしまう。
カリが奥から抜かれる瞬間が特に良くて、何度でも堪能したくなった。
やっぱりロキのものは最高だと思わざるを得ない。
テクニックもそうだが、やはり逸物の形が大好きだ。
離したくなくてついつい強請る声に甘さが滲んでしまう。
「あぁん…もっと、もっとぉ…!」
「ふふっ。こんなにトロトロになって。本当に兄上は俺のをここでしゃぶるのが大好きですね」
そう言いながら奥をグリグリかき混ぜられて、ついつい涎が出てしまう。
「ほら、こんなに美味しそうに咥えこんで」
「はぁあ…しゅき…っ、これ、しゅきぃ…っ」
「可愛いカリン。このままイくところをあそこにいる皆に見てもらいましょうか?カリンが声を我慢しないから、痴態が観たくて仕方がない者達が無理矢理見学に来てしまいましたよ?」
「ひやぁ…っ!あっあっ、んぅ…っ!」
「ちゃんとイくところを見せてあげましょうね」
そう言ってロキは腰を押し付けるようにしながら奥を容赦なく責め始める。
「あっあっ!ダメッ!ダメぇッ!そこッ、我慢できないっ!イイッ!気持ちイイッ!あぁんっ!」
誰かに見られているのが酷く恥ずかしい。
けれどそれがまた気持ち良さに輪をかけていく。
ただでさえ絶妙な責め苦に身体はどんどん追い込まれていくのに、羞恥心と相俟ってもうとても耐えきれそうになかった。
それでもなんとか声は我慢しなければと必死になりながら両手で口を塞ごうとしたけれど、その両手は抱き寄せてきているロキに封じられて、舌を吸い上げられながらイかされる羽目に。
「~~~~ッ!!」
はっきり言って気持ちいいなんてものじゃない。
天国を見たような錯覚に襲われながらそのまま何度もイかされ続ける。
「ふふ…本当に見られながらするのが大好きですよね?ねえ、兄上?締め付けが凄いことになってますよ?」
そこからは正直よく覚えてなくて、気づけば部屋のベッドで朝を迎えていた。
何かを忘れているような気がしたけど、なんだったっけといくら考えても全く何も思い出せない。
そんな俺に隣からそっと引き寄せられて、チュッとキスを落とされ甘く微笑まれたら当然ロキの方に意識が向いてしまうというものだ。
「兄上。おはようございます」
「…おはよう」
「ん…。顔色もいいですね。できる限り煩わしいことは俺が片付けておくので、兄上は今日も各国の方々のおもてなしをお願いしますね?」
「ああ。お前も俺がいなくても仕事をサボらないように」
「サボりませんよ。サボりたくてもライオネルがいたらサボらせてもらえませんし」
「そうか。ならいい。間違っても他の補佐官を丸め込んで逃げるなよ?」
「わかってます」
今日もそれぞれの仕事をこなしてパーティー本番に向けて頑張ろうと、俺はチュッとロキにキスをした。
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