【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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145.※他国からの客人⑪ Side.カール王子&エリザ王女

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【Side.カール王子】

ロキ陛下が側室を迎えるという話を聞き、俺は『へぇ、そうなんだ』と思った。
いくら愛し合っていようと後継は必要だと思うし、側室の話くらいは特に驚くようなことでもない。
ただ抱かれる側のあの人が女性を抱けるのかと言うそんな疑問を少し抱いたのと、他国の者がちゃんと嫁げるのかという疑問が頭をよぎったくらいだろうか?
けれどガヴァム式の結婚式の話を聞きながら、ロキ陛下は『新郎』側だったのだと改めて認識した。
見届け人の前で誤魔化しはきかないはずだから、当然抱く側だったに違いない。

(…そう言えば俺も最初はロキ陛下はどっちもいけそうだと思ったんだった)

今更ながらそんなことを思い出し、ロキ陛下はどんな風に男を抱くんだろうとつい考えてしまう。
まあ当事者であるエリザ王女は見事に『無理無理』と言った感じで真っ青になっていたけれど。

因みに俺は隣国だからと言うのもあるが、当然ガヴァム式の結婚式については知っていた。
ガヴァムの王家は特殊だから余程の覚悟がないと嫁げないと有名だ。
だから大抵ガヴァムの貴族から婚約者候補を選び、そこから嫁として王家に迎えられる。

フォルティエンヌは少し離れた国だから、恐らく王子も王女も知らなかったのだろう。
それを踏まえた上でロキ陛下を見ると、どう見ても揶揄っているのが明白だった。
あれは最初から断る気で遊んでいるのだと思う。

(いいな。俺もあんな風に弄ばれたい……)

食事をしながらふとそんな風に思ってしまい、ハッと我へと返った。

(いやいやいや?!何を考えてるんだ俺は!)

ロキ陛下は魅力的だけど、俺はノーマルだから!
必死にそう自分に言い聞かせはするものの、ロキ陛下に比べたら自分の婚約者も想い人も色褪せて見えるのは変わらなくて、既に無意識にロキ陛下に惹かれている自分に愕然となってしまった。

────何て恐ろしい。

そうは思えど反発心は全く湧いてはこないし、勝手に目がロキ陛下に惹きつけられてしまう。
あの人は特定の相手に対しておかしなフェロモンでも出しているんじゃないだろうか?
自分を誤魔化すためにさり気なく他の面々にも目をやってみると、自分と同じようにロキ陛下に目を向ける人物がチラホラ見受けられ、自分だけでなかったことに少しだけホッとした。
シャイナー陛下にレオナルド皇子、キュリアス王子もか?
皆の目がロキ陛下へと自然と集まっていく。

(パーティーでは少しはロキ陛下と話せるといいな…)

父からもロキ陛下から色々学んで来いと言われたことだし、自分の連れてきた者達の愚かな迷惑行為を誠心誠意謝った上で、会話の時間を持てたらと思う。

それにしても昨日のあの薬物の持ち込みは本当に驚いたなんてものではなかった。
持ち込んだテリーもテリーだが、試すネイトもネイトだ。
学園で一緒に馬鹿なことをしてきた中ではあるが、流石に常識を疑ってしまう。
他国に来て、コレはない。
お陰で俺まで姉上に同類のような目で見られてしまったではないか。

『私への反発心はあると思うけれど、忠告だけはさせてちょうだい。ここは他国。問題を起こした彼ら含め、これからの行動には十分にお気をつけなさい』

そんな事、一々言われなくてもちゃんとわかっているのに。
少なくとも『俺』は。
わかっていないとしたらあいつらの方だ。
今日は一日反省するよう言っておいたが、ちゃんと反省はできただろうか?
ガヴァムにいるのも後僅か。
もう問題を起こさないでくれよと思いながら俺は深々と溜息を吐いた。

そんな鬱々とした気分を振り払うように、何となく少し離れた場所にある、人が来なさそうな庭園へと足を向ける。
この庭は客室からは少し離れているが、綺麗に整えられた庭は花々が咲き誇り、夜だと言うのにライトアップされていてとても美しい。
だから少しだけゆっくり見ていこうと思い、暫く花々を堪能していたのだけれど────。

俺はそこでロキ陛下とカリン陛下のあれこれを目撃してしまい、大人の情事に目が釘付けになってしまったのだった。


***


【Side.エリザ王女】

「お兄様!話が違いますわ!」

ガヴァムに嫁げば幸せになれると言っていた。
これからどんどん伸びていく国だし、ロキ陛下は穏やかそうな見た目で御しやすそうだとも言っていた。
上手く外堀を埋めて、周りを味方に付ければ簡単に結婚出来る。
ロキ陛下が好みでないなら取り敢えず結婚式を挙げて、夜は祝い酒を飲み過ぎて気分が悪いからと断ればいい。
カリン陛下の方が好みならそれからそちらに声を掛けて種をもらえと言われていた。
けれどあんな…あんな結婚式なのであれば全てが台無しだ。
しかも招待客に抱かれている姿を全部見られるなんて絶対にあり得ない。
いくら意味ある伝統儀式でもあれはないだろう。
結婚式当日になっていきなり知らされるとかでなくて本当に良かった。

「この話はなかったことにして下さいませ!」

簡単に裕福な暮らしができると思っていたのに、目論見が外れて泣きたくなってしまう。
そんな私に兄も珍しく悩んでいるようだ。

「いや。何か…何か手があるはずだ」
「そんなものありませんわ!だって聞いたでしょう?カリン陛下との挙式の時でさえ略式は認められなかったのですよ?」

法で決められているとも言っていたし、ガヴァムに嫁ぐのであればそれは必須ということだ。
受け入れがたいのであれば辞退するより他はない。
幸いロキ陛下は政略結婚などしなくてもフォルティエンヌと友好的関係を築きたいと言ってくれていたし、お言葉に甘えようと兄に言ってみた。
それなのに────。

「お前の子がガヴァム王になれるチャンスなんだぞ?!」
「お兄様は妹の私よりも利を取るのですか?!」

あまりにもあまりな言葉に悲しくなって、私は泣きながら部屋を飛び出した。

向かったのは花咲き誇る広々とした庭園。
適度にライトアップされる花々は美しくて心が落ち着くような気がした。
だから長々とそこに滞在してしまったのは不可抗力なのだ。
別に覗きをしたくていたわけではない。

「兄上。そんなに拗ねないでください」

風に乗ってそんなロキ陛下の声が聞こえてきた時に、隠れるのではなくすぐに失礼しますと言ってその場を後にすればよかったと後悔したのはすぐの事。

「ちゃんと断りやすいように話したじゃないですか」

どうやら内容は先程の夕食会の時の話のようだ。

「…別に拗ねてない」
「じゃあ何に怒っているのか、ちゃんと話してもらえませんか?」
「…………お前が…」
「俺が?」
「俺以外の誰かをよがり狂わせる姿なんて見たくなくて……」

その言葉に『ちゃんとお断りさせて頂きますよ?!』と心の中でツッコミを入れる私。
けれど続くロキ陛下の言葉に私は目を見開いて固まる羽目に。

「兄上。そんなに可愛いとここで抱いてしまいますよ?」
「うっ……だ、誰もいない…か?」
「こんな夜にここまで来る酔狂な客人もいないのでは?近衛も皆ちゃんと離れてくれてますし大丈夫でしょう?」

(ここに居ますわ!)

待って待って待ってと思いながら必死に息を殺して身を隠す。
どのタイミングで逃げればいいのかすらわからなくて、仕方なく息をひそめてやり過ごすことにしたけれど、あまりの展開に胸のドキドキが止まらない。

「んん…ロキ……」

キスでもされているのだろうか?カリン陛下の鼻にかかった色っぽい声が耳を擽ってくる。

「声はできれば我慢してくださいね?」
「そ、そんなっ…」
「ふふっ。ここに滞在している皆さんに聞こえてもいいなら止めませんけど」
「や、やぁ…っ」
「頑張って声を殺しながら俺に犯されてください」

背筋がゾクゾクするような官能的な声でそう囁くと、ロキ陛下はカリン陛下を抱きにかかった。

(嘘、嘘、嘘っ…)

まさかこんな展開になるなんて考えてもみなかった。
必死に耐えているのだろうカリン陛下の喘ぎ声が耳を犯し、グチュグチュと鳴る音が行為を嫌でも想像させる。
時折聞こえるロキ陛下の声は酷く優しい声なのに、言っている内容は卑猥そのもので、勝手に身の内が疼くのを感じた。

「ふぁあっ!ロキッ、ロキぃ…。も、早くぅっ…!」
「ふふっ。そんなに欲しいなら広げながらおねだりしてください。上手にできたら挿れてあげますよ?」

(ドS!ドSがいますわ!)

凄く楽しそうにカリン陛下を虐めるロキ陛下。

「う…ご、ご主人様、淫乱なメス穴に挿れて奥の奥まで躾けてください…」
「いい子ですね」
「────ッあぁっ!~~~~ッ!!」

恐らくロキ陛下に挿れられたのだろう。
悲鳴のような声が一瞬聞こえ、そのままキスで口を塞がれたのか、くぐもった苦しそうな声が耳へと届く。
そこからがまた自分には長く感じられて、気になってこっそり覗いてみたら、あのカリン陛下が涙目でロキ陛下に犯されていた。
衣服ははだけ、片足を抱え上げられながら奥まで突き込まれている。
口はキスで塞がれ、楽し気に見つめられながら胸や前やらも可愛がられていた。

「やぁ…ロキ、凄いぃ…っ。奥、気持ちいィ…っ!」
「兄上は恥ずかしい格好も俺に奥まで挿れられるのも大好きですもんね。たっぷり味わってください」

段々と蕩けるような表情でロキ陛下に溺れていくカリン陛下。
気づけば自分以外にも二人の交わりを覗いて見ている者が増えていた。
主に騎士のようだけど、文官らしき姿もあるようだ。
けれど二人はそんなもの全く目に入っていない様子。
もしかしてここではこれが普通なのだろうか?
益々自分には無理だと思えて仕方がない。

(絶対にお兄様が何と言おうとこのお話はなかったことにしてもらわないと…!)

取り敢えず先手必勝。
明日の朝一番に兄には内緒でロキ陛下に突撃してお断りの返事をさせてもらおう。
そんな事を思いながら私はこっそり続きを覗き見て、結局最後まで目を離すことができなかった。


****************

※いけない趣味に目覚めそうになってるエリザ王女。
でも自分がそうなるのは嫌らしい。

※カール王子はロキが自分よりずっと大人だと改めて認識。
色々教わりたいという気持ちに拍車がかかりました。

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