【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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126.薔薇の棘⑭ Side.元王妃&令嬢達

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※今回暴力表現、レイプ表現があるので、苦手な方は読み飛ばしを推奨します。
宜しくお願いしますm(_ _)m

****************

【Side.侯爵令嬢】

「頭が痛い…」

どうやら昨日水をかけられたせいで本格的に風邪を引いてしまったようだ。
今日はできるだけ横になっておこうと思ったけれど、ジッとしていてもお腹は空くもので、フラフラと階下へ降りてきた。
部屋に食事を持ってきてと頼んだ侍女が戻ってこないのだから仕方がない。
そうして厨房の方へと足を向けたら同じくふらつく足取りでやってくるセレン嬢が目に入った。

「まあセレン様。もしかして貴女も体調が?」
「ええ。もしやダリア様も?」
「そうなの。でも侍女に食事を頼んだのにいつまでも戻って来なくて…」
「え?私もですよ」
「何かあったのかしら?」

そんなことを話しながら揃って厨房へと向かうと、ちょうど料理ができた所ですよと言われたので揃って食べさせてもらうことに。

「ああ…美味しいわ」
「本当に」

弱った胃に優しい粥。
温野菜サラダに温かな紅茶。
身体がとても温まる。
これならきっと少し休んだら風邪も治るだろう。
そう思った。

おかしいなと思ったのはそれから部屋に戻って暫くしてからの事。
最初身体が熱いのは熱が出たからだろうと思っていた。
でも、時間を追うごとにそうではないと理解し始める。

「…え?」

身体が疼き、明らかに性的な興奮を感じ始めたのだ。

「な、何?何が起こっているの?」

訳が分からなくて怖くて呼び鈴を鳴らした。
すると何故かやってきたのは侍女ではなく見知らぬ男で、どこか下卑た笑みを浮かべながらこう言ったのだ。

「よぉ?媚薬の効果はどうだいお嬢ちゃん」
「なっ…!」
「ロキ坊に盛るつもりだったんだよな?これ」
「も、盛ってなんかないわ!」

確かに盛りはした。
侍女に指示して紅茶に入れさせたのは自分だった。
でもロキ陛下は飲まなかった。
だから盛っていないも同然だった。
そう思ったのに────。

「嘘はいけねぇなぁ…」

男の目が冷たく光り、そのままこちらへと近づいてきたと思ったらそのまま襲い掛かられた。
そして身も心も酷い目に合わされた後、こう言われたのだ。

「おめぇが黙ってたら誰にもわかんねぇよ。嫁に行きたきゃ黙って口を噤むんだな」

そんな言葉に私はただただ絶望を感じたのだった。




【Side.伯爵令嬢】

ダリア様と別れ、自室に戻ったところで妙な違和感に襲われてしまう。
身体が熱くて熱くて仕方がなくて、恐る恐る下肢に手をやるとそこはぬるりと濡れていた。

(何?何なの?!)

これでは誰かが媚薬を自分に盛ったようなものではないか。
媚薬の知識は一応あるから自慰をすれば問題はないとは思うけれど、そんな所を誰かに見られでもしたら自分は終わってしまう。
だから部屋にしっかりと鍵を閉めて、こっそりと自慰に耽っていたのだけれど……。

カチャリ…。

開くはずのない鍵が音を立てて開かれて、そこに一人の男が現れる。

「な……」

当然驚かないはずがない。
しかも男はそのまま後ろ手に鍵を閉め、こちらへと問い掛けてきたのだ。

「お前がロキの部屋に男を連れ込むよう、侍女に指示を出したんだってな?」

その言葉に私は大きく目を見開いた。
それは本当にその通りだったから…。

「お前も同じ目に合わせてやるよ」

そう言って男は私を好きなだけ蹂躙していった。
でもその一人だけではなくて、その後三人もやって来て全員に犯されたのはおかしいと思う。
夢であってほしいと思ったけれど、それはどこまでも現実で。
もう嫁には行けないなと何度も何度も言われ、最後に「クソビッチが」と捨て台詞を吐かれて解放された。

何も悪くない自分がこんな目に合わされるなんてと信じられない思いでベッドに突っ伏し、泣きながら自分で自分に大丈夫だと何度も何度も壊れたように言い聞かせた。

父に相談して報復を考えてもよかったが、自分が穢されたことを知れば父は自分を修道院へと送ってしまうだろう。
それなら黙っている以外に選択肢はない。
黙っていたらきっと誰にもわからないし、お嫁には行けるはず。
そうだ。きっと涙ながらに訴えれば馬鹿な男を騙すこともできるはず。
爵位がうちの伯爵家より低い子爵家か男爵家なら尚簡単だ。
帰ったらすぐにでも父に言って相手を見繕ってもらおう。
そしてそのまま騙くらかして結婚してしまえばいい。

「だって私は美しいもの…」

傷物になってもいくらでも嫁ぎ先はあるはずだ。
そう思いながらゆっくりと絶望に染まった瞳を閉じた。




【Side.元王妃】

ロキを陥れてあわよくば殺してしまおうと思った。
計画は順調だったし、カリンの花嫁候補達との顔合わせもできたし、何の問題もないと思っていた。
カリンは責任感の強い子だ。
たとえ少々納得がいかなくてもロキさえいなくなれば王位に就いて花嫁を迎えガヴァムを治めてくれるとそう思っていた。
それなのに────。

(この私を軽蔑する、ですって?!)

何の非もない私にあんな目を向け、花嫁なんていらないと言い放ちただ只管ひたすらロキを想っているかのように行動する姿に苛立ちが募る。
昔はあんな子じゃなかったのに。
ブルーグレイで壊されてからあの子はすっかり変わってしまった。
ロキにいいように洗脳されてしまったのだ。
本当に忌々しい。

けれどもうロキは死んだも同然のはず。
カリンがどう動こうと王位はカリンのものなのだ。
きっとそのうち洗脳も解け、私に感謝して謝ってきてくれるだろう。
そう思いながら街へと向かった。

隣国のクリスティン嬢に気晴らしに買い物をと言ってもらったからいいかも知れないと思って出てきたものの、何かがおかしい。
行く店行く店で入店を断られ、商人達から冷たい目で見られるのだ。
おかしいと思わない方がおかしい。
挙句に皆でお茶でもと思い高級レストランに入ろうとしたらそこでも断られ、最後には水までかけられてしまう始末。
私達が一体何をしたと言うのか。
ただロキという邪魔な異物を取り除こうとしただけではないか。

「よくも…!」

ただでは済まさない。
実家のクシャミリー侯爵家の力を使ってでもきちんと報復をしてやると心に決める。
この地の領主は子爵家だ。
潰すなど容易いだろう。
そう思いながら別荘へと帰った。

別荘に帰るとカリンがこちらを一瞥し、冷たい態度で因果応報だと言ってきた。
なんて酷いことを言うのだろう?
可哀想に。カリンを想っていた令嬢は傷ついて泣き出してしまう。
なのに全く一顧だにせぬままカリンはそのまま去って行った。
あの無能と親しくしたせいで人の心を全部捨ててしまったのだろうか?
やはりもっと早く引き離してやればよかったと後悔しきりだ。

その後なんとか濡れたドレスを脱ぎ、温かな湯に浸かったはいいものの、身体を冷やした所為で風邪気味になってしまった。
令嬢達は皆同じような感じで、温かいスープでも飲みましょうとちょっと遅めの昼食を摂ることに。
けれどスープを飲み干したところで急激な腹痛に襲われて、トイレへと駆けこむ羽目になってしまう。

「うぅ…一体誰が…?」

これでは昨夜のロキのようではないか。
そう思ってもしやこれは報復なのではと思った。
自分は関与していなかったが、令嬢達の誰かがロキのスープに下剤でも盛っていたのではとこの時点で思い至ったのだ。
計画は主に令嬢達が楽し気に立てていたので自分は細かいことまで把握してはいなかった。
自分の目的はあくまでもロキの排除。
嫌がらせをすることではない。
だから引き受けたのは確実に死に至る無味無臭の毒の手配と、野盗の手配くらいのものだ。
結果的にどちらも使うことなく終わってしまったが、令嬢達の計画の方は上手くいっていたし、確実にロキを退位に追い込むことはできるだろうと踏んでいた。
だから何の問題もないはずだった。
それなのにどうして自分がこんな目に合っているのか本気でわからなかった。

お腹が痛くて痛くて仕方がなくて、侍女に頼んで水だけを用意してもらいそのまま休んだ。
翌日、カリンは既に城へ帰ったと知らされホッと息を吐く。
王宮に帰って頭を冷やせば冷静に物事が考えられるようになるはずだし、自分達への見当違いな逆恨みもしてこないはず。そう思った。
そう────冷静に考え、自分の中で昨日のスープの件はカリンの指示によるものだったのではないかと考えたのだ。
だがそれならそれでこれもそのうちちゃんと謝ってもらえるだろう。
私のお陰でカリンは王位につけるのだから当然だ。
毒を盛られたわけではないのだから、その時は母として広い心で許してあげよう。
そしてそれを逆手にとって花嫁を迎えさせればいい。
そうすればこの国は元通り、素晴らしい国へと戻ってくれる。

そう思いながら今日も一日横になっていた。
どこからか悲鳴が聞こえた気がするけれどきっと気のせいだ。
若い娘達だけで盛り上がっているのだろう。
今はただただ寒気が酷いし、よく眠って早く風邪を治そう。

そうして眠っていると、急に体が重くなったような気がして目を開けた。
見ると見知らぬ男が自分の上へとのしかかっている。

「ひっ?!」

怯えて声を上げようとしたけれど、悲鳴が口から飛び出す前に口を塞がれてしまった。
そこからは問答無用で犯されてしまったけれど、久方ぶりの行為に感じてしまったところで頬を何度もぶたれて罵られた。

元王妃。本来なら王太后の地位にあったはずの自分になんてことをと睨みつけるが、男は私の心を叩き折るかのようにお前には何の価値もないクズだなどと何度も何度も言ってきた。
なんという仕打ちだろう?
そこに敬意などと言うものは一切ない。

「私は国母なのよ?!」
「息子を認めもしないクソ親が!舐めた口聞いてんじゃねぇぞ?!」

バシッ!

そうしてやめてと叫び泣き喚いても助けなどは一切来ず、ただただ私は体調不良の中苦痛の時間を過ごす羽目になった。
どうして私がこんな目に合わなければならないのだろう?
私はか弱い女性なのに。
尊敬されるべき国母なのに。

「私は王族なのよ?!」

思わずそう叫んだけれど、嘘つき女がとまた叩かれた。

「前王に離縁されたお前はただの侯爵家の女でしかない。この国にいる尊い王族と言うのならロキ陛下とカリン陛下の二人だけだろうが?!」

その言葉は正直衝撃的な言葉だった。
王室に入りずっと王族として暮らしてきた自分だからこそ王妃としての矜持を持ち続けていたと言うのに、それを奪おうとするのかと怒りが湧き起こる。
あんな無能よりも自分の方がずっと素晴らしい王族として暮らしてきたのに、どうして認めようとしないのだろう?
大体こんな目に合っているのだってあの無能のせいではないのか?
あの無能が私への報復に裏の人間を雇ったのだとしたらやはり性根が腐りきっていると思った。

「あんな子、王の血を引いていようと王族でもなんでもないわ!こんなことになるならもっと早く殺してやればよかった!」

だから怒りのままにそう叫んだら今度は思い切り首を絞められた。

「てめぇはもうしゃべるな」

気を失う間際に私の目に映ったのは、どこまでも怒りを孕んだ冷酷な男の顔だった。




【Side.裏稼業の男達】

正直言ってここにいるのは全員最悪な女達ばかりだった。

「なんだっけなぁ…?媚薬に下剤、弱ったところでレイプと暴力。言葉で散々嬲って、身も心もズタボロにした上で毒を盛りつつ事故に合わせて野盗に襲わせてぶっ殺す…そんな計画だったか?」

それを笑いながら実行して全く罪悪感を覚えねぇって…随分腐った連中だ。
これなら遠慮なんて一切なく酷い目に合わせてやったっていいだろう。
そう思って取り敢えずの報復を行った。

令嬢の方はまあ、少しは反省しただろう。
言ってみればまだ普通の女共ではあった。
だが問題は元王妃だ。
あの女は酷い目に合わせてやっても反省の色すら一切なかった。
まるで自分は何も悪くないと言わんばかり。
あれだけされても心折れないなんてどれだけ図太いんだろう?
挙句にロキ坊をもっと早くに殺しておけばよかったなどと叫ぶ始末。
その言葉を聞くと同時にぶっ殺してやりたくなるほどの殺意を感じて、思わず首まで絞めてしまった。

当然だがあの女達への報復はまだまだこんなもので済ませる気はない。
俺らの可愛い弟分に手を出したこと、絶対に後悔させてやる。そんな気持ちでいっぱいだった。

ぶっちゃけあいつを昔から知っている奴ほどその怒りの度合いは強い。
暗殺計画を立てた令嬢達にもだが、あのふざけた母親に関してはもっとだ。
父王がブルーグレイの王子に暗殺された時はざまあみろと思ったが、今回は思い切り苦しめてから殺してやりたいと思って止まない。
あんな風にあっさり殺されてもそれはそれで納得できないほどに皆怒り狂っていたのだ。
それだけあの女共が立てた計画は最悪だったと言える。

「こういったことは本来俺らの領分だ。お望み通り、最後は絶望の淵で苦しみながら死ねばいい」

本音を言えば全部俺達の手で始末をつけたかった。
けれど兄である王配は本気で俺達以上に怒りを湛えた目で自分も報復がしたいと言ってきた。
まあ気持ちはわからないではない。
昔は兎も角今は大事に思っている相手を手酷く傷つけられたのだから。
一応最後は譲ってやると言ってやったが、あのどこかポンコツな王配にちゃんとできるのかは心配ではあった。

だからこれについてトーシャスにも伝えておくことにする。
ツンナガールで連絡を取り、あの兄を城に返したことを伝えてみると『まあ取り敢えずその手並みとやらを見せてもらおうじゃねぇか』という答えが返ってきた。

『ぶっ壊れ野郎はホント、ぶっ壊れてるからどんな兄貴でも許せちまうんだろうがな。俺はそんなに甘くはねぇ』

トーシャスは『資格なしと判断したら即ぶっ殺してやる』と笑って通話を切ってきた。
あれは場合によっては接触も辞さないと言った感じか。
本当は暗殺者であるトーシャスとあの王配を引き合わせるのは危険だから避けたかったが、こうなっては仕方がない。

「認めてもらえるといいな?」

そうして俺は静かに嗤った。

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