154 / 234
閑話20.キスの日
しおりを挟む
※ついでにこちらの『キスの日』ver.も。
****************
「ロキ様。今日はキスの日らしいですよ」
ある日カークが何気なくそんなことを俺に言ってきた。
「へぇ。そんなのがあるんだ」
「そうみたいです」
そういうことならとカークを手招いて、チュッと軽くキスしてやったら物凄く慌てふためかれて真っ赤になられた。
「なんだ。キスしてほしくて言ったんじゃなかったのか」
「ち、違いますよ?!勿論ロキ様とのキスは嬉しいですけど!」
そんな新鮮な反応にクスリと笑っていたらリヒターから溜息を吐かれた。
「陛下。あまりカークを揶揄ってやったら可哀想ですよ?」
「いや。新鮮だったから、つい…」
「カリン陛下に見つかったらまた叱られますよ?」
「……確かに」
リヒターとそんな話をしていたらとても低い声がその場に響いた。
「ロキ?もう遅いぞ?」
「兄上…」
そこには如何にも怒ってますと言わんばかりに腕を組み、扉に凭れて不機嫌そうにする兄の姿があってとても驚いた。
いつもならすぐに騒いで止めに入るのに、何か悪いものでも食べたんだろうか?
心配だ。
「兄上。何か悪いものでも食べました?」
心底心配してそう尋ねたのに、何故かここで叱られた。
「どうしてそうなる?!」
「え?だって兄上がいつもの兄上らしくないから、もしかしてと思って」
「~~~~っ!お前はいつも通りだな?!」
「はあ。別に悪いものは食べていないので」
何でそう言われたのかわからないと思いながらそう答えたら、ズンズン近づいてきた兄にグイっと引き寄せられてそのままあっという間に唇を塞がれてしまう。
「これは口直しだ」
「……はあ」
「それで?キスの日だったか?」
「兄上もご存じだったんですか?」
「…………」
兄は怖い笑みでこちらを見るばかり。
もしかしたら扉でも空いていて、たまたま最初から聞いていたのかもしれない。
「お仕置きだ」
しかもそんなことまで言われたから、ああなるほどと合点がいった。
「お仕置きがされたかったんですね」
「どうしてそうなる?!」
「だって兄上はお仕置きするよりお仕置きされる方が好きでしょう?」
「ま、まあ?」
「ですよね。ふふっ」
でも何かお仕置きの建前になるようなことはあっただろうか?
(う~ん……。ま、いいか)
キスをしてから考えよう。
だって今日は折角の『キスの日』らしいから。
チュッ。
最初は唇に。
チュッ。
次は首筋に。
「ん…」
悩まし気に声を漏らす兄がとても可愛いから、今日は全身にキスをしてあげよう。
「兄上。覚悟しておいてくださいね?」
そう言って笑った俺の前で、兄は恥じらい頬を染めながら「お仕置きだから、今日はおとなしく俺に独り占めされること!」と言い放ったのだった。
****************
「ロキ様。今日はキスの日らしいですよ」
ある日カークが何気なくそんなことを俺に言ってきた。
「へぇ。そんなのがあるんだ」
「そうみたいです」
そういうことならとカークを手招いて、チュッと軽くキスしてやったら物凄く慌てふためかれて真っ赤になられた。
「なんだ。キスしてほしくて言ったんじゃなかったのか」
「ち、違いますよ?!勿論ロキ様とのキスは嬉しいですけど!」
そんな新鮮な反応にクスリと笑っていたらリヒターから溜息を吐かれた。
「陛下。あまりカークを揶揄ってやったら可哀想ですよ?」
「いや。新鮮だったから、つい…」
「カリン陛下に見つかったらまた叱られますよ?」
「……確かに」
リヒターとそんな話をしていたらとても低い声がその場に響いた。
「ロキ?もう遅いぞ?」
「兄上…」
そこには如何にも怒ってますと言わんばかりに腕を組み、扉に凭れて不機嫌そうにする兄の姿があってとても驚いた。
いつもならすぐに騒いで止めに入るのに、何か悪いものでも食べたんだろうか?
心配だ。
「兄上。何か悪いものでも食べました?」
心底心配してそう尋ねたのに、何故かここで叱られた。
「どうしてそうなる?!」
「え?だって兄上がいつもの兄上らしくないから、もしかしてと思って」
「~~~~っ!お前はいつも通りだな?!」
「はあ。別に悪いものは食べていないので」
何でそう言われたのかわからないと思いながらそう答えたら、ズンズン近づいてきた兄にグイっと引き寄せられてそのままあっという間に唇を塞がれてしまう。
「これは口直しだ」
「……はあ」
「それで?キスの日だったか?」
「兄上もご存じだったんですか?」
「…………」
兄は怖い笑みでこちらを見るばかり。
もしかしたら扉でも空いていて、たまたま最初から聞いていたのかもしれない。
「お仕置きだ」
しかもそんなことまで言われたから、ああなるほどと合点がいった。
「お仕置きがされたかったんですね」
「どうしてそうなる?!」
「だって兄上はお仕置きするよりお仕置きされる方が好きでしょう?」
「ま、まあ?」
「ですよね。ふふっ」
でも何かお仕置きの建前になるようなことはあっただろうか?
(う~ん……。ま、いいか)
キスをしてから考えよう。
だって今日は折角の『キスの日』らしいから。
チュッ。
最初は唇に。
チュッ。
次は首筋に。
「ん…」
悩まし気に声を漏らす兄がとても可愛いから、今日は全身にキスをしてあげよう。
「兄上。覚悟しておいてくださいね?」
そう言って笑った俺の前で、兄は恥じらい頬を染めながら「お仕置きだから、今日はおとなしく俺に独り占めされること!」と言い放ったのだった。
7
お気に入りに追加
1,086
あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?


ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる