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143.他国からの客人⑨ Side.ロキ&他視点
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※一応最後まで書ききりました。
ちょっと色々詰め込んだ関係で視点が増えてしまい、その分25話+閑話と長くなってしまいましたが、ロキの護衛問題は解決できたんじゃないかなと思います。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです(^^)
****************
その翌日の事。
清々しい朝の空気の中、執務室へと向かっていると、フォルティエンヌのエリザ王女とオスカー王子、そして魔道具師のジョンが並んでやってくるのが見えた。
どうやら俺に用があるらしい。
「ロキ陛下!昨日はお疲れさまでした」
エリザ王女が笑顔で労いの言葉を掛けてくる。
「昨日は大変だったとか。心中お察しいたします」
オスカー王子もそう声を掛けてくれ、次いでジョンへと声を掛けた。
「ジョン。あれを」
「はい」
そしてジョンから渡されたのはとある魔道具。
「これは?」
「こちらはつい先日フォルティエンヌで出来上がったばかりの魔道具で、今回ロキ陛下にお見せしようと思って持ってきたものなのです」
そう言いながらなんだか話が長くなりそうな気配を感じたので、傍に居た近衛騎士に頼んで執務室に伝言を伝えに行ってもらい、手近な応接室へと場を移すことにした。
それから話を詳しく聞いたところによると、それはブルーグレイの魔道具、ロックオンを応用したような魔道具で、非常に興味深いものだった。
なんでも付属の玉状の魔道具を天井付近に取り付けておくだけで長時間録画できるというもの。
それを取り外し本体に取り付ければ本体で画像が確認できるのだ。
しかも本体操作で日時毎に簡単に映像が確認できるようなので、凄く便利だと思った。
「これは防犯に凄く良さそうですね」
心底感心してそう口にすると、ジョンが満足げに頷き、『魔道具作りではまだまだブルーグレイには負けませんよ』と胸を張る。
「こういった物を作れるようになったのもロキ陛下があのタンク魔石を作るヒントを下さったお陰です。本当にありがとうございました。あれで一気に魔道具の幅が広がりましたからね。まだまだ色々作ってみせますよ!」
これからはセドリック王子にばかり言うのではなく自分にも色々言ってきて欲しいとまで言われてしまった。
有難いけど、セドリック王子には単に世間話の一端で話しているだけだから、改めてとなるとちょっと難しいような気がする。
「ありがとうございます。お気持ちは有難く頂いておきます」
だからそう答えたのだけど、何故かそれを受けてオスカー王子もエリザ王女も謙虚だと受け止めたらしく、どこか好意的な目でうんうんと頷いていた。
「流石ロキ陛下ですわ。そう言った謙虚なところもきっとカリン陛下はお好きなのでしょうね」
謙虚なところが好き?
そうだろうか?
多分兄は俺のドSなところが好きなだけだと思うんだけど…。
「昨夜の問題も的確な指示の元、あっという間に収められたと聞きましたし、本当に素敵ですわ」
王女が何故か俺を随分持ち上げてくる。
そんなに言ってきても兄と親しくさせてあげる気は全くないんだけど。
そう思ったところで、オスカー王子があり得ないことを口にしてきた。
「本当に、流石若くともしっかり国を率いる王であらせられる。これを機に是非ともガヴァムとフォルティエンヌの絆を深めたいと思うのだが…。ロキ陛下、どうだろう?我が妹エリザを側室に迎えて頂けないだろうか?」
「……?俺に、ですか?」
「ええ。是非ロキ陛下に」
「何かの間違いでは?」
彼女は兄に見惚れていたはずなのにどうして俺なんだろうと首を傾げざるを得ない。
でもオスカー王子は間違っていないと言う。
これには正直言って困ってしまった。
普通に断っていいだろうか?
多分…いいはず。
そう判断し、困った顔で申し訳ないですがと言ってみた。
「申し訳ないですが、俺は兄上しか愛せませんので」
「勿論それは我々も重々承知しております。ですが王族に政略結婚はつきものでしょう?国と国として是非ガヴァムとこれからも親しくしていきたいと思っているのです。返事はすぐにとは申しませんので、是非カリン陛下ともよく話し合って、ご検討いただけないでしょうか?」
オスカー王子はブルーグレイの件も例として挙げ、あそこは正妃がミラルカの姫だけど、子だけ作って実際は側妃であるアルフレッドと愛し合っているでしょうと言ってきた。
その逆パターンで、俺が兄と愛し合う分には全然問題はなくて、側妃とは子供だけ作ればいいのだと。
「その子供が両国の懸け橋となってくれれば言うことはありませんし、是非前向きにご検討していただきたく」
流石にここまで言われてしまうと一応形だけでも検討しない訳にはいかなくなってしまう。
オスカー王子も兄と話し合えと言ってくれたことだし、ここはそうするしかないかと溜め息を吐き、一先ず保留とさせてもらうことにした。
「わかりました。兄に一度意見を聞いてみようと思います」
「色よいお返事をお待ちしております」
取り敢えず話は終わり、先程見せてもらった魔道具も貰ったけれど、これは多分賄賂だろうなと思って溜息を吐いてしまう。
非常に便利な魔道具なので使いたいのは使いたいのだけど、側室の話が出たせいで使い難くなってしまった。
さて、どうしたものか。
「貴族的にスマートな縁談の断り方ってあるのかな?」
兄だけでなくリヒターにも聞いてみたいなと思いながら俺は執務室へと向かった。
***
【Side.エリザ王女】
先程兄の方からロキ陛下に側室の打診をしてもらった。
まさかそんな話が出るとは思ってもいなかったのか、凄く驚いたような顔をしていたけれど、彼はきっと受けるだろう。
何故ならその話をする前に披露した魔道具に興味津々だったのだから。
魔道具好きと言う情報は確かなようで、凄く興味深そうに説明を聞いていた。
あれを受け取っておいて側室の話を断ると言う選択肢を彼は取らないと思う。
断りを入れてくるとしたらカリン陛下に反対された時、だろうか?
ロキ陛下はカリン陛下中心に世界が回っているらしいから、そこが反対したらあっさりとこの話は蹴ってくるはず。
何かカリン陛下にも気に入ってもらえるよう手を打った方がいいかもしれない。
「カリン陛下の好みの物は?」
ガヴァムに来るまでに王夫妻の好みは暗部に調べさせている。
それを使えないかと思い、そっと自分の暗部に尋ねてみると答えはあっさりと返ってきた。
「夜の道具一式…でしょうか」
非常に言い難そうに返されてこちらとしても困ってしまったが、他にはないのだろうか?
「他に何かないのかしら?」
「好みの茶はあるようですし、気に入ってつけている香水などもありますが……」
「そう。お酒は?」
「お飲みになりますが、こだわると言う程でもないようです」
どうやら現状で十分満足していると言うことらしい。
これはなかなか手強そうだ。
真新しいもので興味を引けそうなものは何かないだろうか?
そんなことを考えながら一日中あちらこちらと歩き回って頭を捻っていた。
そんな最中、前からレトロンのユーフェミア王女が歩いてくるのが目に入った。
その隣にいるのはアンシャンテのシャイナー陛下の婚約者であるキャサリン嬢だ。
昨日は茶会を楽しむのもそこそこにあんな事件が起こってしまったため、まだ為人は掴めていないが、どうもキャサリン嬢はロキ陛下と仲が良さそうだった。
となると、もしかしたらカリン陛下の好みについても知っているかもしれない。
そう思いながら笑顔で声を掛けてみることに。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、エリザ王女」
「お二人はお散歩中でしょうか?」
「ええ。これから二人で庭園の方を回ってみようと思っていまして」
「ご一緒させて頂いても?」
「構いませんわ」
どうぞと言ってもらえたので、遠慮なくそのままご一緒させてもらうことにする。
「エリザ王女はガヴァムは初めてですか?」
「ええ。今回父の勧めで来てみたんですが、ロキ陛下もカリン陛下も素敵な方なので良い目の保養ですわ」
「あら。うふふ。私の婚約者が聞いたら妬いてしまいそうですわね」
「え?」
「ご存じありません?シャイナー陛下はロキ陛下が大好きなのですよ。いつもロキ陛下ロキ陛下と煩いくらいで」
「あら。レオナルド皇子もですわ。ロキ陛下が大好きで仕方がないのか、しょっちゅうツンナガールで連絡を取って…。最近では鬱陶しがられて出てもらえなかったんですのよ」
「まあ!ふふふっ。ロキ陛下らしいですわ。嫌そうなお顔が目に浮かぶようですわね」
「そういうキャサリン様の方は?」
「シャイナー陛下はツンナガールは朝限定でしか掛けてくるなとキツく言われていますの。余程でない限り連絡はしないよう言われているので、渋々言うことを聞いていますわね。本当に可愛いお方」
クスクスと楽し気に笑うキャサリン嬢。
それをユーフェミア王女は困ったように見つめていた。
どうやらミラルカのレオナルド皇子もアンシャンテのシャイナー陛下もロキ陛下がお気に入りらしい。
やはりフォルティエンヌとしてはロキ陛下と強固な縁を繋ぎ、そこを足掛かりにミラルカやレトロン、アンシャンテにブルーグレイと良い縁を築いていけたらと強く思った。
***
【Side.カリン】
今日は少し遅れて執務室へと向かった。
ロキの仕事は捗っているかと思いながら扉をくぐると、そこにロキの姿がない。
トイレかと首を傾げていると、ロキはフォルティエンヌの王子達と話し中だと教えられる。
こんなに朝早くから何の用だろうと思っていると、少し経ってからロキが戻ってきた。
「ロキ。フォルティエンヌのオスカー王子となんの話だったんだ?」
「ああ、縁談の話でした」
「縁談?」
「ええ。エリザ王女を側室にと」
「なるほど」
まあロキのことだからその場でサクッと断って帰ってきたんだろう。
そう思って、じゃあ仕事だと言ってさっさと執務机へと座らせてしまう。
ここで甘い顔を見せたら確実に手が止まるから急かすに越したことはない。
「兄上。話したいことがあったんですけど」
「後でいいから手を動かせ」
「でも……」
「いいから」
「……わかりました」
どうせ俺が心配しないように断った経緯を話してくれようとしたんだろうが、わかっているから言わなくてもいい。
「後でその件でリヒターとも話をしたいんですけど…」
「わかったわかった。仕事が片付いたらな」
そうしてロキに仕事をどんどん回すようライオネル達に指示を出し、俺は俺で来客対応へと向かった。
ちょっと色々詰め込んだ関係で視点が増えてしまい、その分25話+閑話と長くなってしまいましたが、ロキの護衛問題は解決できたんじゃないかなと思います。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです(^^)
****************
その翌日の事。
清々しい朝の空気の中、執務室へと向かっていると、フォルティエンヌのエリザ王女とオスカー王子、そして魔道具師のジョンが並んでやってくるのが見えた。
どうやら俺に用があるらしい。
「ロキ陛下!昨日はお疲れさまでした」
エリザ王女が笑顔で労いの言葉を掛けてくる。
「昨日は大変だったとか。心中お察しいたします」
オスカー王子もそう声を掛けてくれ、次いでジョンへと声を掛けた。
「ジョン。あれを」
「はい」
そしてジョンから渡されたのはとある魔道具。
「これは?」
「こちらはつい先日フォルティエンヌで出来上がったばかりの魔道具で、今回ロキ陛下にお見せしようと思って持ってきたものなのです」
そう言いながらなんだか話が長くなりそうな気配を感じたので、傍に居た近衛騎士に頼んで執務室に伝言を伝えに行ってもらい、手近な応接室へと場を移すことにした。
それから話を詳しく聞いたところによると、それはブルーグレイの魔道具、ロックオンを応用したような魔道具で、非常に興味深いものだった。
なんでも付属の玉状の魔道具を天井付近に取り付けておくだけで長時間録画できるというもの。
それを取り外し本体に取り付ければ本体で画像が確認できるのだ。
しかも本体操作で日時毎に簡単に映像が確認できるようなので、凄く便利だと思った。
「これは防犯に凄く良さそうですね」
心底感心してそう口にすると、ジョンが満足げに頷き、『魔道具作りではまだまだブルーグレイには負けませんよ』と胸を張る。
「こういった物を作れるようになったのもロキ陛下があのタンク魔石を作るヒントを下さったお陰です。本当にありがとうございました。あれで一気に魔道具の幅が広がりましたからね。まだまだ色々作ってみせますよ!」
これからはセドリック王子にばかり言うのではなく自分にも色々言ってきて欲しいとまで言われてしまった。
有難いけど、セドリック王子には単に世間話の一端で話しているだけだから、改めてとなるとちょっと難しいような気がする。
「ありがとうございます。お気持ちは有難く頂いておきます」
だからそう答えたのだけど、何故かそれを受けてオスカー王子もエリザ王女も謙虚だと受け止めたらしく、どこか好意的な目でうんうんと頷いていた。
「流石ロキ陛下ですわ。そう言った謙虚なところもきっとカリン陛下はお好きなのでしょうね」
謙虚なところが好き?
そうだろうか?
多分兄は俺のドSなところが好きなだけだと思うんだけど…。
「昨夜の問題も的確な指示の元、あっという間に収められたと聞きましたし、本当に素敵ですわ」
王女が何故か俺を随分持ち上げてくる。
そんなに言ってきても兄と親しくさせてあげる気は全くないんだけど。
そう思ったところで、オスカー王子があり得ないことを口にしてきた。
「本当に、流石若くともしっかり国を率いる王であらせられる。これを機に是非ともガヴァムとフォルティエンヌの絆を深めたいと思うのだが…。ロキ陛下、どうだろう?我が妹エリザを側室に迎えて頂けないだろうか?」
「……?俺に、ですか?」
「ええ。是非ロキ陛下に」
「何かの間違いでは?」
彼女は兄に見惚れていたはずなのにどうして俺なんだろうと首を傾げざるを得ない。
でもオスカー王子は間違っていないと言う。
これには正直言って困ってしまった。
普通に断っていいだろうか?
多分…いいはず。
そう判断し、困った顔で申し訳ないですがと言ってみた。
「申し訳ないですが、俺は兄上しか愛せませんので」
「勿論それは我々も重々承知しております。ですが王族に政略結婚はつきものでしょう?国と国として是非ガヴァムとこれからも親しくしていきたいと思っているのです。返事はすぐにとは申しませんので、是非カリン陛下ともよく話し合って、ご検討いただけないでしょうか?」
オスカー王子はブルーグレイの件も例として挙げ、あそこは正妃がミラルカの姫だけど、子だけ作って実際は側妃であるアルフレッドと愛し合っているでしょうと言ってきた。
その逆パターンで、俺が兄と愛し合う分には全然問題はなくて、側妃とは子供だけ作ればいいのだと。
「その子供が両国の懸け橋となってくれれば言うことはありませんし、是非前向きにご検討していただきたく」
流石にここまで言われてしまうと一応形だけでも検討しない訳にはいかなくなってしまう。
オスカー王子も兄と話し合えと言ってくれたことだし、ここはそうするしかないかと溜め息を吐き、一先ず保留とさせてもらうことにした。
「わかりました。兄に一度意見を聞いてみようと思います」
「色よいお返事をお待ちしております」
取り敢えず話は終わり、先程見せてもらった魔道具も貰ったけれど、これは多分賄賂だろうなと思って溜息を吐いてしまう。
非常に便利な魔道具なので使いたいのは使いたいのだけど、側室の話が出たせいで使い難くなってしまった。
さて、どうしたものか。
「貴族的にスマートな縁談の断り方ってあるのかな?」
兄だけでなくリヒターにも聞いてみたいなと思いながら俺は執務室へと向かった。
***
【Side.エリザ王女】
先程兄の方からロキ陛下に側室の打診をしてもらった。
まさかそんな話が出るとは思ってもいなかったのか、凄く驚いたような顔をしていたけれど、彼はきっと受けるだろう。
何故ならその話をする前に披露した魔道具に興味津々だったのだから。
魔道具好きと言う情報は確かなようで、凄く興味深そうに説明を聞いていた。
あれを受け取っておいて側室の話を断ると言う選択肢を彼は取らないと思う。
断りを入れてくるとしたらカリン陛下に反対された時、だろうか?
ロキ陛下はカリン陛下中心に世界が回っているらしいから、そこが反対したらあっさりとこの話は蹴ってくるはず。
何かカリン陛下にも気に入ってもらえるよう手を打った方がいいかもしれない。
「カリン陛下の好みの物は?」
ガヴァムに来るまでに王夫妻の好みは暗部に調べさせている。
それを使えないかと思い、そっと自分の暗部に尋ねてみると答えはあっさりと返ってきた。
「夜の道具一式…でしょうか」
非常に言い難そうに返されてこちらとしても困ってしまったが、他にはないのだろうか?
「他に何かないのかしら?」
「好みの茶はあるようですし、気に入ってつけている香水などもありますが……」
「そう。お酒は?」
「お飲みになりますが、こだわると言う程でもないようです」
どうやら現状で十分満足していると言うことらしい。
これはなかなか手強そうだ。
真新しいもので興味を引けそうなものは何かないだろうか?
そんなことを考えながら一日中あちらこちらと歩き回って頭を捻っていた。
そんな最中、前からレトロンのユーフェミア王女が歩いてくるのが目に入った。
その隣にいるのはアンシャンテのシャイナー陛下の婚約者であるキャサリン嬢だ。
昨日は茶会を楽しむのもそこそこにあんな事件が起こってしまったため、まだ為人は掴めていないが、どうもキャサリン嬢はロキ陛下と仲が良さそうだった。
となると、もしかしたらカリン陛下の好みについても知っているかもしれない。
そう思いながら笑顔で声を掛けてみることに。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、エリザ王女」
「お二人はお散歩中でしょうか?」
「ええ。これから二人で庭園の方を回ってみようと思っていまして」
「ご一緒させて頂いても?」
「構いませんわ」
どうぞと言ってもらえたので、遠慮なくそのままご一緒させてもらうことにする。
「エリザ王女はガヴァムは初めてですか?」
「ええ。今回父の勧めで来てみたんですが、ロキ陛下もカリン陛下も素敵な方なので良い目の保養ですわ」
「あら。うふふ。私の婚約者が聞いたら妬いてしまいそうですわね」
「え?」
「ご存じありません?シャイナー陛下はロキ陛下が大好きなのですよ。いつもロキ陛下ロキ陛下と煩いくらいで」
「あら。レオナルド皇子もですわ。ロキ陛下が大好きで仕方がないのか、しょっちゅうツンナガールで連絡を取って…。最近では鬱陶しがられて出てもらえなかったんですのよ」
「まあ!ふふふっ。ロキ陛下らしいですわ。嫌そうなお顔が目に浮かぶようですわね」
「そういうキャサリン様の方は?」
「シャイナー陛下はツンナガールは朝限定でしか掛けてくるなとキツく言われていますの。余程でない限り連絡はしないよう言われているので、渋々言うことを聞いていますわね。本当に可愛いお方」
クスクスと楽し気に笑うキャサリン嬢。
それをユーフェミア王女は困ったように見つめていた。
どうやらミラルカのレオナルド皇子もアンシャンテのシャイナー陛下もロキ陛下がお気に入りらしい。
やはりフォルティエンヌとしてはロキ陛下と強固な縁を繋ぎ、そこを足掛かりにミラルカやレトロン、アンシャンテにブルーグレイと良い縁を築いていけたらと強く思った。
***
【Side.カリン】
今日は少し遅れて執務室へと向かった。
ロキの仕事は捗っているかと思いながら扉をくぐると、そこにロキの姿がない。
トイレかと首を傾げていると、ロキはフォルティエンヌの王子達と話し中だと教えられる。
こんなに朝早くから何の用だろうと思っていると、少し経ってからロキが戻ってきた。
「ロキ。フォルティエンヌのオスカー王子となんの話だったんだ?」
「ああ、縁談の話でした」
「縁談?」
「ええ。エリザ王女を側室にと」
「なるほど」
まあロキのことだからその場でサクッと断って帰ってきたんだろう。
そう思って、じゃあ仕事だと言ってさっさと執務机へと座らせてしまう。
ここで甘い顔を見せたら確実に手が止まるから急かすに越したことはない。
「兄上。話したいことがあったんですけど」
「後でいいから手を動かせ」
「でも……」
「いいから」
「……わかりました」
どうせ俺が心配しないように断った経緯を話してくれようとしたんだろうが、わかっているから言わなくてもいい。
「後でその件でリヒターとも話をしたいんですけど…」
「わかったわかった。仕事が片付いたらな」
そうしてロキに仕事をどんどん回すようライオネル達に指示を出し、俺は俺で来客対応へと向かった。
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