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141.他国からの客人⑦ Side.カール王子の友人
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※今回嘔吐表記があるのでご注意ください。
宜しくお願いします。
****************
【Side.カール王子の友人ネイト】
「くそっ!」
カール王子と一緒にガヴァムへとやってはきたものの、退屈で退屈で仕方がなかった。
ガヴァムが古臭い国だというのはわかっていたつもりだったが、ちょっと侍女の尻を撫でただけで悲鳴を上げられ、次から侍従がやってくるっておかしくないだろうか?
女遊びをするにも娼館は城から大分離れた所にしかないと言われ、護衛は必須だとも言われた。
そんなものをわざわざ連れて娼館にまで行くのは面倒だ。
だったらせめてカール王子が言っていたロキ陛下の顔でも拝んで挨拶ができないかと考えたが、そちらも仕事が忙しいとかでずっと執務室に引き籠っていて難しい。
食事会の席は王族とその婚約者しか参加できないと言われて泣く泣く断念。
カール王子はどうせパーティーで会えるんだからいいじゃないかと言ってきたが、そんなの最後の最後だけじゃないか。
ここに早く来た意味が全くない。
そうしてイライラしていたら、仲間内の一人が『ふっふっふっ』とどこか楽し気にしながらそっと何かの錠剤を見せてきた。
「なんだよ、これ」
「これは楽しい気分になれるクスリだ」
「楽しい気分になれるクスリ?」
「そう。うちの家に出入りしてる商人がこれを飲めば嫌な気分も爽快なものに変わりますよって言って勧めてきたんだ」
「へぇ…」
「なんでも裏ルートが充実してるガヴァムでもまだ流通していない新しいクスリなんだってさ」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。だって俺ここに来るまでに二回くらい既に試したし。全く問題なかったから」
平気平気と友人は笑顔で勧めてくる。
「飲んだら本当にイライラがすぐ収まるからさ、まあ騙されたとでも思って飲んで見ろよ」
そうして『そんなに言うなら』と思って好奇心でその渡された三粒の錠剤を飲んでみることに。
ゴクリ。
「どうだ?段々気分がよくなってくるだろ?」
友人はそう言ったが、俺は気分爽快どころか胸を押さえて蒼白になってしまった。
「う、うぇえっ…!」
頭痛が酷くて吐きたいのに吐けない状況に陥ってしまう。
手足は冷たくなり、呼吸も浅くなって苦しくて仕方がない。
そんな俺を見て一緒に居た友人は慌てて部屋から飛び出し人を呼びに行ってくれる。
暫くするとカール王子もやってきたが、しっかりしろと言ってガクガク揺さ振られて益々気持ち悪くなってしまった。
「じ、じぬっ…じぬぅ…っ!」
頼むから手を放してくれと思いながら必死に声を出す。
しかも段々息苦しさが増してきて、喉を掻き毟ってしまうがちっとも楽になれそうな気がしない。
そんな中また別の人物がこちらへとやってくるのが見えた。
「離れて!」
鋭くそう言い放ち、カール王子を俺から引き離すと、飲めと言わんばかりに大量の水をグラスで口へと流し込んできた。
「ぐ、ぐるじぃ…」
「いいから飲め!」
そうして無理矢理大量の水を飲まされたところで喉に指を突っ込まれて、そのまま吐かされた。
正直辛いなんてものじゃない。
しかもその後も二度三度と同じようにされて、グッタリなったところでやっと医師が到着する。
「ロキ陛下。お待たせしました」
「ああ、闇医者か。取り敢えず吐かせるだけ吐かせた」
「そうですか。では診察を」
(闇医者?!闇医者って言った?!)
王宮医じゃないのかよ?!と思いながら驚いて目を向けると、その闇医者という人物の向こうで一人の医師が所在なさげに立っているのが見えた。
あっちが本当の王宮医なんじゃないんだろうか?
思わずロキ陛下と呼ばれた人物にそっと目を向けると、言いたいことを察してくれたのか天使のような笑みでこう言った。
「死にたいならあちらの王宮医に診てもらっていただいても構いませんよ?その場合は何があっても自己責任でお願いします」
そう言われて慌ててブンブン首を横に振った。
この際助かるのならなんでもいい。
そうして診てもらったところ、幸い吐いたのが良かったらしく命に別状はないと言われた。
全部消化していたらヤバかったとも言われたから二度と飲みたくはない。
それから問題のクスリは友人が咄嗟に隠していたけれど、俺が全部洗い浚い話したことで言い逃れできなくなり、渋々出してきた。
それを受け取るなり闇医者と呼ばれた人物は歯でガリッと噛んですぐにペッと吐き出した後すぐに口を漱ぎ、何やら初めて見る魔道具に噛み砕いたクスリを乗せスイッチを押した。
すぐにカタカタと鳴り始める魔道具。
そして一枚の紙を吐き出し終わったところでその魔道具は動きを止める。
「どうだ?」
「最悪ですね。どこでこんなものを…」
紙を見ながらロキ陛下と二人何やら不穏な会話をし、鋭い目で今度はクスリを持っていた友人へと視線を向けた。
「そこの二人は飲んでいないな?」
「は、はい!」
「このクスリはどこで?」
「え?あ…えと、その……」
「当然このクスリは没収しますが、全部ちゃんと話してくれるのならここに持ち込んだ罪は問いませんよ?」
威圧を掛ける闇医者と、優しい笑みでもって慈悲を示すロキ陛下。
当然だが罪に問われたくはないと友人は慌てて口を割る。
「それは我が家に出入りしている商人から購入しました!楽しい気分になれるクスリだって言って勧められて…」
「どこの物かは聞きましたか?」
「え?いいえ。ただガヴァムの裏ルートでもまだ流通していない新薬だと言ってましたけど…」
「なるほど?ちなみにその商人の名はわかりますか?」
「はい。ランダム商会のピートです」
「ランダム商会のピートね。ありがとう」
ロキ陛下と友人の会話からそれを聞くや否や、闇医者が何やら魔道具を使ってどこかと会話をし始めた。
「レトロン国ランダム商会のピートが新薬と称してかなりヤバいクスリを普及させている。出所を知らないか?」
『あ~そいつが扱ってる新しいやつって言うならあのクスリかな。【ジェニー】。もしそうなら出所はネブリス国だと思うぜ。あそこは今腐りに腐ってやがるから、軍事資金の調達に新しい商売先を模索中なんだろ。ガヴァムに持ち込めなくてレトロンに行ったのかもな。もしそのクスリなら絶対に手を出すな。最初は良くても三回四回と使ったらすぐ判断力がなくなって、最終的に脳みそが溶けちまうらしいから。依存度も高いらしくてよ、三回目以降は抜けられなくなるんだってよ。あと、合わない奴は本当に合わなくて、吐き気に襲われたり呼吸が思うようにできなくなって喉を掻き毟るほどのたうち回るらしい。気をつけろ』
「わかった」
そうして通話を切り、ロキ陛下との会話に戻る。
「ロキ陛下。どうやらネブリス国が関わっているクスリのようです。裏に情報を回してすぐに対処しておきますので」
「わかった。助かる」
「後は任せて頂いても?」
「別に構わないが、ガヴァムだけの対処になるのか?」
「お望みならいくらでも」
「それなら裏の皆が安心できるように、これ以上普及しないようサクッと組織を潰しておいてほしいな。大元もトーシャスあたりに頼んで排除しておいてくれたら助かる。報酬に糸目はつけないから頼んだ」
「わかりました。では」
サラリと笑顔で言葉が交わされているが、正直内容についていけない。
何やら恐ろしいことを言っていた気がするけれど気のせいだろうか?
(え?何?他国の組織だろ?そんなに簡単に潰せるのか?大元を排除って、どういうことだ?)
思わずロキ陛下の顔色を窺ってしまったが、その表情から何かを読み取ることはできない。
そんなどこか微妙な空気が漂う中、とある人物がロキ陛下に謝罪の言葉を口にした。
「ロキ陛下。我が国の者が危険な物をガヴァムへと持ち込んでしまい申し訳ございませんでした」
ユーフェミア王女だ。
関係のない自国の王女が何故と思ったのも束の間。カール王子まで慌てたようにロキ陛下に頭を下げる。
「私の従者達がお騒がせして、本当に申し訳ございませんでした!」
それを受けて俺達も急いでロキ陛下に頭を下げる。
王族に頭を下げさせて自分達が下げないわけにはいかないからだ。
「いえ。すぐに対処できてよかったです。こういったことは早めに手を打つに越したことはありませんから」
そんな俺達を見て、ロキ陛下は柔和な笑みを浮かべながらそれだけを言うと、あっさりと踵を返して行ってしまった。
どうやらお咎めなしは本当のようだ。
他の面々もそんなロキ陛下を見てホッとしたように部屋からぞろぞろと出て行き、残されたのは自分達とカール王子、そしてユーフェミア王女だけとなる。
「取り敢えず貴方は念のため横になって休んでおきなさい」
そう言って俺に促し、他の二人に本当に飲んでいないかと尋ね、実際に飲んだことのあるテリーは焦りに焦っていた。
対するもう一人、フリードリヒはそんなテリーを思い切り睨みつけている。
それはそうだろう。
特にフリードリヒはカール王子を守るために同行した騎士という位置づけだ。
今回の件は一歩間違ったら自分が俺と同じ目に合うところだったから許し難いんだろう。
護衛が再起不能になったら意味がないし、当然の怒りだと思う。
「今回の件は父上に報告させてもらいます。いいわね」
「そんな!困ります!」
「困るも何も貴方の意見は関係ありません。これはレトロンとガヴァムの国交間の信用問題。父からも謝罪を入れてもらわねばなりません」
そう言ってユーフェミア王女は毅然とした態度で踵を返し、カール王子も気遣わし気に俺達を見遣ったものの、結局ユーフェミア王女と共に部屋から出て行ってしまった。
後には蒼白な顔でフルフルと震えるテリーの姿があるばかり。
宜しくお願いします。
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【Side.カール王子の友人ネイト】
「くそっ!」
カール王子と一緒にガヴァムへとやってはきたものの、退屈で退屈で仕方がなかった。
ガヴァムが古臭い国だというのはわかっていたつもりだったが、ちょっと侍女の尻を撫でただけで悲鳴を上げられ、次から侍従がやってくるっておかしくないだろうか?
女遊びをするにも娼館は城から大分離れた所にしかないと言われ、護衛は必須だとも言われた。
そんなものをわざわざ連れて娼館にまで行くのは面倒だ。
だったらせめてカール王子が言っていたロキ陛下の顔でも拝んで挨拶ができないかと考えたが、そちらも仕事が忙しいとかでずっと執務室に引き籠っていて難しい。
食事会の席は王族とその婚約者しか参加できないと言われて泣く泣く断念。
カール王子はどうせパーティーで会えるんだからいいじゃないかと言ってきたが、そんなの最後の最後だけじゃないか。
ここに早く来た意味が全くない。
そうしてイライラしていたら、仲間内の一人が『ふっふっふっ』とどこか楽し気にしながらそっと何かの錠剤を見せてきた。
「なんだよ、これ」
「これは楽しい気分になれるクスリだ」
「楽しい気分になれるクスリ?」
「そう。うちの家に出入りしてる商人がこれを飲めば嫌な気分も爽快なものに変わりますよって言って勧めてきたんだ」
「へぇ…」
「なんでも裏ルートが充実してるガヴァムでもまだ流通していない新しいクスリなんだってさ」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。だって俺ここに来るまでに二回くらい既に試したし。全く問題なかったから」
平気平気と友人は笑顔で勧めてくる。
「飲んだら本当にイライラがすぐ収まるからさ、まあ騙されたとでも思って飲んで見ろよ」
そうして『そんなに言うなら』と思って好奇心でその渡された三粒の錠剤を飲んでみることに。
ゴクリ。
「どうだ?段々気分がよくなってくるだろ?」
友人はそう言ったが、俺は気分爽快どころか胸を押さえて蒼白になってしまった。
「う、うぇえっ…!」
頭痛が酷くて吐きたいのに吐けない状況に陥ってしまう。
手足は冷たくなり、呼吸も浅くなって苦しくて仕方がない。
そんな俺を見て一緒に居た友人は慌てて部屋から飛び出し人を呼びに行ってくれる。
暫くするとカール王子もやってきたが、しっかりしろと言ってガクガク揺さ振られて益々気持ち悪くなってしまった。
「じ、じぬっ…じぬぅ…っ!」
頼むから手を放してくれと思いながら必死に声を出す。
しかも段々息苦しさが増してきて、喉を掻き毟ってしまうがちっとも楽になれそうな気がしない。
そんな中また別の人物がこちらへとやってくるのが見えた。
「離れて!」
鋭くそう言い放ち、カール王子を俺から引き離すと、飲めと言わんばかりに大量の水をグラスで口へと流し込んできた。
「ぐ、ぐるじぃ…」
「いいから飲め!」
そうして無理矢理大量の水を飲まされたところで喉に指を突っ込まれて、そのまま吐かされた。
正直辛いなんてものじゃない。
しかもその後も二度三度と同じようにされて、グッタリなったところでやっと医師が到着する。
「ロキ陛下。お待たせしました」
「ああ、闇医者か。取り敢えず吐かせるだけ吐かせた」
「そうですか。では診察を」
(闇医者?!闇医者って言った?!)
王宮医じゃないのかよ?!と思いながら驚いて目を向けると、その闇医者という人物の向こうで一人の医師が所在なさげに立っているのが見えた。
あっちが本当の王宮医なんじゃないんだろうか?
思わずロキ陛下と呼ばれた人物にそっと目を向けると、言いたいことを察してくれたのか天使のような笑みでこう言った。
「死にたいならあちらの王宮医に診てもらっていただいても構いませんよ?その場合は何があっても自己責任でお願いします」
そう言われて慌ててブンブン首を横に振った。
この際助かるのならなんでもいい。
そうして診てもらったところ、幸い吐いたのが良かったらしく命に別状はないと言われた。
全部消化していたらヤバかったとも言われたから二度と飲みたくはない。
それから問題のクスリは友人が咄嗟に隠していたけれど、俺が全部洗い浚い話したことで言い逃れできなくなり、渋々出してきた。
それを受け取るなり闇医者と呼ばれた人物は歯でガリッと噛んですぐにペッと吐き出した後すぐに口を漱ぎ、何やら初めて見る魔道具に噛み砕いたクスリを乗せスイッチを押した。
すぐにカタカタと鳴り始める魔道具。
そして一枚の紙を吐き出し終わったところでその魔道具は動きを止める。
「どうだ?」
「最悪ですね。どこでこんなものを…」
紙を見ながらロキ陛下と二人何やら不穏な会話をし、鋭い目で今度はクスリを持っていた友人へと視線を向けた。
「そこの二人は飲んでいないな?」
「は、はい!」
「このクスリはどこで?」
「え?あ…えと、その……」
「当然このクスリは没収しますが、全部ちゃんと話してくれるのならここに持ち込んだ罪は問いませんよ?」
威圧を掛ける闇医者と、優しい笑みでもって慈悲を示すロキ陛下。
当然だが罪に問われたくはないと友人は慌てて口を割る。
「それは我が家に出入りしている商人から購入しました!楽しい気分になれるクスリだって言って勧められて…」
「どこの物かは聞きましたか?」
「え?いいえ。ただガヴァムの裏ルートでもまだ流通していない新薬だと言ってましたけど…」
「なるほど?ちなみにその商人の名はわかりますか?」
「はい。ランダム商会のピートです」
「ランダム商会のピートね。ありがとう」
ロキ陛下と友人の会話からそれを聞くや否や、闇医者が何やら魔道具を使ってどこかと会話をし始めた。
「レトロン国ランダム商会のピートが新薬と称してかなりヤバいクスリを普及させている。出所を知らないか?」
『あ~そいつが扱ってる新しいやつって言うならあのクスリかな。【ジェニー】。もしそうなら出所はネブリス国だと思うぜ。あそこは今腐りに腐ってやがるから、軍事資金の調達に新しい商売先を模索中なんだろ。ガヴァムに持ち込めなくてレトロンに行ったのかもな。もしそのクスリなら絶対に手を出すな。最初は良くても三回四回と使ったらすぐ判断力がなくなって、最終的に脳みそが溶けちまうらしいから。依存度も高いらしくてよ、三回目以降は抜けられなくなるんだってよ。あと、合わない奴は本当に合わなくて、吐き気に襲われたり呼吸が思うようにできなくなって喉を掻き毟るほどのたうち回るらしい。気をつけろ』
「わかった」
そうして通話を切り、ロキ陛下との会話に戻る。
「ロキ陛下。どうやらネブリス国が関わっているクスリのようです。裏に情報を回してすぐに対処しておきますので」
「わかった。助かる」
「後は任せて頂いても?」
「別に構わないが、ガヴァムだけの対処になるのか?」
「お望みならいくらでも」
「それなら裏の皆が安心できるように、これ以上普及しないようサクッと組織を潰しておいてほしいな。大元もトーシャスあたりに頼んで排除しておいてくれたら助かる。報酬に糸目はつけないから頼んだ」
「わかりました。では」
サラリと笑顔で言葉が交わされているが、正直内容についていけない。
何やら恐ろしいことを言っていた気がするけれど気のせいだろうか?
(え?何?他国の組織だろ?そんなに簡単に潰せるのか?大元を排除って、どういうことだ?)
思わずロキ陛下の顔色を窺ってしまったが、その表情から何かを読み取ることはできない。
そんなどこか微妙な空気が漂う中、とある人物がロキ陛下に謝罪の言葉を口にした。
「ロキ陛下。我が国の者が危険な物をガヴァムへと持ち込んでしまい申し訳ございませんでした」
ユーフェミア王女だ。
関係のない自国の王女が何故と思ったのも束の間。カール王子まで慌てたようにロキ陛下に頭を下げる。
「私の従者達がお騒がせして、本当に申し訳ございませんでした!」
それを受けて俺達も急いでロキ陛下に頭を下げる。
王族に頭を下げさせて自分達が下げないわけにはいかないからだ。
「いえ。すぐに対処できてよかったです。こういったことは早めに手を打つに越したことはありませんから」
そんな俺達を見て、ロキ陛下は柔和な笑みを浮かべながらそれだけを言うと、あっさりと踵を返して行ってしまった。
どうやらお咎めなしは本当のようだ。
他の面々もそんなロキ陛下を見てホッとしたように部屋からぞろぞろと出て行き、残されたのは自分達とカール王子、そしてユーフェミア王女だけとなる。
「取り敢えず貴方は念のため横になって休んでおきなさい」
そう言って俺に促し、他の二人に本当に飲んでいないかと尋ね、実際に飲んだことのあるテリーは焦りに焦っていた。
対するもう一人、フリードリヒはそんなテリーを思い切り睨みつけている。
それはそうだろう。
特にフリードリヒはカール王子を守るために同行した騎士という位置づけだ。
今回の件は一歩間違ったら自分が俺と同じ目に合うところだったから許し難いんだろう。
護衛が再起不能になったら意味がないし、当然の怒りだと思う。
「今回の件は父上に報告させてもらいます。いいわね」
「そんな!困ります!」
「困るも何も貴方の意見は関係ありません。これはレトロンとガヴァムの国交間の信用問題。父からも謝罪を入れてもらわねばなりません」
そう言ってユーフェミア王女は毅然とした態度で踵を返し、カール王子も気遣わし気に俺達を見遣ったものの、結局ユーフェミア王女と共に部屋から出て行ってしまった。
後には蒼白な顔でフルフルと震えるテリーの姿があるばかり。
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