【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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閑話11.処女の行方

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その日、いつも頑張ってくれているカーライルに俺は何か欲しいものはないかと聞いてみた。
すると何を思ったのか滅茶苦茶顔を輝かせてこう言ってきたのだ。

「何でもいいなら俺、ロキ様の処女を頂きたいです!」と。

その場にいたのは兄とリヒターの二人。
それを聞いた二人は当然の如く揃って怒りだした。

「ふざけるな!」
「…カーライル。不敬だぞ」

兄の怒りの眼差しとこれでもかと冷え切ったリヒターの眼差しが怖い。

「でも二人共断ったのなら次は俺でしょう?」

特に含みなく忠誠心順ですよねと告げられたその言葉に、兄の目が鋭くリヒターへと向けられ、どういうことだと責め始める。

「リヒター!そんなこと俺は聞いていないぞ!」
「…きちんとお断りしたので、言う必要はないかと」

リヒターはきっちりと兄にそう言った。
でもあれは冗談で流していたから断られたという感じではなかった気はするし、多分俺が押せばいけるだろうとは思う。

「カーク。兄上は断ったけど、リヒターは冗談で流してくれたんだ。また機会を見て揶揄おうと思ってるんだから、この件に関して変な横槍は入れるな」
「え?そうなんですか?残念です…」
「リヒター!断ってないじゃないか!今すぐ断れ!今すぐだ!」
「…ロキ陛下。そういう冗談はやめてください。その…その件についてはカリン陛下に貰っていただくのが一番だと俺は思います」
「でも兄上は俺にあんあん言わされる方がいいからいらないって言ってたし…。お前なら丁寧にしてくれそうだからいいかなと思って」
「「ぐっ…!」」
「まあ別に無理にとは言わないし、また何かの機会にでも他の…」
「~~~~っ!ロキ!」
「なんでしょう?」
「お、お、俺がっ…!」
「兄上が?」
「俺がもらってやるっ!」
「…………本当に?」

それならその方がいいけれど、無理しているのが明らかだからどうしても疑ってしまう。
別に無理してまで貰ってくれなくても構わないのだけど。
でもそこでリヒターがそうだと言って新しい提案をしてきてくれた。

「三人でした時にするのは如何です?前戯を俺がすればロキ陛下も安心でしょうし、カリン陛下もすんなりできるのでは?」
「ああ、それはいいかもしれないな」

一番失敗もなさそうで実に画期的な意見だ。
兄にすんなりもらってもらえそうで一番いいかもしれない。

「じゃあ気分が乗ったらそうしよう」

その返事にどこかホッとしたような顔で二人が息を吐き、これからは誰にも絶対そんなことを言ってはいけない、もっと自分を大事にしろと散々言い聞かされた。
だから当然カーライルにもあげることはできない。

でもそのせいで凄く残念そうにされてしまったので、仕方がないからリヒターと兄同席の元、玩具で可愛がってやることにした。
これなら二人も別に構わなかったらしい。
カーライルも幸せそうで何よりだ。

終わった後、たまにはこうしてご褒美がもらえたら嬉しいと言われたので、兄に許可を取ったらリヒター同席なら別に構わないと言ってもらえたのでそうしてやることにした。

それから数か月。
兄とリヒターの間で何か話し合ったのかは知らないが、二人が俺の処女を奪う気配は今のところ全くない。
別に構わないけど、時折思い出したように釘だけは刺されるので二人共忘れているわけではないらしい。

「いいか、ロキ?」
「ロキ陛下の処女はカリン陛下がもらう予定なので、絶対に他の誰かにあげると言うのはなしですよ?」
「じゃあ今サクッと…」
「今日は気分じゃない」
「今日はカリン陛下は責められたい気分らしいので、いつも通りで良いのでは?」

こんな感じで毎回誤魔化されるのだ。
まあ別に特に犯されたいわけではないから気にしないけど。
兎に角処女は兄に捧げたと思って過ごせばいいんだろうなと一応解釈しておいた。
遠回しな二人に辟易しつつ、何となく心配してくれてるんだろうなと感じられて嬉しくなってしまったのは内緒だ。
こんな風に俺を大事に思ってくれている二人にとっておくのも悪くはない。

「兄上でもリヒターでも、もし俺がどこかで媚薬の罠にでもハマったら遠慮なく処女を奪ってくれて構わないので」

二人になら安心して任せられるしと笑顔で言ったら二人揃って真っ赤になって撃沈していた。
こんな二人が俺はとても大切だ。
だから、これから少しは自分も大事にしてみようかなと思ったのだった。


***


【Side.カリン】~裏話~

ロキがリヒターに処女をやると言っていたらしいので、当然の如く俺は後で呼びだしてやった。
3Pの時にと言っていたのも気になったので、その件についても問い質すためだ。
そして二人で話をしたのだが、まあ聞いて納得はいった。

要するに、実際にするしないは俺次第だが、こうして俺が預かる形にしておけばロキも迂闊なことを余所で言わないだろうと。
ただそれだけだと俺がまた余計な勘繰りでリヒターを疑うかもしれないから、それなら3Pの場でと敢えて言っておけばいいと思ったのだとか。
勿論俺がロキと二人でしている時にそういう雰囲気になったらリヒター抜きでしてくれて全然構わないとも言ってもらえた。
実にロキをよくわかった上での隙の無い対処だ。
リヒターらしいと言えばリヒターらしい答えで、俺としてもそういうことなら否やはない。
ただこのまま放置して、いつの間にかなかったことにされるのもダメだから時折釘だけは刺そうと二人で決めた。
ロキのことだからこっちが忘れたと判断したらまた勝手なことをしでかしそうだ。

本当にリヒターが真面目な奴で良かったと言うかなんと言うか…。
正直嫉妬はすれども言った相手がこの男でまだよかったと思わなくはない。
他の相手ならとっくの昔にロキの愛人におさまられていただろう。
この男の理性には目を瞠るものがある。

「お前は…これ幸いとロキを抱きたいと思わないのか?」
「……俺が好きなのは貴方を愛しているあの方ですし、願っているのもあの人の幸せです」
「本当にお前も大概歪んでいるな」
「かもしれませんね」
「……まあいい。お前はいつだってその行動で俺に誠意を示してくれるし、シャイナーとは違う」
「…………」
「夢で抱くくらいなら許してやるが、現実では絶っっ対に手を出すな。わかったな?」
「……肝に銘じます」

ちょっと気まずげにしたのは身に覚えでもあったのかもしれないが、ロキに振り回されたのは確かだろうし、それくらいは許してやろう。

「リヒター。お前の忠誠心を信じているからな」
「御意」

しっかり釘だけはさして、これからもしっかりロキを俺に惹きつけておこう。
第二第三のライバルが現れないように────。

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